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気がつくとそこは…赤い世界だった
- 1 : @転載初号機 ★ :05/09/09 21:08:07 ID:???
- 作者名:◆9pbT54MSzw
初投下:2005/07/28(木) 15:59:02
属性:シンジ・レイ逆行(LARS?)
○投下スレッド
エヴァの部隊が韓国だったら・・・
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/eva/1122315309/
連載中(05/09/09現在)
- 2 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:10:15 ID:???
- 「ここは…」
見渡せば、赤い海の広がる世界は消え去っていた。
デジャビュのような、周囲を包む雰囲気。
「…そうか、あの時に。あの始まりの時に帰ってきたんだ…」
感慨深げに周囲を見渡す…が。
微妙な違和感を感じながら、前と同じく蒼い髪の少女を見つける。
「…綾波…っ!」
彼女を視界に入れたと思った次の瞬間、大気が凄まじい振動を伝える。
国連軍による使徒への攻撃だと認識すると共に、その場から駆け出す。
(前の通りだと、立ってたところに飛行機が落ちてくるんだったよな・・・)
そう思いながら、さらに記憶を手繰る。
じきに現れる、青い車に乗った、初めての家族を心待ちにしながら。
ドンッ
避ける間もなかった。
恐ろしいほどの速度でシンジを跳ね飛ばしたのは、シンジの待ち人であったミサトだった。
「…やっちゃった。でもまあケンチャナヨ。こんな時だし、一人位事故で死んでもばれないわよね」
まったく今日は肝心な時に車が壊れるし、散々だったわぁ、などとブツブツいいながらそのまま何事もなかったかのように走り出すミサトの車であった。
赤に染まる視界の向こう。
アルファベットのHなんだかNなんだか判別し難いエンブレムを持つ車が走り去っていく。
(…ああ、そういえばさっき見えた綾波の幻、なんか謝ってたような気がするなぁ)
などと、何がどうなったのかさえわからなくなっていたシンジ。
意識の途切れる瞬間に彼が見たものは、爆風に揺れる、ハングル文字の看板であった。
- 3 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:10:44 ID:???
- 「…碇君、碇君」
意識を手放してからどれくらい経っていただろうか。
猛烈な勢いの車に跳ね飛ばされたところまでは記憶にある。
呼び掛けに、朦朧とした意識を叩き起こし、ゆっくりと目を開いた。
「…綾波?」
細々と声を発したシンジに、息を詰まらせたような表情で涙ぐむレイが傍らに跪いていた。
「…良かった、間に合って」
「…綾波?どうしてここに?」
極々簡単な質問であったが、レイはそれに答える事に窮していた。
なぜならば、彼女自身にもわからないからである。
「…いつの間にか、この世界にいたんだ…」
「ええ、気がついたら発令所にいたの…2010年の」
彼女がこの世界に戻ったとき、そこは暗闇の中であった。
重く、暗く、周囲が全て黒で覆われたまま、何処かへ引き摺られているようであった。
「…まったく冗談じゃないわ。この私が人殺しだなんて。それもコレも全部アノ所長が悪いのよ」
聞き覚えのある声が、自身を包むモノの外側から聞こえてきた。
「あんなガキにまで私の悪口言ってるだなんて、謝罪と賠償を…」
彼女の呟きは、そこで途絶えた。
自身が息の根を止めたはずの幼女が入った黒いゴミ袋が動き出したから。
しかも、確実に意思を持った動きを。
「そんな…ちゃんと死んでたはずなのに!」
「…邪魔」
ぼそりと呟いたレイが、袋を寸断する。
紅く輝く光の刃によって。
「ひっ!ひぃい!」
レイの本質が何たるかを推測ながらも掴んでいた赤木ナオコは、その力が自身に向けられると信じて疑わなかった。
「それから、何か訳のわからないことを口走りながら、一目散に走り出したの。発令所の、オペレーター席に向かって…」
そして、飛んだのだと言う。
「アイゴー」と叫びながら。
- 4 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:11:19 ID:???
- 鈍く響く接地音に肩を竦ませた次の瞬間、背後から良く知る男性が近付いてきた。
「…レイ」
その声に視線を上げる。
以前ならば、ただ其処にこの男がいるだけで心が落ち着いたであろう。
しかし、目の前にいるコレは。
「…これでいい。あの婆さんにはもう飽きた。いい具合に育ったな、レイ」
醜く歪むその口元に、怖気を感じて後ずさる。
「…どうしたレイ。ゆくぞ」
やけにハアハアと息を荒くしているゲンドウ。
我慢が限界に近いのだろうか。
「…9cm」
ボソッと呟くレイ。
「なんだと?」
ゲンドウの問いかけを、もう一度言ってみろ、という意味で取ったのか、再び口にするレイ。
「婆さんが言ってたわ。ロリコンだとか、小さいとか、早いとか、せいぜい9センチだ、とか」
先ほど首を絞められた際にナオコが口走っていた言葉であろうか、レイの口から自然と紡ぎ出されていた。
「くぁwせdrftgyフジコlp;!!」
次の瞬間レイが見たものは、先ほどのナオコと同じく、意味不明の言葉を吐き出しながら顔を真っ赤にして襲い掛かってくるゲンドウの姿であった。
「そ、それでどうしたの?」
淡々と語るレイに、つい引き込まれてしまったシンジ。
「…ATフィールドを無意識に展開していたの。それに激突して、碇司令は気絶したわ」
少なくとも鼻骨を砕いたのは確定だろうというほどの勢いだったとか。
「そ、そう」
「その後地下に降りて、私の身体を処分して逃げ出したの。気持ち、悪かったから」
あの様子では、何に使われるか知れたものじゃないからと、アンチATフィールドでLCLに還元しちゃったとか。
「た、大変だったんだね」
「…ええ、とても。その時よりも、これまで生活してきた事の方がもっと大変だったけど」
さぞかし美少女の一人暮らしは大変だったことでしょう。
- 5 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:11:48 ID:???
- ネルフに見つからないよう、ごくごく慎ましく、そのときが来るまで過ごそうとしていたレイであったが、その生活は以前のようには行かなかった。
第三の頃のように古いマンションにでも潜り込もうとしたが、セカンドインパクトですべて倒壊していた。
手抜き工事のせいであるという。
仕方なくレイは安ホテルなどを転々としていった。
ゲンドウの財布を抜き取ってきたため、現金はしばらく持つ。
カード類は足がつきやすいので、限度一杯の現金を引き出した後、捨てたという。
「…暗証番号は前のときと同じ…ユイさんの生年月日だったから、簡単」
「…」
大粒の漫画汗がだらだらとシンジの後頭部を流れたりする。
生活は苦しくはなかったが、大変であった。
夜道を歩くと集団の男に拉致されそうになったり。
見知らぬ男に声をかけられ、断ると大声で喚かれ、掴みかかられて危うく貞操の危機に陥ったりもした。
あるホテルに身を隠していた時は、合鍵で部屋に入り込まれ、襲われそうになったとか…ホテルの従業員に。
「いや、大変だったんだね…本当に」
さすがに日本の10倍の強姦事件発生国である。
レイのようなアルビノの風貌は差別の対象ともなり、性的な餌食でもあるのだ。
話しを聞くうちに、シンジの出血は止まっていた。
どうやらちょいとスパシン気味な体質になっている模様。
…その程度のスーパーさ加減では、kの国の異常な日常に対応するには多少心細いのだが…。
「…さ、行きましょう」
レイがシンジの手を取り、立ち上がらせる。
「行くってどこへ?」
「…取り合えず、アレから身を守らないと」
レイの視線の先、ビルの向こうに見える第三使徒の周辺から、航空機が一気に遠ざかる。
「…ああ!」
ぽんと手を付き、以前の記憶を思い出す。
「N2爆弾が…」
と言いかけた瞬間。
ごう
凄まじい熱線と、衝撃波とが二人を襲った。
- 6 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:12:17 ID:???
- その頃ネルフ本部では。
「見たかね。これが我々のN2地雷の威力だよ。誇らしいですね。パンチョッパリのオモチャの出番は2度とないというわけだ」
在韓UN軍幹部がN2爆雷の威力を誇らしげに語っていた。
「…」
無言のゲンドウ。
そう、彼は元在日で、ユイと結婚し帰化する際に通名を本名としていたのであった。
何も言い返さないゲンドウに、さらに笠にかかって声を大にする幹部連。
「何も言わないのは認めたということだな。ホルホルホル。所詮チョッパリは下等な文化文明しか持てない猿真似国家だ」
何故かどんどん話がそれていく中、悲鳴のようなオペレーターの声が上げられた。
「爆心地に高エネルギー反応!!」
「なんだと!」
「我々の切り札だぞ!そんなはずが無い!」
「いや、しかし事実…」
モニターに映る使徒の姿を見てさえも、そんなはずは無いと繰り返されるだけ。
「捏造だ!」
「はぁ?」
「我々を陥れるための陰謀だ!そうに決まっている!」
わけのわからぬことを言い出した幹部達に、困り果てたオペレーターが後方の司令席を見上げる。
オペレーターの報告に国連軍幹部らが慌て始めるのを見ながら、ゲンドウは溜飲を下げていた。
最早幹部達の言葉は聞き取れない無意味な音波と化していた。
「ファビョったな」
「ああ」
ゲンドウの後ろに立つ、副司令の冬月が落ち着いて声をかける。
「偉大な我々に倒せなかったのがお前らチョッパリに倒せるわけが無い!」
そう言う捨て台詞を残して姿を消した幹部連。
それを見送り、大きな溜め息をついて冬月がゲンドウに向き直る。
「それでどうする?レイはあの時以来行方知れず。テストの記録などは捏造しておったようだが、こと実戦となれば最早通用せんぞ」
「…もうじき予備が届く。全てはシナリオどおりだ」
彼の言うシナリオは、要するに脳内妄想なのであるが…。
無論ミサトは未だシンジを見つける事は出来ず、N2の爆発に巻き込まれて車ごとひっくり返り
「こんなはずは無いわ!優秀な私がこんな状態に陥るなんて、誰かの陰謀に違いないわ!」
などと、運転席で身動き取れないまま、一人大声で世間に対する恨み言を吐き出していた。
- 7 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:12:37 ID:???
- 「あなたがサードチルドレン…碇シンジ君ね…って。もしかしてレイ?」
ズタボロになった服装のまま、どうにかこうにかネルフ本部にたどり着いた二人。
無人の本部正面ゲートに付随するインターフェイスを、レイが事も無げに操りリツコを呼び出していた。
煤塗れの二人を見て、息を呑むリツコ。
だが、それ以上にシンジが伴っていたレイに息を呑んだ。
「何故?どうしてあなたがシンジ君と?」
本来迎えに行ったミサトではなく、何年もの間行方不明となっていたレイがいるのかと。
「…話せば長くなります」
そう前置きし、リツコの先導で道々話しを始めた。
「…碇司令に襲われて、逃げ出したの…。そう…」
リツコ自身にも身に覚えがあるため、激しく信用してしまうリツコ。
「ハイ。そのときどこをどう逃げたのか、いつの間にか見知らぬ土地に」
そこでシンジに会ったのだという。大嘘だが。
「碇君は小さい時にお父さんに捨てられたそうです。わざわざ住んでいた韓国から、日本に渡って」
半島から邪魔になった子供を捨てに日本へ渡る、というのはよくある都市伝説程度にしか思っていたなかったリツコ。
まさか本当にそう言うことをする者がいるなんて、とは思ったが、司令の鬚面を思い浮かべて『やりかねない』という考えに到った。
「それにしてもよく来てくれたわね、二人とも」
- 8 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:12:59 ID:???
- 焦りを隠しながら二人に声をかける。
そんな状況で、よくもここに来させる事が出来たものだと言動の手腕にある意味感心していた。
「…来たくて来た訳じゃないんですけど…」
そう言いつつ、シンジは鞄から封筒を取り出しリツコへと手渡す。
おそらくは前回同様、 来い ゲンドウ と書かれた手紙が入っていると思い、
『こんな手紙が来たら、何事かと思いませんか?』
と言うつもりであった。
しかし、封筒を開き、手紙を取り出したとたん、リツコの歩みが止まる。
プルプルと震えだしたかと思うと、大きな溜め息をついてシンジ達二人に向き直った。
「…ホント、よく来る気になってくれたわね」
と呟きながら。
そんなリツコの手から零れ落ちた手紙は、恐ろしく小さな蛍光色の文字で、一面が埋め尽くされていた。
この世にそんな言葉があったのかと言うほどの、罵倒と、脅しと、陵辱の。
さすがは他者を貶める言葉の語彙にかけて だ け は世界の先進国と言われるだけの事はあるのであった。
- 9 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:13:25 ID:???
- 直ぐに騒ぎ出す周囲の状況の中、希少な冷静さを持つリツコにレクチャーを受け、初号機に乗り込む準備を進めるシンジ。
そんな中、急に作業中のケイジ内が作業の雑音とは別の騒音で満たされる。
聞こえてくる無意味な音の連なりに、コメカミを抑えるシンジ。
「・・・どうしたの?碇君」
「うん、なんとなく先の展開が予想出来るようになった自分に悲しくなっちゃって・・・」
近づいて来るざわめきの根源に、シンジは深い溜め息をつく。
と、その原因がレイの背後にたどり着き、その華奢な肩に無骨な掌が乗せられ・・・なかった。
背後も見ずに、するりと避けたのである。
「…何故避ける!昔面倒を見てやったのは私だぞ!それを恩も忘れて行方を晦ましおって!そもそもくぁwせdrftgyふじこlp;!!」
いろんな意味で前回の父さんより酷いかも、と思うシンジ。
つつ、とレイがシンジの背中に回り込み肩越しにゲンドウを睨みつける。
一瞬その視線に言葉が詰ったが、再び叫びだす。
可憐な少女に対してこれでもか、と言うくらいの罵詈雑言を。
その光景を遠巻きにしていた作業員の男達がゲンドウの背後に集まり、声を大にして似たようなことを口にし始める。
声の大きさだけは圧倒的だが、中身はまったく伴わない。
いい加減辟易としてきたシンジが何か口にしようとする度に、さらに声をあげそれを妨げる。
人の言い分をまったくと言って聴こうとしない、と言うか、口に出すことさえ邪魔をする彼らに対し、呆然とするだけの二人であった。
そんな二人に対し、じりじりと包囲を縮める周囲の面々。
程よく育ったレイの姿に、目の色が変わっているのが見て取れる。
ごく一部にはシンジのほうを見てたりするが。
貞操の危機どころか生命の危機にまで及びそうだと感じたその時。
紫の鬼が右手を振り上げた。
- 10 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:13:50 ID:???
- 「…まったく、あきれてものが言えないわ」
ケイジのアンビリカルブリッジ上で、初号機の手によって包まれたシンジとレイ。
その直後、天井から大型の照明がフレームごと落下してきたのであった。
初号機のおかげで二人は何事もなかったが、その周りに陣取っていた者達にとっては災難であった。
振り上げられ、シンジとレイを優しく包み込んだ手に当り砕け飛び散った破片が、二人を囲うように円陣を組んだ者たちを襲ったのである。
ケイジの騒動をコントロールルームのモニターで知り、大慌てでやって来た時には阿鼻叫喚の渦。
その者たちはなにかと言うと全てシンジが悪いと喚いているが、監視カメラが一部始終を収めているケイジである。
一瞬でシンジに被せようとしていた濡れ衣は剥がされ、逆にゲンドウに事大してシンジら二人を追い詰めようとしていたことが明らかにされ懲罰と相成った。
使徒が迫っているこの時間の無いときに一体何を考えているのかと。
取り急ぎ邪魔な怪我人を外に放り出し、シンジにエントリーを急ぐように伝える。
「あの…、リツコさん?」
「な、何かしら?」
上目遣いに声をかけてくるシンジを見て、ちょっと慌てて頬を赤らめるリツコ。
心の中で、(私にはそんな趣味は無いわ、無いったら無いわ)と一生懸命否定していた。
「綾波を一緒に連れて行ってもいいでしょうか」
何を言い出すのか、とリツコが問う前にシンジが再び口を開く。
「だって…一人にしておくと、何かされそうで…」
さも在りなん。
最高責任者たるゲンドウからしてあの調子なのである。
そう考えるのも当然であろう。
「パイロット以外の搭乗は異物とみなされてシンクロに問題が出ると考えられるのよ」
と言って却下するつもりであったが、心の奥底から湧き上がる力に打ち消されてしまう。
それは所謂“科学的好奇心”であった。
息をするように科学に触れてきたリツコである。
シンジが初号機にシンクロ出来るのはほぼ確実にわかっている。
レイもシンクロ出来るであろう事もまた。
その二人が搭乗した場合に関しては、予想すらしていなかった。
「…いいわ、許可します。ただちに出撃、頼むわね?」
- 11 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:14:09 ID:???
- …そういえばミサトさんどうしたんだろ)
自身を吹き飛ばした車の運転手であったとは予想だにしていないシンジ。
その彼女の乗る車は、N2の爆風で転がったまま荒地で放棄されていた。
さすがに一人では横転した車を戻せなかったため、適当に放置されていた車を接収して本部に向かっては居たが。
「いい?レイ、シンジ君。発進時に強い衝撃があるけど我慢して頂戴ね?」
巨大な初号機が立つ拘束具ごと、電磁カタパルトへ移動して行く。
ふと上げた視界にはいる鉄骨フレームに刻印された文字。
アルファベット三文字の企業のマークが誇らしげに見える。
(…日本製なんだ…)
それを知って少し安心したシンジ。
かの国の大規模建築の評判は悉くが地に落ちている。
某南方の諸島国家に造られた某国企業による橋は、完成当初から橋梁の中心部が今にも落ちそうだと言う住民の苦情で持ちきりであった。
事実、完成から数年して崩れ落ちたのは厳然たる事実である。
他にもある。
完成時世界一と言われた某ツインタワービルは、片方が日本の、そうしてもう片方がkの国による建築であった。
テナントが入るのは、日本企業による片方の建物だけで、もう片方は皆無と言う噂が流れた。
なぜならkの国企業が手をかけた建物は、約1度傾いていた、と言うのである。
関係省庁から入居の許可が下りなかったとも言われており、そんな話しをシンジは養父から何度も聞かされていた。
シンジの養い親は、kの国が大嫌いで、それ以上にゲンドウが大嫌いであったとか。
「いいかいシンジ君。使徒の背後に上げるから、肩に装備してるナイフで接近戦、よろしく」
眼鏡のオペレーターにそう声をかけられ頷く。
何故か副司令の冬月しかいない発令所最上段を見上げ、出撃の最終確認をする眼鏡君。
頷きで答える冬月に、再びシンジのモニターに向き直る。
「じゃあシンジ君、任せたよ」
そう言って発進の秒読みを開始する。
ホント、前のときとは大違いだなと急遽取り付けられたタンデムシートに座るレイと視線を合わせる。
前の時はいきなり打ち出されたよね、なんて思いながら。
- 12 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:14:35 ID:???
- 呆気ないほど簡単に決着は着いた。
レクチャーをきちんと受けていたのが幸いしたと、戦闘後のデブリーフィングでシンジは語った。
あまりにも鮮やかな戦闘に、各方面から様々な質問が飛び交ったが。
思考コントロールなどと言うものを実際使用した人間などは皆無であったため、シンジが
「漫画で見たロボットの動きを思い浮かべたらその通りに動いたんですよ」
という言葉に、誰もがそう言うものなのかと納得するしかなかった。
しかし、その言葉に食いついてきた人物が一人。
今時恥ずかしいぐらいのロン毛の男性オペレーターであった。
「なんていう漫画だい?ソレともアニメかな?ここ数十年のヤツなら大抵記憶してるんだけど。勿論日本のだよね?」
その彼は、母国産のアニメなんてクソだと言い切っていた。
「ウチの国のアニメは全部日本のパクリさ。アレもコレもソレもドレもコレも、ね」
マジ○ガ−Zのパクリ、テ○ンV。
マク○スのパクリ、スペー○ガ○ダ○V。
ポケ○ンのパクリ、パワ○ン。
鉄○アトムとミッ○ー○ウスを足して二で割ったアト○ウスなどなど。
枚挙に暇が無い。
そういわれて悩むシンジ。
適当なアニメが思い浮かばないのだ。
剣を使うロボットなら兎も角、ナイフとなると…。
引きこもってはいたが、アニメにのめり込んではいなかったシンジには難問であった。
暇があればチェロを弾くかS−DATでクラシックを聞いていたのだから。
と、横の席に静かに腰掛けていたレイが口を開く。
「多分、鋼鉄の狩人。長谷川先生の名著」
なんでそんな事知ってるの?と目を丸くするシンジ。
「…暇潰し。他にすること無かったから」
レイは身を隠す際に暇に飽かせて漫画に没頭していたと言う…。
その言葉を聞いて面食らったのはロン毛のオペレータ氏。
「おおっ!長谷川の御大かぁ。中々いい趣味してるね、うん。長谷川漫画に外れ無しってね」
そう言って演説するようにあーだこーだと二人に語りかけてくる。
巨大ロボットはロマンだよ、などと。
どんどん話の方向がそれていくのを唯一リツコだけが溜め息をついて飽きれていた。
- 13 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:14:58 ID:???
- 「えっと…もう片付いちゃった?」
そんな中、やけに明るい声で入ってきた女性が一人。
葛城ミサトである。
「…遅いわよ。どこで何してたの?」
「いやぁ、車が故障しちゃったのよ。天下のヒュ○ダ○の癖に、肝心な時に壊れるんだから」
○ュン○イだからこそ、壊れたんじゃないの、とリツコは口に出さずに呟いた。
「で、何の用?作戦部の仕事はもう後始末だけよ?」
腐れ縁のこの悪友に、露骨に嫌な顔を見せるリツコ。
「ケンチャナヨ!結果的に倒せたんだからいいじゃない」
作戦前の大事な時に、面倒ごとが嫌だからと言って部下に押し付けて楽な出迎えに進んで出かけて行ったミサトである。
相手をしても時間の無駄と割り切ったリツコがシンジに向き直る。
「そうそう、シンジ君?これからの住まいなんだけど…」
「ええっ!来てんの?いつの間に?」
無視しようとしたのに割り込んでくる。
「…自力でここまで来てくれたわ。わざわざ歩いて、ね」
ちくちくと刺さるはずのリツコの言葉をミサトはまったく意に介さない。
「アンタ!この私が迎えに行ってあげてるって言うのになんで予定の場所にいないのよ!」
逆に自分が遅れたことを棚に上げて切れる始末である。
「アンタを迎えにいったせいで車はもうボロボロ!謝罪と賠償を(ry」
ゴス
シンジの襟首を掴み上げようとした瞬間、ごついマニュアルの束がミサトの後頭部を襲う。
「いい加減にしなさい。貴方に代わりはいても彼の代わりは居ないのよ!」
そう言い捨てて再び話しを戻す。
「あ、の」
生きてるミサトを見て、少し心が和んだシンジであったが、いきなりの行動に面食らっていた。
「ああ、良いのよ。いつもの事だから」
事も無げにそう言うリツコ。
本当にいつもの事なのだとしたら、救い難いことであるが…事実なのであろう。
「で、貴方達の今後なんだけど…」
- 14 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:15:18 ID:???
- 結局シンジとレイの住居はリツコの自宅となった。
ミサトがシンジとの、ゲンドウがレイとの同居を求めたが、その裏に見え隠れする…というか丸見えなのだが、欲望に満ちた意思があったためシンジが拒絶したのであった。
「父さんのところに綾波を預けたら何されるかわからないですよ、ね?」
その点に関してはリツコは激しく同意。
即座にゲンドウの申請を却下した。
「葛城さん、でしたっけ。僕、見ず知らずの人と暮らせるほど神経太くないですから…」
ソレも確かにコレまでのシンジの行動報告から納得できる意見だった。
パイロットの精神安定は重要であるという視点から、コレもまた却下された。
「私は殆ど本部に詰めてるから、好きに使ってちょうだい」
そう言ってカードキーを渡されたシンジである。
「うわあ…」
「…広い」
郊外にぽつんと佇む一軒家。
広い敷地内に余裕を持って建てられた、質実剛健な重量鉄骨外断熱パネルの邸宅であった。
「…日本製、かぁ」
玄関のドアの片隅に貼り付けられた製造責任のプレートが目に入る。
国粋主義者の多いkの国には珍しいことである。
カードを通すと、重厚な扉が無音で滑らかに開く。
レイを促し玄関をくぐる。
「…えっと、扉を閉めたら、っと」
入って直ぐのところのカードリーダに再びカードを通す。
『それで家の監視機構がフル稼働するわ』
そうリツコが言っていたのを思い出す。
(…そこまでしなくても大丈夫だと思うけどなぁ)
未だ甘い考えのシンジをよそに、レイが早速モニターを覗く。
「…敷地内に動体反応多数」
ぼそっと呟いたレイに、ぶんっと首を向ける。
「まさか…」
着いて早々?と大粒の汗がシンジの後頭部を流れるのだった。
- 15 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:15:33 ID:???
- 外部設置のカメラを起動するレイ。
「…よ、よくわかるね、操作方法…」
本当は操作してる振りだけである。
カヲルのように視線を向けるだけであらゆるプロテクトを突破することも可能であるが、ソレをするとシンジに引かれてしまうかもしれないとの思いからである。
すると静かにどこからか音楽が流れ始める。
ワルキューレの騎行。
「…最終防衛ラインを超えたわ」
警報の代わりであろう。
明らかに何らかの意図を持って不法侵入している、と告げているのである。
リツコに聞いたとおりの操作を始めるシンジ。
「えーと…」
モニター横のキーボードのファンクションキーを押す。
画面の中に写る、建物を示すアイコンの周囲を青い光点が包む。
その上に侵入者と思われる赤い光点が重なった瞬間。
鈍く響く音が幾つもシンジ達の耳に届いた。
外部を写すモニターの中で、地面から吹き上げられた赤い何かを浴びた男達が、大げさに悶えていた。
「…馬鹿げているのも程があるわ」
シンジら襲撃さる、の一報を聞き、慌てて自宅へと足を向けたリツコ。
自宅にたどり着いたのは、リツコが個人的に雇っている日本企業資本の警備会社の警備員が捕縛した連中を引き渡しているところであった。
警備の者によると、侵入者は手に手にバールのようなものや、鉄パイプのようなものを所持し、火器を携帯している者はいなかった。
が、しかし。
侵入者が手練だったのがその手口からわかる。
いたるところに張り巡らされていた侵入者対策の、その事如くが破られたいたのである。
最後の最後、あと数歩という所で、冗談で仕掛けた超熟成キムチ地雷が見事に炸裂していた。
襲撃者のうち幾人かは失明するかも、との事であるが。
明らかに襲撃目的である以上、同情の余地など無いのである。
- 16 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:15:51 ID:???
- 同情の余地など無い、はずなのであったが。
翌日。
襲撃を何とか防ぎ、ゆったりとした気分でこれからの事を考えていたシンジ。
次の使徒の倒し方や、それ以降の事。
もう一人の、パイロットの事、などである。
と、玄関のチャイムが鳴る。
シンジの傍らで本を読んでいたレイが立ち上がる。
「…はい」
リビングの壁に備え付けられている受話器を取り、声を発した瞬間。
「朴(仮名)の弁護士の金(仮名)と申します。昨日の件に関してお話が…」
…昨日の、と言うことはあの襲撃の件しか思い当たらない。
弁護士を通して示談に、ということなのであろうかとついつい招き入れてしまったのである。
「…あの、それでお話というのは」
リツコが不在のため、自然とシンジが対応するハメになった。
レイには無理だろうとのシンジの考えもあったが。
名刺を差し出しながら、開口一番こう言った。
「ええ、先日こちらにお伺いした朴(仮名)が、何もしていないにも拘らず酷い暴行を受けたと申しておりまして、謝罪と賠償を…」
ハァ?
シンジの今の心境は、まさしくこの一言に尽きた。
夜陰に乗じて忍び寄り、無断で敷地に入り込んだ上に、設置してあった各種の機器を破壊した上にどの口がそんなことを言うのかと。
どう言葉を返せば良いのかと逡巡しているシンジに、弁護士を名乗る男は尊大な態度でふんぞり返っている。
そんな折、手にしていた本を閉じ、見下すような視線で弁護士を威圧しながら言葉をつむぎ始めた。
「…貴方、お名前は?」
「…?金(仮名)と申しますが?」
「そう。じゃ、何故弁護士バッジをつけていないの?」
普通、弁護士を名乗る人物は弁護士を示すバッジを身につけている。
それが無いということは疑ってしかるべきである。
「そ、それは。今日は偶々忘れてきたのだ!」
「…じゃあ、貴方の【修習期数】と【登録番号】を教えて」
淡々と攻め込むレイに、段々と顔を真っ赤にしていく自称弁護士。
- 17 :転載初号機 ★ :05/09/09 21:16:10 ID:???
- 「わ、私を疑うのか!私はれっきとした弁護士だ!」
「そう。なら早く教えて」
「くぁwせdrftgyふじこlp;!!」
一気にテンションが沸騰した自称弁護士が立ち上がりワケの解らない音を出す生き物に変わる。
「身分詐称は、特に弁護士を偽るのは犯罪」
掴みかかってくる男の手をするりとかわし、派手にすっ転ばせる。
「…器物損壊も追加」
落ち着いた表情でそう呟き、リビングの大きなガラス窓を開く。
立ち上がり向かってきた自称(ryを手も振れずに再びすっ転ばせる。
その行く手には、庭へと開かれた空間。
そしてその庭先には…。
飛び出した瞬間に窓を閉める。
次の瞬間、レイの視線が壁のモニターを睨んでいた。
バム、と響く重低音。
窓の外、金(仮名)は、昨夜の朴(仮名)同様の末路を歩むこととなったのである。
「あ、綾波。凄いね、あんなふうにあしらえるなんて。ありがとう、助かったよ」
惜しみない賛辞を上げるシンジ。
「…ど、ういたしまして…」
シンジの言葉に思わず照れてしまうレイであった。
「…警備会社に連絡してくるわ」
照れ隠しなのか、パタパタと電話口に駆け出す。
そんなレイの後姿を見送りつつ、先ほどレイがテーブルに置いていた本が目に付く。
「綾波、何読んでたんだろ」
カバーのかけられた、割と分厚い本である。
悪いかな、と思いつつ開いたその本のタイトルは。
「嫌韓流…」
_| ̄|○ ガクッと肩を落とすシンジであった。
- 18 :転載初号機 ★ :05/09/10 03:55:07 ID:???
- 「あ、あの、日本から親の都合で転校して来ました、碇シンジです。よろし…」
言葉の途中で一斉にブーイング。
自己紹介もクソも無い。
日本から来たという時点で早くも敵認定されているシンジであった。
碇シンジ14歳、中学二年生。
挫折感で一杯の夏の朝だった。
シンジの次に挨拶するレイ。
こちらは物凄く好意的に受け入れられた。
授業中だというのに既に言い寄ってくるものまでいる始末。
いつもの調子で軽く無視する。
(綾波、もうちょっと人当たりよくなろうよ)
などとシンジの心は冷や汗でびしょぬれである。
しかし、ここkの国では下手な愛想笑いなどしないほうがマシなのである。
「俺ににこやかに笑いかけてくるということは、俺に気があるに違いない!」
と言う短絡思考がデフォルトなのである。
転校して数日後。
「おう転校生。ちょお顔かせや」
授業中に遅刻してきたジャージ姿の男子が声をかけてくる。
(…ココは前のときとおんなじかぁ)
などと思って立ち上がろうとしたシンジ。
しかし、いきなり切れたように罵られる。
「お前ちゃうわボケ。そっちのお前や!」
相変わらず無表情なレイが、視線を落としていた文庫本から顔を上げる。
「…何?」
「何やあるかい。顔かせいうとんのや」
何を言っているのだろう、と言う顔でシンジのほうを見るレイ。
「…ちょっとついて来て、って言う意味だよ」
どうやら顔を貸せという言葉の意味が解らなかったようで。
以前なら、そのまま無視して読書を再開していたであろうレイが、意外にも立ち上がりジャージメンの後に続いて教室を出る。
- 19 :転載初号機 ★ :05/09/10 03:56:42 ID:???
- 「…はっ!前の僕みたいに綾波が殴られちゃうんじゃ!?」
大分遅れてそのことに気がついたシンジ。
一目散に屋上に駆け上る。
屋上へ出るドアの手前に、眼鏡をかけたカメラ小僧が一人、しゃがみ込んで外を窺うようにファインダーを覗いていた。
(…何してるんだろ…)
屋上に出る扉はこれ一つきり。
生来の気の弱さゆえに、なにやら集中している様子の眼鏡君に声をかけることが出来ず、彼の頭越しにレイの姿を探し始めた。
(…居た)
向かい合った、ままなにやら一方的に男子が喋りまくっている。
内容は自分がいかに喧嘩に強いか、クラスを締めているのは自分だ、などなど、嘘が七分に事実が三分、と言った感じの自画自賛の言葉の羅列であった。
対するレイは、どこ吹く風と聞き流している。
しばらくして、いい加減時間の無駄と思ったのか、「さよなら」とだけ言い残して立ち去ろうとした。
「どこ行くねん。わしの話はまだ終っとらンやろが!」
声を荒げてレイの肩を掴む。
「…興味ないもの」
ファッビョーーーーーーーーーン
「俺がこれだけ気に入ったんだから、お前も好きになるはずだ!」
…ハァ?
レイはおろか、覗いていたシンジですらも思考を止められる。
勢いづいた彼は、肩を掴んだ手にそのまま体重をかけ押し倒そうとした。
その瞬間、シンジの下方でレンズを向けていた彼が、録画を開始。
同時になにやらズボンのチャックまで下ろし始めた。
「うわ!なにを!?」
思わず声を出してしまったシンジ。
眼鏡の覗き魔も、集中していたため気がついてなかったシンジの存在に予想以上に驚いたと見え、カメラを放り出して階段を駆け下りて行った。
「…っって呆けてる場合じゃないや。綾波!」
慌てて屋上へと飛び出したシンジが目にしたのは、股間を押さえてうずくまるジャージ姿の男子と。
駄目押しにもう一撃入れようと、美しいおみ足を高々と後方へと振り上げているレイの姿であった。
- 20 :転載初号機 ★ :05/09/10 03:57:01 ID:???
- 「婦女暴行の常習だったなんて…」
「ええ、気に入った相手、気に入らない相手、それも男女問わずに押し倒しては乱暴をしていたそうよ。覗きをしていた子と組んで、ね。今回までに何人もそうしておいて、撮った映像を盾に脅していたそうよ」
冷静にそう告げるリツコの言葉に、シンジはなんとも言い難い表情で、あらぬ方向を見つめていた。
レイの渾身のケリは、子孫繁栄の能力を消去するその直前に、彼女の携帯電話の呼び出し音により止められた。
「…マナーモードにしておくべきだったわ」
使徒襲来による呼び出し、と告げてからポツリとそう呟いたのが耳に届いた。
彼女が身を隠していた間の苦労の一端が垣間見えたような、そんな言葉であった。
使徒戦自体は前回同様、レイをタンデムシートに載せての接近戦。
武装に出てくると思ったパレットライフルは、開発が遅れに遅れて未だ試射もママなら無いのだという。
それを聞いて、実に安心と言うか、心が落ち着くシンジ。
命令通りに動けといわれたら、パレットライフルの効き目のなさをどう伝えようかと悩んでいたのである。
地上に出た瞬間ナイフを装備しいきなりダッシュ。
使徒が水平移動から立位に移行する隙を突いて、プログナイフをコアに突き立てて終了と言う、あっけないものであった。
「はぁ…帰ろうか、綾波」
作戦済んで日が暮れて。
ネルフの公用車でリツコ宅へと向かう。
この運転手さん、以前日本に住んでいたという。
「いや、日本の道は走りやすかった。この国は駄目だ。まったくなってない」
確かに舗装してそう年月のたっていないはずのこの迎撃要塞都市の道路のいたるところが歪んでいるように思える。
「運転している連中もデタラメだしね…。二人とも気を付けなよ?青信号だからって油断してると車が突っ込んでくるからね」
恐ろしい速度で追越をかけていく車がその話の間にも何台も…。
さすが人口は日本の三分の一程度のわりに、交通事故死者は同じくらいなだけの事はあるのであった。
- 21 :転載初号機 ★ :05/09/10 03:57:26 ID:???
- 家にたどり着き玄関に向かおうとすると、なにやら怪しげな人物が二人、佇んでいた。
「…昼間の二人」
レイが凍えそうな音質の声でぼそりと呟く。
「あ、綾波。とりあえず何しにきたか聞いてみようよ…」
そんな言葉を無視してシンジの手を掴み、一目散に家の中へと駆け込むレイ。
寸でのところで彼らを締め出すことに成功した。
「あ、綾波?」
「碇君。彼らに甘い顔をしてはダメ」
そう言い切って玄関をどかどかと蹴り叩く二人の画像を見せる。
「彼らのスタンスは日本人のメンタルからは計り知れない」
そう。
レイの言うとおりである。
「チョッパリのくせに謝りに来たった俺らに何も挨拶せえへんってどないやねん!」
これまた、ハァ?な言い草である。
「…しっかりして碇君」
_| ̄|○ モウナニモシンジラレナイ。
↑こんな感じのシンジに優しく声をかけるレイ。
外では未だにウダウダと二人が騒いでいる。
いつしか話が脇にそれ、差別だの日本が昔半島を占領していたせいで、とか色々と口にし始めていた。
「ほ、ほら、彼らのせいじゃないんだよ。今まで色々あったから誤解してるだけなんだよ」
それでもちょっと頑張って立ち上がろうとしたシンジにレイがこれまた優しく、しかしきっぱりと言った。
「差別と区別は似て非なるもの。それに日本の半島支配は当時の国際法上何も問題なく行われたものよ」
「そ、そうなんだ」
シンジにとって初耳なその話。
日本の歴史教育の賜物である。
「そう。当時の日本は、他のどこの国もしないような事をしたの。植民地として支配するんじゃなく、日本国と併合したのよ」
「それってどう違うの?」
外の様子をチラチラ見ながらレイの言葉を待つシンジ。
「植民地とは搾取するための土地」
ウンウンと頷くシンジ。
「その定義から言えば、半島にかけた資金は回収することなど考えられないほどの金額だったの」
- 22 :転載初号機 ★ :05/09/10 03:57:40 ID:???
- 鉄道の敷設。
道路の舗装。
スラムの軽減。
それに何より、である。
併合後の人口増加率を見てもらえばわかる。
併合していた間の35年間で、二倍に増えているのだ。
「それに、同じ日本国民としての立場も与えられたの。日本国朝鮮地区として」
他国ではありえないことである。
「でも・・・」
と、外で声高に叫ぶ内容にも意識がむく。
「日本が占領しなかったらもっと繁栄していたはずだって言ってるけど…」
「ありえないわ。あの当時、日本が併合しなかったとしても、不凍港を欲していたロシアによって占領されていたはず」
もしそうなっていた場合…
赤い旗の巨大な国によって、半島はそれこそ真っ赤に染まっていたであろう。
キムチ色ではなく、血の色に。
「…」
「それに、併合前の都心部の写真と併合後の同じ視点から見た写真があるわ」
そう言って自室のパソコンを立ち上げる。
「ほらここ」
そう言って指し示す画面には…。
ttp://photo.jijisama.org/image/index.jpg
見事な違いである…。
「大体において、彼らが論議の最中に話がそれてくるのは自分に都合の悪い方向に向きかけたときか、ヒートアップしすぎて目の前が見えなくなってきたとき」
要するに、過程はどうあれ言い負かせば勝ちだと思っているのである。
「…kの国の王朝では相手を倍する音声さえあれば勝ちだったらしいわ。今さえ言い逃れることが出来れば、負けた相手は次の日にはもうこの世にいないから…」
判断する王の気分次第で即死刑だったのだと言う。
- 23 :転載初号機 ★ :05/09/10 03:58:02 ID:???
- 「そう言う文化とも言い難い彼らの習慣が今も息づいてるの」
そういい再び玄関へと足を向けるレイ。
扉に手を掛け、振り向きシンジへと告げる。
「…碇君。この国には併合前には無かった言葉があるの」
ん?と首を傾げるシンジ。
「貴方は私が守るから…」
そう言って扉を開け、外敵の排除を行うレイ。
次に手を出したら命が無いと思わせるくらいに徹底的にやらなければこの国の人類は身に染みないのである。
レイの言う、併合前にはなかった言葉…それは。
『約束』
そう言う概念すらなかったのだと言ったら、諸兄らは信じられるであろうか…。
まあ、約束と言う言葉を知っても、それを守ろうとしないのは今も昔も変わらないのであるが。
扉の向こうでアイゴーだのなんだのと叫ぶ声を黙殺しつつ。
次の使徒、どうやって倒そうかと現実的に目の前の現実から逃避するシンジであった。
- 24 :転載初号機 ★ :05/09/10 04:42:05 ID:???
- 「それじゃ、頑張ってね」
零号機に向かうレイに、手を振って送り出す。
零号機の起動実験である。
「…前みたいなことにはならないわ。大丈夫」
心配するシンジに、そう言って実験の成功を確約した。
管制室で見守る心配げなシンジに、モニター越しに柔らかく微笑むレイ。
何も心配は要らないと、告げているような優しい笑みであった。
「実験開始!」
何故かゲンドウが張り切って実験開始を宣言する。
それを横目に見つつ、シンジは(この実験の直ぐ後だっけ…次の使徒)と、気合を入れていた。
実験のシーケンスが進む中、一人ゲンドウが実験ブースへと続く非常口の前にへと歩みを進める。
何してるんだろうとそちらに視線を送った時、オペレーターの女性が叫んだ。
「パルス逆流!信号拒絶!零号機制御不能です!!」
頭を抱えるようにのた打ち回る零号機。
苦しみを誤魔化すかのように壁にこぶしを叩きつけている。
「エントリープラグ排出されますっ!!」
内蔵ロケットで射出された零号機のエントリープラグが天井に当り、そのままの勢いで壁まで走り、燃焼が終了すると同時に床まで落下した。
激しい振動が襲う中、シンジはいてもたってもいられないとエントリープラグへと駆け出した。
開きっぱなしになっている非常口をくぐると、既に最下層に降りたゲンドウが目に入る。
「…父さん…」
真っ先に駆け寄るのは良いとして、あの瞬間非常口前にいたのってタイミングよすぎ。
時間経過から考えてパルス逆流の報告と同時に駆け出してたっぽい。
肩を落として階段を駆け下りるシンジの耳に、「アイゴー」という野太い声が入ってくるのはもうしばらくの後であった。
「…あの、綾波…さン?」
何故か非常ハッチがヒンジごと綺麗に吹き飛んでいるエントリープラグ。
横でジタバタと両手を押さえてのた打ち回っている鬚の親父を無視してハッチから中を覗き込む。
シートにぐったりと横たわるレイを見て、総毛立つ。
- 25 :転載初号機 ★ :05/09/10 04:42:22 ID:???
- まさか、と言う気持ちが湧き上がる。
排出されきれていないLCLでズボンが汚れるのもいとわずにレイに駆け寄る。
「綾波!綾波っ!」
「…碇く…ん」
震える腕で身体を支え、重い荷物を背負ったかのような緩慢な動きでシンジを迎える。
「よかった、綾波。大丈夫?」
思わず涙でにじむシンジの瞳。
「…また、泣くのね」
「…しょうがないじゃないか、心配したんだから」
溢れる涙を隠そうともせずに、レイを抱え上げる。
「っ!い、碇君」
「よかった、本当に無事でよかった」
思いがけず、予想以上の行動に出たシンジに戸惑うレイ。
一瞬の躊躇の後、自分を抱きかかえるシンジのクビに腕を回し、エントリープラグを出るまでそのままシンジに身を任せる。
未だにのた打ち回るゲンドウを視界から追い出し、見なかったことにすることも忘れずに。
実はこの実験、前回同様失敗を装いレイを盲従させるためのゲンドウの大作戦であったのだが…。
それを察知したレイは、プログラムの改竄を知りつつも、前回の第五使徒戦のシーンを再現しようとそのまま実験を続けたのである。
結果、ゲンドウの穴だらけの計画は大失敗。
ロケットの排熱で熱々に焼けた非常ハッチの手動レバーをゲンドウが握った瞬間、ジュウ、と言う音と共に、キン、と言う甲高い音が内側から響き、吹き飛んだハッチがゲンドウの顔面を直撃したのである。
その後はレイの思惑通り、シンジが駆け寄ってきて自分を救い出してくれた。
しかもお姫様抱っこで。
レイは予想以上の収穫に、暫くの間シンジの顔を見るだけで真っ赤になって俯くことになったとか。
「何故だ。この私の完璧な計画が!危険を顧みず救い出した私に惚れると言う計画のはずが」
…このあたりの精神構造がよくわからない。
ハッチを開ける際の熱さに我慢できなかった時点でもう駄目だろと、両手の包帯を睨みながらぶつくさ言うゲンドウを冷たい視線で見つめるリツコであった。
- 26 :転載初号機 ★ :05/09/10 04:42:44 ID:???
- 「来たね…」
「…そうね。来たわね」
シンジはとうとう来るべき時が来たと腹を括っていた。
レイはと言えば。
ついゲンドウの策略に便乗して「リメンバーどして泣いてるの」作戦を決行してしまった事を悔いていた。
なぜならば。
「零号機は一時凍結。使徒戦が済むまでは何も出来ないわね」
とのリツコの一言で第五使徒戦時のディフェンス役が却下されると言う事態に陥ったからだ。
今更「実は凄く元気です」などとは、物凄く心配してくれているシンジの手前言えずにいるのであった。
「大丈夫だよ綾波。そう心配しなくても」
そうは言うが、実際今回は前回以上に不安要素が山盛りなのである。
何しろ指揮官が彼女なのだ…。
「さぁ来たわねぇ。この優秀な私の能力を持ってすれば使徒なんていちころよ!」
葛城ミサトである。
「初号機発進!」
「なぁっ!ちょっ!!」
いきなりの初号機発進である。
発進前に何か一言ぐらいはこちらに声をかけてくるだろうと思っていたシンジ。
その時に使徒の詳細、せめて地上に出る瞬間を狙われないよう、威嚇射撃くらいしておいてくれと頼むつもりだったのだ。
そんなシンジの気持ちも知らず、と言うか人の事を考えたことなどこれっぽちも無いミサト。
敵の目の前にぽんと放り出し、相手が驚いてる隙にやっつけると言う、非常に素敵な作戦を練っていた。
練っていただけである。
誰にも言っていないと言う弱点があったりする。
一人使徒殲滅後の賞賛の言葉の嵐を想像してニヤニヤしてるミサト。
その周囲でオペレーターたちが大慌てで報告を上げているのを聞きもしない。
目の前の巨大なモニターが使徒の発した光線によってホワイトアウトする瞬間まで、在り得ない未来の夢想に耽っていた。
- 27 :転載初号機 ★ :05/09/10 04:43:00 ID:???
- 「うわぁぁぁぁあああああ!」
帰ってきたシンジ君。
とは言えATフィールドを操り使徒の攻撃をATフィールドで軽く弾いたり、並み居る大人たちを押しのけて作戦を立てるなどという超天才になったわけでもない。
ただ単に使徒の出方を知っている、ちょっと怪我の直りが早いだけの中学生である。
初号機が超高熱であぶられていても拘束具を破壊して脱出するなど出来はしない。
なのでスピーカーから漏れて来る『このアタシが避けてといってるのに何故避けないのよ!!』
と言う無理難題を聞きながら暗い闇の世界に沈んでいくのであった。
「…チョッパリのガキなんかにはやっぱ無理な話だったのかしら」
イヤイヤ違うだろと、発令所のオペレーターたちが揃って心の中で突っ込みを入れる。
ちなみにチョッパリとは「豚の足」と言う意味である。
日本の「足袋」が、豚の蹄のように二つに割れているのに準えて差別的な意味でこう呼ぶ。
在日朝鮮人を揶揄する際にはこれに半分を意味する「パン」を付け、パンチョッパリと蔑称で呼ぶ。
何かにつけて差別だなんだと叫ぶ彼らこそが、差別用語の達人というあたり、国民の民度の差というものが浮き彫りになる点であろう。
ミサトの指示を待たずに初号機を下げる日向。
それに気が付いたミサトは叫びを上げる。
「ちょっと!なに勝手に初号機下げてんのよ!」
「いや、しかし…」
「何するにしても私の指示無しに勝手なことするんじゃないわよ!」
あのままではシンジまでもが煮込まれるどころか黒焦げになってしまう。
咄嗟の日向の判断がなかったらミサトはレイのATフィールドで細切れにされていたことであろう。
「…気を利かせたってのになんで…」
涙目になりそうな日向を尻目に、ミサトは次の手を考えていた。
非常に迷惑な話であるが。
- 28 :転載初号機 ★ :05/09/10 04:43:17 ID:???
- 「使徒のATフィールドを超高出力の武器で中和せずに殲滅する、だと?」
大威張りで胸を張るミサトが提出してきた作戦立案概要を一瞥して投げ捨てる冬月。
「なっ何を!せっかくこの私がくぁwせdrftgy!!」
プス
叫びだしたミサトの首筋に、怪しい液体の入った注射器が突き刺さる。
がっくりと崩れ落ちるミサトの影からレイツコが現れる。
「…良いのかね?仮にも友人なのだろう?」
「ええ、平時であれば多少の無理無茶は容認しますけれど」
平時で無い今は容認しないと言うことか、と苦笑する。
「彼女の提出した案、即座に却下されてましたけれど…どのような点で?」
性格に問題はあるが、実務にはそれなりの成績を残してきているミサトである。
…実力かどうかは別にして。
「見たまえ」
そう言ってリツコに見るように促す。
パラリパラリとページをめくり、何ページ目かにたどり着いた時、眉を顰めて溜め息をついた。
「…日本の戦自から兵器の接収、その上半島全域から電力をかき集める、ですか」
使徒戦となれば国内はもとより他国に対しても戦時徴用という形で何とか調達は出来るだろう。
日本の技術力は半島ネルフ本部としても垂涎の的なのだ。
「そうだ。件の武器に関しては分解して空輸と言う形で何とかならんことも無い。電力の方も効率を無視して全力運転すれば、国内の発電施設で賄えるだろう。しかしだな」
そう言って疲れたように眉間を押さえる。
「こんな大規模な作戦をたかが半日で行えると思うかね?しかもこの国で、だ」
恐らくは人的な要因も去ることながら、物理的に不可能であろう。
「…そうですわね。そもそも器材の調達さえ満足に行えないと思いますわ」
予定の電力をここまで引いてくるための配線、変電器材、その他諸々。
そんなに大量の器材が今要ると言ってすぐ調達できるわけも無い。
国内はセカンドインパクトで疲弊して以来、この迎撃都市周辺以外は復興さえ覚束無いのだから。
それに、器材がそろったとしても、作動不良が何割出ることやら。
どちらもが現状を他の誰よりも把握しているのであった。
「…二人の様子を見てきますわ」
「…ああ、頼んだよ」
- 29 :転載初号機 ★ :05/09/10 04:43:29 ID:???
- 二機のエヴァ、多少無理をしてでもそれをどうにか稼動する域にまでもっていかなければ勝機が無い。
今更ながらに責任者の責任感の無さに深く溜め息をつく二人であった。
「…私の作戦、そんなに無理多かったかしら…」
リツコを怒らせると自分の手には負えないと知っているミサト。
機嫌の悪い時は常に下手に出るのであった。
「無理というよりもね、ミサト?物理法則を曲げないでちょうだい」
とてつもなく楽観的なミサトの計画を指摘する。
作戦に必要な物資は、現在国内にある器材全てをもってしても足りない。
その上全てが完全にスペック上の最高効率で運転できて、しかも電力ロスさえ考えていなかったのだ。
「…その辺はケンチャナヨ…」
「無理に決まってるでしょう!」
まったくもって自分より強いと一度でも認識してしまった相手には頭が上がらないのであった。
「…碇君…」
別に自分は入院する必要は無かったのだが、シンジの心配げな顔を見ると拒むことなど出来なかった。
しかし。
怪我の功名というべきか、レイの病室に、シンジが運ばれてきたのだ。しかも、シーツの下は全裸で。
ほぅ、と生温かい溜め息が出てしまう。
先ほどのお姫様抱っこの余韻も覚めやらぬ中、こんな姿のシンジが隣のベッドで横になっているのであるからして。
(…心拍数上昇、アドレナリン分泌…興奮?私興奮しているの?)
いやいやいや、それどころじゃないですから。
「…うっ」
レイがシンジのベッド脇に立ち、その汗ばんだ額に手を乗せようとした時シンジがうめき声を上げ目を覚ました。
「…碇君、大丈夫?」
一瞬止めた掌をそのままシンジの額にあてがう。
「…綾波?そっか、使徒の光線で…」
言いながら起き上がろうするシンジを押しとどめる。
「寝ていて。まだ時間はあるわ」
「…ん、そうする。ごめんね綾波…」
そう呟いて再び眠りに付くシンジの柔らかな前髪をなでつけながら、レイが呟く。
「…約束、守るから」
- 30 :転載初号機 ★ :05/09/10 04:43:50 ID:???
- そんな二人の様子をドアの隙間から眺めて、微笑ましさに笑みを浮かべてその場を離れようとするリツコ。
「…ミサト?それ以上ドアを開いたら明日が迎えられなくなるわよ?」
「いやねぇ、そんな事するわけ無いじゃないのよ。ささ、行きましょ行きましょ」
…ちょっかい出す気満々だったわね、とリツコは内心この状況を見ない作戦担当を真剣に罷免したくなってきていた。
パイロットのメンタルは、シンクロ率の非常に反映するのだ。
もしミサトが詰らないちょっかいでもかけてシンクロ率が落ちたら勝率に関わってくる。
まあ、もしそんなことをしでかしたら使徒に負ける前に自分の手で明日を迎えられなくしてやろうとこっそり思うリツコであった。
「…これ投げつけるんですか?」
「ええ、今のところ他に手が無いの」
前回であれば初号機も零号機も整備され、再出撃可能になっていた上に盾に戦自からかっぱらって来た陽電子砲、そして全国から無理矢理奪った電力という無茶苦茶な、しかしネルフの本気が伝わってくる一大作戦であった。
しかし今回のこれは…。
「…ほんとにいいんですか?怒ってくる人いませんか?」
「ええ、大丈夫。もう一人も残ってないから」
それを聞いて複雑な心境のシンジであったが、他にやりようも無いとの事であるしと納得することにした。
「山の向こう側に出します。その後、レイが牽制、敵の攻撃がそちらに向いている間にシンジ君が投擲、いいわね?」
砲撃している最中はATフィールドが張られていないだろうという理由からこの作戦が決められた。
「下手なエネルギー兵器よりも単純な質量兵器よ」
とはミサトの言。
時折芯を突いた意見を出すのだが、それを理論立てていく能力が欠如しているのである。
補佐としての日向の手腕が生かされるのはこういうときであった。
まあ、「私の完璧な作戦を勝手にいじったわね」などと毎度毎度言うのであるが。
だからと言って成果を譲ったりはしない。
当然ながら失敗は人のせいにするが。
- 31 :転載初号機 ★ :05/09/10 04:44:05 ID:???
- 「始めてちょうだい」
ミサトの言葉を受け、二体のエヴァが起動する。
一機が山の尾根を駆け、使徒の注意をひきつけては山陰に隠れる。
それを狙って攻撃している使徒に対し、もう一機が投擲する。
単純であるが、効果は期待できた。
実際作戦自体は上手くいった。
レイは見事に敵の光線を避けた。
シンジもその瞬間を狙って上手く使徒の中心を貫いた。
問題は、である。
「我らの偉大な将軍様の銅像をあのように扱うとは何事か!」
と、山のような苦情が届いたのである。
「…北の住人はセカンドインパクトの後の混乱期に全滅したはずなのに…」
ファックス、投書、その他諸々の抗議文書が、作戦の事後処理の書類と共にミサトの机の上に堆く積み上げられて、今にも崩れ落ちそうになっていた。
住人のいないはずの北からの苦情。
それらの発信先の殆ど全てが日本からであった事に、書類をどうにか処理したミサトがファビョッたりしたが、それはまた後日のお話である。
「日本でぬくぬくと暮らしてきたパンチョッパリが口出すんじゃないわよ!」
誰にも理解できなかったであろうが、ミサトはこう口にしていたのだと言う。
- 32 :転載初号機 ★ :05/09/10 04:44:31 ID:???
- 「酷いものね」
吹き荒ぶ風の中、立ち尽くす二人。
「…ほぉーんとにねぇ。で、あの山がそう?」
指差す先に、大量のコンクリートで覆われた元建造物があった。
「そ、韓重主導の対使徒用二足歩行兵器組み立て施設の成れの果てよ」
深い溜め息とともに、せっかく手配したアレが無駄になったと声にせずに呟いたりするリツコであった。
「…まさか搭載する前にリアクターをメルトダウンさせるとは思わなかったわ…」
ミサトと共に、放射能防護服を着込んだ姿で韓重跡地の視察に来ていたりするのであった。
『…ウチが動く前にあんな事になるとは予想だにしてませんでしたよ』
電話の向こう、飄々とした口調の男に無言で返すゲンドウ。
『…では例の物、予定通りに』
「ああ、任せる」
また一歩野望に近づいたと一人脳内認定しているゲンドウであった。
- 33 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:34:16 ID:???
- 「…アンタがサードチルドレン?」
そう言ってシンジの周囲をぐるぐると回る、蜂蜜色の髪の毛を持つ少女。
「え、あ、うん。そうだけど…」
「…何やってんの?アスカってば」
意味不明な行動を取るアスカに、呆れ顔のミサト。
「…ちょっとね。色々あってさ」
気が済んだのか、元居た位置に戻り、腰に手をやる。
「本部に行く事になってからこっち、エスコートにって来たのがトンでもないヤツでさぁ」
「…って言うと、どんな?」
「あんな感じ」
そう言って、立てた親指を後方向ける。
そこにはズタボロになったトウジとケンスケが、綺麗に折りたたまれていた。
「すんまへンでした」
「兄貴と呼ばせてください」
先日レイの手により撃退されたトウジとケンスケであるが…。
圧倒的な強さを見せたレイが懐いているシンジを、兄貴認定して事大してきていたのだった。
それをシンジのお友達と勝手に認定したミサトが、今回の弐号機受領に連れてきたのである。
(こうして恩を売っておけば、いざと言う時に役に立つコマになるってもんよねぇ)
などと言う浅はかな考えのミサトであったが。
「うぉ!凄い別嬪さんや!」
「すごいすごいすごいすごい!」
無骨な航空母艦の飛行甲板上に見目麗しい白人系の美少女が現れたのである。
それはもう齧り付かんかのごとく跳びかかって行ったが…。
「いぃぃいいいいやぁっぁああああ!」
激しい拒絶の悲鳴と共に、瞬殺するアスカさんであった。
「はぁ…はぁ…。で、まさかこいつらのどっちかがサードなんじゃないでしょうねぇ?」
地面に這わせた二人を今にもトドメを刺さんかのごとき視線で、ミサトを睨みつける。
- 34 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:34:34 ID:???
- 「…え、あのその。ち、違うわよ。これっ!この子がサードチルドレンの碇シンジ君よ!」
長年軍人をやってるミサトであるが、その根底に刻み付けられた「外人には腰砕け(白人に限る)」スキルは未だに染み付いていた。
で、現在に到るのである。
「それがさぁ、ぱっと見かっこよさげだと思ったらさ?人通りの無くなったところでいきなり襲ってくるんだもん。心の準備ってもんが…じゃなくて、思わず股間蹴り上げて片一方潰しちゃったわ」
「…ふーん、大変だったんだね」
女性にとってのそう言う状況がどんなものかすら想像もつかないシンジは通り一遍の言葉で流そうとする。
「大変なんてもんじゃないわよ!そのあとがさらに凄かったんだから!どう見たってアタシが襲われてるじゃない?それなのに『お前が誘惑してきたからだ!』なんて言い出すのよ?30の男が14にもならないアタシに誘惑されただなんてよく言えたもんだわ!」
その後も集団で再襲撃を仕掛けてきたり、偽弁護士と共に再来訪したり、某人権擁護団体の名を騙って押し寄せてきたりしたのだと言う。
「…あ〜、なんかわかる」
そろそろkの国のパターンが把握できて来たシンジ。
「まぁ?アタシにはずっと監視カメラ向いてるから、証拠には不自由しなかったわ」
思う存分蹴散らしてあげたそうである。
そう言うことかと納得して話しをあわせ始めていた。
「僕もねぇ、こっちに来てから色々あったんだよ…」
先ほどアスカが叩きのめした二人をチラリと見ながら、溜め息をつきつつアイランドに向かって歩き始めた。
「でね、最後にはもう、当の本人はコネ使って逃げ出しちゃっててさ、関係無い奴らだけで謝罪しろとかいってくんの。ばっかじゃないってもう笑っちゃったわ」
ミサトが艦隊司令に冷たくおちょくられていた折に、背後でシンジとアスカは話に花が咲いていた。
艦隊司令のイヤミに、白人相手に切れられない性分のミサトはヘイコラと腰の低い態度で事大してたりする。
背後でごそっと音がし、歳相応の未発達な臀部に嫌な感触を覚え振り向いたアスカの視界に見覚えのある男が現れた。
瞬間。
狭い艦橋入り口目掛けたアスカのドロップキックが炸裂していた。
- 35 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:34:56 ID:???
- 「…何事かね」
何だかんだとミサトをいじっていた艦隊司令。
ファビョる寸前で持ち上げてはまた落とすといった事を繰り返していた。
どうやら慣れているらしい。
いきなりの大技を繰り出したアスカに、訝しげな視線を送る。
「サー!イエスサー。気にしないでください。女性の敵を殲滅しただけであります!」
ピシッと敬礼し、簡潔に状況を報告する。
「…よろしい。その女性の敵とやらの報告は別方面からも聞いている。参謀、MPを呼びたまえ、現行犯だ。…あ〜君たち、もうしばらくかかるので食堂で何か冷たいものでも飲んできなさい」
「アイアイサー!サンキューサー!」
にっ、と口元を歪ませて笑う司令に、笑みを浮かべて退室する。無論シンジも引っ張って。
「…ねぇ、いきなりあんなことして大丈夫なの?」
食堂で司令の名を出すと無料で何でも注文できた。
出てきたコーラを啜りながら、蹴りで顔が潰れてたけど、きっと加持さんなんだろうなぁ、と心の中で呟くシンジ。
前の加持さんはアスカには手を出さなかったのに、こっちの加持さんは手アタリ次第なんだ…と。
「良いのよ!アイツがドイツに来たおかげで何人の女子職員が泣いたことか」
…モテモテで遊び歩いたって感じでは無い。
「無理矢理よ?気に入った女子職員の後つけてさ、酷い時なんか複数で」
もう信じらんな〜い、と叫びだす。
kの国での出来事を話題に、話が弾む二人。
食堂にいた海兵さんたちまで加わって、大賑わいである。
初っ端にシンジに向かって
「k国人がここに何の用だ!」
と怒鳴られたりしたが、日本人だと説明したとたん手の平を返したような扱いであった。
「いや、日本は良い国だ。一番話が通るし、な。たどたどしいながらもどうにか理解できる英語を話してくれるやつも多いし」
「そうそう、kの国なんざ、自身満々で話しかけてくるやつに限って何言ってんだかワカラねぇンだよ。何言ってるかワカランって言ったら切れて暴れだすし」
「俺がkの国に赴任してた時何ざ、町を歩いてたらいきなり赤い腐ったような何かをぶつけられた事があったよ」
「ウチの所属してた部隊の女性はマンションに押し入られてレイプされたって話だぜ?信じられんよ」
などと言う話まで飛び出していた。」
- 36 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:35:11 ID:???
- 英語のわからないシンジ君、一応アスカさんの通訳でどうにか会話に加わっていた。
勤務の交代か人の減った食堂で、ぬるくなったコーラを底まで吸い切った時、アスカが話しを切り出してきた。
「ね、アタシの弐号機見せてあげる!」
加持のセクハラに辟易していたアスカさん、女性のように線の細いシンジに対し、かなり警戒を緩めていた。
当初サードチルドレンによる殲滅報告書に目を通した折には激しく敵愾心を燃やしていたのであるが、ドイツ支部で調べたkの国の事や、kの国に出張した経験のある職員の言葉に、そんな気分もうせていた。
曰く
「奴等の報告書の半分以上は捏造と思え」
「数値に関しては信用するな。良い数字は話半分で聞いておけ。悪い分に関しては、それが優等生と思えるぐらいに覚悟しておけ」
「他人の成果は横取りする。自分の失敗は人に擦り付ける」
「気に入らぬ出来事は全て他国の責任。都合の良い事は全て自国起源と言い張る」
等々…。
参考資料の三分の一ほどに目を通した時点で彼女のkの国観は決定していた。
「…やっぱヨーロッパでも東洋でも、半島はダメだわ」、と。
「赤いんだ、かっこいいね」
何か批評しておかないと、このお姫様は機嫌をすぐ損ねるだろうと経験から熟知しているシンジ。
取り合えず当たり障りの無い言葉で褒め始める。
「日本じゃ赤い色は並とは違うって意味で遣われるときもあるんだ。三倍位凄いって言うことらしいんだけど」
「あ、それ知ってる。1.3倍を読み間違えたって話しのよね?」
何故知ってる!
そうこうしているうちに、やってきました例のアレ。
「水中衝撃波!」
「使徒!」
「アレが?ちゃ〜んす」
とまあ、こればっかりは前回どおりです。
ここに来てシンジ君、自分が大事なことを忘れていることに気が付きました。
(自分のプラグスーツ持ってくるんだったヨ…_| ̄|○)
- 37 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:35:29 ID:???
- 「く、くちィ〜〜??」
「使徒だからね…」
前回同様二人乗りです。
シンジ君、さっさと済ませてしまおうと、シンクロに介入していきなりオセローから足を滑らせて海中に没しちゃってます。
「口開いたんなら飛び込んで、中から殲滅するわよ!」
どこぞの野球漫画の主人公みたいな事を言い出してます、アスカさん。シンジ君も大変です。
B型装備もなんのその、シンジのサポートで、どうにかこうにか水中でも稼動してます。
開いた使徒の口目掛け勢いつけて突進、綺麗に口に収まります。
使徒が手も足も出せないのをいい事に、じっくりとコアをナイフで叩き割り始めたシンジ君たち。
電源切れ前にどうにか砕くことが出来ました。
爆発の衝撃に乗って空母に着艦する事が出来たのはまあ、まぐれって言うヤツですが。
「指揮権渡せって言ってるじゃないのよ!くぁwせdrftgyふじこlp;@:!!」」
そんな中、とうとうミサトさんがファビョってしまいました。
使徒殲滅の火柱さえ目に入って無い様子です。
戦艦自沈させて使徒を撃てとか無茶も言いたい放題です。
「…葛城一尉。戦艦を自沈させるのは良いが…キングストン弁を抜いたからと言って、今すぐ沈むものじゃないぞ?それに主砲の水中発射は不可能だ」
陸戦主体だったミサトさん、艦の事がサッパリわかってなかった様子。
実際自沈させると、一日二日かかるとかで。
まあ普通に魚雷受けても数時間かかるんだしねぇ、完全に沈むのって。
「あら可愛い」
昔懐かしいジープで迎えに来たリツコとレイ。
旧在韓米軍基地に陸揚げされた弐号機と共に、赤いプラグスーツの二人も降りてきました。
とぼとぼと歩いてくるミサトは放っておいて、おかしなペアルックの二人を愛でて楽しむリツコであった。
「…おかえりなさい」
リツコの下でお留守番していたレイ、早速シンジの元に駆け寄ります。
そのシンジの横にセカンドチルドレンが立っているのを認識した次の瞬間、お互いを敵と認定した赤と青が凄まじいオーラを吹き上げたりしますがそれはそれで。
「…なぁ、これどうする?」
「さあ、どうするかなぁ…kの国の子供はどこでも大不人気だからなぁ」
港に打ち捨てられた約2名。翌朝シンジが思い出すまで捨てられたままであった。
- 38 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:35:58 ID:???
- 「なあセンセぇ。こないだの外人、アレからどないなったんや?」
復帰してきたトウジ、早速先日の悪夢(自業自得)の原因に怯えております。
ケンスケは登校さえしてきておりません。
「まったく、見た目とちごうてどえらい乱暴もんやったのう」
ぶつくさ言いつつ庇護下に入ろうと擦り寄ってきます。
「え?ああ…それなら…」
そう言って当のトウジの後ろを指差す。
「…乱暴者でわぁるかったわねぇ」
ぺきペきと指を鳴らしております、アスカさん。
「あ…」
シンジが何か言う前に、作業は開始されてしまいました。
(−人−)ご愁傷サマデス
「トウジが行方不明な間に転入してきたんだよ」
再びズタボロとなったトウジ、机に突っ伏して痙攣しております。
kの国の人に下手に関わると、自分にまでトラブルが舞い込んでくると認識し始めたシンジ君。
それだけ言ってそそくさと離れていきます。
「まったくこの国はどうなってんのよ!」
アレだけ傷めつけてもアスカの怒りは収まらない様子。
「…何かあったの?」
靴箱にラブレターとか、前回以上に酷いんだろうな、と想像はつくシンジ君。
「何かあったのかじゃないわよ!」
シンジの問いかけに叫ぶように噴出す様々な被害の数々。
交際希望の男に言い寄られること数十回。
断ったら切れて怒り出し、粘着質にもほどがあるだろうと言う位のストーキング行為。
更には靴箱に猫の死体、腐ったキムチの詰った宅配便、いつの間に知られたのか、携帯に無言電話まで来る始末。
「あっちの半島の男は一々声かけて来るけど、断ってもにこやかに『気が向いたらよろしくね〜』って感じなのにッ!」
あっちの半島…某ブーツの形の国であろうか。
「…kの国を他の何かと比較するのは、比較対照に失礼…」
いきなり割り込んできたのはレイであった。
「…ファースト…アンタも色々ヤラレテそうね」
- 39 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:36:19 ID:???
- アスカ的には認めたくは無いが、非常に認めたくは無いのだが、彼女の美的感覚から見ても綾波レイは美しいと思えた。
細いがそれなりに肉付きはよい身体、さらりとした色素の極薄い頭髪に、紅い瞳。
それぞれが調和して形容しがたい雰囲気を形作っている。
自分が負けているとは思いたくないが、どちらが希少かと問われれば軍配は向こうに上がるだろう。
「…言いたくないわ」
「…気持ちはわかるわ…」
お互いに深く溜め息一つ吐き、同時にシンジを睨む。
「…な、何?」
その返事に更に溜め息をつく。
「どっちにしても、尻引っ叩く位しないとダメかしらね」
「…そうね」
その日の夕方から、シンジ君強化月間が始まりました。
二人が納得いくまで毎月行われるでありましょう。
「…引越し?」
「そ、引越し」」
アスカは現在ホテル住まいである。
無論ネルフ御用達の高級ホテルであるのだが。
「アスカァ?貴方、下手なマンションよりもホテルの方が安心だって言ってたじゃない」
どういう風の吹き回し?と問い返すミサト。
「どうもこうも無いわ」
ぶすっとした表情で腕を組む。
「従業員が合いカギ使って襲いに入り込んでくるホテルなんかに一秒もいられないわよ!」
「…で、同居ですか…」
「そ、同居」
リツコ宅の空き部屋はまだ余裕があるため、取り合えずということでアスカも同居と相成った。
んまあ
「一番セキュリティーのしっかりしたところっ!」
というアスカのごり押しが効いたのだが。
- 40 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:37:25 ID:???
- 「KDX-Uイ・スンシンより入電、我独島沖にて正体不明の潜航物体発見データ送る」
kの国が誇る駆逐艦である。
その名の元になった将軍は、豊臣秀吉の朝鮮出兵時にゲリラ戦で功をなした、朝鮮史上における最大最高唯一の名指揮官である。
んまあ、秀吉の撤退時に際して無理な追撃戦を行い、味方の主な将を自分も含めて戦死に至らしめていたりするのだが。
ちなみに次期駆逐艦KDX-Vは2008年配備予定であったが、予算の都合と工期の遅延により未だドックで惰眠を貪っている。
「受信データを照合。波長、パターン青。使徒と確認」
本部のオペレーター達が滞りなく全てをこなしていく。
「総員、第一種戦闘配置!」
いつもの姿勢のゲンドウの横で、冬月が宣言する。
流れるような職員の作業に、頷きながら冬月が
「本部の実務担当者に日本人を大量採用して正解だったな」
本部内の主要な職員は日本人に占められていた。
純粋に能力だけで採用したのであるが、k国人の登用はごく僅かであった。
「…ああ」
内心忸怩たる思いのゲンドウであったが、在日時代に本国からの不法入国者の言動を見てきているだけに、冬月の言葉に頷くしかない。
それに、日本人を顎で使うというのも中々、と口には出さないものの、気分が良いのは確かなのであった。
「ぬあんてインチキっ!」
前回同様、突出した弐号機により真っ二つになった第七使徒。
ずるりと一皮剥けて復活、弐号機を吹き飛ばした。
「…やっぱり」
そうなるだろうなとは思って居たが、ほんのちょっぴり、もしかしたら一撃で、何て希望を抱いていたシンジ。
吹き飛ばされた弐号機を追って駆け出した。
- 41 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:37:41 ID:???
- 「援護します」
零号機が威嚇射撃をしている隙に、跳ばされた弐号機が接地する前にシンジの初号機が受け止めて戦線に復帰。
再度攻撃を仕掛け酔うとするが、後方からの指示は撤退。
ですがもうアレです。
指揮官が何言ってるのわからないので無視。
まあ二体に分裂して侵攻してくるので撤退する間など無いのですが。
「アスカは右を!僕は左をヤルから!」
ついつい前回の調子で名前を呼び捨て、肉弾戦を挑むシンジ。
結果としてはアスカの動きにあわせたシンジのおかげで滞りなく倒せたのだが…。
「…あ」
使徒の爆発を屈み込んで耐えた後、レイの呟きに振り向いた初号機に。
自称世界最強の某国空軍機、F15KによるN2爆撃が行われた。
「碇君、大丈夫?」
「あんまり大丈夫じゃない…」
使徒を殲滅した直後で気を抜いた瞬間にN2の直撃を受けた初号機。
かなり装甲がやられてしまっていた。
「どこのドイツよ!戦闘継続中だってのにあんな指示出したのは!」
戦闘を中断させるためのN2だったのであるが、まったく意味が無いどころか下手をすれば味方殺しである。
「大体使徒倒してから落っことすなんて何考えてんのよ!」
もしもの時のためのN2による足止めを予め指示していたのはゲンドウである。
投下時期を連絡するのは現場指揮官たるミサトなのであるが、いつもの調子でファビョっていたので上空待機していたF15kだったのであるが。
使徒の爆発に驚いて投下してしまったのだという。
- 42 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:38:02 ID:???
- 「折角のF15もあんな運用してちゃ宝の持ち腐れよね」
軍事一般も知識として押さえているアスカが不器用な手つきでリンゴをむきながら愚痴をこぼす。
ここはシンジの入院している病室。
どうやらシンジ君、先のN2投下の際、弐号機の盾になってしまっていたようで、全身軽度の火傷で入院中。
アスカさん、身を挺して庇ってくれたと思い、ご機嫌である。
いや、完全に偶然の産物なのであるけれど。
だってATフィールド張る暇なかったし。
「…そうなんだ?」
「そうよ。機体自体は旧式然としてるけど、アップデートの繰り返しで、この国に納入された機体はそれなりに高性能なのよ?…そりゃあフラフラした国策打ち出す馬鹿が指導者してるから、かなりオミットされた装備もあるらしいけどね」
そう、実際この機体が納入決定に到るまでに、kの国では過去に敵性国家としていた旧ソ連、ロシア製の機体の購入を視野に入れていたというのである。
米国としては一応同盟国なのであるから、そんなことをされた日には面目丸つぶれである。
紆余曲折の末、どうにかF15の納入に到ったという。
kの国的には最新鋭のラプター辺りを希望していたらしいが、一機辺りの価格が桁違いの機体をkの国の経済規模で運用できるわけが無い。
オマケに比較的メンテナンス等の容易なF16の運用でさえ、満足に行えていないという噂が流れるkの国である。
高度な機体には、それに伴う高度な整備が要求されるのであるから。
それ以前に米国が売らないであろうが。
kの国の信用は地の底よりも低いのである。
- 43 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:38:51 ID:???
- 801つーかそっちネタなので、もし問題あればブラウザであぼーんして下さいorz
NERV本部の自分のロッカーを空けた途端、大量の便箋が雪崩れるようにシンジに襲い掛かってきた。
「うわぁ…最近、また増えてきたなぁ」
「焼却処分しちゃいなさい、何が入ってるかわかったものじゃないわよ!色んな意味で!」
「剃刀レターが三分で、愛の告白が七分…どちらも、シンジ君にとって危険ね」
実のところ、シンジに対して向けられているこの国の男達の視線は単なる嫉妬と羨望だけではない。
クールなアルビノの美少女と、高飛車な美少女に囲まれて美人研究者の家に暮らす…『姫君』。
イルボンから来た少年の繊細な風貌は、この国の軍に蔓延する悪習に染まった男達にとって
文字通り「垂涎の的」である。よって、手紙の内容も告白というよりは俗悪ポルノの有様。
「ウリにその瑞々しい肉体を預けて頂けば、こののゾンドゥーで真の大韓男児の喜びを…」
「おェ…この国の男はレイプが国技なだけじゃなくてソッチの気まで大流行だなんて…」
「「最低」」『ね。』『じゃないのよ!ライミーだってもっとガッついてないわ!!』
そればかりではない。その線の細い風貌で、三人もの美女と暮らす少年という現状に
『三人もの無敵な美女を征服した性的豪傑』と誤解する、所謂『ネコ・受け』の連中からは
「当方マッチョなバリウケ、シンジ様の熱く逞しい手管で、ウリをオンオン哭かせて頂きたく存じます!押忍!!」
「ファースト…あンた、よくそんな気色悪い手紙朗読出来るわよねー…」
「だって読みあげてあげないと、シンジ君が危機感持てないでしょう?自分自身、貞操の危機に晒されてるって。」
「に…逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだにげちゃ」
シンジを案じての措置が、却ってシンジを違う方向に追い込んでしまっている事に敢えて気付きつつも、
その狼狽振りが可愛くて、ついつい苛めてしまうレイなのであった。
- 44 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:39:22 ID:???
- 「この国の食べ物って、もしかしてBC兵器への転用を前提にしてンのかしらね…?」
「基本的には嗜好の問題ね。実際、ゲリラ戦でのブービートラップには使えるけれど」
「どうして、料理が辛くなくちゃいけないんだろう…」
事実、リツコ宅では侵入者の排除に超熟成キムチを用いて多大な戦果を挙げた経緯がある。
だが、というべきか当然、というべきか、その後の経緯を通じてアスカがキムチに好意を持てる筈もなく、
また大蒜や唐辛子を余り使用しないドイツで過ごしてきたアスカに、この国の料理は口に合わないのだった。
『前』ではミサトのおつまみの残りを簡単な炒め物にする位で、まぁ嫌いではなかったシンジにしても
『こちら』での「キムチ攻勢」にはやや食傷気味であった。
しかし、この国で「辛くない」「衛生的な」「日々食べられる価格の」料理を求めるのはほぼ不可能であった。
セカンドインパクト以前のソウル近郊であれば、アスカから見ても合格点を出せるだけの店もあったのだが、
現時点では殆どの国民が、伝統的韓国料理以外の料理を食べる機会は得られずに居る。
国連軍駐屯地の食堂、あるいは政治家・高級将校用のレストラン以外では、所謂韓国風の料理が主流である。
まず物流の停止により、とにかく保存が利く香辛料満載の料理を国民に行き渡らす事が必要だと政府が考えたこと。
次に、使徒との戦闘状態に入っている状態で、唐辛子を切らすと戦意減退を招くことを政府が恐れたこと。
当座の状況で、国民を使徒との戦いに駆り立てる為の、この国官僚による苦肉の策であった。国民の斜め上加減とは
異なり、何だかんだ言ってもこの国の高級官僚はそれなりに有能なのである。しかし…
「一国丸ごと唐辛子と大蒜でベルセルクにでもしちゃえってのは判ったけど! あたしの食事はどうなるのよ〜!」
…基本的に辛さと大蒜の匂いに極めて弱いドイツ育ちのアスカが、音を上げてしまうのも当然と言えた。
「熊の子孫が熊の皮を被ってバーサーカー…そもそも、元から彼らはケダモノのような気がするけれど」
「綾波…それ、多分全然フォローになってないよ」
リツコがNERV上層部に捻じ込んで、日本からハム、ソーセージ、ドイツパン等を取り寄せるようになったのは、このすぐ後である。
- 45 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:39:55 ID:???
- 「このシンケンとヴルストの充実っぷり、さすが元同盟国よね〜♪」「あ、あははは…」
故郷の味、というかアスカにしてみれば真っ当な食事を久しぶりに摂れた訳であり、
ここの所しおれ気味だったアスカが元気を取り戻して、シンジとしてはほっとしていた。
…翌日、路上で絡んできたチンピラがナイフを抜いた途端、
アスカが完璧な軌道のジャーマンスープレックスをチンピラに決めるまでは。
「パワー全開のこのあたしに喧嘩を売ろうだなんて、100万年早いのよっ!」
薄いブルーの布地が視界に入った事など、当然言い出せる筈もなく。
「ドイツの食品学調理学は世界一…ってあの人なら言うのかしら」
何か予想を上回る異世界に来てしまった事を実感するシンジなのであった。
- 46 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:40:13 ID:???
- 「白頭山の地下でパターン青?」
「はい。日本の地質学研究者が、たまたまその辺りを調査していたそうです。今までに無い異様な反応を検知した、と言う事で学会に発表しようとしていたところを差し止めました」
白頭山
中国と北朝鮮の国境に位置する朝鮮半島唯一といえる活火山である。
ちなみに火口は、無い。
「…どうしよっか」
「どうしようもないわね」
焦るミサトにあっさりと答えるリツコ
さすがに大深度の地下では、どうにもこうにも動きようが無い。
「そんな簡単に言わないでよ。どうにかするのがあんたの仕事でしょう?」
「方針を決めてもらえれば、それに対する技術的支援に力を惜しむつもりは無いわ」
地下の使徒をどう相手するのか、その方策すら立てていない現状では、リツコは行動にうつせないのである。
「やっぱり地下からかぁ…」
「…前の時は、弐号機パイロットが殲滅した」
「そうだね。でも、今回マグマに潜る火口が無いんだって…」
シンジとレイの二人も今回の使徒にはお手上げであった。
「なに?何の話?」
「うん、使徒が地下深くにいるって話。どうするのかな、と思ってさ」
「掘れば?」
「え?」
「え?じゃないじゃない。地下に行かなきゃ駄目なんだったら、トンネルでも何でも掘っていけばいいじゃない、そこまで」
「…って事でぇ。これより作戦を開始します。いいわねアスカ!シンジ君、レイ」
「…はぁ〜い。うう、かっこ悪い」
エヴァ各機、道路工事の人のように、ツルハシとスコップフル装備である。
「アスカぁ?アンタが言い出したんだから、そんなこと言わないの」
「わかったわよ!まったく、エヴァで土木作業させられるとは思わなかったわ」
- 47 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:40:31 ID:???
- 「エヴァで掘る方が早いのよ。それに、使徒といつ鉢合わせになるかわかんないのに、作業する人多いと非難とかで余計に大変でしょ」
確かにそれはそうなのだが、実際には別の理由がいくつか存在していた。
前回までの使徒戦で発生した被害その他、まったく持って異常な位の賠償請求がネルフへ回ってきたのである。
その全てがミサトの元に届けられ、ファビョったのはお約束である。
要するに、「他所の人間使って私の仕事が増えるのは嫌」と言う、ミサトの一存であった。
他にも、「俺達ネルフ勤めのエリートが土木作業なんてやってられない!身体を動かす仕事などは先祖に申し訳が立たない」
などと言ってボイコットする下部組織の連中が多くいた事も付け加えておこう。
下部組織はネルフではなく只の外注企業なのであるが、ここでも事大主義による不都合が巻き起こっていた。
彼らの言う先祖とは、kの国には過去に存在していた両班という官僚階級のことである。
それは朝鮮半島を支配していた高麗、李氏朝鮮時代の文、武官の事で、世襲により受け継がれ、様々な特権を持っていたことで知られている。
また、身体を使う事を忌避しており、仕事だけでなく、娯楽においてもそれをよしとしなかったと言う。
ちなみに現在の韓国人は、ほぼ100%自らを両班の子孫だと力説する。
まあその99.99パーセントは家系図の偽造、捏造なのだが。
朝鮮王朝末期にもなると、両班の階級は金で売り買いされていたため、現在ではどの家系が本当に両班であったかを探る術が無いという。
似たような氏が山のようにあるのもそれに拍車をかける。
おまけにもはや過去に両班であったかどうかを確認する史料さえ残っていない。
残っていても、世界で一番優秀なハングル語のみの文しか理解できない彼ら現代韓国人にはどうせ読めないのだが。
なぜなら当時のkの国において、ハングルは下賎な文字として宮廷内では無視されていたため、全て漢字で記録されているからである。
- 48 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:41:03 ID:???
- 「おかーちゃんのためーなーらえーんやこーら」
「アスカ、なに?その掛け声」
「知らない。こないだ珍しく一生懸命作業してる技術部のおじさんがいたから見てたの。そしたら力仕事する時にいっつもこの歌うたってたから」
何かのおまじないなのだと思っていたのだと言う。
「…まあ微妙だけど…間違ってない、かな」
アスカのお母さん、コアの中からアスカを見守ってやってください。
などとしんみりしてしまうシンジであった。
どっかんどっかんと地面を砕き、地下へと邁進していく三機。
こんなこともあろうかと、とリツコが用意していたエヴァ専用土木器具、“プログレッシブ・シャンツツォイク”でガシガシと地面をえぐり、穴の外へと放り出す。
ちなみに、シャンツツォイクとは、ドイツ語でスコップの事である。
「ねぇ、使徒まであとどれくらい?」
別に自分が汗水たらしているわけでは無いが、やはり延々と同じ操作を続けるのは正直苦痛であった。
「あと、およそ800mほどね。方向は合ってるからそのまま進んで。残り100mになったらそこで止まってくれる?」
「へーいへい」
黙々と作業するシンジ、レイと違い、色々喋くりながら掘り進んでいくアスカ。
じっとしているのも嫌だが、同じ事をだらだらと続けるのも性に合ってないようである。
「あーあ、早く出てこないかしら、使徒。いい加減飽きちゃった」
「…なら帰れば?」
そっけないレイの一言にシンジは思わずレイをたしなめようとしたが。
「…帰んないわよ!やりれば良いんでしょ!やれば」
結構アスカに効いた様である。
つい優しい声をかけようとしたシンジが己の愚かさに肩を落とす。
(そうだよね、そう言う性格だよね、アスカって)
…いや、レイが言うから効くのであって、シンジが言うと蹴り飛ばされるだろうが。
- 49 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:42:07 ID:???
- 「あと150、もうじきよん」
ミサトの気軽な声にやっと終れる、と発奮する三人。
調子よく掘り進むうち、ガツン!と岩盤にぶち当たる。
「いったー。なにこれ?硬いわねぇ」
思いっきり叩きつけたため手がしびれるアスカ。
「凄いね、ヒビしか入ってないよ」
「…そう言うときのためにプログレッシブ・ツルハシがあるわ」
「…色々あるんだね・・・」
「まっかせなさい!」
プログ・ツルハシを大上段に振り上げる弐号機。
その時、ヤケに滑らかな岩盤に、もしやとシンジが気付く。
「アスカ!待って!もしかし…」
「へ?」
ガシュン!
だが時既に遅く、超高速で大きく弧を描き、見事に岩盤に突き刺さるツルハシ。
次の瞬間、三機のエヴァは白い十字の爆炎に包まれていた。
「あ〜もう、何でこんな目にあわなくちゃいけないのよ」
ズタボロの三機がどうにかこうにか穴倉から這い出てきていた。
「…もう良いじゃないか、アスカぁ」
みんな無事だったんだから、とシンジ。
「いつまでもしつこいとバアサンと呼ぶわよ」
「なんでよっ!」
「…計器の設定ミス、ねぇ」
「ま、まあ殲滅できたんだから良いじゃない。被害も装甲焼けただけだしさぁ」
それはそうなのだが、やはりミスの原因ぐらいは知っておきたかったのである。
「…色々有るんでしょうけどねぇ、使徒戦でまでそんなの持ち込んで欲しくないわ」
憤懣やるかたないアスカである。
その矛先は恐らく約一名の男性パイロットに向くのであろうが。
- 50 :転載初号機 ★ :05/09/10 20:42:40 ID:???
- 「…まったく」
ミサトが子供たちの相手をしている間、リツコは測定機器の設定をクリアしようとしていた。
まさか基準点の設定自体が間違っていたなどとは口が裂けても言えない単純なミスであったから。
ふと手を止め、また深く溜め息をつく。
「…どうしてこの国は建物の高さを地上高じゃなく海抜で言ったりするのかしら」
過去に使用された際のログを目にして、さらに気分が滅入ったのである。
そう、kの国では展望台や高層ビルなどの高さを誤魔化すことが日常茶飯事に行われている。
例えば某展望台などは、建物自体の高さは238mなのであるが、海抜265mの高さに立っているため、東京タワーより高いと自慢したりするくらいである。
「そのうちジオフロントも自分たちの先祖が作ったと言い出しかねないわね」
明らかに現在の人類とは別系統の文明の手によるものであるが、kの国はそんなことくらいは気にしないのである。
熊の子孫だし。
- 51 :転載初号機 ★ :05/09/13 08:52:17 ID:???
- 柔らかな日差しの早朝。
自動販売機でドリンクを買い口を着ける青葉。
その名は「メッコール」
日本でも時折、ごく稀に、ごくごく少数であるが、販売されている。
麦茶を炭酸で割ったような、kの国ではどこででも見受けられる缶飲料である。
ちなみにクソ不味い。
クリーニングした制服を取りに来ているリツコとマヤ及び青葉の三人である。
家に帰る暇も無いとぼやきつつ、本部へのリニアを待つ。
そこに滑り込んできた車両には、偶然冬月が居合わせていた。
「あら副司令。おはようございます」
軽く挨拶するリツコとは対象的に、カチカチに固まって上ずった挨拶をする二人。
日本人であるマヤはそれなりに。
しかし韓国人であるロンゲはといえば、一部の日本人に「希少種」と呼称される、所謂“マトモな思考”の出来る得がたい人材ではあるのだが、捻じ曲がった儒教思想が微妙に染み付いたままなため、目上の人間に非常に畏まってしまうのであった。
そんな二人を無視しつつ、話しを弾ませる。
「今日はお早いのですね」
「碇の代わりに上の街だよ」
いつもの事ながら、他人に仕事を押し付けるゲンドウである。
「碇め、昔から嫌な事は全て押し付けおって。MAGIが無かったらお手上げだな」
それほどにゲンドウが手を離している事務仕事は多いのだろう。
まあ、むしろ手がけていないからこそ上手くいっているのかもしれないが。
「そういえば市長選が近いですわね、上は」
「市議会は形骸に過ぎんよ。ここの市政は事実上MAGIがやっとるんだからな」
MAGIがやっていなければ、今頃どれだけの公金横領等々の汚職が多発していたであろうか。
「議会はMAGIの決定に従うだけですか…。まさに形骸化、ですね」
「最も無駄の少ない効率的な政治だとは思うがね」
確かにkの国においては、人が介入できないという点が最良の結果を生み出すと思われるが。
- 52 :転載初号機 ★ :05/09/13 08:52:33 ID:???
- 「停電、かぁ」
ネルフ本部正面ゲートでカードリーダーがまったく反応しない事に、ようやく例の使徒が来たことに気付く。
こんな事なら何か理由をつけて本部で待機しておいたら良かった、と思うシンジである。
「…仕方ないわ。とにかくケイジへ急ぎましょう」
何さくさくと話し進めてるのよっ!っと後ろでワケワカンナイと、ぶつぶつ言ってるアスカさんがいるのはまあご愛嬌。
ちなみに進路相談の電話をゲンドウにする気はまっっっっったく無かったので、途中でいきなり電話が切れて、ハテ?というのは無かったりする。
ネルフ本部
ミサトが珍しく仕事をしていた。
と言っても、部下がまとめた資料をさも自分の手柄とばかりに提出するためにであるが。
エレベーターに乗り、目的階のボタンを押したそのとき、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「いよう、葛城。久しぶりだな」
声を発した男の顔を見た瞬間、ミサトの顔がこわばる。
「か、加持…」
ガタガタと、震える身体。
足に力が入らなくなってくる。
「また、楽しもうじゃないか」
ニヤニヤと擦り寄ってくる加持。
ミサトは悲壮な顔で、何も対処することが出来ないまま、エレベーターの扉は閉じるのであった。
一斉に明かりが消えていく実験管制室。
本部内の大規模実験施設であるが、実験の準備が完了したとたん、いきなり電源が落ちたのである。
リツコが実験開始ボタンに触れるか触れないかのところで起きたハプニングに、普段沈着冷静を旨としている彼女にとっても額に油汗が浮かんでいたりする。
「主電源ストップ、電圧ゼロです…」
報告を耳にしながら、その場にいる全員の視線が責任者のリツコに集中する。
「わ、わたしじゃないわよ?」
ああ、こんな時簡単にファビョれるミサトたちが羨ましい、と思うリツコであった。
- 53 :転載初号機 ★ :05/09/13 08:52:46 ID:???
- 実は彼女、母であるナオコがずーっと研究に没頭していたため、祖母に育てられたのである。
その祖母というのが日帝時代を懐かしく思う隠れ親日派であった。
オマケにその祖母、kの国の人間としては珍しい事に、辛い者がまったく駄目だったのである。
よって自家製のキムチを漬けることが無かったという。
そのため母が研究所に詰めている間、実家での食生活は一般的なkの国のように全て真っ赤な食卓からはかけ離れた実に穏やかな味わいの物ばかりであった。
kの国では宮廷料理として出された事もある、おでんが多かったらしい。
手軽だし。
さらには優秀さが幼いころから認められていたため、ごく早い時期に日本への留学を行っていた。
そこで自国の異常さを外側から見つめなおすことが出来たのである。
「おばあちゃんの言ってたことは正しかった」
昔から事あるごとに耳にしていた祖母の呟きを再認識し、極々まともな精神構造を構築するに至ったのでった。
猫を好きになったのも留学中であったとか。
「駄目です、予備回線繋がりません」
発令所も混乱の最中にあった。
比較的優秀なため(人間としてはどうかと言う意見も有ったが)発令所には少数であるがkの国の方も採用されていた。
だが一部の者が懸念していた通り、kの国人の職員が急な暗闇に恐慌に陥り、何故だか消火器を噴霧したりしやがりましたが、一応これと言った被害も無く収まっていた。
その他の大半を占めるkの国人以外の人たちの非常に穏やかで穏便な手段により、大人しくしてもらうことが出来たのである。
スマキがいくつか出来てますが気のせいですとも、ええ。
そして冬月の指示により、全館の生命維持に支障が出ようとどうしようと、マギの維持に残った電力を供給するように即座に指示が出された。
…少しでも対応が遅れていれば、「取り敢えず俺が涼しくなれば良い。問題ない」と言い出しかねなかった人が居たとか居ないとか。
ちょうどその頃、人様の洗濯物までついでに取りに行かされている眼鏡君が、路上の信号に電力が供給されていないことにようやく気付いていたりする。
数人の職員が無理矢理こじ開けた扉を足早にくぐるリツコとマヤ。
全力を注ぎ込みへたり込んだ職員たちを置いて発令所へと急ぐ。
「7分経っても復旧しないなんて…。ダメコンにねじ込んでやらなきゃ」
- 54 :転載初号機 ★ :05/09/13 08:53:00 ID:???
- そう。
リツコはてっきり本部のダメージコントロール担当の怠慢で復旧が遅れているのだと思っていたのである。
「いつものこととは言え、今回は酷すぎますね、全回線が、なんて」
停電が日常茶飯事なようで、案外慣れているようである。
ここまで酷いのは無かったようではあるが。
「ちょっと、ただ事じゃないの位、考えたらわかるでしょ?3系統ある電源が全部いっぺんに落ちてるのよ?やめてってば!!」
止まったエレベータの中、案の定加持はミサトに襲い掛かっていた。
「やっぱいい胸してるよ、葛城は」
押し倒して服の上から揉みしだく加持。
「い〜や〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
ミサトの悲鳴は、監視カメラの電源すら落ちたエレベーターの中に、空しく響いた。
「そうか、配線のミスなどでは無いのだな?」
てっきり何処かの保守係のミスによる人災だとばかり思っていた冬月。
調べに行かせた者達からの報告は、明らかに破壊工作によるものだと言う。
「…まったく。日常業務は適当なくせに、こういった活動に関してだけは世界トップクラスだな、この国は…」
恐らくは国家情報院の手によるものだろうとアタリを付ける。
古くはKCIAと呼ばれていた韓国中央情報局の現在の姿である。
途中、国家安全企画部などという名称も使われたことがあるが、1999年に改編されたのである。
大統領直属の秘密警察のような活動を行ったり、反国家的な(要は親日的な)HPを開設した高校生を捕まえたり、妊婦を拷問して流産させた上に刑務所に放り込んだりとかなり素敵な活動の噂が流れてくるので有名である。
実情はどうなのかまでは知りませんが。
知りたくないともいう。
その頃kの国に配備されている軍はと言うと。
対地レーダーに正体不明の反応があると言う報告をそのまんまネルフへと送ったのは良いが…。
ネルフがそれを受け取れない状態であることまでは確認すらしなかったのである。
某板のkの国風に言うと「これでウリたちの仕事は終りニダ。後は知らないニダ」って感じである。
- 55 :転載初号機 ★ :05/09/13 08:53:13 ID:???
- のそっりのっそりと侵攻してくる使徒。
それをいち早く確認したはずのkの国駐留の国連軍は、まったく動きを見せない。
まあ動く気が無いのだから当たり前と言えば当たり前である。
前々回とその更に前、使徒にヒドイ目に遭わされたりエヴァをヒドイ目に遭わせたりした彼ら。
だからと言って行いを改めるなどということはしないのであった
何故だか人垣が出来ている交差点。
眼鏡君は市内全域が停電してるこの非常時に何事かと覗き込む。
するとそこでは若い女性が変てこな曲のリズムに合わせ…て無い。
変な曲をただ単にBGMにして、これまた奇妙なダンスを踊っていた。
その後ろには、小型トラックが一台停まっていた。
荷台はベニヤ板で組んだのだろうか、大きな箱状になっている。
その側面は、市議会議員選の候補者名がデカデカと描かれていた。
「…そっか、選挙か…」
実情を知るネルフの職員としては、形骸化した議員選挙などどうでも良かった。
だがしかし、彼等にとってはまさに戦争なのであった。
聴衆の殆どが恐らくはサクラであろうが、スピーカーからは巨大な音量で非常に怪しげな言葉が垂れながされていた。
その内容を要約すると、対抗の候補者がいかに愚かで能力が劣っていて役に立たない人間か、と言う事が有る事無いこと織り交ぜまくってられている。
絶対彼を議員にしてはいけない。
何も知らない人であればそう思い込ませることも出来るかもしれない、こればっかりはkの国発祥の、落選運動なのであった。
「なんだかなぁ…」
一瞬本部への足に徴発しようかという思いが脳裏をよぎったが、後が怖いと思いなおし、見なかったことにして先を急ぐのであった。
「あんた等よくこんなとこ知ってるわね?」
狭いダクト内部を這って進む3人。
今回は暇を見つけては「探検」と称して本部内の色々なところをリサーチしていたため、すんなりと目的の場所に辿り着けそうであった。
まあ探検中にコンクリートの柱がひび割れて、中か大量の一斗缶が出てきたり。
外に繋がっていなければならない筈のダクトの先が、何処にも繋がっていなかったのを発見したりしたが、まあそれは余談。
- 56 :転載初号機 ★ :05/09/13 08:53:45 ID:???
- 「冬月、後を頼む」
「…その個人用エレベーターの電源も落ちとる。一体この状況でどこに行く気だ?」
いつもならばボタン一つで床が沈み、逃げ出せる筈のゲンドウの足元は冬月の言うとおり一向に動く気配はなかった。
「…問題ない」
「…娯楽室のプールにでも行く気だったのか?」
「…この私がそんなことするはずが無いだろう!失礼だぞ冬月!くぁwせdrftgyふじこl!!」
ぷす
「…赤木君」
「大丈夫でした?副司令?」
「あ、ああ」
急に動かなくなったゲンドウとリツコを見比べるように視線を動かす冬月。
素早く白衣の内側に仕舞い込まれたリツコのその手が、何を持っていたのか非常に気になる冬月コウゾウ?歳の夏であった。
- 57 :転載初号機 ★ :05/09/14 21:00:07 ID:???
- 「誰もいないや…」
そろそろケイジだろうとあたりを付け、ダクトから抜け出そうとしたシンジ達。
前のように間抜けな落下は御免被ると、慎重にメンテナンス用の開口部を探して外を確認したのであるが…。
予想していた作業員たちの姿はなく、非常灯がそこかしこでぼんやりと灯っているだけ。
「…取り敢えず出ましょう」
狭苦しさを通り越して圧迫感すら感じる大深度地下施設のそのまた細いダクト内。
レイですら、いい加減辟易としていたのであった。
ボケボケと歩きながら本部へと歩みを進める日向。
もうとっくに遅刻だよなぁ、などと考えながら手にしたクリ−ニング済みの上司の制服を抱きしめていたりする。
と、その時。
ふと視線を上げるとなにやら怪しい細い柱がビルの向こうに見え隠れしているのに気付く。
「なんだ?ありゃ」
もしや停電の原因か?と様子を見に駆け出した。
復旧ルートからの構造推測と目される破壊工作であるが…。
実のところ本部内を解析される心配はなかった。
復旧活動をするべき現場作業員達が、普段の職務怠慢に加え、暑さでさらにやる気をなくしていたのである。
「…本部復旧の最大の障害が自身の職員だとは、やり切れんな」
苦々しく口を開く。
「白丁は所詮白丁だよ、冬月」
白丁とはペクチョンもしくはパクチョン、パッチョンと読む。
李氏朝鮮時代などの律令政治の頃に賤民の中でも最下層に遇されていた者たちのことである。
現在は主に差別的な意味合いでのみ使われる。
しかしお前が言うかね、とゲンドウの言葉を聞き流した冬月であった。
灯る明かりは非常灯のみ。
狭いエレベーター内で事に及んだ加持は、禁煙のプレートなど気にもしないようにタバコに火をつける。
「…けだもの」
涙を流すミサトの言葉に、しかしニヤリと下卑た笑みを浮かべるだけであった。
- 58 :転載初号機 ★ :05/09/14 21:01:04 ID:???
- 「まさか…こんな…」
開けた片側6車線の大通りに出たとたん、それの正体に気付いた日向。
巨大なビルの向こうを通り過ぎて行く、細い足に吊り下げられている半球状の奇妙な物体。
MAGIによるパターンの照合など行わなくとも、あの姿である。
使徒以外なんだというのだろうか。
「大変だ。何とかして本部に知らせなきゃ」
「しかし、こんな時に使徒でも現れたら大事だぞ」
まったく正しい意見であるが、今現在進行形なので笑えない。
混乱は収まったが、原状回復には程遠い。
「副司令、取り敢えず外部との連絡を取るために上に出ようと思いますが」
全て指示し終えたのか、手持ち無沙汰となったリツコ。
「ああ、よろしく頼むよ」
リツコであれば、どこと連絡を取るにしても適役であろう。
「では。行くわよマヤ」
「はい先輩。あ、青葉さん。後お願いします」
各施設からの情報の取り纏めをロンゲに任せ、地上への長い道のりを歩み始めた二人であった。
多機能トランシーバーを手に、曲がり角ごとに中継器を設置しながら。
その中継器は、と言うと、非常に薄く、壁に貼り付けると一見してはそれとは気がつかない形状となっている。
この中継器、工事中の箇所が多い本部未整備地区用に用いられるものであるのだが、以前は箱型で高感度アンテナが露出した、出来る限り安価な物を採用していた。
しかし、触るな、動かすな、と注意書きが書かれているにも拘らず、勝手に移動させたり持ち帰る者が多発したのである。
このスイッチに触れると大変なことになるからねと、どんなに厳重に注意しておいても“絶対に”触ってしまうと言われているkの国の方々には、注意書きなぞただの模様に過ぎないのである。
きっと自爆スイッチ。触るな危険。と書かれていたとしても触るであろう。
何故触れるのか。
それはkの国の方に聞いて見なければ永遠にワカラナイのである。
ちなみに聞いてみても「ウリは知らないニダ!捏造ニダ!」とファビョられる事請け合いであるが。
- 59 :転載初号機 ★ :05/09/14 21:02:23 ID:???
- 所変わって地上。
先ほどの交差点に戻った日向。
消極的な気持ちで満々であるが、使えそうな車両はアレ位であった。
「…うわ」
先ほど迄のテンションもかなりなものであったが、より以上に常軌を逸した言葉使いになっていた。
「その辺の違法駐車車両、直結して使うか…」
近寄る努力さえ放棄して、その場から離れる。
君子危うきに近寄らず。
下手に関わると人生狂っちゃうので気をつけましょう。
いやマジで。
「で?どうすんの?」
「エヴァを動かすんだよ」
暗いケイジをレイと共に駆け回るシンジ。
アスカはと言えば、何をそんなに焦っているのかさっぱりわからない。
「前みたいに一回地上に出ておけば良かったかなぁ…」
そうすればアスカにもエヴァ発進の必要性を説明しやすかったのだが。
「…もしそうしていれば、必然的にここにたどり着くのが遅れてるわ」
そう。
前回と違い、使徒侵攻が本部に知らされていないため、ここには人っ子一人居ないのである。
今更発令所へ行って伝えても時間が惜しい。
「綾波、お願い」
レイがATフィールドでLCL排出弁をぶった切る。
シンジはと言うと。
「母さん!!そろそろ起きてよ!今動かなきゃどうにもなら無いんだ!」
アンビリカルブリッジ上、初号機の真ん前で叫ぶ。
巨大な双眸に光が灯り、腕がアンビリカルブリッジへと上げられる。
「ありがとう母さん。後、エントリープラグもお願い」
腕を伝って初号機に取り付くシンジ。
初号機が自力でエントリープラグを背中に差し込んだりしてるのを見て、一人置いてけぼりなアスカさん、思わず叫びを上げる。
「あ、あんたら何よそれぇ?!」
- 60 :転載初号機 ★ :05/09/14 21:26:13 ID:???
- 「先輩。ここって、電気が無いと、ホントに、不便ですよ、ね」
息を継ぎつつ、遥かな上層にまで一直線に伸びるエスカレーターを、親から貰った2本の足で駆け上る。
一応軍人なマヤは、曲がりなりにもそれなりに体力を付けていたが…。
「先輩?」
返事が無いのに振り向くと、リツコは遥か下方で歩みを止めていた。
「…駄目ね、30って年齢を実感するわ」
「…先輩、運動不足なだけですよ」
「と言うわけで、僕ら二人、この世界とは違う未来からやってきたみたいなんだ」
今更隠しようが無いのでアスカに一部始終を伝えることにする二人。
幸い今の内ならば、、記録される心配も盗聴される心配も無いためある意味安心である。
それに、そのうち誰か協力者をと思ってもいたので、成り行きとは言え問題ないと判断したのだ。
「…そんなの信じろって言うの?」
「信じる信じないは貴方の勝手。もし他の人に知らせるようならその時はその時よ」
「はんっ!何をい…って…」
レイの言葉に反発しようとしたアスカだが。
スタスタとアスカを無視して零号機へと歩みを進め、無言で拘束具をATフィールドで切断したあとゆっくりとこちらを向いたいつものレイの無表情に、「殺られる」、とでも思ったのか。
「しょ、しょうがないわね。あんた等だけじゃそのうちボロ出すでしょうからこのアタシが協力してあげるわ」
と、それでも恩着せがましく精一杯虚勢を張ったりしたのである。
ただ単に「弐号機も用意しましょう」と言うつもりのレイだったりする。
「ああっ!赤木博士っ!たっ、大変です!使徒が!」
道端に違法駐車されていた車を無断借用し本部へ急いでいた日向。
丁度本部侵入口付近で非常口から出てきたリツコとマヤを見つけ、頼りないグリップ力のク○ホ製のタイヤにスキール音を上げさせて急停車する。
kの国のタイヤ製造業はようやく黎明期を過ぎ、2004年には「10年後を目標にF1に参戦するニダ」と正式に発表したとかしないとか。
ホイールバランスを取るためにオモリが幾つも必要だと言う噂の迷タイヤを生産するような会社がダイジョウブなのか?と言う懸念が多量に吐き出されたりしたらしい。
日向の報告に、大慌てで本部へ連絡を取る。
幸い中継器はその機能を正しく発揮し、発令所へと報告することが出来たのであった。
- 61 :転載初号機 ★ :05/09/14 21:26:56 ID:???
- 「でもさ?どうやって発進準備したんだって言われるんじゃ無いの?」
「大丈夫だよ。電源なくても動いた前例はあるから」
初号機がアンビリカルケーブル無しに動き、ケイジの奥から板状のバッテリーを抱えて戻ってくる。
「さ、これで大丈夫。行こうか」
予備のバッテリーを零号機が抱え、初号機と弐号機が、開発が遅れに遅れ、ようやく実戦配備されたパレットライフルを装備し、地上へと急ぐ。
「今回は当てれば勝ちだからまだ気楽だよね」
「…ホントに」
「…これが済んだらもっと詳しく教えなさいよ、あんたら」
「…どうなっておるんだ」
リツコからの連絡を受け、エヴァの出撃準備のためにケイジへと向かった冬月と作業員達。
しぶしぶついてきたゲンドウがだらしなく大口を空けて愕然としていたりもする。
そう、そこにあるはずのエヴァは無く。
バラバラに切断された拘束具の破片と、破壊されたLCL排出口が彼らを迎えたのである。
「…ヨワ…」
アスカはただ単に牽制のつもりで一撃を放ったのであったが。
地上に這い出てATフィールド中和と同時に射撃開始、あっけなく貫通、使徒殲滅。
地面に向けて奇妙な液体を垂れ流し始めていた使徒は、今まで戦ってきたドレよりも弱かった。
電源の切れたエヴァをしゃがませ、外に出てくつろぐ三人。
「さ、迎えが来るまでゆっくりしよっか」
「ええ。でも…顛末の報告が面倒ね」
「そんなのどうにでもなるわよ。エヴァのレコーダー以外、何にも記録が残ってないんだしさ」
確かにそれはそうなのであるが。
シンジ的にはその後帰宅してからアスカに説明するほうが大変そうだなぁ、とこれからの事が気懸かりなのであった。
「…不潔」
ようやく徐々に電力供給が戻り、発令所へと帰還しようとエレベータ扉の前に立つリツコとマヤ、そして日向であったが。
開いたソコには、乱れた服装で涙に暮れて倒れ伏しているミサトと、いつも以上にニヤニヤとした笑みを貼り付けた加持が居たのだった。
- 62 :転載初号機 ★ :05/09/27 18:33:14 ID:???
- 「あなた、また?」
「うう、しょうがないのよお」
呆れ顔のリツコに、涙ながらに訴えるミサト。
加持に襲われリツコらに発見された後、カウンセリングも兼ねて話しをしたのであるが。
どうにも加持に迫られると、最終的に身体を委ねてしまうのである。
「だぁって、身体が言うこと聞かないのよぉ」
身体に染み付いている彼の手練手管が、烙印のように消えないのだと言う。
「…男運、悪いわね」
お互いに、とは口には出さなかったが。
そして数週間後。
「…男運だけじゃないのよね…ついて無いのは」
セカンドインパクト、その爆心地ともいえる南極で生き残った事自体は幸運であるのだろう。
しかし、それで一生分以上の運を使い尽くしてしまったかのような、その後の彼女の環境、精神的ダメージ、社会復帰に到るまでの足取り。
それらを掻い摘んで見ただけでもリツコは眩暈がして来そうであった。
「…ほぼ性奴隷状態…。酷いわね、これは」
精神的ダメージから来る失語症及び、それに伴う生活不適合。
そして、kの国に根強く残る、障害者に対する過酷なまでの差別。
そして…世界屈指の性犯罪多発国家。
それらが14歳だったミサトに襲い掛かってきたのでる。
それは精神を再構築し、饒舌とも言えるまでに失語症を克服するまで続いた。
しかし…克服した後、復学。
進学した大学にて、加持に手篭めにされてしまうというついてなさである。
「…ホントに受け止められるのかしら…」
母の遺作であるMAGIを見捨てなくて済むという共通のメリットがなければ、リツコも三者一致で撤退を推奨しているMAGIに一票投じ、ミサトの案に真っ向から反対にしていたであろう。
「ジャンケンは強いんだけどね」
シンジの記憶に残る、ミサトとの家事決定戦。
凄まじい割合でのミサトの圧勝であった。
- 63 :転載初号機 ★ :05/09/27 18:33:32 ID:???
- 「…アンタホントバカね」
「…碇君は馬鹿じゃない」
あきれた顔でシンジに突っ込むアスカだが、ちょっとばかり眉を寄せたレイに指摘されて言葉を改める。
「ハイハイわかったわよ。良い?あんたがching chang chongに負けたのは運じゃなくて傾向の推測と威圧によるパターンの画一化よ」
ジャンケンと言うものを説明され、ドイツにも似たようなものがあると言うアスカ。
そして、シンジの弱さは運ではなく自身の性格によるものだと。
ちなみにドイツでは上記のように“ching chang chong”と呼ばれ、明らかにアジア圏から渡ってきたものと認知されている。
どこぞの国のように、普遍的に世界中にある全てを自国起源だと言い張るような程度の低さは無い。
自動車の起源はわが国だと力説するドイツ人など居ないように、その実績をもって世界に誇るのである。
肉の切り身を鉄板で焼く だ け の料理さえ自国起源だと世界に公言し、失笑をかっているどこぞの国とは訳が違います。
「前の時は上手く受け止められたんだったわよね?どこに落ちたんだっけ」
前回の使徒戦の折に、シンジとレイの二人が未来からの帰還者であると告げられたアスカ。
帰宅してから、根掘り葉掘り、それこそ前回の自分がどうやって精神崩壊の道を辿ったかまで。
渋るシンジの首を絞める勢いで問いただしたのであった。
「…参考にはならないと思うんだ。ほら、前回って日本だったから」
今回の使徒に限っては、本当に運任せの部分があるのは確かであった。
「しょーがないわね。アタシも死にたくないからせいぜい頑張るわ」
二人のシンクロ率の高さの理由も理解し、母が中に居ると教えられたアスカは飛躍的に弐号機のその能力を開花させ始めている。
実際もう負ける気はしないのである。
電源さえ切れなければ、であるが。
「手で受け止めるんですか」
やっぱり、と思いつつ聞き返すシンジ。
「そうよ。落下予測値店にエヴァを配置、ATフィールド最大で貴方達が直接受け止めるのよ」
そう口にするミサトに皆が突っ込みを兼ねて質問する。
「使徒がコースを大きく外れたら?」
「その時はアウト」
「機体が衝撃に耐えられなかったら?」
「その時もアウトね」
「勝算は?」
「神のみぞ知る、と言ったところかしら」
- 64 :転載初号機 ★ :05/09/27 18:33:50 ID:???
- じゃあ結果を知ってるアタシたちは神様ね、と言ってやろうかと思ったアスカであったが、今回はどうなるかそれこそ神のみぞ知る事であるので言い変える。
「これで上手くいったらまさに奇跡ね」
「奇跡は起こしてこそ価値があるのよ」
かの国の方々にとって、確立と言うものは自分の都合のいいように改竄するものであるので実際どこまできちんと計算されているのかわかったものでは無いのだが。
「つまり何とかして見せろって事なわけね」
そうして何とかした結果、手柄は自分のもの。
なんともならなかったらその時はもう後の祭りであるが。
「だから嫌なら辞退してくれて良いわ」
無意識のうちに懐の愛銃を確認するミサト。
三人に否は無い。
ために感謝の言葉を向けるミサト。
言うことを聞かなかったりするものが居たらその銃口を向けるつもりであったのかもしれない。
まあマガジンの弾はこっそり空砲にすり替えられていたりするのだが。
冗談と思われるかもしれないが、かの国において凶悪犯罪が発生した折りに軍による封鎖が行われたことがある。
そのバリケードの兵士が構えている小銃には、マガジンが付けられていなかったと言うのである。
警戒態勢の精神的ストレスに耐え切れずにファビョって銃を乱射するのを恐れたのでは無いか、とまことしやかな噂が流れたりしたのである。
…火病が民族特有の精神疾患であるとWHOに認知されているためかなんなのか。
あきらかに役立たずの封鎖網であった。
「一応、規則では遺書を書く事になってるけど、どうする?」
言いつつ書類を渡そうとする。
だが三人の答えは一様に不要との事。
「すまないわね。そうだ、成功したらご馳走食べに連れてったげる」
一応その言葉に喜ぶフリをする三人。
ミサトが立ち去ってから顔を見合わせる三人。
「今回は焼肉かな?…代わり映えしないなぁ」
韓国だからきっとそうだろうと思うシンジ。
「ドイツには焼肉なんてなかったわね…。ドゥイスブルクに日本式の焼肉屋があったかな?本格炭焼きって看板出てたけどカセットコンロに鉄板だったって日本人のスタッフががっかりして帰ってきてたわね」
- 65 :転載初号機 ★ :05/09/27 18:34:07 ID:???
- と、こちらはアスカ。
レイはというと。
「…肉、嫌い、だから」
毎度の事であるので二人もコレと言って気にならない。
「…それに、この国の焼肉屋さん、肉が出てくる前におなか一杯になると思うわ」
その昔、まだゲンドウに世話になっていた頃。
一度連れて行かれたことが有ったというのだ。
「…お肉が出てくる前に並べられる付き出しでテーブルが埋まってしまって…」
肉を食べる前に小さなおなかは満タンになってしまったのである。
幸いなことに戻ってくる前であったので、記憶の底に、昔見た映画のような感覚で残っていただけであった。
実際、本来の注文品が貧弱に見えるほどに付き出しの量が多く、その量が多いほど良い店だという意識が有ったと言う。
そのために、店が傾くほどに突き出しを出しまくる過当競争の嵐が巻き起こった頃があったのである。
今でこそ一応は落ち着いたらしいがそれでも初めて行った何も知らない日本人が「こんなに頼んでない」と思うほどなのが普通だとか。
『目標ノ落下予測時間マデ、アト120分デス。退ノスンデイナイ部署ハ早急ニ…』
合成音声の館内放送が響くなか、各機の配置が進められる。
「…やっぱあの子達に任せて私たちは避難しましょうか」
発令所でミサトが今頃尻込みしてリツコに泣き言を言い出していた。
「…ミサト、貴方ね…」
「だぁってエヴァの中が一番安全なんだからぁ、良いじゃない。ね?」
言った後で、額に青筋を浮き上がらせて怒りのオーラを放ち始めたリツコに、頬を引きつらせる。
ぷす。
「オイデナスッタワネ、エヴァゼンキキドウ。スタートイチニ」
「あれ?葛城さん、咽喉でも痛めたんですか?声が変ですよ?」
「キノセイヨ、サア、ハジマルワヨ」
何故かミサトの瞳孔が開きっぱなしになっているのは気のせいだろうか。
- 66 :転載初号機 ★ :05/09/27 18:34:26 ID:???
- 『目標は光学観測による弾道計算しか出来ないわ、よってMAGIが距離一万までは誘導します。その後は各自の判断で行動して。あとはあなたたちに、全て任せるわ』
ミサトではなくリツコによる指示に、ハテ、と首を傾げるシンジ達。
『距離一万!』
オペレーターの声に、変な詮索はまた後でと思い直す。
「行くよ!」
シンジの声に頷き、外部電源を切り離す二機。
「スタート!」
「日式?」
シンジ達の機転のおかげで、ミサトの適当な予想位置からかなりずれて落ちてきた使徒を受け止めることに成功した。
「そうよ。焼肉だと食べらんない人だって居るんだから良いでしょ?」
さらっと言うアスカだが、ミサトの頬は引きつっている。
「日式って言うくらいなんだから、さすがに辛くないの出て来るでしょ」
辛いのが苦手のアスカはこの国の食文化に辟易としていた。
「…ニンニクラーメンは?」
「綾波、この国のラーメンはやめといたほうがいいよ」
そう、かの国では!店でラーメンを頼むと…インスタントラーメンが出てくるのである!
しかも、堂々と。
「…この国は用済み」
いや、それは確かにそうなんだけども(爆)
「…日本料理なの?」
「はい」
頬を引きつらせるシンジ達。
店のウェイターは自信たっぷりにそう言って胸を張る。
「…碇君」
「うん…」
大粒の汗を後頭部に垂らすシンジ。
- 67 :転載初号機 ★ :05/09/27 18:34:45 ID:???
- 培われた自炊能力のおかげで、外食などこの方した事が無い三人。
「からーい!」
そう、かの国の外食産業の実情をまったく想定していなかったのである。
kの国の日本料理といわれる「日式」料理とは…。
日本料理っぽいだけのかの国料理の店なのであった。
「何よこのお刺身!くさーい!」
ろくな処理もされずに、只単にぶつ切りにしただけの生魚。
そりゃ不味いであろう。
「刺身じゃなわよん。フェ、よ」
「何よ、どう見ても刺身じゃない」
過去の日本併合時代の名残で、つい最近まで韓国語でも刺身をそのまま「サシミ」と発音していたのであるが、徹底した日本由来の言葉の言い換えにより「フェ」と呼ばれるようになっていた。
「お刺身も韓国由来なのよ、だからフェが本当の呼び方なの!」
力説するミサトに、…もうどうでもいいです、といった顔のシンジ。
刺身を只の生魚の切り身と思っているkの国の人に説明しても無駄だよね、などと思いながら。
「…何故?鉄火丼に何故唐子味噌を乗せて混ぜるの?」
困惑したレイの声に、今度は嬉しそうに掻き混ぜるミサトの言葉。
「何でって、コレが美味しいのよん。あ、もっとどっばぁ、っと入れなくちゃあ」
自分の分はひと段落付いたのか、レイの丼の器を奪い取り、コチュジャンを一瓶丸々使いきって掻き混ぜる。
「…ダメなのね、もう…」
呆然と目の前に突き返された中身が真っ赤な丼に視線を落とす。
「刺身にはワサビでしょーが!」
「だからフェ、だって言ってるじゃない!フェにはコチュジャンに決まってんの!」
アスカとミサトの言い合う姿を見ながら、元の世界でもこっちでも、ミサトさんの味覚は僕らとは相容れられないんだなぁ、と。
犬鍋に連れて行かれなかっただけマシだったと一人自分の心を納得させるシンジであった。
- 68 :転載初号機 ★ :05/10/06 17:30:43 ID:???
- シンジ達が一生懸命使徒を殲滅していた頃。
「科学の発祥の地はウリナラニダ。その力で守られてる我らは誇らしいですね。ホルホルホル」
「…………碇、いい加減に正気に戻れ」
遠く南極の地で、どうやって引き揚げたのか不思議な程の長さを持つ例のアレを積んで帰路についていた。
普段はそれなりに有能なのだが、一旦ウリナラマンセー状態もしくはファビョーン状態になってしまうと中々元に戻らないゲンドウなのであった。
「じゃあ今回も綾波が挿してきたんだ、槍」
「…ええ。ちゃんと刺して来たわ。今回はキッチリと」
前回はゆっくりと抉りこむように挿し入れていたのであるが、今回はキッチリと…。
「…こう、腰ダメに構えて。挿してから捻るの」
「綾波、それヤクザ屋さんとかの短刀とかの使い方…」
「…ええ、問題ないわ」
前回は微妙に死なないように慎重に貫いたのだが、今回綾波さん、コキュッとトドメをさしたのだとか。
「…おかげでフルスペック。もう心配要らないわ、碇君は私が守るもの」
地下に残るは死体のみ、ということである。
「ありがとう綾波…。お手柔らかに頼むよ」
前回本体であるリリスへ帰還した綾波さん。
今回は本体にトドメをさして全部頂いてしまったのだとか。
アンチATフィールド能力とか、s2機関とか色々と。
「でもじゃあ使徒がここ目指してこなくなるんじゃないの?」
色々と裏情報を知ったアスカさん、一応心配してか尋ねます。
「たぶん大丈夫だと思うよ。加持さんがアダム持って来てるはずだから」
「…ああ、あの性犯罪者が?」
前回の自分がこだわっていた、と聞かされて、複雑な心境ではある。
しかし、今更どうこう言う気も無いのか犯罪者扱い確定であった。
「だって実際そうじゃない」
確かにそうである。
ちなみにかの国は非常に犯罪者に優しい国といえるのである。
なぜならば。
簡単に戸籍をいじって別人となってしまえるのである。
事実、日本において国外退去を命ぜられた犯罪者が名前を変えて再入国してくる事例が後を絶たないという。
- 69 :転載初号機 ★ :05/10/06 17:31:11 ID:???
- 「で、次の使徒なんだけどさ」
「ああ、マイクロマシンサイズの群体使徒だって言ってたわよね」
「丁度特殊なシンクロ実験の最中に来るんだよね、アレ。僕ら何にもしなくっても大丈夫なはずなんだけど…」
微妙に言葉を濁すシンジ。
素っ裸でジオフロントの池に放って置かれるのはこりごりなのである。
「…被害というべき被害は出てないわ。ちょっと赤木博士が苦労するくらい」
「うん、だから僕らは何にもすること無いと思うんだけどね」
だがこの国の方々を見ていると、とてつもなく心配性に成らざるを得ないシンジであった。
「人工知能メルキオールより、自律自爆が提訴されました。否決、否決・・・」
やはりというかなんと言うか。
「ロジックモードを変更!シンクロコードを15秒単位に!」
予定通り使徒がやってきたのであった。
「…ねえ綾波」
「…なに?碇君」
「着替えを湖岸に置いとくってのは拙いってのはわかるんだけど」
それはそうだ。そんなに都合よく三人分の、しかも男用×1、女用×2でたまたまソコにあったなどと言う事はありえないし。
「…もうちょっと、ほら。大きなカーテンとか、シーツとかさ」
「なによ、文句あるならモットはっきりと言いなさいよ」
適当に身体を覆う程度のものならば、大丈夫だったんじゃないかと。
「ゴミ袋を頭からかぶるのはちょっと…。それに…」
そう。
湖畔にたまたま大きなゴミ袋があったならそうは疑われないだろうと。
底に一つ、側面に二つ穴を開け、即席のポンチョ状態にしているのである。が。
「…なんで僕だけ半透明なのさ」
被っても大差ないシンジの艶姿に、内心狂喜乱舞しながら更衣室へと向かうアスカさンと綾波さンであった。
「プログラミングぐらいウリにだって出来るニダ!」
MAGIの管理担当者の一人がリツコに向かってファビョる。
「…ねぇ先輩。あんな事言ってますけど、どうします?」
- 70 :転載初号機 ★ :05/10/06 17:31:30 ID:???
- 基本的にメンテナンスも三者の相互管理で賄うMAGIである。
MAGI管理担当とは名ばかりの、お飾り責任者がなにを言うのかと鼻で笑うリツコ。
ヵの国の技術者に共通する事例の一つに、自己の能力の過大評価というのがある。
「ウリは何でも出来るニダ!」
というのでやらせてみると、とても楽しい事態が巻き起こること確実である。
例えば…日本の某企業に研修に来たkの国の方が、「旋盤?そんなのは朝飯前ニダ!」と力説するので、試しに簡単な形状をお遊びで切削させてみたが…。
工員A「…主任、操作の説明、しました?」
現場主任「いや?特にヤヤコシイ操作するわけじゃないし…」
工員A「嫌な予感するんですけど…」
と呟いた次の瞬間。
「ガギョ」
聞きたくない嫌な音が場内に響いた。
工員A「…バイト、吹っ飛んでますね」
現場主任「…切り込み量13mmってあいつは馬鹿か?」
テーブルに固定され、高速で旋回する材料へと送られる切削用の高速鋼製の刃が取り付けられたバイトといわれる刃物。
通常は多くて数ミリ程度の切り込み量のところを、センチ単位で作業していたのである。
現場主任「…始末書、俺が書くのか…」
工員A「責任者が責任取るのは当然ですよ…ご愁傷様です」
肩を落とす主任を尻目に、「ウリの操作は間違ってないニダ!チョッパリの機械が悪いニダ!すぐ壊れるニダ!」
と、見当違いの言い訳をほざいていやがったりするのであった。
閑話休題
「…適当なダミープログラムを走らせた端末でも渡しておきなさい。…これでも入力させておけば良いわ」
あからさまに拒絶するのは拙い、ということであろうか。
…件の人物は縁故採用であるのかもしれない。
そう言ってマヤに手渡されたものは、どう見ても今回のオペレーションには不要のデータであった。
「…えっと、ゲームか何かのプログラムみたいですけど…TOMAK?」
ある意味世界最強の、韓国製ギャルゲーのプログラムであった。
- 71 :転載初号機 ★ :05/10/06 17:32:02 ID:???
- 「…先輩、葛城さんが凄く気になって仕方が無いんですけど」
MAGIに直接入力するために発令所下層に降りたマヤとリツコであったが、何故かミサトも付いてきていた。
「…根に持ってるのかしら」
作戦会議の際に本部からの全面退避を提案したが、リツコに論破されたのである。
「…邪魔、しませんよね?」
「…それは保証出来ないわね…」
たとえ緊急事態であろうと、相手がどんな人物であろうと。
思い込んでしまったkの国の人に、撤退の文字は無いのである。
まあ実際日本が併合するまで、文字は無かったに等しいのだが。
かの国自慢のハングル文字、世界で最高の文字と言い張っており、日帝時代の三十六年の間、日本によって禁止されていたと力説するが、実際はデタラメである。
そもそも当時のkの国において、一般人の識字率はほぼゼロであり、貴族たちぐらいしか文字を扱えなかったのである。
しかもその扱う文字はハングルでなく中国語。
下賎な庶民が使うための文字として忌み嫌われており、歴史の中に消えてしまうところであったのを日本により日の目を見たのである。
ちなみにkの国人がよく言う日帝36年であるが、実際には34年と11ヶ月である。
こんなところでも捏造するあたり、実にかの国らしいというかなんと言うか…。
その後、マヤの危惧通り、ミサトは何かとリツコに話しかけ、入力の妨げとなるべく尽力していた。
ミスしたらリツコの責任問題に発展する、と思っているのかも知れないが、自分まで一緒に吹っ飛んでしまうという意識は思考の片隅にも無いのであろう。
だがしかし、リツコの指の速度は勢いをそのままに。
前回同様の1秒前で自律自爆は否決されたのであった。
「…チッ」
「ミサト、聞こえてるわよ。暇ならコーヒーでも入れてくれないかしら、うんと濃い奴」
冷静にミサトの舌打ちに突っ込むリツコ。
眉間を揉みながらミサトに頼む。
「へーい」
しばらくしてコーヒーカップを手に戻ってくる。
「はいコピー」
「ありがとう…いい加減マトモな発音できるようになりなさい。それじゃ複写機よ」
耳がおかしいのか発声器官が異常なのか。
コーヒーがコピー、コピーがカピーと言っているように聞こえるのだ。
- 72 :転載初号機 ★ :05/10/06 17:32:20 ID:???
- それこそ日本人以上に英語の発音がデタラメなのである。
アメリカ人に向かって「お前の英語はオカシイ」と大威張りで指摘したりする人もいるが、そう言う人に限ってアイムチャパニーズ」な発音なのである。
冗談抜きで、日本人のカタカナ英語のほうが理解してもらえること請け合いである。
「…ミサト?うんと濃いのをって言ったじゃない」
ひとすすりして眉を顰め、ミサトに文句を言う。
「…いつもの倍位にしてみたんだけど」
「インスタントなのは仕方ないとして、いつもどんなの飲んでるのよ、まったく」
とてつもなく薄い。
薄いだけならまだ良いが、それに加えて恐ろしく甘いのである。
「…やっぱり自分で入れなおすわ」
疲れた身体を気力で立ち上がらせ、給湯室へ向かうのであった。
「動かないニダ!どうなってるニダ!」
意外にも渡されたデータを入力し終えていたMAGI管理責任者がマヤに詰め寄っていた。
何故か何人も引き連れて。
「せんぱ〜い、早く戻ってきてくださ〜い」
入力し終え、リターンキーを押した直後に画面に現れた鉢植えの首だけ美少女のCGが途中でバグって止まったのである。
自分の入力ミスだとは一顧だにしないのがカの国のデフォルトなのである。
「早くするニダ!」
「助けて、せんぱ〜い(涙)」
- 73 :転載初号機 ★ :05/10/06 17:33:17 ID:???
- 「なんだか誰かの悲鳴が聞こえたような気が…」
「アタシ何にも聞こえなかったけど?」
「…ええ、聞こえなかったわ」
戦闘配置に移行していた本部内。
誰もが各自の配置についているため人通りは皆無であった。
「さ、それより早く行きましょ。案外時間かかっちゃったわね」
ジオフロント内の湖からとは言え、徒歩ではかなりの距離がある上、使徒侵入による戦闘配置で閉鎖されている通路多かったのである。
がさがさとビニール袋が擦れる音をさせて歩く三人。
黒いビニール袋の二人と違い、半透明なビニール袋ポンチョなシンジは、股間を押さえて周囲に視線を送りながら慎重に歩いていた。
「あら貴方達」
通路の向こう側からリツコがコーヒー片手に姿を現したのである。
「う、うわあ!」
「あら、ごめんなさい」
慌てて後ろを向くシンジ。
リツコはといえば一向に気にしていない様子。
「…そういえば貴方達を放り出してから、回収の指示出して無かったわね」
「何々?どったの?」
「う、うわあ!」
シンジの悲鳴を聞いて、ミサトまで顔を出してきた。
さらに慌ててしゃがみ込むシンジ。
「あんら、セクシーねぇ」
「食べちゃ駄目よ?」
「…先っちょだけでも?」
「「「ダメ!」」」
リツコのみならず、アスカとレイまで綺麗にユニゾンした大声であった。
「あ〜ん、せんぱ〜い。ほんとに助けて〜!」
哀れマヤちゃん、上層のオペレーター席の眼鏡とロンゲが助けに来なければ、危うく衆人環視の発令所で輪姦されかねないところであった。
- 74 :転載初号機 ★ :05/10/13 00:20:11 ID:???
- 「碇。本部に使徒が…」
「そんな事実は無い!これは世界中から認められている!」
人類補完委員会に呼び出されたゲンドウ。
委員の詰問のセリフを遮って訳のわからぬ事を言い出し始めた。
「…」
呆気に取られる委員を尻目に、言葉を続けるゲンドウ。
誰かが言葉をつむごうと口を開こうとするたびに、殊更に大声を張り上げ発言を潰そうとする。
「…ぃやかましいっ!!」
最大ボリュームで雄たけびを上げたのは、誰あろうキールであった。
さすがのゲンドウもこの場に於けるトップであるキールに怒鳴られては口を閉ざすより他に術は無い。
…びびった、というのが正直なところであろうが。
表面上は何事も無かったかのような態度でいつもの姿勢にもどったゲンドウであったが、内心自己保身の言葉を発したくてしょうがないのであった。
「…予算については一考しておく。下がれ」
「さすがはキール議長。あのゲンドウを一喝で黙らせるとは」
ゲンドウのいた場所を横目に、上手を言う委員。
それを一瞥し、はき捨てるようにキールが口にする。
「…奴の行動パターンを考えれば単純なものだ。諸君らも奴の取り扱い方法程度学んでおくのだな」
「…はぁ」
長年国際的な調停を取り仕切ってきた経験を持つのか、各国ごとの対応方法があるのだといって聞かせる。
「特にあの国はだな。一度譲歩したと見るや際限がない。心してかかることだ」
その後も各委員にあれやこれやとつぶさに心得を伝授していくキールであった。
「相互互換試験?」
「そっ、もしもの時に備えてぇ、あっちのエヴァとこっちのエヴァをとっかえて動かせるかどうかってのをやんのよ」
ヒジョーに適当なミサトの説明である。
「取り敢えずシンジ君とレイを入替えて乗せるらしいわ」
「どう?何か違和感あるかしら?」
初号機のプラグ内でシンクロを始めたレイにリツコが声をかける。
「…碇君の匂いがする…。…あと、ニンニクと唐辛子の匂いも…」
- 75 :転載初号機 ★ :05/10/13 00:20:25 ID:???
- 「あ…あら、変ね。キチンと洗浄したはずなのに」
前回射出した際に、回収に向かった班員のなかに、純粋なkの国の人がいたのであろうか。
「…目にしみます。LCL緊急排出」
「ちょっとレイ、勝手なことし、きゃあ」
何故かパシッと火花を上げるコンソールに驚き、意外と可愛い悲鳴を上げるリツコ。
「変です、プラグからの信号がこちらからのアクセスにオーバーライドしてます」
「…ま、まあ良いわ。レイ、早く眼球洗浄しなさい。下手すると視力に影響が出るかもしれないわ」
微妙に慌てながらもレイへの文句を押さえ込んだのは、やはりアノ赤い食品が雑菌満載であることを知っているからであろうか。
「…試験中断してまで必要なことなんでしょうか」
赤いアレの凄まじさを知らないマヤは、何故そこまで、と首を傾げる。
「マヤ、貴方はここに配属になるまではずっと日本だったわね。丁度いい機会だわ、レイの診察、付き合ってあげて」
「…うそ」
レイを眼科へと連れて行ったマヤ。
診断結果を聞き、愕然としたのである。
「雑菌による麦粒腫ですね」
「あ…あの短時間で…」
要するにものもらいである。
「取り敢えず点眼液をお渡ししておきます」
「…ハァ」
生化学的にも完全に洗浄していたはずのエントリープラグが汚染されていたという点以上に、たったアレだけの時間触れていただけで目に異常が起こるなどとは信じられなかったマヤであった。
「…原液が目に入れば失明もありえます」
「…うそ」
レイの端的な指摘に、点眼液の入った袋を胸に抱きしめ、身震いするマヤであった。
後日、
「…私もうプールに入れません」
本部の清潔なはずのプールでさえ、潔癖症のマヤにとっては泥水に感じられてしまうというトラウマが発生しましたとさ。
- 76 :転載初号機 ★ :05/10/13 00:20:41 ID:???
- 「よかったぁ。零号機に乗ると怖い目にあっちゃうんだよね、確か」
急遽取りやめになったシンジと零号機の相互互換試験。
前回の精神汚染ギリギリの事態に、正直かなりびびっていたシンジであった。
「…変な綾波が迫ってくるの、正直怖かったモンなぁ…」
ポツリと本音が漏れてしまうあたり、まだまだ人生経験が足りないところであろう。
「…問題ないわ」
いきなり背後からかけられた声に飛びのくような勢いで振り返るシンジ。
「あ、綾波。どうだったの?」
寸前まで考えていた内容が内容だけに、ちょいとばつが悪いシンジである。
「ものもらい、心配いらないわ」
そう言うレイを見ると、前回の初対面の時のような眼帯に、どぎまぎしてしまう。
「ちょっと!!人が真面目にシンクロ実験してたってのに何やってんのよあんた等は!」
相互互換試験から除外されたアスカは、通常のシンクロ実験を行っていた。
「…貴方はなんとも無いの?」
同じメンバーによって回収されたはずのプラグであるなら同じく汚染されていておかしくないはずである。
「何がよ」
「ああ、あの後新品のプラグに変えてたみたいだよ?」
汚染を重く見たリツコが再度厳重な洗浄にかける為、アスカの実験を予備のプラグで行ったのであった。
「…そう。てっきり弐号機パイロットが無闇に健常なのかと思ったわ」
「何よそれ」
「…褒めたの」
「あ〜ら、それはどうもアリガト。って信じるわけ無いでしょうが!」
「…平和っていいなぁ」
二人の言い争いが、シンジ自身を巡っての牽制が原因だというのを知ってか知らずか。
見えない外の景色に視線を向けるシンジであった。
「…今日は赤木博士が結婚式に出席するといってたから帰宅は遅いわ」
「だってさ、バカシンジ」
「な、何がさ」
二人に詰め寄られ慌てふためくシンジ。
今日はリツコが私用でお出かけ=ネルフでの実験その他は無し、なのである。
- 77 :転載初号機 ★ :05/10/13 00:21:08 ID:???
- ひまが出来れば人間無闇にいらぬことをしたがるものである。
「アタシとしてはどっか遊びに行きたいわけよ」
学校で出来た友人のヒカリに、なにやら姉から頼まれたとか言うデートをお願いされたのであるが。
「kの国の男って、手篭めにしちゃえば後は言うこと聞くと思ってるらしいじゃない。誰がんなのと付き合うってのよ」
既に約束があるからと、けんもほろろに断ってきたというのである。
「だからどっか行こうってば」
と、主張するアスカさん。
一方の綾波さんはと言えば。
「…チェロ…私も聴きたい」
この世界ではシンジ以外知るはずの無い出来事を、ねだっていたりする。
…先頃リリスの養分を吸い取った綾波さんの手にかかれば、シンジ君に内緒事などできっこないのである。
まあリリスの力を使わずとも、二人に詰め寄られたりしたら、シンジ君の貝のような口は桑名の焼きハマグリとなってしまうのであるが。
「そ、それじゃあさ。昼の間はどこかに遊びに行って…」
夕食を家で食べて、そのあとチェロをという段取りと相成ったのである。
…前の時はアスカさんとキスした云々ということだけは死守したシンジ君ではありました。
一方その頃結婚式に参列した方々はといえば。
「さあって、新婦に挨拶済んだことだし。ちゃっちゃと食いまくりますか」
祝儀と引き換えに食券が手渡される。
式場に隣接する食堂でバイキング方式の食事を取るのである。
一応テーブルごとに何々家様、と決まってはいるが、そんなのはケンチャナヨな人だらけ。
実際誰も気にしていないし。
「式に顔を出す気は無いのね…。まあ構わないけど」
式場に入りきれないほどの招待客がいるのだし、とリツコ。
kの国の結婚式において、招待状はそれこそ会った事がある人全てに配るといって過言では無いほどに配りまくる。
通常、3〜4百人は当たり前だと言うことらしい。
しかも、招待状をぎりぎりになって送るのだ。
早くて20日前後、遅ければそれこそ2〜3日前に、というのも稀では無い。
正直、迷惑極まりない話である。
式自体は、一応キリスト教に則った形が一般的だという。
しかし、本業の牧師や神父が実際に式を執り行うことは稀である。
- 78 :転載初号機 ★ :05/10/13 00:21:22 ID:???
- よほど熱心な信者であるか、教会にコネがある場合のみで、通常は学校の先生などが代役牧師を、というパターンが多いとか。
簡単な訓示のみで、すぐに誓いの言葉を述べて終了。
退出時に友人知人のクラッカーやライスシャワーに送られ、ブーケを投げるというのは共通のようである…が、ひじょーに短時間で済んでしまうのである。
概ね10〜15分といったところであろうか。
ちなみにきちんとした牧師or神父が行う場合は聖書の一節を読み上げたり、聖歌を奏でたりするので半時間ほどかかるということである。
「どうにもああいうのは馴染めないわ…」
両親に平伏す新郎新婦を見ながらそう呟くリツコ。
「日本での生活長かったアンタはそうでしょうね。私はあこがれるけど、ね」
両親共に故人となったミサトには望むべくも無い。
実際片親、もしくは両親のいない場合、相手親が結婚に反対することが多いという。
そうこうしていると、ミサトがリツコの陰に隠れようと身を縮める。
「ミサト?どうしたの?」
「…ヤバイわ、あのぶゎかが来てる」
そう言ってミサトが指差す先には、無精ひげの長髪男があっちこっちの女性出席者に粉をかけているところであった。
「…帰りましょうか」
「…飲み足りないけど、アレと一緒にいるのはもっと嫌だわ」
そう言ってこそこそと食堂を後にする二人。
勝手に帰って良いのか、という方もいるであろうが、不思議なことに挨拶さえ済めばいつ帰っても良いのである。
解散後二次会等で再び集まることはあるが、基本的に自由解散なのである。
「あ〜嫌なもん見たわ」
「相変わらずね、加持君」
どうにか気付かれずに退出できたようである。
「あの馬鹿は死んでも直んないわよ!」
「…私もそう思うわ。どう?どこかで飲んで帰る?ゲン直しも兼ねて」
「当然でしょ!死ぬほど飲むわよ!!」
その後、リツコの止めるのも聞かずに普段飲まない焼酎を飲みまくり、急性アルコール中毒で実際死に掛けたりするミサトであった。
「…無様ね」
kの国の女性の多くは彼氏や夫と飲む際はビールを好み、友人や同僚などと飲む際は焼酎ということが多い。
…うわばみなミサトではあったが、さすがに普段自宅で飲むビールとは勝手が違ったようである。
- 79 :転載初号機 ★ :05/10/13 00:21:37 ID:???
- 「…なによこれ。It's a small worldのパクリじゃない」
京城郊外にある某kの国最大規模の遊園地に来ている三人。
取り敢えず大人しめな物から、というシンジの意見により(懇願?)、スペイン風な建物や真っ赤に塗装された巨大なジェットコースターなどを横目に通り過ぎ、巨大な建物を何かの乗り物で巡るアトラクションにまずトライしたのである。
「それってディズニーランドの?」
「そうよ!アタシが行ったのはパリだけどね。もう、信じらんなーい」
いきなりの最低評価であった。
「綾波、どう?楽しい?」
「…よくわからない」
「…たぶんそう言うと思ってたわよ。はぁ、なんだかねぇって感じよね」
遊ぶ、ということが今ひとつ理解できないレイであった。
「でもアレよね、なんか統一性が無いって言うか。寄せ集めただけ、って感じ」
正解。
日本で閉園した遊園地のアトラクションなども多いのである。
「あ、サファリパークもあるんじゃない。行ってみましょ」
ここは一応複合レジャー施設であるため、サファリパークはおろか、スキー場や小さいながらもサーキットまで併設されていたりする。
年中夏になってしまったあおりでスキー場は只の空き地と化しているが。
サーキットの利用者は日本とは桁違いに少ないけれど。
さて、kの国において国際レースが開催されるのはいつになるのであろうか。
フェラーリやポルシェなどの高級スポーツカーが、数少ない金満家のステイタスシンボルである間は望めないであろう。
「色々言いたい事はあるけど、まあそれなりよね」
帰路に着きながら、アスカが遊園地を評論する。
「そうだね、意外とまともだったし」
「…そうね」
しかし彼らは知らないのである。
常夏となる前の、厳しい冬のあった時代。
件の遊園地内のアトラクションは、その殆どが凍りついて稼動することがなかったと言うことを(爆)
その後帰宅して、ゆっくりと食事(シンジ調理)をすませ、久々のチェロを奏でるシンジとその音色に酔う二人であった。
- 80 :転載初号機 ★ :05/10/13 00:21:58 ID:???
- ちなみにリツコは結局ミサトに付き添い、病院で夜を明かしてしまった。
何故ならば…。
「救急で運び込まれた患者の懐具合がわからないと手当てすらしないなんて…まったくこの国の医療体制は…」
と怒り心頭。
日本ならば救急で運び込まれた場合、患者がどんな人物であろうと、よほどの事が無い限り支払いは後回しにして取り敢えず診察するのが普通であるが。
kの国においては「踏み倒されたらどうする!」という意識が蔓延しており、身元がしっかりしていないと診察すらしてもらえ無いのである。
事実、裕福な資産家が、たまたま身元のわかるものを持たずに事故に遭い、担ぎ込まれた病院で治療もされずに亡くなったということが報道されたりする。
が、しかし。
病院を非難する記事ではなく、その裕福な方、ついてなかったね、といったような文体であったという。
kの国に行く機会があっても絶対行くなと隣人に声を大にして言いたい今日この頃である。
- 81 :転載初号機 ★ :05/10/22 19:31:11 ID:???
- 「…それにしても三人とも凄いわね…」
それぞれのシンクログラフを交互に見ながら、感嘆の声を上げるリツコ。
シンジは言うに及ばず、レイやアスカまでもが理論限界の数値を叩きだしているのである。
エヴァの中の人が誰か知っているシンジとアスカはもとより、既にリリス本体と言ってよいレイにとって、この程度のシンクロ操作は朝飯前である。
そういえばこういう慣用句や諺なども、かの国においては非常に文化の違いが良く出ている。
川に落ちた犬は棒で叩け。
ひとつ釜の飯を食べて訴訟を起こす。
音の出ない銃があれば撃ってやる。
他人の牛が逃げ回るのは見ものだ。
人が自分にそむくなら、むしろ自分が先にそむいてやる。
等々、筆舌に尽くしがたいモノばかりである。
大半が他人を足蹴にしてでも利を得ようとするようなものばかりであった。
「…えっと。何がどうなったの?」
呆然とするシンジ達三人。
いつもならば即エヴァに搭乗するのが常なのだが、今日は違っていた。
「ああ、貴方達。ちょっと待ってくれるかしら」
見るからに憔悴しきったリツコが子供たちを迎え、首を傾げて肩を叩く。
「…赤木博士、詳細を」
そんなリツコを見つめながら、冷静に端的に現状を把握しよう努めるレイであった。
いきなり都市直上に現れたマーブル模様の球体に、本部内は警報が鳴り止まず騒然とした雰囲気を醸し出していた。
「目標は微速前進中。毎時2.5キロ」
「パターンオレンジ。A.T.フィールドは確認されていません」
毎度の事ながら、MAGIは判断を保留。
そのために、想定外の事態に発展してしまったのである。
「使徒じゃないならウチの管轄じゃないわ。国連軍のお仕事じゃない」
ミサトが何にも考えずに在韓国連軍に指揮を任せてしまったのだ。
- 82 :転載初号機 ★ :05/10/22 19:31:30 ID:???
- メインモニターに、砲撃するたびに車体が大きく揺れるK1A1戦車の映像が映し出される。
この韓国は現代社製のMBTは1988年に制式化されたため88式とも呼ばれている、アメリカのM1戦車を開発したチームにより設計された物である。
戦場となる半島の状況を想定し、M1戦車を小型化した物なのであるが…。
実のところ、基本となるK1戦車は性能自体は世界水準から見てもそう悪くはなかったのだが、後にヴィッカースL7・105mmライフル砲を一回り大きなラインメタル社製の120mm滑空砲に換装してから評判が悪くなった。
いわく、「撃つ際の反動を車体が受け止められない、命中精度も下がった」、「砲の大型化に伴う改修で、携行弾数が減ってしまった」、「折角小型軽量でまとまっていたのに、重くなった上にバランスが崩れた」などなど。
百害あって一利なしの魔改造であったと言う。
しかも砲身を自国生産することができず、アメリカがライセンス生産しての供給なのだ。
さらに噂では、90年に日本が制式化した90式戦車の砲が120mmであったため、「チョッパリの戦車になんか負けてられないニダ!!」と言うのが改修の理由だとか…。
しかし、1999年の某市場調査会社による世界戦車ランキングでは、3位の90式に大きく離されて7位でした。
ともあれ砲撃は始まってしまった。
自砲の反動で大きく揺れる88式戦車。
かの国の発音では「パルパルチョンチャ」と呼ばれ、日本人の感覚から言うと酷く間抜けな感じである。
「でっかいアドバルーンニダ!いい実弾演習に成るニダ!ウリたちの優秀な戦車の性能を見せてやるニダ!」
などと思っていたかどうかは永遠の謎である。
なぜなら砲弾が白黒のそれに当るかと見えた次の瞬間消え去り、88式戦車の部隊が展開していた地域に黒い何かが広がり、彼らを永遠の彼方へへと取り込んでしまったから。
- 83 :転載初号機 ★ :05/10/22 19:31:49 ID:???
- 「…子細了解しました。さ、行きましょう碇君、弐号機パイロット」
モニターがブラックアウトした次の瞬間、レイは全て承知したかのように踵を返し、発令所を出ようとした。
「え、あ、うん」
「わかってるわよ。…それとアンタ、その呼び方どうにかなんない?」
などと言いながら続こうとする二人。
が。
「ちょっとあんた達。作戦指揮は私がするって言ってんでしょ。勝手に動かないで」
今までマトモな指揮をしたのか、と言いたげな視線を浴びつつも、まったく空気が読めない彼女はさらに言葉を続ける。
「今んとこアチラさんも動きが見えないから、この間に作戦練るわ。リツコ、お願い」
間違っては無いような気もするが、言い草がやはりkの国的であった。
肝心の作戦立案を他人に任せようとする辺りもまた。
「状況を整理すると、あの黒い影が使徒の本体ね。詳細は配布した資料を見て頂戴」
暗い作戦室で、発令所の面々が雁首揃えて頷いている。
「内向きのATフィールドでごく薄の本体を支えているわ。あの中はデュラックの海と言われる異空間だと思って」
「…えっと、要するにトンチャモンの四次元ポケットみたいなもの?」
ミサトが酷いたとえをするが、あながち間違ってはいないだろう。
「…トンチャモンって、貴方ね…」
眉間を押さえて溜め息をつくリツコ。
日本の子供向けアニメのドラえもんのパクリと言われているが、実態は謎である。
ttp://web.archive.org/web/20010816064314/http://japanese.joins.com/img/0226cul_tora.jpg
上記の画像一枚きりがネットでさらされるのみで、他の映像が見つかったとの話は過分にして聞かない。
過去日本の漫画として韓国に紹介された際、半島に飛び移る画像がそのままネタとして流布してしまったとの見方が正しいようである。
現実世界では韓国でドラえもんが刊行されたのは1994年、TV放送は2001年から開始されている。
意外にキチンとした発売形式で、タイトルも変更されなかったが、残念なことにハングル文字には最初の文字に濁点が付けられないため、「トラエモン」と言う、これまた微妙に間抜けな発音となってしまっている。
- 84 :転載初号機 ★ :05/10/22 19:32:13 ID:???
- 「ああ、トラエモンだったわね。ゴミン」
素でなのか、わざとなのか。
おかげで張り詰めていた緊張が幾分緩んだ。
後者ならばミサトという人物を見直してしまうところであった。
「で、ミサト?作戦は?」
難しい顔で腕を組んでいるミサトに、リツコが声をかける。
「ん〜。取り敢えずエヴぁを出してぇ…」
ソコまで言いかけて横目でリツコを窺う。
コメカミに浮き出始めた青筋に、つばを飲み込み慌てて発言を修正する。
下手な作戦を言い出してリツコに怒鳴られるのによほど懲りたらしい。
「そっ、そうそう!ATフィールドで身体支えてるんならさぁ、それ中和してやっちゃえば自滅するんじゃない?」
僅かに驚いた表情でミサトを見つめるリツコ。
正直マトモな意見が出るとは思ってなかったらしい。
「…内向きのATフィールドが中和できるかどうかは微妙だけど…。試してみて損は無いわね」
「…了解しました」
作戦の概要を聞いたレイは他の二人に先んじてそう発言した。
「ちょっとファースト、アンタアレでワカッタの?内向きのATフィールドなんてアタシ知らないわよ?」
搭乗者控え室にもどってすぐ、アスカが口を開いた。
「ええ、問題ないわ」
「…綾波、無理しないでね」
シンジが心配そうにレイを見つめる。
「…大丈夫。心配しないで碇君」
シンジに向けて優しく笑みを浮かべるレイを他所に、苦虫を噛み潰したような顔でふくれるアスカであった。
「…それだけ?」
三機が使徒の周囲に展開して数秒後。
フィールドを展開するかしないかの瞬く間に黒い影は収束して行き、終には僅かな点となって、ポシュッと僅かな十字の炎を上げて消えていった。
あまりのあっけなさに、前出のアスカの呟きである。
- 85 :転載初号機 ★ :05/10/22 19:32:40 ID:???
- 作戦終了後、帰路に着きながら談笑交じりに今日の一件を話題にする。
「楽に倒せてなんだけど、ほんとにやっつけられたの?ちょっと心配よね」
「うん、たぶん…」
「何よ。はっきり言いなさいよ」
「前の時に綾波がさ…、内向きのATフィールドで…使徒を逃さないようにして自爆した事があるんだ…。だからあのフィールドの中和はちゃんと出来てるはずだから、だから…」
使徒が身体を支えられなくて自滅したのは間違いないだろう、と。
「…なによそれ」
今回の使徒の件ではなく、あんまりにもあんまりな二人の過去の聞かされていなかった部分。
「…大丈夫、問題ないわ」
「問題無いわじゃないわよ。いい?アンタ、もしそんな事したらこのアタシが黙っちゃ居ないわよ!」
無表情に応えるレイに、アスカが激昂したように詰め寄る。
「…なぜ?」
恋敵が減るからうれしいのでは無いの?と口には出さないが視線で告げる。
「なんで、って…。なんとなくよっ!」
そう言い放ち、ぷいっと踵を返して先頭を歩き出す。
「…ありがとう」
ちいさく呟いたレイのお声が、やけにすんなりと耳に入る。
それきり帰宅するまで、口を開くことは無かった三人だった。
「さあ飲むわよぉ!!」
あっという間に使徒を殲滅できた。
しかも今回は完全に自分の指揮において、である。
手の空いた者を引き連れて、酒盛りに出かけたミサト達である。
「…ミサト?貴方だけのお手柄じゃないでしょ?」
実際イキナリ試験もした事の無い内向きのATフィールドの中和をいとも簡単に行った子供たちに依るところの方が大きいとリツコは考えていた。
「いーのいーの。指揮官たる私がそう言ってんだから。昔から言うでしょう?俺の物は俺の物、お前の物も俺の物。 って」
ジャイアニズムじゃないか、と勘違いしてはいけない。
意外に思うかもしれないが、これは冗談抜きにかの国に伝わる言葉なのだ(爆)
いやほんと、調べてて呆気に取られましたよ、マジデ。
浮かれて騒ぐ面々を見ながら、一人静かに飲むのが好みなのに、と呟くリツコであった。
- 86 :転載初号機 ★ :05/11/01 00:34:48 ID:???
- 「日本支部がS2機関を完成させたぁ?」
「噂よ、あくまでも」
チョッパリの癖に、などとブツブツ言いつつ愚痴るミサトを尻目に、コーヒーを啜るリツコ。
「…倒した使徒の詳細をこれ見よがしに全支部に見せて回ってるんですもの。資料は十分あるでしょうからね」
ましてや日本支部でならばその可能性は十分有る、と。
過去にも量産化は不可能だと言われたロータリーエンジンを市販車に搭載したのも日本である。
車だけにではなく、二輪車にまで搭載した物があるのはあまり知られていない事実であるが。
「なんでよ。この本部で出来ないのにチョッパリの連中に出来るわけがないじゃない!」
きっとどこかから盗んだに違いないわ!などと自己完結したりする。
最終的にはきっと、本部が教えてやったのよ!となるであろう。
何しろどうみても違うだろう?と言うものすら自国起源と言い張るのだから…。
「で、リツコォ。どうにかしてソレ引っ張れない?」
「事実かどうかも確認できて無いのよ?まさか噂で聞いたからよこせ、なんて言う訳?」
…いや、実際そう言う国だし。
某駐韓大使宛に、当時高校生だったある人物が 完 全 に 空想で書いた小説を送りつけ、日韓の歴史を正そうとしたことがあるくらいだし。
フィクション小説やドラマを元にした損害賠償請求が起こされたりする凄まじい国なのである。
…仮想と現実の区別くらい付けましょうね。
そんなだからネットゲームしっぱなしで死んじゃったりする人が出たりするンだとは言いたくナイデス。
「S2機関搭載実験するの、日本なんだ…」
こちらにも流れてきたその噂に、シンジが溜め息をついたりしている。
「へぇ、アメリカ支部はやんないの?」
「…実験場所自体は旧在日米軍基地…。リスクは日本に負わせる気ね。アメリカらしい」
きっと成功したらあれやこれやと圧力をかけて技術を格安で買い上げる気なのかもしれない。
それでも対価を支払うという点でかの国とは違うのであるが。
以前、kの国で国家プロジェクトとして高速鉄道施設事業が立ち上がった折に、いくつかの候補の中から日本とフランスが挙げられ、結局フランスはTGVに決まったのであるが…。
決まった経緯がまた素敵なのである。
まああくまで噂であるが…。
- 87 :転載初号機 ★ :05/11/01 00:35:09 ID:???
- 曰く、引っ張るだけ引っ張って、最終的には日本以外の奴にするニダ!
と言う話があったというのである。
どう資料を突き詰めても、国土の状況(山あり谷ありの日本や韓国に比べ、平地が殆どを占めるフランス)やサポートが容易い位置関係(お隣の国なのは言わずもがな)など、何故にフランスのTGVが選ばれたのか、不思議なほどである。
当時のJR幹部もまさか負けるとは思っていなかったらしく、当初は愕然としていたらしい。
しかし、その後やはりかの国の建設業者による手抜き工事によるトンネル壁の崩落、橋脚のひび割れ等々。
様々な点で弊害が発生した。
動力が各車両に分散され、単位面積あたりの荷重が低い新幹線に比べて、TGVは重いのである。
動力車両が客車を牽引するTGVは客車を牽引するために重く造られており、そのため高架をより丈夫に作らなければならないといった欠点があった。
また、本来トンネルなど想定されていない路線を走る車両ゆえ、トンネルに入った衝撃により車両が壊れたりするといった具合である。
最たるものは、様々な支障が発生し、もう予定通りにいかないという事が明らかになった頃。
kの国の方々からJRへ技術支援を打診して来たという事である。
その内容といえば。
新幹線の技術をウリたちに教えるニダ!
勿論その技術をウリたちが他所に売るのも許可するニダ!
当然只で教えろニダ!
…なに考えてるんだろう。
まあウワサですウワサ。【棒読み】
当然の事ながら、丁重にお断り申し上げたとか。
ちなみに韓国新幹線の着工日は1992年、ソウル-大邸間の暫定開業が2004年である。
真っ当に日本の新幹線を取り入れた台湾は、1999年事実上の工事着工、全線開業は2006年予定とのこと。
そうそう、韓国新幹線の残りの路線、大邸-釜山間は2010年、湖南高速鉄道においては2015年予定なのだ。
こうしてkの国はどんどん遅れを取って行くのだなぁ、としみじみと思ったりする。
- 88 :転載初号機 ★ :05/11/01 00:35:27 ID:???
- 「で、ミサト?一応機体増の申請は出したのね?」
「出したわよん。だけどさぁ、なぁんか知んないけど、無理っぽいみたいなこと言ってたわ」
ミサトの上申に対応した冬月によれば、現在の体制でまったく問題無いのだから、これ以上の予算増に繋がる機体の配備は期待薄だろうと言われたのである。
無論、ゼーレの都合によってはどうなることかはわからないのである。
「そうだわ!本部からの視察って事で実際見に行けば良いじゃない!」
あくまでもS2機関のことなど知らぬ顔で、と。
「…あまり気が進まないわね」
自身だけでならば問題ないと思うが、ミサトが一緒に行くというのは確実だろう。
恐らくは立ち入り禁止区域に平気で入ったり、触るなといわれているものに平気で触ったりするであろう。
「なぁ〜に暗い顔してんのよ。そんなだとシワ増えるわよ」
シワ延ばしの整形クリニック、いいトコ知ってるけど、などと気軽に言ったりする。
かの国における整形経験者の率は、日本とは比べ物にならないほどである。
その割合、実に20パーセント。
日本の2.7パーセントに比べて破格の数字である。
しかも若い女性向けのファッション雑誌に、まるで髪形を変えるかのごとき気軽さで美容整形を紹介したりしているのである。
若い女性限定の数字であれば、さらにその割合は上がるであろう。
「…日本に出張だって?リツコさんたち」
「そうらしいわね。まあどんな思惑があるか知んないけどさ」
ミサトは兎も角、リツコまで巻き添えで支部吹っ飛んじゃうのは困るなぁ、と言う意見の一致を見たのであった。
「…じゃ、ちょっと見てくるわ」
そういい残して姿が掻き消えるレイ。
「…だ、だんだん人間離れしてくわね、あの娘」
「…そ、そうだね」
人間じゃないんだけどね、と一人遠くを見つめるシンジ。
「…心配なんだ?」
唇を尖らせて視線をあちこちにさまよわせながらそう言うアスカに、そんなんじゃない、と言うシンジ。
「綾波がやり過ぎないか、心配なだけだよ…」
- 89 :転載初号機 ★ :05/11/01 00:35:41 ID:???
- シンジに害をなす可能性があるモノに対して容赦が無い最近の綾波さんである。
理不尽なかの国の人々の行いに辟易としている部分が多々あり、下手をすると綾波のほうがS2機関の実験よりヤバイのでは無いかと思う最近のシンジであった。
「…やるわね、日本支部」
正直どこまで詰めて行ってるのか興味深々だったリツコ。
S2機関の基幹となる紅い光球の再構築には目を見張らんばかりであった。
「すっごいわねぇ。まったく歪みがわかんないわ」
そう言って鏡面のような表面に触れようとする。
「ちょっと!そこの人!触らないでって書いてあるでしょう!」
ちょっと小太りな日本人技術者が大声で叫びつつ駆け寄ってくる。
「うっさいわねぇちょっとぐらい良いじゃないのよ!大体日本語で書いてあっても読めないわよ!」
「…ミサト、ちゃんとハングルでも書いてあるわよ」
「…マジ?」
書いてあっても読もうとしないかの国の方々特有の行動パターンである。
「あと、絶対見学順路の緑の線から出ないように。お願いではなくこれは日本支部司令の命令です」
「ええ、申し訳ないわね…ってミサト?」
言ってるはしから既に何処かへと居場所を移しているミサトである。
「日本支部司令の命令なんてケンチャナヨ」、とでも思っているのか、まったく耳を貸さないミサトである。
「…折角支部司令の命令書まで発行してもらってきたってのに」 _| ̄|○
「…わざわざそこまで…。お手数おかけして申し訳ないわね」
長い付き合いで慣れてはいるが、やはりリツコ的にも非常識極まりないのである。
「やっぱり半島の人間なんて全滅させれば良いのよ!」
ミサトの行方を気にしながら、日本人担当者に案内されているうちに、凄まじい怒声と共に破壊の音色が響いてきた。
「な、なにが起こってるの?」
工場でぽっかりと空いた空間で、ミサトがしゃがみ込んで呆然としていた。
その傍らでは、金髪の少女が、どうみても身体のサイズにあっていない戦斧を片手にミサトを見下ろしているところであった。
彼女の名はマリイ・ビンセンス。
規格外の適格者と呼ばれる、天才少女である。
- 90 :転載初号機 ★ :05/11/06 00:04:51 ID:???
- 「申し訳ありませんでした」
応接室のソファーに身を沈め、申し訳なさ一杯の表情で深々と頭を下げるリツコ。
その横で、なんで私が、などと、しでかしかけた事の重大さすら理解で来ていないかのような態度でブツブツと何か言っているミサト。
何故か着ている物が先ほどと違い、工場のマーク入りのツナギである。
そんなミサトに怜悧な視線を一瞬だけ送った直後、表情はまったくそのままで、何の予備動作も無くミサトのわき腹に肘を叩きこむ。
人体の急所を、ある意味格闘家よりも知り尽くしたリツコによる、蜂の一刺しであった。
「いや、貴方に頭を下げられても困ります。当事者が反省されておられないようですし」
悶絶するミサトを無視し、対面のソファーに座る小太りな日本人担当者が、結構辛辣なことをさらりと口にする。
リツコに対しては非常に懇切丁寧に対応する彼であるが、ミサトに対してはとてつもなく神経を張り詰め、警戒しているようである。
「それに、会話の成り立たない相手は動物と同等の扱いで構いませんわ。そうは思いません?」
日本人担当者の横にちょこんと座る少女が続けて口を開く。
マリイ・ビンセンス。
コアの書き換えなしで、あらゆるエヴァにシンクロが可能だという「規格外の適格者」である。
まあ戦闘を行えるほどのシンクロは出来ないらしいが。
「それにしても貴方が日本支部に配属されていたなんて初耳だったわ」
「はい、一応は部外秘でしたから」
支部においてのE計画担当者として、本部の責任者であるリツコとは面識があるらしく、穏やかに会話を行うマリイ。
一転して、ミサトが口を開こうとするとその愛らしい容貌とは裏腹な視線で射殺すように見つめ、言う。
「…次は止まりませんわよ」
さすがのミサトも言葉が続けられず、頬を引きつらせるのみであった。
- 91 :転載初号機 ★ :05/11/06 00:05:03 ID:???
- つい先ほどの事である。
「ちょ、ちょっと。ゲストの方はそれ以上は入らないでください!」
緑の見学者ルートから出るな、といわれたミサトであるが、まったく構いもせずに歩き回り、ついには「不法侵入者は発見次第発砲する」などと書かれた領域にまで足を踏み入れようとしていた。
勿論ハングルでも併記されているのであるが。
「ウェノムが銃なんてそうそう撃たないわよ♪」
などと、領海を平気で侵犯して密漁を行うkの国の漁船と同じ事を考えているようで、まったく気にした様子も無い。
ちなみにウェノムとは倭奴と書き、古代中華圏で使われた日本人に対する蔑称である。
そうして一般職員の制止など耳に入らぬかのように先へと進む。
と、その先に小さな影が仁王立ちして行く手を遮っていた。
「こんなことだろうと思ってましたわ」
冷たく響く声に、思わず立ち止まるミサト。
「貴方は此処への立入りを許可されておりませんわ。早々に立ち去りなさい」
西洋絵画から抜け出てきたような少しきつめであるが愛らしい容貌を持つ少女が、胸の前で腕を組んで毅然とした態度で長身のミサトを見上げるようにして言い放った。
「…子供が大人に向かって利いていいセリフじゃないわよ」
目下(と認識した相手)の者に偉そうに言われると、意地でもいう事を聞かなくなるのもkの国のデフォルトである。
「…警告はいたしましたわ」
そう言うと、傍らに立て掛けてあった身長に倍するほどの戦斧を両手で引き摺りながら、ミサト目掛けて駆け出した。
「ひぃっ!?」
容赦ない勢いで振り回されたソレは、思わず身を引いたミサトの髪を何本か断ち切って通り過ぎる。
「避けるな!」
無理な注文を付けつつ、標的を大きく通り過ぎてからようやく止まった得物を再び構えなおす。
懐の銃を抜こうとジャケットに手を差し込んでから、ここに入所する際に武装解除されたことを思い出すミサト。
再び目の前を通り過ぎる鉄の塊に、慌てふためき逃げ出す。
- 92 :転載初号機 ★ :05/11/06 00:05:33 ID:???
- ひぃぃぃ!」
落ち着いていれば、ミサトの技量であれば難なく避けることが出来るのであるのだが、パニック状態の彼女にソレを望むのは無理がある。
それでもどうにか直撃を免れているのは、ひとえに少女がその得物の重量に負けて、逆に振り回されているお蔭であった。
さすがに周囲の人も、目の前で刃傷沙汰になるのを恐れてか、ミサトを追い回す彼女を説得し、何とか血を見る前に落ち着かせる事に成功したのであった。
ようやく落ち着いた少女が、戦斧を構えなおすためにミサトを睨みつけたまま石突を地面に打ちつけ、その音が響いた時。
腰でも抜けたのか尻餅をついたままのミサトの股間から、温かいものが床に広がっていった。
「まったく、じき三十路になろうかというのに…。お漏らしだなんて恥ずかしいったらないわ」
「うう、ごめんリツコぉ」
…かの国の方々が、追い詰められた際にお漏らしをするのはよくある事例である…。
酷い時は小どころか大まで、と言う話である。
取りあえず初日の見学をすませ退出した二人。
リツコ個人のツテで、何とかS2機関の実験を見学する許可を取り付けたのである。
本部からのごり押しでは永遠にその存在すら知らされる事はなかったであろう。
何故って…。
何とかに刃物って言葉がそのまま通用する国民性だから、である。
TVの取材に応じた街角の人たちの言葉に…。
「核があったら?日本に向けて撃てばいい」
「もしアメリカが北朝鮮を空爆したら?日本に攻め込みます」
などと軽く言ってのける方々がいるのである。
「お前らの継戦中の相手は日本じゃなくて北だろうが!」と、日本に紹介されたそのニュース映像に突っ込みを入れた人は恐らく万単位でいるであろう。
某板では冗談のような事実に耐え切れず、
y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
↑のように、幾千幾万の屍をネット上にさらしたのである。
用意された車で日本支部から宿へと向かう二人を、支部の屋上から見つめる視線があった。
綾波レイ。
既にリリスの能力を吸い取った、天下無敵の女子中学生である。
「…S2機関は用無し。あると碇君が困るもの」
- 93 :転載初号機 ★ :05/11/06 00:05:46 ID:???
- 力が有ろうが無かろうが、どこまで行っても行動原理がシンジ基準であるレイなのだ。
「しっかしムカつくわねぇ、あのヤンノム」
さすがは世界に誇る罵倒語の豊富な言語である。
西洋人に対してもキチンと「洋奴(ヤンノム)」なる蔑称が用意されていた。
ミサトはホテルに入ってすぐ、リツコと別れて行動を始めた。
「確かこの番号で…っと」
支部から支給されたプリペイド携帯でぽちぽちとダイヤルする。
『くぁwせdrftgyふじこlp;?』
国内専用回線にも関わらず、ごく普通にかの国の言葉で受け答えをする、なにやら怪しげなところに繋がった。
「ヨボセヨ〜。あ、私ぃ本国から今日着いたところなんですけど。イキナリトラブッちゃいまして。ええ、はい、そうなんです。一方的にそう決め付けられまして…」
「金髪に染めてる方の人はアレ、希少種だぁね。そうは思わないか?兄者」
リツコら二人が去った後、工場の主任達が集まって口々に話していた。
「お前もそう思うか?弟者」
二人称は適当なモノが思い浮かばなかったためです。気にしないように【棒読み】
「チョーが付く位希少種だと思うのじゃ!」
「「妹者、お前いつの間に」」
「気にしたら負けなのじゃ」
イキナリ姿を現した女子社員が二人の脇から口を挟む。
「あの乳デカいのは要注意だな」
「もう監視はつけてあるよ弟者」
「さすがだな兄者」
「なに、長年本部と付き合ってないさ」
だが事態は彼らの思惑の斜め上をバレルロールで飛んでいくのであった。
深夜、某所。
ネルフ日本支部女子寮。
ここは比較的閑静な地区に建てられ、女性職員にも人気の独身寮であった。
そこに現れた怪しい人影。
真夜中だというのに凄まじい怒声を上げて騒ぐ一団が現れたのである。
- 94 :転載初号機 ★ :05/11/06 00:06:00 ID:???
- 「っくぁwせdrftgyふじこlp;ニダ!!」
語尾に〜ニダ!とついているように聞こえるのは気のせいです。
彼らは強引に敷地内に立ち入ろうとし、警備の者の制止に逆上する事で呆れさせ、さらには拘束される仲間を見捨て、寮内へと突撃していった。
宵闇に響く女性の悲鳴…と思いきや。
叫びを上げるのは、当の襲撃者たちであった。
「アイゴー!」
「どいて!もう許せない!!」
金髪を振り乱し、またしても戦斧に振り回されるお嬢様がいらしたのでした。
「ハジマ!ハジマセヨ〜!!」
逃げ回りながら止めてくれと叫ぶ侵入者。
最後の一人が取り押さえられるまで追いかけっこは続いたのであった。
翌日、ネルフ日本支部入り口。
やけにやかましい集団が奇声を上げながらたむろしていた。
「ネルフ日本は謝罪しる!!」
「ハマーンで殴られた」
などと書かれたプラカードを掲げて、である。
そんな様子を支部の外、入り口に近寄れないままのタクシーの中からニヤニヤしながら見ているミサトがいた。
「…これじゃ入れないわね」
隣に座るリツコが時間を気にしながら溜め息をついていた。
「ケンチャナケンチャナ。どうせこの分じゃ実験マトモに出来やしないわ」
平気平気と気楽に口にするミサトを眉をひそめて見つめるリツコ。
「…貴方、何か隠してない?」
「し、知らないわよ。在日コミュニティになんか知り合いいないし」
「…彼らが在日コミュニティだってどうしてわかるの?あなた、まさか…」
語るに落ちたミサトであった。
- 95 :転載初号機 ★ :05/11/06 00:06:16 ID:???
- 「…ま、まあ想定どおりといえば想定どおりだな、兄者」
「うむ、まさかイキナリ集団が来るとは思ってなかったが…」
団体でお越しいただいた彼らお引取りいただくために、ごくごく狭い領域において国家権力よりも更に強い某組織に連絡を取り、お持ち帰りいただいたあと、再度話し合いを進める現場主任達。
「で、彼らはどこに連れて行かれたのかしら?」
同席していたリツコが尋ねる。
「んー、きっと静かな落ち着ける環境で力仕事が一杯出来たり…」
「うん、豪華なお船で半年くらい魚釣りが出来たりする所じゃないかな?」
夜の襲撃を自力で撃退したマリイが主任達に話しかける。
「…根絶やしにしてしまえばよろしいのに。何故日本人はあんなナマモノを放し飼いにしておられるのでしょう」
その容貌とはかけ離れた辛辣なお言葉に、周囲のものはもう慣れているのだが、同席しているリツコは驚き、ミサトは顔が引きつっていたりする。
「まあよろしいですわ。次の対策はもううってますの?」
「ああ、もう部長から全権委任されたよ…」
兄者と呼ばれた主任が一枚の紙切れを机に放り出し、天井を見上げて大きく溜め息をついた。
「部長…悪魔だな」
後始末はこっちに任せろ、好きにしてよし、との命令書であった。
「って事なんで、あんまりヤヤコシイ事態にはならないと良いですね」
そう言って笑顔を見せながら、目が笑っていない主任達。
リツコは何がどうなってあの状況になったのかを理解し、ミサトは状況が後戻りできないようになっていることに内心焦っていた。
「では、実験開始」
S2機関の公開実験が行われ始めたが。
「…司令が?」
「はい。本部との折衝で問題点が山ほど出てきたそうです」
実験開始からしばらくすると、外線で緊急連絡が入ってきたのである。
「実験はそのまま続けててくれ。弟者、後を頼む」
「OK任せろ」
足早に立ち去った兄者を視線だけで追いかけ、コンソールに座るマリイに尋ねるリツコ。
「こんな重要な実験中に…。何かあったのかしら?」
「さあ…。支部司令直々、との事でしたから、本部の要求をウチが突っぱねたのだと思いますわ」
- 96 :転載初号機 ★ :05/11/06 00:06:30 ID:???
- この実験の成果如何によっては本部からの強制徴収すらありえることである。
その折衝なのだろうとリツコは理解した。
背後ではミサトが実験中のコンソールにちょっかいを出そうとしては弟者遮られていた。
「さわんなって言ってんだろうが!ゴラァ!!」
「ミ、ミーアンハムニダ(汗)」
高圧的態度には腰が引けるミサトでありました。
「…そろそろ、ね」
支部内の、暗闇の中で。
我らが綾波レイが、どお子か遠くに視線を送りながら、極太の送電配管を前に立っていた。
「…ATフィールド、展開。各種モニター、計測器にもジャミング…今!」
直径が身長を越えるほどのパイプが展開されたATフィールドにより切断される。
だが、警報その他はまったく鳴り響かない。
ただ、行き場を失ったエネルギーの奔流が、逆流していくのがレイには感じられた。
「…成功。次」
「た、大変です。S2機関、制御を受け付けません」
「なんですって?」
と、制御室の全員が一斉に背後のコンソールに視線を集中させた。
「…あ、あら?」
ミサトが今にもコンソールに触れようとするところであった。
「さ、触ってないわよ!」
実際に触っていないのであるが、誰もそんな言葉は信じていなかった。
「監視カメラの映像をあとで確認すればいいわ。弟者さん?私も何か手伝わせてくださる?」
「願ってもない事です。そちらへ」
素早い操作で考えられる全ての懸案を処理してゆく。
「駄目だ、もうオシマイだ!」
明滅する光球に、打てる手を全てうった彼らに残された手段はただ祈ることだけであった。
「嘘…」
だが、次の瞬間彼らを襲ったのは膨大なエネルギーの奔流ではなく、砂のように崩れ去る光球の姿であった。
- 97 :転載初号機 ★ :05/11/06 00:06:41 ID:???
- 「…成功。問題ないわ」
ここは支部の最上部に位置する支部司令室。
「ファーストチルドレン綾波レイさん。貴方が此処にこうして居ることについての詮索はいたしませんわ。よろしくて?私どもといたしましては実験が失敗した、と言うことが本部に理解していただけたのでしたらそれでよろしいの」
整理された部屋の中央に置かれたデスクでレイと相対している女性が支部司令であろうか。
「…ええ、それで構わない。別にどうでもいいもの」
実験の失敗は、レイによるS2機関への干渉が原因なのである。
「貴方に指摘していただいた点を考慮してシミュレートした結果、本来ならば支部ごと消失してもおかしくない事態に発展していたと、ウチのMAGIクローンははじき出しました。ありがとうございます」
呼び出された兄者主任が司令の背後に立ち、打ち出されたレポートを読み上げていた。
「今後日本支部はいかなる障害あろうと、ファーストチルドレンたる貴方をサポートいたしますわ。今後ともよろしく」
「…碇君が幸せになるのを邪魔しないでいてくれたらそれでいい」
そう言い残し、現れたときと同様にいつの間にか姿が掻き消えたのであった。
「…これでよかったのでしょうか」
兄者主任が、レイの姿が消えた位置を見つめながら、傍らの女性上司に呟きかける。
「あの彼女の力を見て、抗っても意味はありませんでしょう?ならば非力とは言え助力差し上げて後々の事を考えるのが私の仕事ですわ」
そう言って立ち上がり、部屋の隅に設えてある冷蔵庫から白い液体の入った小瓶を取り出し、レンジに放り込む。
「貴方もいかが?温めた牛乳は精神的に落ち着くわよ?」
厚手のマグカップに移したソレを振舞う支部長。
北海道は江別市の酪農家から仕入れた新鮮な牛乳を、大きく肩を落として受け取る兄者主任であった。
「私は触ってないって言ってるじゃないのよ!そうよ!監視カメラの映像を見たらわかるはずでしょ!」
拘束されたミサトが独房から大声を張り上げて叫んでいる。
「…貴方が触るな、って書かれて、しかも保護ケースまでしてあったボタンに触れてるシーンがキッチリ納められていたの。諦めなさい」
「そんな!捏造よ!陰謀だくぁwセdrftgyふじこおlp;!!」
事実触っていなかったのであるが…。
- 98 :転載初号機 ★ :05/11/06 00:07:04 ID:???
- 「…問題ないわ」
後片付けをしていた綾波さんが、ついでとばかりに完璧に映像データを捏造して立ち去ったのである。
「お帰り綾波。大丈夫だった?」
「何やってたのよ。連絡くらいよこしなさいよね」
出番のまったくなかったシンジ君とアスカさん。
シンジは完全に心配しまくっていたのであるが、アスカさんはシンジと二人っきりな時間が増えて嬉しかったのである。
「なんだか知んないけどさ?アンタがどこにもいないからって警護の人たちが慌てまくってたわよ?」
ネルフ本部の黒服たちである。
ロストしたと言っても彼らは報告を上げていないので公にはなっていない。
「…ごめんなさい、碇君」
でもまあ綾波さん的にはシンジが心配してくれただけで十分なのであった。
「…女子寮で集団飛び降り自殺?」
「なんだそりゃ」
ノートパソコンに向かった兄者主任、傍らに立つ弟者に呟きを聞かれ、画面を指し示す。
「ん、まあなんだ。説明するの嫌だからまあ読め」
【昨日未明 某国連所属女子寮前で飛び降り自殺?】
----通信
昨日未明、身元不明の男性二名が墜落死体で発見される。
目撃者の証言により、電柱の先端から、奇声を発しながら次々に飛び降りた、という事実が浮かび上がる。
前日にも死亡した男性と見られる集団が訪れていたとの地域住民の目撃もあり、女子寮の住人との関連をしらべて…
「「………さすがだな」」
遥かな斜め上の事態に、期せずして重なった言葉に苦笑する二人であった。
- 99 :転載初号機 ★ :05/11/08 16:40:27 ID:???
- 「結局リツコさんたちどうしたんだろ」
日本出張からこっち、音沙汰が無いのである。
「いんじゃないの?ミサトなんて居ても五月蝿いだけだし」
「…そうね。でも赤木博士は心配」
ミサト同様にリツコも帰国していないのである。
「そうだね。でも綾波の話だと捕まるのってミサトさんだけって事になるんじゃ無いの?」
日本支部において、ミサトが毎度の如く国民気質の本領を発揮した事にして身柄を拘束させたのでアル。
「…きっと、葛城一尉と一緒に拘束されている事にしているんだと思う」
「え?それってどういう…」
「バカねアンタ。決まってるじゃない、あっちのほうが色々と楽しめるからでしょ。実験とか実験とか実験とかさ」
そう。
実験を行う環境と言う点において、かの国は非常に微妙である。
例えば、クローン技術において。
1996年誕生の世界初のクローン体“ヒツジのドリー”の場合、277個作られたクローン胚から生まれたのはこの一頭だけであったという。
韓国で近年行われた例を見てみると、2005年に成功例が発表されている。
その成果はと言うと1095分の2、と言う数字だそうだ。(記事によっては1095分の3とも。まあどっちにしてもアレだが)
…最初期の半分ほどの成功率ですかそうですか。
生物の種類が違う、といわれればそれまでですが、なんとも言い難い話です。
ちなみに選定された生物は、というと。
何の目的かは知りませんが【棒読み】他国の研究機関が馬やヒツジ等、クローンによる同じ性質を持つものが生まれた場合、商品価値の高い生物を扱っているのに対し何故か犬なのであるが…。
しかもペットとしてはブリーダーから最も嫌われているアフガンハウンド。
見た目は立派で、身体も大きいが…懐かない犬種ナンバーワンなのだそうだ。
実験用の動物を得るためと言う、その研究者側の意見があるそうですが…。
実験材料がキチンと弔われているかどうかまでは、私は寡聞にして存じ上げません。
ええ、知りませんとも。
「あら凄いわね。そのデータ、ちょっと拝見させてもらえるかしら」
本国でシンジらが心配しているとはつゆ知らず、リツコは日本支部で嬉々として様々な実験に参加してたりする。
「やっぱり日本は良いわねぇ」
窓越しに、研究員が作業する実験練を覗きながら歩くリツコ。
- 100 :転載初号機 ★ :05/11/08 16:40:40 ID:???
- 「そうですか?上からの締め付けはキツイですし、予算も先の見えない分野には回ってきませんけど…」
マリイが付き添うようにリツコについて回る。
「まあその辺はアメリカさん辺りと比べちゃうとね。でもウチなんか酷いのよ」
「アチラも研究には結構投資されてると聞きましたが?」
「表向きはね。海外流出した頭脳を回収、何ていってもね」
幾ら優秀だと言っても、かの国においては目上の者の意見が絶対なのである。
そんな国に、ちょっと頭が回るものなら帰るはずが無い。
また、国内情勢も法治国家といえない部分が多々ある。
例えば、である。
法の基本原則として、不遡逆性と言うものがある。
それは、制定以前に犯した違反は訴追されない、と言うことなのであるが…。
かの国は素敵にもこれを国策として行うのだ。
そのもっとも有名で悪質なのが“親日反民族特別法”である。
正式には『日帝強占下 親日反民族行為真相解明に関する特別法』と言う長ったらしいものである。
内容は、といえば、日本が朝鮮を統治していた時代の「親日・反民族行為」を調査し、歴史に残そうという法律で、処罰に関する規定は無いらしいが、これにより社会的に抹殺されたりする人物が大量に発生すること請け合いである。
他人の欠点は突かなければ損だ、と言う感じの精神構造の持ち主が多い国民である。
本人でなくとも、先祖がもし親日家だ、と言うことになった場合。
かの国では素敵なお取り扱いがなされるに違いないとオモワレ。
「で…ミサトはいつ出てこれるのかしら?」
溜め息をつきながらマリイに尋ねるリツコ。
「さあ?部長がなにやら楽しい趣向でオモテナシしているとのことですが…」
と、非常に嬉しそうに笑う。
その笑みを見て、何か感じるものがあったのか、頭を振ってその脳裏に浮かんだ事柄を吹き飛ばそうとする。
(私にそのケは無いわ。無いったらないわ)
などと思っていたかどうかは定かでは無い。
- 101 :転載初号機 ★ :05/11/08 16:40:57 ID:???
- 「むぅ…」
「どうした碇。難しい顔をして」
常に難しい顔な気もするが、冬月にはその違いがわかるらしい。
「…うむ、冬月。マトボッククリとはなんだ?」
真顔で聞いてくるゲンドウに、冬月は思わず噴出しそうになる。
「…知らんのか?日本を起源とするコレクションアイテムのことだ。毎年今頃の時期になるとコレクターたちがこぞって買い付けに走るという話だ」
昔日本で教鞭をとっていた頃、ネットでまことしやかに流れていた話しを思い出しながらゲンドウに講釈をたれる。
曰く、セレブリティな趣味で大変金が掛かる。貧乏人には手が出せない。
曰く、先進国で爆発的な広がりを見せている。
曰く、日本が起源、だと言うこと等々。
「噂ではマトボックリリというのが本来の名称で、起源は韓国だ、とい…」
最後まで言うことなく冬月の言葉は遮られる。
「やはりそうか!」
不意に叫びを上げ、立ち上がるゲンドウ。
「…だから一体どうしたというんだ」
「冬月、総力を挙げてマトボックリリを集めろ。このチョッパリをギャフンといわせてやる」
ギャフンなどと、今時使う人間を実際見たのは初めてだよと口にはせず、ただ
「ああ、わかった。手配しておく」
とだけ答えたのである。
机に肘を突いたいつもの姿勢にもどったゲンドウの前にあるディスプレイには、韓日翻訳サイトの書き込みが映し出されていた。
『*******:日- 未だにマトボッククリも知らないなんて、やっぱり韓国の人は遅れてるね』
『 ****:日- えっと…釣り?』
『 *****:日- いやいやいや、マジデ知らないみたいだよ?』
『 ******:韓- 近いうちに俺が本当に金持ちだという証明に大量のマトボックリリの画像をウpしる!誇らしいデスネホルホルホル』
「…碇」
「なんだ」
食い入るように画面を見ながらニヤニヤと笑うゲンドウに、軽く首を振る冬月。
「…もう何もいわんよ」
深い溜め息をついて司令室を後にする冬月であった。
- 102 :転載初号機 ★ :05/11/08 16:41:12 ID:???
- 「でもさ、前の時は参号機に取り付いてきたんだよね、輸送時だっけ?」
オヤツを摘みながら、赤木邸で次の使徒の対策を練っているシンジ達である。
「乗っ取られてエヴァの姿のマンマ攻めてきたんだ。へぇ」
ポリポリとチョコレートコートされたプリッツをかじるアスカ。
使徒対策なんて無くてもアタシに掛かれば御茶の子さいさいだとでも思っているのかまったく気楽なものである。
「美味しいわねコレ、なんてーの?」
「えっと…なんて読むんだろ。…綾波?」
「…ペペロ。韓国でも有数の大企業の韓国ロッテ製のバッタ物」
断言する綾波さん、ステキデス。
「…ポッキーの韓国向け製品じゃないんだ…」
日本の江崎グリコ製のポッキーは国外でも人気があるので当然海外でも販売されている。
その際ポッキーという名称がちょっと拙い表現に当たる国では当然名称を変更する。
(例 英語で「あばたのある」という意味になるため英語圏などではMikadoという名前で販売されているそうな。またマレーシアでは男性器を意味するとかで、ロッキーと言う名称になっている)
何故だか知らないが、海外のアニメファンの一部ではオリジナルのポッキーを捜し求める方たちも居るとか。
どうしてそんなに拘るのか、と聞くと、なんでも「最優先事項よ」だからなのだとか。
え…っと。……おねティ?
まあそれはそれとして。
なのでシンジはてっきり韓国向けのポッキーだと思い、購入してきたのである。
「じゃあさ、ポッキーの日みたいに11月11日がペペロの日だったりして」
などと笑うが、次の瞬間凍りつく。
何故ならば
「…正解。碇君、よく知ってるわね」
と、冷静に返されたからである。
「ちょっとファースト?もしかして今日シンジが買って来た御菓子、全部偽物じゃないでしょうね」
テーブルに所狭しと置かれたお菓子の包み。
その大半がアスカの胃袋に収まる運命とは言え、購入役はシンジである。
品定めも当然シンジの目によるのだが、やはり見慣れたパッケージに似た商品に手を伸ばしていたようである。
「コレは?」
一個一個手に取りレイに見せるアスカ。
「かっぱえびせんの偽物、セウカン」
- 103 :転載初号機 ★ :05/11/08 16:41:37 ID:???
- チラリと見ては躊躇無く答えるレイ。
「コレ!」
次々と見せるが…。
「きのこの山の偽物、チョコきのこ」
悉くが偽物扱いである。
「コイツは!?」
「おばあちゃんのぽたぽた焼きのパッケージを無断使用したキャンディ」
「…コレ!」
「明治フランの偽物、フレンド」
「……コレ…」
最早どうでもよくなりかけているアスカ、問いかける声にも力強さがなくなってきている
「キットカットの偽物、キッカー」
「…コレは?」
「ハイチュウの偽物、マイチュウ」
「コレ…は…?」
「森永エンゼルパイのパクリ」
「…ん」
「ポポロンの真似」
「はぁ…もしかして、こっちの奴も全部?」
「キャラメルコーンの真似、ひよこ饅頭のパクリ、パイの実の偽物、パックンチョのバッタ物、カロリーメイトのパチモノ」
「ああああああああああああっ!もういいっ!シンジっ!ちゃんとしたの買って来て!って言うか作れ!」
「ええっ!なんでそうなるんだよ!」
「…碇君の作った御菓子…美味しそう」
「綾波まで…ひどいや」
否応無く食事に続き、オヤツ作りまでさせられることとなったシンジであった。
「…コレはコレで結構楽しいや」
使徒対策も何処へやら、バターを切りながら鼻歌交じりにお菓子作りに精を出すシンジくんであった。
合掌。
- 104 :転載初号機 ★ :05/11/08 16:42:10 ID:???
- おまけ
今日の葛城さん
「いいいいいいいいいいいいいィぃぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!」
日本支部の工事中区画の奥底で、女性の悲鳴が響き渡る。
「はい、ユンボバケット空の旅終了。次はユンボで行く棒倒しの旅、さー行ってみよー」
「じょっどばで。いつばでやらぜるぎよ」
鼻水と吐瀉物に塗れたミサトが涙目で周囲の職員達を睨む。
「いやだなぁ。貴方がしでかしたS2機関の実験の邪魔による当支部への負債を返しきるまでに決まってるじゃないですか」
ニコニコと笑う男のセリフが棒読みなのは言うまでもない。
「さあ、まだ利息分にもなってませんよ。ハイ、ユンボグルグル空の旅は35回転で嘔吐しました、ぴたり賞のいらっしゃいますか?」
そう。
ミサトは負債を抱えてしまったため、かえるに帰れないのである。
…実のところ、ただの憂さ晴らしの博打のネタにされているだけであるが。
「さぁ葛城一尉。貴方が当てれば親の総取りですからね。頑張ってください」
「もういやぁぁぁ〜〜〜〜〜〜」
- 105 :転載初号機 ★ :05/11/15 18:21:40 ID:???
- そろそろ寝ようかとしていた時間に呼び出された三人。
多少眠い目を擦りながら、発令所のスクリーンを見つめていた。
「…取り付くのがなかったから、って言ってもさ」
前回の折には空輸されたエヴァ参号機に取りついた使徒であったが…。
「ほんと、なに考えてんのかしら…って考えて無いのね、きっと」
霰の天使の二つ名を持つ、使徒バルディエル。
「…キール、折れてる」
なんと、嵐から避難しようとしていたkの国の某揚陸艦に取り付いていたのであった。
「…仮にも軍艦なのに…。たかだか5m程度の高波で湾内に退避ってなに考えてんのよ」
アスカの呟きに頷く二人。
発令所の巨大スクリーンに映し出されたアジア最大級の揚陸艦には、幾多の亀裂が見て取れる。
そのヒビの隙間から覗く、白い粘菌のような物質が使徒なのであろう。
「それが…あのヒビ、使徒に寄生されたからじゃないって言う話しなのよ…」
そんな三人の疑問には、オペレーター席に座る女性が振り向き答える。
「それってどういう…」
「あんまり大きい声じゃいえないんだけど…。この国の海軍の船ってね、殆どが強度不足で改修されてるのよ」
信じられないかもしれないが、kの国の軍に所属する艦船は、外洋航行を主眼においていないのである(爆)
なんでも波高が4mか5mを越えたら湾内に退避することを前提に設計されているというのだ。
そのため、艦齢が若いはずの艦ですら各部に亀裂が入り、予定外のドック入りを余儀なくさたという。
「それに、あの船の設計洗いなおしたんだけど」
と声を潜めて言うマヤ。
「満載にしたら底、抜けちゃうかもしれない強度しか無いのよ」
こんなはずは無いだろうと何度も何度も計算しなおしたというのだが…。
もし計算が間違っていないならば、入手したデータが間違っているとしか考えられない。
…データが間違ってるんだろう、きっと。
うん、そうに違いない【棒読み】
「じゃあ、放っておけば勝手に沈んでくれるかも…」
つい口に出たその言葉は、マヤの横手から口を挟むメガネのオペレーターに阻まれる。
「そう言うわけには行かないよ。さすがにパターンブルーも確認されてるからね」
- 106 :転載初号機 ★ :05/11/15 18:22:26 ID:???
- しかも、艦が折れて沈みそうになった時に使徒が目覚めたようなのである。
「きっと、使徒もあんなところで目覚めなきゃいけなくなるとは思っても見なかったんだろうねぇ」
恐らくは湾内に避難を終えてから目覚め、本部を目指す気だったのだろう。
しかし、某揚陸艦は避難を終える前に艦体に致命的ともいえる損傷を生じ、使徒としてはかなり不本意な位置での覚醒となったのである。
「司令…は不在か…。副司令!ご指示を!」
「うむ…」
発令所上段で一人佇む白髪の副司令に皆の視線が集まる。
(…碇め、いったい何を考えておるのだ)
と、声にせずに呟き再び声を上げる。
「進路上にある船舶の避難が済み次第エヴァ全機を投入、これを殲滅せよ。作戦の仔細は日向君に任せる。以上だ」
ちなみに未だリツコとミサトは帰国していない。
ゲンドウはというと…。
「…これだけ手を尽くしてもマツボックリリが手に入らんとは。チョッパリめ」
などと言いつつ司令室から離れないでいるようである。
「来たよっ!」
「見えてるわよっ!」
「了解」
真っ直ぐに岸壁へと突進してくる独○艦に、身構える三機。
本来の性能はどうあれ、使徒が取り付いているのは確かなのである。
「来いっ!」
どかぁあああん。
そのままの勢いでコンクリートの護岸を吹き飛ばし、陸地に乗り上げる。
「えっと…」
地面を伝わる衝撃と、吹き上がる粉塵に、呆れつつも間合いを取りなおす。
「…動くわ」
レイの指摘に再び身構える三機。
三機に囲まれた使徒は、ひび割れた艦体をまるで芋虫のように蠢かせて前進を始めたのである。
- 107 :転載初号機 ★ :05/11/15 18:23:31 ID:???
- 「…なーんか、ヤな感じぃ」
「…王蟲?」
「いや、それはちょっと」
違うんじゃないかな、と言いかけたシンジであるが。
伸びきった艦体から吹き出た粘菌状の使徒を避けながら、そんなこと考えてる場合じゃないよねと思いなおす。
「日向さん!相手は切ったりしてもやっつけられそうにないです!」
以前参号機に取り付いていたときは、3号機と一蓮托生呉越同舟であったのか、3号機が修復不能なほどにクチャクチャにされた時点でパターン青は消えたようであったが…。
今回寄生された方は既に死に体である。
「わかった。国連空軍にN2爆撃を要請するから、その間使徒を抑えておいてくれ」
「案外簡単だったわね」
「そうだね」
前回N2を落とした旧韓国軍転用国連軍ではなく、今回は日本の旧航空自衛隊の国連空軍から遠征してもらっての精密爆撃であった。
「在韓国連軍に任せたら、また焼かれちゃうかもしれなかったし」
嫌な思い出である(笑)。
まあ無難な所であろう。
翼を振って去っていく、築城基地所属の第8航空団第6飛行隊のF-2支援戦闘機群。
航続距離が800km程度の機体なので、本来帰還出来る距離では無いのだが。
きっとガス欠前には、浜松基地から飛んできたKC767により給油されることであろう。
このF-2支援戦闘機、kの国では「チョッパリの失敗作」と反日な彼らのいいネタにされることが多いのであるが。
実のところ基本性能自体は悪くは無い。
いや、むしろ高性能といっていいのだが…。
しかしながら初期不良の多発による印象の悪さや、機体のミニマムさから、これ以上の発展が見込めないとされ、調達計画が縮小されてしまったという悲運の機体である。
F16ベースではなく、完全に国産であったならどのような機体であったろうか。
設計者にガンダム世代が居れば、きっと面白い試案の一つや二つ出ていたのでは無いかと思ってしまう今日この頃である。
- 108 :転載初号機 ★ :05/11/15 18:24:26 ID:???
- 今日の葛城さんと赤木さん
「…そろそろ帰国しようと思うのだけれど…」
「え〜、帰っちゃうんですか?残念です」
そろそろ本部のほうが心配になってきたリツコ。
暇乞いに支部司令の元を訪れたあと、ミサトを連れに支部某所へ顔を出したところである。
そこには件のマリイや、兄者主任などがわいわいと宴を繰り広げていた。
「あんらリツコじゃなーい。どったの?」
「…どったのじゃないでしょ。帰るわよ、ミサト」
「もう帰るの?もうちょっといいじゃなーい」
日本嫌いなミサトがこんなことを言い出すとは、と目を瞠るリツコ。
「…何かあったの?」
未成年ゆえ、ノンアルコールに徹していたマリイに尋ねてみる、と。
「ええ、とりあえずお仕置きも一巡したので…。無礼講だ、って兄者主任が言ったらしいんですけど…」
ミサトへのお仕置きが一段落したようで、儲けが出た胴元が酒宴を開いたのである。
ちなみに無礼講と言うのは日本独特の酒宴の形式である。
何しろkの国においての酒宴は、儒教のしきたりによって非常に堅苦しいのである。
まあ堅苦しいのがよいと思うか悪いと思うかどうかは人それぞれであろうが、一回注がれた酒は必ず飲み干さねばならなかったり、目上の人に飲んでいる姿を見られないように横を向き、口元を隠して飲み干さねばならなかったりと、一々面倒が多い。
その点日本では非常におおらかである。
しかもストレートの焼酎が多いkの国と違い、ミサトが好むビールが酒宴の中心なのであるから。
「ほらほらアンタもグーッとグーッと」
よほど日本の酒が肌にあったのであろう。
なるほど、日本のビールは下面発酵類ではトップクラスの醸造技術を持つだけに、世界的評価も高い。
モンドセレクションでグランドゴールドメダルを受賞した銘柄もあるほどである。
「…まったく」
表情を曇らせながらも杯を受け取るリツコ。
「仕事以外だと結構まともなんですね、あの人」
辛辣なマリイの言葉に、苦笑するリツコ。
「…でなきゃ今まで友達付合いしてないわ」
そう言って杯を傾けるリツコであった。
- 109 :転載初号機 ★ :05/11/29 18:10:21 ID:???
- 「ねえ綾波」
「…何?碇君」
「ちょっとシンジ、コーヒーおかわり」
日陰のベランダで、景色を楽しみながらオヤツを楽しんでいる三人。
「あ、うん。…でさ、綾波」
じょぼじょぼと、アスカの突き出したマグカップにコーヒーを注ぎつつレイに声をかける。
「勝手にこんなところに来て良いのかな…?」
ここは大分別府温泉。
日本の誇る温泉郷の一つである。
「平和ねぇ」
注いでもらったばかりのコーヒーに、砂糖とミルクをたっぷり居れてすするアスカ。
「…そうね」
シンジの問いに答えたのか、アスカの呟きに同意したのか。
レイの言葉はどちらにも取れるのであった。
そう、次の使徒が来るまで約一ヶ月余り。
三人はこっそり日本へと息抜きに来ていたのであった。
「…幾ら14番目が楽勝だったからって。良いのかなぁ」
一人シンジだけが、気にしてたりする。
実は先日、殲滅したネバネバ使徒の後始末をしている最中に、次の使徒がやって来たのである。
「ああ、そういえばすぐだったよね」
とはシンジの言葉。
13使徒を殲滅して日を置かずに次の使徒が来たのを思い出したのである。
自分がパイロットを辞めて街を出て行くその時に来たのであるから、もっとはっきり覚えておけよと思うが、いかにも彼らしい。
13使徒が寄生するべきものを見つけられず来るタイミングを逸し、スケジュールが押してしまったためであろうか、前回よりも遥かに短いスパンでやってきた14使徒。
しかし今回の彼は悲惨であった。
18層の装甲を一撃で貫通する高出力の目からビームは。
「…眩しいの、嫌いだから」
と言う綾波さんの零号機による、光波、電磁波、粒子すらも遮るATフィールドにより弾かれ己を焼く羽目になり。
- 110 :転載初号機 ★ :05/11/29 18:11:15 ID:???
- 弐号機に避ける間すら与えず両腕を切り落とした蝕碗による攻撃は。
「わかるわ!ATフィールドの意味!」
エヴァの中の人が誰で、何故そこに居るのかを理解したアスカ嬢操る“どこまで跳ぶん?”な弐号機に避けられまくり。
トドメは前回失敗した特攻の意趣返しとでも言うかのごとき、零号機による滅多打ちにより殲滅。
非常に危なげない戦いであった。
なお、この戦闘において発令所で指揮を取ろうとしたゲンドウは、と言うと。
(裏死海文書によれば、この使徒は最強らしい。では打つ手が無くなった最後の最後でこの私による起死回生の逆転采配で…)
などと妄想しているうちに終ってしまっていた。
「しっかし…ここもあんまり変わんないわね」
さて街へでも、と思い部屋を出た三人。
周囲に溢れる観光客の、半分にも及ぼうかという人数がkの国の言葉を発していたのを耳にしたアスカの言葉である。
ここ別府、杉●井ホテルは、kの国の観光客が大挙して押し寄せる事で有名であった。
「仕方ないよ、あっちじゃ一番予約取りやすかったんだから」
シンジの呟きに頷くレイ。
彼女にしてみれば宿泊先など何処でも良かったのであるが、これほどまでにkの国の方々が多いとは誤算であった。
「…まあしょうがないわね。あんまりにも酷かったら宿変えましょ。ウォンから円に換金済ませた?」
2002年のサッカー共催時に、漸く国内でのウォンの換金が緩和されたため、大きめの郵便局などでも換金することが出来るようになった。
別に出来なくても困らないと言う話であるがw
頷くシンジに口元を歪めるアスカ。
「さあ、バッタ物じゃないヌイグルミ、取るわよォ!!」
「だからさっさと搭乗させろって言ってんじゃないのよ!」
ここは日本、新東京新国際空港の国際線ロビー。
やけに五月蝿い声がギャンギャンと響き渡っている。
その張本人たる人物…そう、葛城ミサトその人である。
「…そう申されましても、ただいま機体の整備が遅れておりまして…」
「んナコと知らないわよ!さっさとしろって言ってんじゃない!」
これである。
- 111 :転載初号機 ★ :05/11/29 18:12:24 ID:???
- kの国の観光客が、悪天候で飛べない場合でさえ文句を言いまくるのはよくあることである。
機内でのいざこざを嫌った航空会社が、いざ飛行機が飛べる段になっても わ ざ と 置いて行ったりした事さえあるのだ。
「まぁったく、何びびってんのよ」
普通は飛びませんから、故障してたり台風来てたら。
相方が騒いでる間、リツコはと言うと…。
「ふぅ…。やっぱりビジネスクラスにしてよかったわ。ファーストクラスの設定が無いのは距離が短いから仕方ないわね」
自費でアップグレードしたビジネスクラス用のお客様専用待合室で、一人寛いでいた。
「…何よあいつら」
アスカは目の前で起こったことが信じられず愕然としていた。
道の上の突起の付いた黄色いブロック。
視覚障害者誘導用ブロックと言うのであるが。
これをアテにして歩いていた白い杖をもった中年女性の前に、わざと障害物になるように放置自転車を置いた者達が居たのである。
その数3人。
しかも、そうして困っているのを遠巻きに見て、嘲笑しているのである。
「…っ!」
瞬間、アスカの意識が沸騰した。
止める間も無く…というか止められたとしても、誰一人として止めようとしなかったであろうが。
猛然とダッシュしたアスカの、その虎拳は彼らの顎を撃ち、その肘は肺腑を抉り、返す踵が脳天を打った。
接敵して一秒に満たないうちに、全ての目標を討ち果たしたのであった。
ドイツにおける障害者福祉の精神を知るアスカにとって、この行為は万死に値するものであった。
「ふんっ!」
アイゴーなどと呻くヤツラを一顧だにせず、困り果てている女性に近寄り自転車をどけてやる。
「…大丈夫ですか?自転車が倒れて邪魔してたみたいですね。さ、どうぞ」
綺麗な日本語で女性に告げると、何度も頭を下げる女性に気にしないでと言って、見えはしないだろうが手を振り見送る。
「アスカ、大丈夫?」
「あったり前でしょ!あんな卑劣な奴等がこのアタシに指の一本も触れられるわけ無いじゃない!」
心配そうに近寄るシンジに、胸を張って応えるアスカ。
「…いいことしたね。僕なんか、アスカみたいにすぐには動けなかったよ」
「べ、別にそんなんじゃないわよ。あいつらが腹立つからぶっ飛ばしただけよ」
- 112 :転載初号機 ★ :05/11/29 18:13:03 ID:???
- そう言ってプイッと他所を向く。
「…あ、あんたも次はちゃんと人助けすんのよ?わかった?」
「そうだね。アスカみたいに出来るようになれたらいいな」
照れるアスカに和むシンジ。
そんな二人を見ながら、倒れ伏した三人をぐりぐりとイタブル綾波さんであった。
「…すぐ黒い服を来た人たちが貴方達を迎えに来るわ。御大事に」
と、ニヤリと笑う。
逆行してきてすぐ、幼い綾波さんの外見は障害者と見られ様々な迫害にあったのである。
無論直接の被害は無かったが、そう言う仕打ちを当然のように与えることが出来る人間が居る、と言う事実が悲しかった綾波さんであった。
「綾波?はやく行こう!」
わらわらと寄って来た黒服(ネルフ日本支部所属)に非道な連中を預け、その場を去る三人。
「あの人たちは?」
見慣れぬ黒服たちを視線で追い、レイに尋ねるシンジ。
「この間知り合った人。だからもう大丈夫」
先日行った日本支部での一件以後、日本においての行動には、全面的にサポートを得られるようになっているのであった。
- 113 :転載初号機 ★ :05/11/29 18:13:31 ID:???
- 今日の葛城さん
機体整備の遅れのため搭乗まで時間が空いてしまったミサト。
空港内の免税店で買ったビールをいきなり空けて、眠りこけていた。
「あ、あれ?」
漸く目覚めて周囲を見回すが、辺りには人影もまばら。
「…の、乗り遅れ、た?」
漫画汗を滴らせ、呆然とするミサト。
次の便が翌日早朝しかないと聞き、ロビーで寂しく一夜を過ごすミサトであった。
「やっぱり日本は良いわ。猫グッズも多くって♪」
空港の売店で、ハ●ーキ●ィグッズを買いあさってご満悦のリツコ。
相方の乗り遅れなど気にもしていなかったのでありました。
どっとわらひ。
- 114 :転載初号機 ★ :05/12/14 12:20:31 ID:???
- 「…碇君何してるの?」
「え…何って」
ホテルの売店で、ショーケースと睨めっこしているシンジ。
無論お土産を買おうと算段しているのである。
今の状況を見て、他に何かしているように見えるのだろうかと、シンジは考えたりもしたのであったが…綾波だからなぁ、と思いなおした。
「うん、お土産をね。一応皆に買って帰ろうかと思ってさ」
「…そう。…気をつけて」
「…お土産買うのに何をどう気をつけるのさ…」
大分名物「やせうま」を握り締め、汗を垂らすシンジ。
「…お土産を送ると言うこと。それは事大すると言うこと。間違ってもそう言う意図だと思い違いされないで」
何を買うかではなく、送る相手に気をつけろと言うことであった。
「…買わないほうが…良いのかなぁ」
「買うのなら、誰か個人にじゃなく、皆に。お世話になってる部署にまとめてのほうが良いわ」
「難しいんだね…」
「シンジシンジ〜〜!って、あんたも居たの?」
両腕に、買い込んだ品が一杯詰った紙袋が幾つも握られているアスカである。
「…また沢山買ったんだね、アスカ」
「じゃ、持っててね」
シンジに大量の紙袋を押し付け、そう言うなり再び目当ての店へと駆け出すアスカ。
「…まだ買うのね、お土産」
「全部自分のだろうけどね…」
さて僕は何を買って帰ろうか、と溜め息をつくシンジであった。
どうせ綾波は何も買わないんだろうなぁ…と心の中では更に巨大な溜め息がつかれていた。
「はい、マヤ。お土産よ」
丁度そのころ。
リツコは日本土産を皆に配っているところであった。
さすがにリツコ相手に変な考えを持てるようなバカは居ない。
ありがたく下賜されるように受け取るのが常であった。
「わあ、ありがとうございます先輩」
包み紙を早速開き、目を輝かせる。
「うわぁ、化粧品ですね、それもこんなにたくさん。助かりますぅ」
- 115 :転載初号機 ★ :05/12/14 12:21:24 ID:???
- 日本メーカーの化粧品が基礎化粧品から何から何まで、一そろい入っていたのである。
「ああっ!これこないだネットで見て買おうかどうしようか迷った新色♪」
喜色満面といった感じのマヤである。
「他の子達の分もここにあるから、みんなに配ってきてちょうだい」
「はいっ。みんな喜びます。やっぱりこっちの化粧品ってイマイチですから」
日本の化粧品のクオリティは、どこに出しても恥ずかしくないのである。
「そうそう、これオマケね」
そう言いながら日本で買った今月号の女性ファッション誌を手渡す。
「わあ、みんなこういうのに飢えてるんですよね。じゃあ早速」
kの国の化粧にナチュラルメイクなど存在しないのである。
そのため何故か一昔前の芸能人のような化粧を施している女性が多い。
であるが、やはり実例を出して見せればマトモな若いkの国の女性は日本の今風の化粧法のほうが良い、と気が付くのである。
「ごま油…。ほんとにこんなのが喜ばれるの?」
「…たぶん。人に物を送ったこと、無いもの」
サスガに何も買って帰らないと言う選択肢は取れなかった小心者のシンジ。
自信なさげなレイの言葉に色々と店の人に聞き、kの国の観光客がよく買って帰る品を聞いてみたのである。
「…最近は以前ほどじゃないってさ、ごま油」
「そう…」
kの国では、ごま油が製品として売られるようになった最近まで店にゴマを持っていき搾ってもらうのが普通だったと言う。
そのため既製品として店頭で販売されているごま油が、高級品として珍重されていたと言う。
まあ現在でも日本産ごま油に、特に高級品に関しては高い評価があるのは事実であるが。
「年齢の高い人が買っていくのはお酒が多いんじゃないかって。特に高そうな瓶の奴、だって」
「…そう、見た目で選べばよいのね」
「あと、和菓子の詰め合わせも良いってさ。他にはミルク系の甘いお菓子もって」
「…和菓子も見た目、或いは甘さ…」
「…呆れてないでなに買うか選ぼうよ。試食品もあるみたいだし」
- 116 :転載初号機 ★ :05/12/14 12:22:15 ID:???
- 某お土産屋によると、ある国の方々は、試食の箱(商品に隣接する形え置かれている透明なプラスチック製のアレ」)に入っている分全て食べてしまう方も多いのだとか。
あまりにも早くなくなるので入れる量を少なめにして頻繁に補充するようにしたのであるが…。
「試食の量が少ない!あいつは俺より食った。俺も同じかそれ以上食わないと損だ」
と言うような内容であろうと推測される空気の振動が、店一杯に響き渡るんだそうな。
…(−人−)ナムー
どうにかこうにか土産物を決めたシンジ達。
後は残る時間を楽しむだけとなった。
「何か美味しいものでも食べようか」
「…そうね」
「ねぇシンジ。アレなんて書いてあんの?」
「炭火焼肉、豊後牛使用って。…あ、そっか。喋れても読めないんだね、日本語」
「そーなのよ。喋るのは韓国語も日本語もラクショーだったんだけどね」
「…す、すごいね」
「別に凄くなんて無いわよ。イギリス人でもフランス人でもドイツ人でもさ?どんなにバカだってその国の言葉喋ってるじゃない」
「それはそうだけど…」
やはり頭の回路の出来が違うのだろうか、としょんぼりするシンジ。
「で、美味しいのかしら」
「美味しいとは思うけど。綾波が、肉駄目なんだよね」
「そうだっけ?」
目を丸くしてレイに問いかける。
「…ええ、肉、嫌いだもの」
むー、と唸るアスカ。
「あのさ、別に他のモノでも美味しいのはあると思うからさ」
一度こうと決めたら恐らくは方向修正が容易では無いアスカ嬢の事をやんわりと宥めようとするシンジ。
しかし。
「…構わないわ。入りましょう」
「ええっ!?い、いいの?」
「…肉抜きで頼めばいい事だもの」
「…焼肉屋さんで肉抜くって…なに食べるのさ」
まったくもって正しいシンジの心配であった。
- 117 :転載初号機 ★ :05/12/14 12:22:55 ID:???
- 「じゃあこれでいいわね?」
シンジの心配は。
「ええ、問題ないわ」
「じゃあ、ご注文繰り返させていただきます。和牛焼肉盛り合わせセット二つ、シーフードセット二つ、ドリンクバーが3つ…」
注文を繰り返す、愛想のいい店員。
これもkの国では中々見つけることが出来ないものの一つである。
「海老に貝柱に烏賊に…直火でこういうの焼くってのも中々オツよね」
「…ええ」
仲間はずれにせずに済んだシンジは、ひとしきり胸を撫で下ろしたのであった。
「キムチって日本にもあるのね」
注文を終え、メニュー再度眺めるアスカ。
サイドメニューのトップにキムチの文字があるのを認めたのである。
「頼むの?」
「辛いのは嫌!」
相変わらず辛いものが駄目なアスカ。
大反対である。
「…そうね。私も司令のところから逃げてからは薬を飲んでないから食べたくない」
「何を言ってるのさ、綾波…」
いきなり話が飛んだ事に困惑するシンジ。
「…何が?」
レイは至極当然の事に何を言ってるのだという顔である。
「キムチを食べる為に薬がいるって、どういうこと?」
アスカは言わずもがな。
- 118 :転載初号機 ★ :05/12/14 12:23:30 ID:???
- 二人の顔を見比べ、レイは目を伏せて語り始めた。
「…kの国では生野菜そのまま、もしくは包んで食べたり、漬け込んだ食べ物が多い。」
「うん、それで?」
「野菜に、寄生虫の卵が付いてる前提で食べるから。定期的に虫下しの薬を飲むのが一般的」
「げ…」
あからさまに嫌そうな顔をしたアスカ。
シンジとてそれは同じである。
が、シンジはこれまで調理した品々で拙かったものは無いだろうかと脳細胞を引っ掻き回すのに忙しく、アスカのようにリアクションが取れなかっただけの話である。
「…う、うん。サラダにするのはちゃんと流水でよく洗ったし、大丈夫…だよね?」
店を出るや、薬局へと走らされる羽目になるシンジであった。
「…ぽ、ポ○ールください」
- 119 :転載初号機 ★ :05/12/14 12:24:15 ID:???
- 今日のミサトさん
「あ〜やぁっと帰れるわぁ」
寂しく一人日本で取り残されたミサト。
漸く帰国の途に着いたのであったが…。
「あの、お客様。周りの方に迷惑ですので、お止めいただけませんか?」
「うっさいわねぇ。ほっといてよ」
なんとミサトはギャレーに押し入り、調理場で素足になり足を洗って席に戻ったのである。
濡れた足を振り回し、周囲へ水滴を飛ばしまくっていた。
チーフアテンダントの懇願により、何とか制止されたが、傍若無人な行動はこれが始まりであった。
持ち込まれた酒が開けられ、続けざまに飲み下す。
良い気分になった彼女は、機内サービスのために通路を通るフライトアテンダントの女性に足を引っ掛けて転ばせたり、大声を出しては周囲の乗客を慄かせたりした。
見るに見かねた乗務員達は、ミサトを拘束し、乗務員の休憩場所であるバンカーへと引き摺っていった。
そこでもなにやら酷いことが起こったそうであるが…。
無事着陸し、他の客を降ろし終えたあと。
機内清掃にとても手間がかかったとだけ付け加えておこう。
「…ネルフ関係者じゃなかったら、警察に突き出してたんだがなぁ」
本拠地kの国に戻ってきたミサトが、多少の無茶を通すのは簡単なコトであった。
- 120 :転載初号機 ★ :06/01/25 00:24:58 ID:???
- 「アンタ達今までどこに行ってたの!」
当然の事ながら、額に青筋を浮かべて怒声をあげまくるミサト。
約一ヶ月弱の間、チルドレン三人が三人とも本部をがら空きにしていたのである。
責任を取らなければならない立場のミサトとしては、漸く帰れたと思ったらいきなり大問題が突きつけられ、なんで私がこんな目に、といった感であった。
「…許可は貰ってます。これ…」
レイが差し出した書類には、何故かキッチリとミサトの了承印が押されていた。
「な…なんで?って、この日付だと、私ここにいなかったじゃない!」
そう。
実際どこにも告げて行った筈も無く。
ミサトも日本で軟禁状態だったのだから、彼女が書類に目を通せるはずもない。
(…捏造したんだ、綾波)
ちょっと困り顔で頬を掻くシンジであった。
「ミサト!ソレは後回し。そろそろ忙しくなるわ、行くわよバカシンジ」
「わかってるよ。いこう、綾波」
「了解」
「あ、ちょっと待ちなさいってのよ!」
駆け出す三人を追おうとするが、同時に警報が鳴り響く。
「使徒?嘘!」
いつもならチートぐらい警報など無視して追いかけていきそうなものだが、さすがに今勝手なことをすると自分の立場が危ないとでも思ったのか、発令所に駆け出すミサト。
「あとで覚えてなさいヨォ!」
「さーて、今回のはどんなのだっけ」
ケイジへと駆けながら、使徒についての対策を検討する。
「うん…実は…」
しかしシンジの顔つきは神妙なものであった。
「どしたのよ。なんか悪いものでも食べたの?」
「…違うわ。前のとき、貴方がひどい目にあったから、碇君は心配してるの」
ふと立ち止まりそう呟くレイに、目を見開くアスカ。
「…だから中々今回の奴の事教えてくれなかったわけね?」
「…ごめん」
「はっ、このアタシともあろう者が甘く見られたもんね?ちょっとやそっとじゃへこたれたりしないわよ。で?どんな目に会ったってぇの?」
- 121 :転載初号機 ★ :06/01/25 00:25:32 ID:???
- 腰に手を当てて胸をそらし、自信満々な高飛車姿勢で言うアスカ。
若干咎めるような視線でアスカを見るレイが前回の事柄を口にしようとしたが、それを押し留めたシンジがそれでもやはり目を伏せて言いにくそうに、呟くように話し始める。
「前の時は…その…」
限られた時間の中、前回の状況を大まかに説明する。
自信をなくしていたアスカ。
追い詰められていたアスカ。
それに気付けなかった自分達。
そうしてついに…。
「ふざけんじゃないわよ!このアタシがそんな事位で参るとでも思ってんの?馬鹿にしないでよね」
だいいち、とシンジを指差して一息つく。
「…そん時はアタシら仲悪かったらしいじゃない…今はそうじゃない…でしょ?」
「…うん」
「…そうね」
アスカの言葉に頷く二人。
「ンじゃあ答えは簡単じゃない。一人じゃないんだから、その、アレよ」
そこまで言って、言いよどむ。
顔を幾分紅潮させながら。
「そうだね、僕がきっとアスカを守るよ」
「…碇君。いい。問題ないわ、私が守るもの」
何気に突っ張る綾波さんでした。
「…アタシとしちゃあ、シンジに守ってほしいもんだけどね…」
幾分低く呟いたその言葉は…。
「え?なに?アスカ」
既に再び駆け出し始めていたシンジの耳には届かなかったようで。
「エヴァンゲリオン発進!」
久々にミサトの号令で三機のエヴァが打ち出される中、レイは一人プラグの中で意識を他に向けていた。
(…取りに戻る。間に合わない、却下。司令にお願いする。私がイヤ。却下。赤木博士にお願いする。博士に迷惑がかかる。却下…仕方ないわ…最後の手段)
- 122 :転載初号機 ★ :06/01/25 00:25:55 ID:???
- 地上に打ち上げられたエヴァが、各自持ち場に着く。
超長距離砲撃用のスナイパーポジトロンライフルをアスカが。
長距離砲撃を受ける事を想定して、シンジが超電磁コートを施したSSTO装甲を構えていた。
「レイはATフィールドの展開に集中してバックアップ。いいわね?」
意外なほどマトモな作戦に、一同大人しく従っている。
「「「「…何があったんだろう」」」」
子供たちはおろか、発令所の面々の心中すら、ほぼ同じであった。
ただ一人、リツコだけは
(…日本での件で、ちょっとは身に沁みたのかしら)
と思って居たりしたが
しかしと言うかなんと言うか。
例の如くライフルは全く効かず、逆に使徒からの脳内電波攻撃を食らう羽目になったのである。
しかし今回アスカの前に盾を持って立ちはだかる初号機がいた。
ために、直接の被害を受けるのはアスカではなくシンジだったのである。
「シンジっ!馬鹿っどきなさいよッ!アタシは大丈夫って言ってるじゃないっ!」
「嫌だ。もう逃げないって決めたんだ。だから、駄目だっ!」
前に出ようとする弐号機を押し留める初号機。
『シンジ君下がって。司令の命令よ、初号機は下がりなさいっ!アスカ、レイっ!初号機を……』
そこまで言って無線は途切れた。
さぞや地下ではヒゲ眼鏡が慌てまくっていることであろう。
そんな中、立ち尽くしているかに見えた零号機が右手を横に伸ばす。
「…綾波?」
脳を掻き毟られる様な苦しみに耐えながら、朦朧とする意識で零号機を見るシンジ。
耳に届くのは、焦りの為か母国語で叫びながら初号機と入れ替わろうとする弐号機のアスカの声だけであった。
(…碇君、もうちょっと頑張って)
苦しむシンジに心を苛まれながら、レイは一心に呼んでいた。
あの敵を、使徒を倒すための、唯一の武器を。
- 123 :転載初号機 ★ :06/01/25 00:26:25 ID:???
-
「…来い」
「ドグマに異変が!」
発令所は大混乱であった。
地上のエヴァは打つ手の無いまま使徒に蹂躙され、そして今、ドグマからも異常警報が発せられたのである。
「まさか、槍が?」
どうにか落ち着いて現状を見守り、しかもそれとわかる情報を持っていた冬月だけがどうにか理解しえた。
さすがのリツコもゲンドウとミサトの両方が訳のわからぬ言葉を発しているため対応できないでいる。
「仕方あるまい。…諸君、下のほうは無視して構わん。上の事にだけ集中したまえ」
(…来た)
己が身に納めたリリスがその接近に震える。
それを監事目を見開いた瞬間、突き出した右手に赤い長大な槍が納まっていた。
「…いける」
そう口にした瞬間、零号機が槍に引き摺られるように移動し始めた。
スパンッ!
まさにそう言う音が響いたかのごとく、天空からの光が断ち切られる。
「…あ、やなみ?」
ぐったりとシートにその身を横たえたシンジが霞む目でそれを見つめる。
「…何?どうしたの?」
いきなり消失した光に、弐号機のアスカも戸惑う。
「…私が守るもの」
槍と共に天高く上ってゆく零号機の姿を見て、思わずアスカが呟く。
「Walkure…」
白く輝く翼を広げた使徒は、零号機の槍の一閃により殲滅された。
- 124 :転載初号機 ★ :06/01/25 00:27:44 ID:???
- 「…お疲れさま、三人とも」
いつまでも喚き終わらない二人を懐に忍ばせていた怪しげな薬で大人しくさせたあと、出迎えたリツコである。
フラフラと覚束無い足取りのシンジをアスカとレイの二人が支える。
取り合えずシンジをストレッチャーに乗せ、診察のために病院まで連れてゆく。
一通り検査を終え、病室を出たリツコが、着替えもせずにシンジの容態を聞くため待っていた二人に口を開いた。
「疲れているところ申し訳ないんだけど…。レイ?」
何が聞きたいのかはわかっているでしょう?と。
「…あの使徒を倒したいと思ったら、零号機が呼んだんです」
無論嘘八百であるが、リリスのコピーである二体のうちの一体である零号機がリリスの魂の器であるレイの思いに応え、槍を呼んだのであろうとリツコは一人心の中で解釈した。
実際はまるっきりレイの意思であったが。
「でも、どうして投げなかったのよ。その方が確実だったんじゃないの?」
横から漸く落ち着いたアスカが口を挟む。
「…槍、だから…」
「はぁ?」
訳のわからない事を、とアスカの眉間にシワが寄る。
「あの槍が力を貸してくれたの。…獣の槍が」
綾波さン、それチガイマス(笑)
失踪中に漫画漬けであった綾波さん、つい考えていたことが口から出ちゃイマス。
「うふふ、そのお話なら知ってるわ。かなり前の日本のマンガよね」
強大な妖怪を打ち倒す為に造られた、槍。
それの製作には一人の少女を生贄として捧げられた、と言う。
「それに似たお話、この国にもあるの、知ってるかしら?」
フルフルと首を振る二人。
薄く笑って通路脇のベンチに腰掛けるリツコ。
タバコに火をつけようとして、一応病院内禁煙なのを思い出し、止める。
kの国では保健福祉省という部署が禁煙の対策を行っている。
しかし男性の6割が喫煙者と言うkの国の実情では完全禁煙は難しく、病院ですら分煙に留まっているのが実情と言う話である。
「で、そのお話なんだけど。ある王様が父親の供養のために大きな鐘の製作を命じたらしいの。でも中々上手くいかなかったのね…」
- 125 :転載初号機 ★ :06/01/25 00:28:52 ID:???
- リツコの話はこうである。
何回もの失敗の末、途方に暮れていた工匠がある夜、夢を見た。
それは「女の子を贄に捧げるならば鐘を完成させてやろう」というものであった。
その翌日、その鐘が納められる予定の寺の住職が、托鉢先で「何も差し上げるものが無いので」と言って娘を差し出してきた若い母親に出会ったと言う。
住職は工匠に夢の話しを聞くや、ならばとその娘を工匠にわたした。
工匠はその娘を、即座に銅が煮えたぎる釜の中に放り込んだところ、鐘は漸く完成を見た言う…。
その後、その鐘は鳴らすたびに、母を呼ぶ声が聞こえるのだとか。
「何よそれ。酷い話」
「そうね…本当に。それに実際、娘を差し出したっていうのも眉唾ね」
この国の人々の性質を知るリツコがそう言うと実に信憑性が増す。
「失敗した数だけ何度も寄進という名の収奪を繰り返したんじゃないかしら。おまけにね、普通に広まってる話だと母親が娘を差し出す件はすっぽりと抜けてることが多いの」
その当時の王様の逆鱗に触れる事は、当人のみならず一族郎党皆殺しに成りえるのだから、集める方も必死だったでしょうねと、そう言って肩を竦める。
「ふざけんじゃないわよ、なにちょっと良い話にしようとしてんのよっ」
アスカの昂りも理解できる。
母と娘が入れ替わっただけで、まさしくエヴァのようであるから。
「…技術が無いのを棚に上げて迷信に走るあたりがこの国の限界」
それまで黙っていたレイが口を開く。
「お隣の、この国の人たちが過去からずっと下に見ている国では、試行錯誤を繰り返してより自分たちの求める音のために、様々な技術を生み出してきたわ。表面にいぼいぼをつけて音質を変えたり、色々と」
今も残る鐘を、鋳造の順に並べれば、その遍歴もわかろうというものである。
- 126 :転載初号機 ★ :06/01/25 00:29:51 ID:???
- 「…そう言えば、槍は?」
漸く目を覚ましたシンジを見舞っての病院からの帰り道、アスカがふと思い出したかのように口にした。
慌てていた為気付かなかったが、ケイジに固定された零号機は槍をどこにも持っていなかった。
「…ここ」
そう言って、レイが口を開くや、爪楊枝程の赤い槍が姿を現した。
「え…っと。これ?」
「…ダミーをATフィールドで作って星の彼方に飛ばしたからばれてないわ」
再び口の中に(恐らくは別の空間へ繋がっているのであろうが)槍を戻すと、何も無かったかのように歩き出すレイであった。
「…こ、怖いコね、アンタってば」
巨大なマンガ汗を後頭部に貼り付けるアスカさんであった。
今日の葛城さんと碇司令
「…中々目を覚まさんが…、良いのかね?」
いつまで経っても目が覚めない二人を心配した冬月が、漸く戻ってきたリツコに尋ねた。
「覚醒用のこのアンプルを打たなければ3日は眠ってますわ」
そう答えニヤリと微笑むリツコ。
「…では、放っておくとしよう」
栄養補給の点滴は忘れんようにな、とだけ告げて立ち去る冬月。
「…ほんと、静かで良いわ」
定期的に打ち続けてやろうかしら、などとつい考えてしまうリツコさんでありましたとさ。
- 127 :転載初号機 ★ :06/02/23 02:10:52 ID:???
- 「まぁったく、未だに竹島だの独島だのと、うっさいわねぇ」
日本の一地方、島根県がその正当性を確認するために設けた「竹島の日」。
毎年の事であるが、ここkの国では熱く燃える愛国心が旺盛な為、大使館前で日の丸を燃やすと言う、民度の低い行為が行われていた。
「とっくにウチの国が実効支配してるってのに。ねぇリツコォ?」
「…ノーコメントよ」
実効支配すれば自分の領土、などという出鱈目が通用するのならば、今現在他国に正当に組み入れられている土地は、過去に自国の領土だったと主張する事が出来なくなると言うことに気付いてるのかしら、とリツコは思う。
「ねぇ、シンジ?竹島の日ってなに?」
「えっと…ずっと昔、この国が日本に併合されてた、ってのは知ってるよね?」
アスカからの質問に、うろ覚えの知識をひねり出すシンジ。
「知んない。そもそもこんな東の果ての国、ドイツじゃサッカーWカップやるまでろくに知られてなかったわよ?まあ、その時の知られた理由も酷いもんだけどさ」
そこから始めなきゃだめですか…orz、と思ったシンジ。
だが続けて言うアスカの言葉に首を傾げる。
「へぇ、どんなの?」
「えっとね、アタシはまだ一歳くらいだったから、実際に見たわけじゃないんだけど。パパが言うのよ」
アスカの父曰く。
『ホスト国としては史上最低の行いを散々しでかしてくれた。共催した日本とは天と地だ!』
だそうである。
「でね?審判は買収するし、観客席にナチスのハーケンクロイツは飾るし、ドイツ代表選手の写真を黒枠の額縁に入れるし、対戦国の宿舎の前で一晩中大騒ぎして睡眠不足にさせたりさ。考え付く嫌がらせのフルコースを食らったって。パパも継母も泣いて話すんだから」
あのときの悔しさは、ドイツ国民に深く沁み込んでいるだろう。
「それに引き換え日本で試合した国はすっごい良かったって話で持ちきりだったんだって」
何しろヨーロッパで恐れられるイギリスのフーリガンですら、観客席に「ありがとう日本、完璧なホスト国だ」とユニオンジャックに書き込んで横断幕にしたと言うのだから。
「…へぇ」
特にこれと言ってスポーツに感心を持った事のないシンジには、今ひとつピンと来なかったようである。
「で?併合がどうしたの?」
「ああ、えっとね」
- 128 :転載初号機 ★ :06/02/23 02:11:50 ID:???
- 日本が漸く文明開化、欧化政策をもって列強に抗おうとしていた折。
ロシアは不凍港を求めて南下政策を打ち出していた。
それは間違いなく中国を経て朝鮮半島、ひいては日本へと迫るであろうと思われた。
「へぇ、まあ地政学的に見てロシアのやる事は間違ってないわよね。その当時じゃ弱い国が強い国に支配されて当然だし」
今の感覚で過去を語ってはならない、とよく言われる。
当時はまさしく勝てば官軍なのである。
「で?手を組んでロシアと戦ったわけね?」
「えっと、それが違うらしいんだよね」
「なによ、はっきり喋んなさいってば」
「ごめん、これ以上僕も知らないんだ。歴史の授業、いつも大正デモクラシーって言うので終っちゃうから」
日教組の陰謀だ(爆)
日本の学校で歴史を学ぶと、いつも年度末に大正時代までしか授業が進まなかったりする。
不思議♪
中学生がどこまで歴史勉強してたかなんてとっくに忘れてる作者ですので、「中二はそんなところまでやらん!」などという突っ込みは無しの方向で(笑)
「変なのー」
「…それ以降の歴史を教えるには、色々と面倒が多いから」
ずっと黙っていた綾波さんが口を開く。
「そうなの?」
「ええ。柵封体制の頂点、当時の清が立てば列強の勢力なんて即排除できると思っていたそうよ。その為の属国だもの」
眠れる獅子と恐れられていた清国は、結局眠ったまま起きなかったのであるが。
「話しを素っ飛ばすけれど。この国は対外政策というものが無かったの。列強にも清の属国と見なされていたわ。だから」
「やる気ない国ね。で?」
「…属国と言う立場から、独立国にする為に、日本は清と戦った」
「わざわざよその国のために?」
「…ええ。ひいては日本のためだから。その時の講和条約が下関条約と言うの」
この戦いのおかげで、清国は眠れる獅子改め、張子の虎となって列強各国にしゃぶりつくされ始めるのだ。
「で、独立がなったんだから、今度こそ組んでロシアと戦ったんでしょうね?」
「…いいえ。むしろロシアに擦り寄っていったらしいわ。でも日本としてはあくまで独立国として手を組みたかったの。予算の都合で」
「…へぇ、そうなんだ」
- 129 :転載初号機 ★ :06/02/23 02:14:21 ID:???
- 知らなかったなぁと、シンジ。
ちなみに先の下関条約。
kの国では無かったことになってるとか(爆)
じゃー独立国じゃないじゃん、と言う突っ込みは効かない。
半万年の歴史を持つ世界一優秀な国だから。
「・・・結局日本は単独でロシアと戦って、ギリギリのところで何とか勝てた」
「わぉ!やるじゃない日本。それから?」
「…どうにか勝てたけど、日本はもう継戦能力ゼロ。対するロシアは余力があったわ。何とか講和に持ち込んだけれど、再侵攻の機会は幾らでもあった。だから日本はこの国に力をつけてもらおうと協力をしたの…」
だがしかし。
日本による総監などが気に食わなかったkの国の一部の勢力の暴走により、日本から最後の手段とばかりに送り出された朝鮮総督、伊藤博文が暗殺される。
これを機に、国内は併合一色に染まる。
kの国は朝鮮独立維持派の最右翼である伊東博文を、自分達の手で始末しちゃったのである。
「…馬鹿なわけ?この国の連中は」
「…目の前の事にしか対処できない人が多い。取りあえずここだけ誤魔化せば良いと考える人ばかり」
「…マトモな奴は国外脱出、か。そりゃそうよね」
「続き…。併合自体は当時の国際法にのっとった正当なもの。列強諸国も太鼓判。何も問題なかったわ」
…インフラがまっっっっったく為されていなかった為に、日本は馬鹿みたいな大金を注ぎ込まねばならなかったが。
その後、日本からの投資が一段落したころ、当時の中国から鉄道で朝鮮半島入りした外国人は、国境を越えたとたんに様変わりする周囲の風景に唖然としたとか。
「でも、太平洋戦争。いわゆる第二次世界大戦に負けてから話がややこしくなるの」
大戦終結後、日本は様々な条約を飲まねばならなかった。
それは近年手に入れた領土の返却も含まれていた。
台湾は中国へ、択捉はロシアへ。
そして、朝鮮半島は、朝鮮の人民の手に。
しかし、昔々に手に入れた竹島はサンフランシスコ条約に記載されていなかった。
「ふーん。その当時に文句言わなかった連中が馬鹿なんじゃない。条約の内容を変えろって」
- 130 :転載初号機 ★ :06/02/23 02:15:15 ID:???
- 「でも条約締結のその時点までは、日本の領土。条約無効を訴えたら、朝鮮半島自体が日本に戻るわ」
「あー、そりゃそうか。ロビー活動で条約内容を先に知るって事すらやんなかったわけね」
「…そのあたりの細かいところは知らないわ。大まかな流れだけ」
「まあ要するに、ついでにその島もよこせって言うのをずっと続けてるわけね」
「…簡単に言えばそう」
「で、実効支配ねぇ…。日本は全ての紛争を対話で解決するって決めてるんじゃなかったっけ?」
「そうだよ、憲法で決まってる。だから何度も国際法廷にって言ってるらしいんだけど」
一向に出廷しないのである。
だって出たら負けるから(笑)
「…ほんっとーに馬鹿ばっかね、この国の連中」
「で、有耶無耶にならないように、竹島が属してる島根県が、地方自治体なのに記念日作って頑張ってるって事ね?」
「うん。日本は国としては実力行使にならないように放っておいてるみたい。」
「弱腰ぃ」
「使徒が来た?」
警報の鳴る中、ケイジへと向かう三人。
「ええ。今度のには気をつけて」
眉間に皺を寄せ、注意を喚起する。
「どんな能力だっけ?」
今回も楽勝よっ!っと気合を入れつつ聞く。
「…襲ってくるの、融合する為に」
「…融合?」
「ええ、融合。触れたらそこから侵入してくるわ。前はそれで…」
- 131 :転載初号機 ★ :06/02/23 02:16:34 ID:???
- 言いよどむ。
「それで?」
何かあったのかと首を傾げるアスカ。
「…綾波が、自爆して殲滅したんだ」
「なっ!」
横から告げるシンジの言葉に、絶句するのであった。
「…避けて、二人とも」
にょろにょろと蠢き始めた使徒を、気持ち悪いぃ〜〜と言い訳して逃げ惑う、アスカとシンジ。
発令所では、そんな様子に怒鳴りっぱなしのミサトが居たが。
その横でリツコは、一人思案してたりする。
子供たちは、何かを考えてるのではないか、と。
いきなり突っ込んできた使徒を、ATフィールドで防がずにすべて避けるのだ。
逃げている最中に、この使徒がATフィールドを侵食する事が確認された。
今まで使徒からATフィールドを侵食してきた事例は無い。
いずれも力技でのフィールド突破ばかりである。
であるから、先ず避けると言う子供たちの行動に、違和感を感じたのだ。
だが。
「綾波ぃ!?」
零号機だけは避けなかった。
食い込む使徒をそのままに、自爆シーケンスを開始。
ATフィールドを内向きに展開し、使徒を押さえ込み、そして。
閃光
「そ…んな…」
全ての人々が言葉をなくして立ちつくしていた。
「綾波っ!綾波っ!」
爆発でえぐられた地面に、弐号機と共に半ば埋まっていた初号機が、咆哮をあげながら爆心地周辺の地面を抉り、掘り起こしてゆく。
「…シンジ」
涙と鼻水で彩られたシンジの顔をモニター越しに見ながら、呆然とするアスカ。
『…使徒殲滅を確認、しました…』
マヤが唖然としたまま、淡々と報告を上げる。
『――二人とも、回収するわ。ゲートへ…』
発令所からの指示も、シンジには届かない。
居なくなった零号機を捜し求める初号機を、弐号機が押さえつける。
「…脱出してるわ、きっと…」
そんな、自分自身でも信じられないような言葉でシンジを納得させようとしている事に嫌悪しながら。
- 132 :転載初号機 ★ :06/04/12 20:29:33 ID:???
- 「フィフスの少年はまだ来ないの?」
書類の山に埋もれた自室から逃げ出してきたミサトが、リツコの執務室で寛ぎながら声をかけてくる。
その手には、部屋の主に無断で注いだコーヒーがなみなみと満たされている。
たっぷりの砂糖とミルクでコーヒーの味を台無しにしながら、リツコの返答を待つ。
「…書類は全て回してるわよ。自分で調べなさい」
正式になされた異動であるならば、ミサトであってもその情報を得る事に関して何ら支障が有るはずが無い。
無論、この場合は連絡が徹底されていないのではなく、只単にミサトがずぼらなだけである。
「やあねぇ、それが面倒だから聞いてるんじゃ…」
つい本音が出てしまい、リツコの強烈な視線に射竦められる。
先の戦闘で、使徒もろとも吹き飛んだ零号機。
そして、それに伴うパイロットの捜索で、リツコは心身ともに極限まで疲弊していたのである。
「フィフスが早く来てくんないとさぁ、次に使徒が来たら困んのよねぇ」
チョッパリのサードは腑抜けちゃったままだしぃ、とコーヒーを啜る。
「…ドイツは既に発ってるそうよ。そのうち着くでしょうから準備だけはしておきなさい」
仕方なくデータベースを引き出し、要求するデータを検索し、伝える。
そうして、到着してから慌てても時間をロスするだけだと言って退席を仄めかす。
仕事量は体調を鑑みて減ってはくれない。
ただでさえ何時倒れてもおかしくない激務の横で、サボられてはたまったものでは無いのだ。
「ああ、いいのいいの。雑務は副官にやらせるモンだしぃー」
そう言う意味で言ったのではないのだが、効き目なし。
長年の付き合いながら、この気遣いのなさはいかがな物だろう。
空気を読めないというのは、kの国の方々のデフォルトなのだろうか。
「…私は別件で出るから、貴方もさっさと仕事をなさい。ここは締めるからさっさと出てちょうだい」
最後の手段とばかりに先延ばしにしていた案件を実行に移す決意をし、PCを閉じる。
機密てんこ盛りのリツコの執務室は、本人がいないと即座に厳重閉鎖され、不活性ガスが充填されるのだ(笑)
いかにも被害者は自分だ、といったような表情で渋々部屋を出るミサトを一瞥もせず歩みを進める。
行く先々についてこられてはたまったものでは無いと、振り切る気満々である。
- 133 :転載初号機 ★ :06/04/12 20:29:51 ID:???
- 「ちょぉ〜っとリツコォ。そんなに急いでどこ行くのよぉ」
リツコから軽い舌打ちが発せられたが、どこ吹く風。
早足のリツコに悠々とついてくる。
「…司令のところよ。貴方も来る?」
ニヤリと笑い、立ち止まる。
「あ、ははははぁ。ご冗談」
スルスルと後ろに下がり、踵を返して駆け出していった。
「…まったく」
溜め息と共に肩を落とす。
司令の元に行くなどとはあくまでミサトを巻く為の嘘である。
先延ばしにしていた案件…それは。
ジオフロントの本部付属病院。
その施設の、職員すら近寄らぬ通路にリツコの足音だけが響く。
そこは赤木ラボと呼ばれ、本人以外の入室は喩えネルフ司令といえど許可無く入室は不可能と言う、ある意味ドグマ以上のセキュリティーを施された区画である。
「…入るわよ」
厳重な認証を必要とする扉をクリアし、軽くノックした後、返事も待たずに室内へ。
真っ白な病室内のベッドに横たわるのは、誰あろうフィフスチルドレン、渚カヲルであった。
「…今はまだ眠ってますから」
唇に人差し指を当て、潜めた声で返してくるのは、先ほどミサトに腑抜けていると評された、碇シンジ。
何処をどう見ても、平素そのままの様子。
ミサトの言うような雰囲気は、今の彼からは微塵も感じられなかった。
「…永遠に寝ていればいい」
「ちょっ、ちょっとファースト。それは言いすぎじゃないの?」
アスカは兎も角、何故か吹き飛んだはずの綾波さンまでがここにいた。
そんな雰囲気の中、額に手をあて天井を仰ぎ見るリツコ。
- 134 :転載初号機 ★ :06/04/12 20:30:12 ID:???
- 「…まったく貴方達と来たら」
何がどうなっているのか、話しを聞いた今も未だに信じられない。
先の使徒戦の直後。
一縷の希望に望みをかけ、零号機のエントリープラグの捜索を行っていた。
リツコまでが本部での作業を中断し、捜索の現場に出ていたといえば、それがどれほどの事であったか理解できるだろう。
何しろ初号機パイロットが錯乱し、強制的に接続を立たねば成らぬほどの精神状態に陥ったのだ。
零号機は既に無く、初号機の運用すらままなら無いと言う事態に陥れば、頼りは弐号機のみ。
たとえ弐号機が無傷であるとは言え、このままでは次の使徒に対する迎撃体制すら危ぶまれてしまう。
せめて初号機のパイロットたる碇シンジの精神状態をマトモなレベルにまで持って行くためにも、何らかの現実を示さねばならないのだ。
それが零号機パイロットの死であろうと。
『赤木博士。エントリープラグ、発見されました』
全身を覆う、耐放射能気密スーツのスピーカーから、報告がなされる。
「了解。現場の状況を保全して、誰も近づけさせないで。すぐ私がいきます」
程なく見つかったエントリープラグは、大きく破損していた。
巨大な亀裂が入り、恐らくは爆発の熱に晒された内部は…。
そう思いつつ、比較的大きな亀裂から内部を確認する。
…そして、予想通り。
恐らくはプラグシートであっただろう半ば溶けた残骸の上に、それはあった。
瞬時に炭化したのか、人の形をそのままに。
リツコは眉を顰め、後方に続く部下に言い放った。
「…この事は極秘に。回収、急いで」
きびきびとした敬礼をし、去ってゆく部下も、いつもより歩みがおぼつかなく思えるのは彼女の悲しみゆえだろうか。
軽く黙祷し、人ひとりが這って入るのがやっとのところに無理矢理身体をねじ込むようにしてプラグ内へ。
彼女とは短い付き合いであったが、それでもそう悪い関係ではなかったと、リツコは思う。
自分らしくないとは思うが、感傷的な気持ちが心の中に擡げてくる。
歪む視界の中、その頬であっただろう部分に指を這わせようとした。
- 135 :転載初号機 ★ :06/04/12 20:30:39 ID:???
- が。
いきなりムクリと起き上がる黒い塊。
ぱりぱりと表面を覆うコゲが剥がれ、その下からは…。
「…死ぬかと思った…わ」
やたらと艶々したお肌の綾波さンが、姿を現したのであった。
「本当に、あの時は私の方が心臓止まるかと思ったわ」
幾分自嘲気味にそう言うリツコ。
まさかあの爆発の高熱に晒されたレイが、生きているとは思ってもいなかったのである、まあ当然だが。
「…問題ないわ」
失神しかけ倒れそうになった所を、起き上がったレイに腕をつかまれ気を取り直せたのである。
その後レイは、何故自分が生きていられたか―――リリスの全てを吸収した事など―――を淡々とした口調で告げ、詳しくはまた後日と瞬時にその場から消え去ったのである。
リツコの隠蔽工作により事なきを得たが、何分事が事だけに、生きてましたと即座に公表できるはずも無い。
為に、現在に至るまでどこにも報告をされていないのである。
使徒戦の後始末から捜索作業の報告まで、どうにかこうにか片をつけ、自宅に帰ったリツコ。
そこでの光景に、再び意識が遠のきそうになった。
「あ、お帰りなさいリツコさん。夕飯の仕度出来てますよ」
先の疲弊していた彼は何処へやら、上機嫌のエプロン姿で出迎えたのであった。
「ロジックじゃないとは言うけれど…」
疲れの溜まった身体に鞭を打ち、とりあえず空腹をどうにかしようとテーブルに着こうとした彼女を、三度衝撃が襲う。
「お邪魔しています、赤木リツコ博士」
もしゃもしゃと白いご飯をかきこむレイとアスカとは対象的に、ゆったりとした動きで上品に秋刀魚の塩焼きの骨を外しているフィフスチルドレン、渚カヲルの姿が、そこにあった。
- 136 :転載初号機 ★ :06/04/12 20:31:01 ID:???
- 「しっかし、食べすぎで入院なんて、ばっかじゃない?」
「…仕方ないわ。彼、あれが始めての食事だもの」
「そうなの?」
「…そうよ」
培養槽から出され、その足で本部に向かう事になった渚カヲル。
心神喪失状態の碇シンジに対する最後のとどめとばかりに、ゼーレが送り込んだ最後のシ者である。
綾波レイの自爆直後、呆然としているシンジと、彼の身を思いそれに付き従うようにアスカ。
二人が芦ノ湖の湖畔で世を儚んでいる時、彼は現れた。
口ずさむメロディが思い出させてくれる。
メモリーは今も輝いてばかりいる。
You gotta remember.…スマン調子に乗りました(謎
「…歌はいいねぇ…歌は心を潤してくれる。 リリンの生み出した文化…のぉっとぉ!?」
今にも朽ち果てそうな像が、嫌な軋みを上げ揺れる。
「カヲル君!カヲル君!カヲル君っ!」
濡れるのも厭わず、湖に身を投げ出すように駆け出し、彼の腰掛ける朽ちた彫像をシンジがよじ登ったためだ。
「…碇、シンジ君?」
「…カヲル君」
突然のシンジの行動にも、まったく動揺を見せないカヲル。
「僕は、君に会うために生まれてきたのさ。判るだろう?」
その言葉に瞳を見開き、間近に迫った紅い瞳を見つめるシンジ。
そこにあるのは柔らかな笑みと、暖かな視線。
「カヲル君っ!」
アスカの目を憚る事無く、抱きつき号泣するシンジ。
「…シンジ君を泣かせるようなことを、誰がしたんだい?」
シンジに向けた視線とは程遠い、コキュートスのような冷たさを湛えたその瞳が、アスカに向かう。
それを感じ、周囲を見渡す青い瞳。
視線の対象が自分だと言う事を確認したアスカは、必死になって首を振る。
あんな目をする人物に人違いで狙われた日には、命が幾つあっても足りない。
その次の瞬間。
- 137 :転載初号機 ★ :06/04/12 20:31:18 ID:???
- 「…碇君からはなれて」
つい先ほどまで、間違いなくシンジとカヲルの二人だけしか居なかったその彫像の上に、素っ裸のレイが姿を現していた。
「やあ綾波レイ。僕も君と同じだよ」
シンジを抱きながら、見上げるカヲルの頬は、若干引き攣っていた。
「…さよなら」
そう呟いたとたん、カヲルの姿が掻き消えていた。
その足場であった部分は、滑らかな切断面を見せて水面へと没していく。
「酷いね、いきなりとは」
そう言って水面に立つカヲルを、アスカは呆然と見つめていた。
下手に口を挟むと、自分も巻き込まれると本能で察知したが故に。
「で、シンジがファーストの無事とフィフスの歓迎を!って張り切って御飯作りに精を出しちゃってさ?」
あまりの美味に、食事の適量をその経験不足故食い過ぎ、目を回したカヲルなのであった。
「…空腹時に馬鹿食いするフィフスが馬鹿なだけ。碇君は悪くない」
「二人ともいい加減にしようよ…」
大粒の漫画汗を後頭部に貼り付けたシンジ。
純粋にカヲルの容態を気にしているのはシンジだけのようである。
「…どうせ碇君に看病してもらうための仮病」
そう言って片手を振り上げる。
「―――暴力に訴えるのは止めにしてくれないかな」
ムクリと起き上がったカヲルが、微妙に青ざめた顔でレイを諭す。
「…やっぱり」
紅い瞳を輝かせ、再び力を手刀に籠める。
「綾波っ!」
シンジの声に、びくりと震えるレイ。
「折角帰って来てくれたカヲル君にそんな酷いことしないでよ…」
そう。
カヲルもやはり帰ってきた一人なのであった。
「で、貴方達はこれからどうするつもり?」
- 138 :転載初号機 ★ :06/04/12 20:32:01 ID:???
- 一部始終を聞き、未だこれからの事に対しての方向性を持てないリツコが4人の思惑を尋ねる。
「…もちろん」
「そうだね、決まっているさ」
「そうなの?」
「何でも良いけど、アタシに判るようにしてよね」
唯一帰還者でないアスカが、渋い顔をして不貞腐れる。
…シンジが先の二人の言葉に疑問符を返して居るのはチトあれだが。
「…碇君が幸せな世界。それだけが私の望み」
「僕も同じだね。その意見、好意に値するよ」
「二人とも…」
二人の言葉にぐしゅんと鼻を鳴らすシンジ。
「それは判るけど。兎も角、どう行動するかが問題なの。わかる?」
リツコの言葉に頷く一同。
使徒撃退は自らの奮闘でどうにか出来るし、どうにかしてきた彼らにとって、その懸案は常に脳裏に浮かびながらも堂々巡りの行き詰まりを見るしかない、難題だったのである。
だがしかし、ここに来て漸く光明が見えてきた。
最後のシ者たる渚カヲルの身柄を確保した上、帰還者であることが確認され、その上成り行き任せの幸運ながらリツコの協力を得られるかもしれないのだから。
「貴方達が言う事を信じないわけじゃないわ。実際に、レイの出鱈目な力を目の当たりした身とあってはね」
そう言ってタバコに火をつける。
ここは自分のラボゆえに、禁煙云々といったことも無視である。
「…言い難いんですけど…。父さんをどうにかしないと、上手く行かないと思うんです」
リツコが父であるゲンドウと愛人関係であるという事を前回の世界で知ってしまっているシンジは、この世界のリツコもそうであると思っていた。
事実そうであるのは確かであったのだが…。
「あらそうなの?じゃあ排除するに越した事は無いわね」
ステキにサックリとした返事を返すリツコに、呆然としたシンジであった。
- 139 :転載初号機 ★ :06/11/12 10:11:32 ID:???
- 暗闇の中、明るく浮かび上がるモニター画面を覗き込んでいる一人の女性。
なにやら動画を配信して見ている様である…就業時間中であるにも拘らず。
「ううっ、酷いヤツラよね、イルボンの連中って」
「…ミサト?あなたなに見てるの?」
かけられた声に、ビクリとふるえ、周囲をきょろきょろと見回す。
「な、なんだりつこかァ。脅かさないでよ」
そう言いつつ手探りで画面を切り替える。
「…韓半島?今時なんて物見てるのよ。―――まさかあなた、これが現実に起こりえるシチュエーションだとか思ったりしてないでしょうね?」
切り替えられる瞬間の僅かな時間ではあったが、超高速スクロール画面を見慣れているリツコにとってはスローモーションである。
まさかあの一瞬で画像の内容を把握されるとは、と焦ったミサトは、シドロモドロになってしまった。
「え?ち、違うの?じゃなくって、そ、そんなわけないじゃない。幾らなんでも現実と虚構の区別くらいつけてるわよ」
怪しいもんである。
件の『韓半島』と言う作品であるが、その内容は、と言うと。
近未来、南北統一が具体的に実現に向かう世界のお話である。
過去に南北を繋いでいた、とある鉄道の再開通と言う歴史的イベントに対し、何故か日本が旧朝鮮王朝との併合時に結んだ条約を理由に、その鉄道の運営その他すべてに対して権利を主張して妨害するというトンでもない内容なのだ。
ちなみにその条約は架空のもので、おまけに現実の日本は、半島に残した全ての権利をとうの昔に放棄している。
監督であるカン・ウソク氏によると
「なぜこんなに反日的に描いたのかと思われるかもしれないが、個人的な思いが強く作用した」
「映画監督ではあるが、個人的に(そんな日本を)映画の中でぎゃふんと言わせたかった。だから反日色が濃くなった」
などと語っている。
- 140 :転載初号機 ★ :06/11/12 10:11:43 ID:???
- 個人でどうこう言うのはまったく自由であるが、そういった作品のバックに軍の協力があったりしたらそれはもう個人の戯言とは取れないわけで…。
映画を見て先のミサトのように、「日本はこんな酷い事をする連中なんだ!」と思い込む韓国人がいないとは限らないのである。
事実、慰安婦問題のように、言いだしっぺの日本人が「アレは作り話です」と言っているにも関わらず、あくまで事実であるかのように大騒ぎしているし。
まあ何より、統一だのナンダの言う内容のクセに、題名が『朝鮮半島』ではなく『“韓”半島』と銘打っている点でおかしいですがね。
閑話休題。
「まあいいわ。フィフスの少年、来たわよ。シンジ君たちとは顔合わせも済ませたわ、仲良くやれそうよ」
「やっと?時間にルーズなのも困ったもんよねぇ」
…自分の事は棚に上げてそんな事を言うミサトに、リツコは軽く首を振るだけで堪えた。
言っても無駄だとこれまでの経験上理解しているのである。
「これからシンクロ実験だけど、見に来るでしょう?」
返事を待たずにそれだけ告げて、ミサトの部屋を出るリツコであった。
「…シンクロ率、ハーモニクス、共に…ほぼ理論限界値…凄いです…」
驚愕の表情でモニターを見つめるマヤ。
その背後でニヤニヤとしたまま立つミサトが、一人上機嫌でこれからを思い浮かべていた。
あ、いや。
もう一人、いた。
口元を歪ませ、これ以上無い位に怪しい雰囲気満載のゲンドウである。
どちらも共通しているのは、これで使徒戦は楽勝だと言う妄想と。
…何故か栄華に満ちた自分の未来図であったりする。
- 141 :転載初号機 ★ :06/11/12 10:11:57 ID:???
- 「渚君?上がっていいわよ」
リツコの言葉に目だけで応じたカヲルの映るモニターが、その電源を落とされる。
「これで安心ねン。次の使徒も来るなら来てみろって感じかしら」
『それではお言葉に甘えて』
切られた筈のモニターが、再び映像を結ぶ。
薄く笑みを浮かべたカヲルが、ごくごく気楽そうな表情のままそこに映っていた。
「…へ?アンタなにを…」
呆けたミサトが問い返したと同時に、マヤから困惑する声で報告が上げられた。
「え…シミュレーションプラグから、パターン…青?!」
「なんですってぇ!?」
慌てに慌てるミサトと、それを冷静に見つめるリツコ。
そして…身動ぎ一つしないまま、小便を漏らしているゲンドウが、そこに居た。
混乱に襲われるシミュレーションプラグ管制室。
その中で独り、リツコだけは冷静さを保っていた。
「L.C.L圧縮濃度を最大まで上げて」
「え?あ、はい!」
いつもどおりの声色のリツコの声に、かえって慌ててしまったマヤがキーを叩く。
しかし、やはりと言うかなんと言うか。
「ダメです、入力を受け付けません!」
- 142 :転載初号機 ★ :06/11/12 10:12:07 ID:???
- 毎度の如く、肝心なときには言う事をきかないネルフの器材であった。
そうこうしている間に、シミュレーションプラグのハッチが開き、渚カヲルが緩やかに浮かび上がる。
そしてその口が紡ぎ出したのは、此処には無い、弐号機への呼びかけであった。
『さあ行くよ。おいで、アダムの分身。そして、リリンのしもべ』
果たしてどれだけの人間が、スピーカーからその言葉が漏れて来る事の不自然さに気付けたであろうか。
そして響く振動。
ケイジで固定されている弐号機が、突如として動き出したのである。
「弐号機だけなのだな?」
電源を繋いでいないにも拘らず動き出した弐号機に、発令所に詰めていた冬月は残る初号機はどうかと問い合わせていた。
結果は問題なし。
弐号機のみが動きだしたのだということだった。
そして見上げるモニターには、宙を漂うように進む、一人の少年と一体の赤いエヴァ。
先ほどまで5th Childrenとして隅に表示されていたの文字が、今は17th angelとして。
初号機の発進準備が進められる第七ケイジでは、搭乗を急ぐシンジへ現状が伝えられていた。
「か、カヲル君が?そんな…ほんとなんですか?リツコさん」【棒読み】
『え、ええ。私もこの目で確認したから、間違いないわ』
「ひどいやカヲル君、友達になってくれるって言ったのに」【棒読み】
どう贔屓目に聞いても、下手な俳優が慣れないアニメの声でも当てているような喋りなシンジであった。
- 143 :転載初号機 ★ :06/11/12 10:12:19 ID:???
- 思わず相手をするリツコもその下手糞さ加減に頬が引きつってしまうほどに。
(計画、はやまったかしら)と心で呟くリツコであったが。
さて、果たしてこれがどういうことかと言うと、話は先日のリツコのラボでの密会に遡る。
あっけなくゲンドウの排除を切り出したリツコからの提案は、ちょっとした三文芝居を打つのだという話であった。
「一芝居打つんですか?でも一体どうやって?」
「私に考えがあるわ。そのあたりは任せて貰える?」
そう言って死んでなかった綾波さんと、腹を壊したカヲルとを見比べながら、リツコが笑みを浮かべる。
「ちょっと貴方たちに負担がかかるけれど…構わないかしら」
「それはもちろん」
「…問題ないわ」
即答する二人。
「シンジ君の」「碇君の」
「「為だから」」
意に反して声がハモッタ二人はお互い顔を見合わせた。
無表情なレイと、薄っすらと浮んだ笑みを浮かべるカヲル。
一見平和に事が進みそうな様子に、涙ぐむシンジであった。
カヲルとレイの間の空間には、奇妙な歪みが生じていたりしたが…。
そんな三人を見つめる青い瞳は、一抹の不安を覚えるのであった。
今は誰も訪れる事の無くなった、ターミナルドグマに位置する人工進化研究所の第三分室で、アスカとレイの二人は状況をモニターごしに見守っていた。
「ぶゎかシンジの大根役者。ヤッパアタシの不安は大当たりって事ね」
渡されたシナリオの通りに話すシンジのセリフは、誰が聞いても棒読みな、大根役者のそれであった。
聞いていて恥ずかしくなる思いで、アスカはこめかみを抑えて溜め息をついていた。
「…碇君、がんばって」
その横で画面を凝視しながら手に汗握ってシンジを応援しているのは、誰あろう綾波さんである。
- 144 :転載初号機 ★ :06/11/12 10:13:09 ID:???
- 「アンタも大丈夫?シンジ以上に心配なんだけど、アタシ」
出番のないアスカとしては、心配以外にする事がないため、余計に気を揉んでしまうのだ。
「…ええ、問題ないわ」
抑揚の無い声でそう答えるレイに、こりゃダメかも、と頭を抱えるのであった。
ヘブンズドアの前にたどり着いたカヲルは、チラリとカードリーダーを見つめるだけで巨大な扉を開き、更に先へと進んでゆく。
「カヲル君っ!」
カヲルによる手加減により、あっさりと弐号機を殲滅したフリに成功した初号機が後を追い、へにょっ、っとした勢いでナイフを繰り出してくる。
初号機のナイフが、カヲルのATフィールドで止められると同時に、カヲルがシンジに声をかける。
「シンジ君、短い間だったけれど…」
そのセリフは、たった数日だったが、友達になってくれてありがとう、と言う内容のものであった。
こちらは堂に入ったもので、実に真実味のある感情の篭った演技といえた。
何しろ使徒であるはずのカヲルの言葉に、思わずほろりと来た女性職員すら居たほどである。
「そんな、カヲル君…」
思わずシンジも芝居であることを忘れて、涙ぐんでしまうほどに。
「カヲルくーーーーん」
びかぁっ!
シンジの涙交じりの叫びと共に、初号機の瞳が輝き、そして胸の装甲が弾け飛んだ。
吹き飛んだ初号機の装甲から姿を現したのは、件の綾波さんであった。
見た目はもちろん碇ユイ風味。
そうしてふらりと倒れこみ、地面に向かって一直線に落下し始めた所を、危うく初号機がやんわりと受け止めた。
- 145 :転載初号機 ★ :06/11/12 10:13:51 ID:???
- 「だれ?どうしてそんなところから?」【棒読み】
困惑しているようには聞こえないシンジの棒読み台詞であったが、状況はそれどころではなかった。
「ゴラぁ!このチョッパリのクソガキっ!そんなとっから出てきたのなんてどうでもいいから先に使徒を殲滅しろっつうのっ!!」
色々あって後がないミサトは、とにかく使徒殲滅をとシンジを罵倒したが、上層からかけられた声に、その場に力なくしゃがみ込む事となった。
「…初号機はただちに帰還せよ。ドグマは完全閉鎖、時間を稼げ。…ああ葛城君、減棒3ヶ月40%」
「はっ、はいっ!」
慌てて操作を始めるオペレーターたち。
何故そんな命令が出されるのか、何故自分が減棒されるのか、珍しく真面目に使徒殲滅を最優先にしたのに何故に?と理解に苦しむミサトは、ついついいつもの調子でファビョってしまったが、こちらもいつものリツコのお注射で発令所は平穏を取り戻したのだった。
手の平に倒れこんだユイ@レイをどうしたものかと迷うシンジに、発令所から指示が飛ぶ。
それは、使徒追撃は一旦帰投してのち、というものであった。
「…えっと、この場合は…っと」
メモなど持ち込めないので、必死になって記憶したシナリオの分岐選択肢を思い出していた。
およそ下されるであろう命令を網羅したそれの丸暗記は、シンジにとってはかなり厳しいものであった。
故に覚えるので精一杯、演技などトテモトテモと言うものであった。
『…状況G−3』
「あ、そうだった。ありがとう綾…じゃないや。えっと、大丈夫ですか?」
次のセリフを中々思い出せないで居たシンジに、レイからの助言が飛ぶ。
ちなみにシンジの失言を修正するための初号機搭載のレコーダーの改竄程度、お手の物である。
『…ありがとう、シンジ。でも今はそれどころじゃないでしょう?』
「ええ?どうして僕の名前を?」【棒読み】
『それも後、今は使徒でしょう?』
「そ、それはそうだけど。でも命令が」【棒読み】
『そんな非常識な命令には、従う必要ありません。私が後で話しをつけますから、先ず目の前の使徒をどうにかなさい!』
「は、はいっ!」
- 146 :転載初号機 ★ :06/11/12 10:14:49 ID:???
- 毛ほどもレイらしさのない言葉に、シンジは蹴飛ばされるかのような勢いで初号機を操り宙に浮ぶカヲルを掴み取った。
「カヲル君…どうして」【棒読み】
「僕が生き続けることが僕にとって運命だからだよ。結果、人が滅びてもね。だが(ry」
「何を…カヲル君、君が何を言ってるのかわかんないよ、カヲル君」【棒読み】
「遺言だよ。さあ僕を消してくれ。そうしなければ君らが消えることになる。滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は(ry」
「なにを勝手なこと言ってるの、あなたはっ!」
悦に入るかのようにシンジに向けてセリフを滔々と語るカヲルに大声を張り上げたのは、左手に乗るユイ@レイであった。
右手のカヲル、左手のユイ@レイを見つめながら、シンジは背中を流れる冷たいものを感じずにいられなかった。
あまりの迫力に、本当にお芝居なのだろうかと…。
「渚カヲル君、だったわね?貴方、シンジを死なせる気?」
「何故そんなことを?」
「人は弱い生き物よ?心の支えになる者が居なくなるだけで、死んでもおかしくない状況に陥る事なんてよくあるわ」
ましてや心を触れ合わせた者が、しかも自らの手でそれをなしたのだとしたら、心にかかる重圧は如何ほどのものだろう。
「わかる?あなたが死んだら、シンジもじきに後を追うことになってしまうの」
「なるほどね…。なら、僕も苦しい道を歩むとしようか」
二人の会話が合意に達した瞬間、シンジは芝居である事も忘れて号泣し始めてしまった。
「…ノリノリね、ファーストってば」
発令所に戻ったアスカは、リツコにだけ聞こえる声で、目の前の状況に意見しつつ肩を落とした。
彼女の目の前で繰り広げられる茶番に呆れると共に、こんなんで良いのかしらと思いながら。
リツコの横に立ち、メガネとヒゲの見苦しいオッサンが、まるで駄々をこねる子供のように泣き喚いている光景を見るにつけ、こんなのからよくもシンジが生まれたもんだと感心していた。
「…貴方、私はちゃんと言いましたわよね。シンジをお願いしますって」
誰もが恐れ戦くネルフの司令に向かってそう言い放つのは、誰あろう綾波レイである。
- 147 :転載初号機 ★ :06/11/12 10:15:21 ID:???
- がしかし、頭髪が茶に染められ、カラーコンタクトを入れたその外見は、まごう事無く碇ユイそのものであった。
ちょっと寸法が足りないが。
カヲルと、もう1人を伴って帰還した初号機を真っ先に出迎えたのは、普段ろくに動かないゲンドウであった。
感激のあまり抱き付こうとしたゲンドウは、地を這うかのような位置から繰り出された見事なアッパーカットを顎に受け、その長身を仰け反らせていた。
インパクトの瞬間、背後に『JET!!』という書き文字が見えた職員が何名か居たと言う。
ソレは兎も角、倒れ伏したゲンドウを睨み、離縁その他の事柄をまくし立て、一瞥もくれずに発令所へと歩み去ったのである。
よろよろとした足取りで、それでも後を追ってきたゲンドウを、手厳しい発言で退けたユイ@レイに対し、冬月が話し始めた。
「…確かに初号機のコアから…君が出てきたと捉えて間違いないのだろうが…」
止めの一撃を受け放心状態のゲンドウを捨て置いて、冬月に向き合うユイ@レイ。
その実、綾波レイなのではと、冬月も多少怪しんだのだが、その記憶にある綾波レイとはまるで違う対応に、それを排除した。
そもそも零号機の爆発と共に蒸発し、ほんの少しの燃えカスしか見つからなかったと報告を受けていたために、それ以上の思考は行う事はなかった。
そして、最初に向けられた第一声で、彼の脳髄はそのような懸念を消し去っていた。
「些か疑問点があるのだが、構わんかね?」
「ええ、よろしいですわよ?冬月先生」
ニッコリと笑みを浮かべるユイ@レイに、思わず相好を崩す。
「あー、ゴホン。何故今になって出てきたのかね。そしてその姿、幾分若くなっては居ないかね」
取り繕う冬月に、周囲のものは笑いを堪えるので精一杯であった。
冬月からの問いかけに、ユイ@レイは簡単に端的に答えた。
「それは先生、息子が酷い目にあっていたら、それもその子の手におえないと思ったら手を差し伸べるのが親でしょう?」
だから出てきたのだ、と。
見た目に関しては、初号機を動かす為にコアにある程度魂を残す必要があったために、人として構成できるのはこのサイズが限界だったのだ、と言う。
そして、その大きさに合わせて相応の容貌にしたのだと。
- 148 :転載初号機 ★ :06/11/12 10:15:53 ID:???
- 「で、現在に至る、と」
「あら、どうかした?アスカ」
胸の前で腕を組み、眉間にしわを寄せるアスカ。
傍らでやけにニコニコしているリツコの問いかけに、「なんでもない」と返すだけであった。
「まあいいけどね。ばかシンジがいっつもあんなふうに笑ってられるんなら」
そういうアスカの視線の先では、ユイ@レイの言葉の暴力により、考えるのを止めたゲンドウが虚ろな目を天井に向けていた。
- 149 :転載初号機 ★ :07/03/29 06:35:59 ID:???
- 葛城ミサトは、溜まりに溜まった書類をどうしてやろうかと、私室で頭を抱えていた。
そんな折、突然扉が開き、黒服を着た保安部員が姿を見せた。
「冬月副司令が?」
「はい。ついさきほどロスト致しました。つきましては……」
副司令である冬月が、行方知れずになったというのだ、このネルフ本部内で。
その手引きをしたというのが…。
「…加持の馬鹿、か。……それで、私なわけね」
「申し訳ございません」
慇懃に頭を下げる黒服に、大人しく懐の銃を渡す。
過去のしがらみから、加持に近しいと見られたミサトに拘束命令が出たのである。
仕方ないと、大人しく従うミサト。
今現在、加持から一方的な性的虐待しか受けていないミサトが、何故ファビョりもせずに従ったのか、と言うと。
(これで暫くは書類から離れられるわん)
などと考えていたりする。
『碇と連絡がつかんのでな、申し訳ないがご招待させてもらった』
「……奴は現在療養中でしてな。私どもも困っていたところですよ」
暗闇に浮かび上がったモノリスに、椅子に縛られた冬月が淡々と答える。
先の戦闘において、初号機の中から出て来たユイ博士(レイの変装であるが)に徹底的に拒絶されたゲンドウは、精神崩壊を起こし、現在療養中であるのだ。
復帰の見込みは、皆目立っていない。
『ふむ……まあいい。では君に話を通しておくとしよう。実は、だ――――』
暗闇の中で、その暗闇よりも深い闇が跳梁を始めた…。
- 150 :転載初号機 ★ :07/03/29 06:36:13 ID:???
- ところで、精神崩壊を起こしたゲンドウを嬉々として見舞う人物が約一名存在していた。
誰あろう赤木リツコ、30歳、独身である。
「……三十路で悪かったわね」
地の文に突っ込まないように。
ちなみに三十路は30歳ちょうどの事を指すのであって、31歳になるともう三十路とは言わない。はず。
それは兎も角、最後の使者たる渚カヲルの件が片付いたために、非常に暇になってしまっていた技術部。
その責任者たるリツコも、おかげで時間の余裕が出来、頻繁に見舞いにいっては世話をしているのだとか。
では、そのお世話中のシーンを覗いてみましょうか…
「……ッ!…ッ!!」
おや。
不思議なことに、精神崩壊を起こしたはずのゲンドウ氏が、元気良く頭を振ってますな。
何故か首から下はピクリともしておりませんが、はて。
「さ、ゲンドウさん。お食事ですよ」
そう言いながらベッド脇の椅子に腰掛けるリツコ。
見れば、彼女が手にした皿には、どろりとした黄土色をした粘液状の物質がかけられた真っ白なライスが乗っている。
それをスプーンで掬い取り、ベッドに横たわったゲンドウの口元にゆっくりと運んでゆく。
「さ、わがまま言わないで。おあがりなさい」
ニヤリ
自身のソレを凌駕する、怪しげな笑みを浮かべたリツコに、ゲンドウは滂沱し、下半身からも(ry
「はい、どうぞ」
どろり
垂らされるように口腔に流し込まれたソレが、ゲンドウの味覚を刺激する。
無言の悲鳴を上げ、彼は意識を再び手放したのであった……。
「ふふふ。これからずうっとお世話して差し上げますわ、ゲンドウさん」
とても嬉しそうに嘲笑う、リツコ。
- 151 :転載初号機 ★ :07/03/29 06:36:25 ID:???
- そう、ゲンドウに供されたモノは、言わずと知れた、すぺっしゃるカレー。
レシピby葛城ミサトの、超絶無敵な味付けを施された、愛憎たっぷりのお食事だったのである。
さて、何故に精神崩壊を起こしたゲンドウが意識だけは元通りになっているのかというと、だ。
この状況になったのは他でもない、レイの変装によるユイに、ゲンドウが拒絶されたことに始まるわけだが。
精神崩壊を起こし、本部病院のリツコ専用区画に運び込まれたゲンドウは、リツコの調合した怪しげな“何か”により、目を覚ました。
前述のように、首から上だけ、であったが。
リツコ謹製の怪しげなブツは、ゲンドウのその頚椎から下の部分は微塵も動かせないまま、彼の意識だけを取り戻させたのである。
声も上げられず、体も動かぬまま、ゲンドウはリツコによる手厚い看護を受けることとなったゲンドウ。
因みにkの国では、基本的に看護婦による入院患者への御世話は皆無といってよい。
独り者が入院したならば、どうにかして付き添いを頼まねば、まともな入院生活を送れないであろう。
おまけに、どこの国もそうかもしれないが、kの国の病院食は拙くて高い。
一食5000wonが平均とされているが、世間の評価では1000won程度で作れるんじゃないか、という内容だそうな。
いや、間違ってもkの国では入院したくないものである。
向こうに行かねばならない事態になり、もし現地で体調不良になったとしても、帰国までガマンした方が良いのではないか…作者はそう思えてならない。
閑話休題
- 152 :転載初号機 ★ :07/03/29 06:36:37 ID:???
- 「明日は何が宜しいかしら。そうだわ、紅濁をご用意いたします。通な方には大絶賛らしいですわよ?くさやとホンタクのシュールストレミング汁ソースかけ納豆・ブルーチーズあえなんていかがかしら」
意識の飛んだゲンドウに、更なる追い討ちをかけるように、明日の食事を考えるリツコ。
…紅濁(ホンタク)。
ガンギエイを生のまま、堆肥の山に放り込み、発酵させたものを切り身にして食す、恐ろしい食べ物である。
通常の韓国人ですら口にしないと言う、すさまじい臭気を放つ事で知られている。
臭い食べ物の上位をあげれば必ず出されるであろう、くさやの6倍以上の臭気をはなつ、シュールストレミングと同等かそれ以上といわれるほどである。
聞いた話では、目や鼻が痛くなるほどのアンモニア臭と、古トイレの臭いが混ざり合った、えもいわれぬ臭いの暴力だとか。
残念ながら…いや、幸いにも日本国内ではアンモニアが含有された食品の販売が禁じられているため、食する機会は無いに等しいであろう。
某テレビ番組で供されたという話も聞いたが、残念ながら見る機会を逸してしまった…orz
それはそれとして、今まで散々体を弄ばれてきたお返しを、ゆっくりと行っていくリツコさんであった、とさ。
その後、死にたいけど死ねないゲンドウは、考えるのを、止め………………られません、リツコさんのお薬のおかげでw
リツコさんが飽きるまで、その楽しい入院生活は続けられることでしょう。
そんなこんなで、保護者不在の子供たちは、と言うと。
本部の自室とセキュリティが同等か、もしくはそれ以上かもしれない自宅の奥の奥、リツコ専用の趣味の部屋に居た
- 153 :転載初号機 ★ :07/03/29 06:36:51 ID:???
- 照明が落とされ、モニターのバックライトだけがくっきりと浮かび上がる薄暗闇の中、二人の少女が何やら蠢いている。
「今日もいつも通り。こちらとしては万々歳だけど、いい加減、誰か止めようって言い出さないのかしら」
モニターに映し出されるグラフに目をやり、半ば呆れた表情で苦言を吐き出す。
リツコ宅の、恐らくは本部の最もセキュリティーがしっかりした部屋よりも安全な、リツコの自宅の部屋で、アスカとレイがネットトレーディングを行っているのである。
彼女らが見つめるグラフは、トレーディングでは通常ありえない推移を示していた。
ttp://ichart.finance.yahoo.com/b?s=WON
上のurlは現在の米yahooファイナンスから引用したグラフであるが、お解りいただけるだろうか?
ある一定の基準に達した時、介入が入り、相場の変動を食い止めようとしているのを。
某掲示板では、コレを「ワロス曲線」と呼称し、この対策を行っているであろう某国国営銀行の愚を生温かく見守っているのである。
アスカとレイはコレに便乗し、自動で売り買いするプログラムを組み、個人的に資産を増やしていた……ネルフ本部にプールされた資金を利用して。
……それは、業務上横領とか言いませんか?お二方。
「いーのよ、私たちが頑張ってるから結構予算余ってんだから。ボーナス代わりよ」
リツコの自宅のPCは、MAGIの管理者としてログインできるため、本部のMAGIを操作し、資金移動のログを消すことまで出来るので安心なのだ。
ご都合主義?なにソレ、美味しい?
ゲフンゲフン。
そして、大量の資金をつぎ込んだ結果、最早ネルフの資金を流用しなくとも、自分たちが浮かせた資産だけで、かなりの取引が出来るようになっていた。
怖いくらいに順調に増える資金であったが、ほんとは誰かがこちらを引っ掛けようとでもしているんじゃないかと、勘繰りたくなってくるアスカである。
「コレって本気でやってるわけ?馬鹿じゃないの?資金がいくらあってもおっつかないんじゃないの?」
椅子に腰掛け、マウスを弄りながら呆れるアスカ。
「…ええ。実際これを行っている某国営銀行は、世界で唯一の赤字銀行。世界中のどこを探しても、こんな事を続ける馬鹿な国などはありはしないわ……普通なら」
普通じゃないから続けているのだ(笑)
- 154 :転載初号機 ★ :07/03/29 06:37:03 ID:???
- ttp://bbs.enjoykorea.jp/tbbs/read.php?board_id=teconomy&nid=1932383&st=title&sw=%E3%83%AF%E3%83%AD%E3%82%B9%E6%9B%B2%E7%B7%9A
興味のある方は↑こちらをどうぞ、更に詳しい解説がついております。
馬鹿さ加減に笑うしかなくなるであろうから。
「で、ほんとにすんの?」
くるりと椅子を回し、レイに向き直るアスカ。
カヲル主演の茶番劇を済ませた後、 レイの口から告げられた事柄は、アスカにとって寝耳に水であった。
「私たちの経歴を抹消して、どこか遠くで暮らす」
何故に、と思うアスカである。
最早使徒は来ないのだし、障害と思えるゲンドウは、未だ放心状態から帰還していない。
次に来ると教えられたエヴァンゲリオンの量産機など、きちんとコアまで叩き潰してやれば恐るるに足りない。
どこに不安要素があるのかと、アスカは思うのだ。
しかしレイは、あくまでも意見を通す気であるようだった。
要するに、使徒によるサードインパクトの危険が去ったのだから、もう自分たちは居なくなった方がいいのだと。
「…量産機が倒せるからと言っても、不安要素は消えない。絶対にこうした方が良い。碇君も賛成してくれてる」
「バカシンジは『綾波がそこまでいうなら』って言ってるだけで、別に全面的に賛成してるわけじゃないじゃない。アホのカヲルに至っては『シンジ君がソレでいいなら、僕も従うさ』よ?ほんっと、二人とも馬鹿で阿呆なんだから」
「…本気。今のうちでないと、早くしないと、駄目」
「まったく。面倒くさいんだからね、そういうのって」
頑として譲らないレイに、肩を竦めてアスカが言う。
「……大丈夫、伝手なら有るわ」
「判ったわよ、協力すりゃーいいんでしょ。…するってーと、これやってるのもその後の為?」
「ええ、当座の生活費」
「……どんな当座よ」
ピコピコと増えてゆく数字は、ざっと9桁はありましたとさ。ウォンじゃなくて、ドル建てで。
- 155 :転載初号機 ★ :07/03/29 06:37:21 ID:???
- 「…2人とも、最近何やってるんだろう」
「いいじゃないか、シンジ君。僕らは2人ですべきことをしようじゃないか」
「あ、うん。えっとどこからだっけ?」
リビングのテーブルで向き合って教科書を持ち寄り、予習をするシンジとカヲル。
使徒戦もひと段落した事だし、ソロソロ真面目に学校に行かないと、と言い出したシンジによる予習会である。
嬉々として参加を表明したのはカヲルのみ、女性陣はまるで興味無さそうに地下に設けられた秘密のリツコ部屋へと篭ってしまったのである。
「さて、僕も学校に通う経験は無かったからね。この時期にどの辺りまで進んでるのかなんて皆目さ」
「そっか…。じゃあ適当にやろう。えっと、じゃあ英語から行こうか。僕苦手なんだよね、他の教科」
それはそうであろう、他の教科書は全てハングルで書かれているのだから。
何とか読めるのは、中学二年生用の優しい英語が載った英語の教科書のみであった。
「それじゃ読むよ。えっと……これ何?」
眉間に皺を寄せ、カヲルに教科書を示す。
「どれどれ…。―――これは…アメリカンジョークのつもりなのかい?」
「僕に聞かないでよ」
二人の持つ英語の教科書には、このような小話が載っていた。
A君「君に借りたCD無くしちゃったんだ、ゴメンね。みんな僕の不注意からなんだ」
B君「気にしないで。私なんて貴方から借りたポータブルCDプレイヤーを無くしちゃったんだから」
……ホントになくしたのか?借りパクしたんじゃないのか?つーか、最初ッから返す気なんて無かったんじゃね?と勘繰りたくなるような内容である。
これでホントにどこからも抗議が無かったんだろうか。
シンジはこの内容が実際に起こりそうで起こりそうで嫌な考えになり、思いっきり巨大な溜息をついたのであった。
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