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涙たちの物語10 『旅の行き先』
- 1 :(・ω・):06/05/09 07:22:35 ID:38OC3SEF
- ヴァナディールを舞台にした物語を語るスレです。
あなたの中にあふれる物語を聞かせてください。
前スレ:
涙たちの物語9 『旅の果てに』
http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/ff11/1123780223/
倉庫等(現役稼働中):
(Wiki)http://kooh.hp.infoseek.co.jp/
歴代スレや旧倉庫は>>2あたりを参照。
次スレは、400k越えたあたりで、宣言→立て→告知を願います。
※この板の転送量限界は512kなので、早めに対応しましょう。
- 67 :(・ω・):06/09/12 11:14:19 ID:ODKGLBFg
- 白き探求者きてた━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
まだ読んでないけど上げ上げ
- 68 :(・ω・):06/09/12 17:36:26 ID:LxXz7kwc
- 探求者きたーーーーー!!!
ヴォリュームたっぷりでとても読み応えあり!!
でも、一気に読んでしまった!!おもしろかったぞーーーー!
早く続きを・・・・ってのはムゴすぎ?(´・ω・`)
- 69 :(・ω・):06/09/12 23:51:01 ID:JzFxpnoH
- >>66
長く続いている故に、キャラに対して想いいれもあったせいか、泣いた。
- 70 :(・ω・):06/09/13 10:44:58 ID:u+6uKSHg
- ヴァナ紀行連続で来てたー!
いつも楽しく読んでます!
- 71 :ヴァナディール紀行:06/09/13 15:30:51 ID:t1ybVUf7
- メリファト山地
灼熱の昼に熱砂が顔に当たる。
ローブを深くかぶりなおし、ゆっくりと歩を進める。
「本当にいいのか?ミスト」
「なにが?ルーク」
「いや。いいんなら、いいんだけどな」
ルークの言葉は歯切れが悪い。
この先を進むと、ジュノに向かうか…もしくは思い出深い空へ続く道しかない。
どちらをとってもミストには鬼門だった。
なのにミストは今回避けようとせずそちらの道を進んでゆく。
ルークは怪訝に思いながらも、ミストについて歩いた。
「わっぷ。風が」
「うん。強いね…それになんか嫌な感じ」
巨大な白い自然物とも石塊ともいえるようなものを見あげミストは眉を寄せる。
その一瞬後ルークも唇を噛んだ。
ふっと、空気の中にわずかに混じる鉄さびにも似た匂い。
「血の匂い、か」
「モンスターか…人か」
「行くか」
「ん」
タッと急いで走ると、乾いた茶色の地面の窪みに一人のタルタル族が倒れており、
その周囲を二匹のヤグードが囲んでいる。
「なろっ」
シャッと剣を抜くルーク。
ルークの飛び込みざまの剣戟を、ヤグードは鈎爪で受けた。
ミストがホルンを取り出すより早く、ヤクードは分が悪いと察したのか逃げ出した。
「ふん。逃げ足が速いな」
「それより、女の子」
ミストは言いながらしゃがみこんだ。
「大丈夫そうか?」
「…肩に傷は在るけど…呼吸はしっかりしている」
服を裂いて傷口を見るミストと蒸留水を用意するルーク。
その背後に、更なる殺気が見られた。
「…んっ?!」
反射的に剣を構えるルークの頭上に振り下ろされる片手剣。
「な!?」
手が痺れるほどの強い剣戟は、本物だった。
- 72 :ヴァナディール紀行:06/09/13 15:32:54 ID:t1ybVUf7
- 「トナルルになにをする気だっ!この盗賊野郎っ!!」
ミスラの勇ましい声と共に、重い剣がルークの短剣にのしかかった。
力を逃がしながら、ルークは短剣を構えつつ叫ぶ。
「まっ、まて!落ち着けっ」
「その手をっ、トナルルから手を離せ!!」
容赦なく片手剣がミストの背中に突き出される。
ルークはそれをはじきながら、ミストを盗み見る。
ミストは傷口を見るために、
タルタルの少女の服を肩から破っている最中だった…。
見ようによっては…
…――いや、よらなくてもまずい状況だった。
「あー。誤解だ。落ち着け。な?
俺らがこの子をどうにかしようとしているわけじゃない」
「夜盗か?!それともまさかっ」
「落ち着けってっ」
キンッと剣をからめるようにして天へ弾くと、片手剣はミスラの手から離れた。
そして、剣は地に突き刺さった。
「落ち着け。この子はヤグードに襲われたんだ。
俺らが助けて今怪我の手当てをしているところだ」
ミスラは疑わしげにルークとミストを交互に見る。
そして少女の傷を見ると悲鳴をあげた。
「トナルルっ!!!!!こんな、酷いっ」
「大丈夫、気を失っているけど、命に別状はなさそうだよ」
ミストの言葉にミスラはひざまずき、少女の手を取った。
「あぁ、よかった。
離れなきゃよかった…。トナルルを一人にしなきゃ…」
「何かあったのか?」
「いや、ちょっと周囲の偵察に行ってきただけだ。
そうしたらお前らがトナルルを…」
「助けていたわけだね」
ミストが傷口をハイポーションで洗い、包帯で縛る。
ルークはミスラの剣を取り、切っ先を持って差し出した。
「おらよ。あんた、いい腕だな」
剣を受け取りミスラはチンっと軽い音を立てて、鞘にもどした。
- 73 :ヴァナディール紀行:06/09/13 15:34:49 ID:t1ybVUf7
- 「ありがとう。
…あんたらの話が本当ならトナルルを助けてくれたんだよね。
誤解して、すまない」
「いや…誤解されても仕方ない情景だったと思うぜ。うん」
ルークは頷く。
「ここは危険だからね。二人旅?」
こくりと頷くミスラにミストは笑んだ。
「もうじき夕暮れだし、この子も気になるから一緒に夜営しようか」
「あんた、傷の手当てなれているね。
そうしてくれると助かるよ」
ミスラはほっと息をついて、やっとぎこちなく笑んだ。
「ん…ん」
「トナルル?わかるかい?!」
焚き火の横でタルタルの睫が揺れた。
あざやかな緑の瞳が開かれる。
「あ…私?イウォーレ…」
「無事でよかった。偵察なんかいかなきゃよかった。
ごめんね。トナルル」
「ううん。大丈夫…っと。この人たちは?」
「助けてくれた人たちだよ」
「ルークだ」
「ミストです。よろしく」
「よろしくです。トナルルです。
大きなヤクードに襲われてもうだめかって思いました」
にっこり花が開くように微笑み、パタパタと周囲を手探る。
「トナルル?眼鏡?」
「ん」
「はい、落ちてたよ」
小さな丸眼鏡をかけてトナルルはやっと人心地がついたようだった。
- 74 :ヴァナディール紀行:06/09/13 15:36:10 ID:t1ybVUf7
- 「ありがとうございました。ルークさん、ミストさん」
「いや。間に合ってよかった。
二人でジュノまで上京か?」
ルークが焚き火に乾いた薪を入れ問う。
「いいえ。あら、話していなかったの?イウォーレ」
「当たり前だろ。あんたが心配でそれどころじゃなかったんだ」
トナルルはぺこりと頭を下げた。
「ごめんなさい。私たちは研究者です」
その言葉にルークは眉を寄せた。
「研究者、っていってもなぁ。
こんな所に研究するもの、あるか?」
広い茶色い大地のど真ん中だ。
ルークの言葉にトナルルはコクンと大きく頷いた。
「この、白い建造物です」
「建造物?!これ骨っぽいけどな?!」
ルークの言葉にトナルルはくすくす笑った。
「これは自然物ではありません。
第一こんなに大きな生き物がいるわけがない」
「ふぅん。
たしか、俺が聞いた話じゃこのヴァナディールの背骨って事だがな」
ルークの言葉にトナルルは眉をひそめた。
「ヴァナディールの背骨…ですか。
それはガルカの伝承かしら?ミスラの口伝かしら。
詳しい話が知りたいのですけど」
「いんや。そんな裏の取れた話じゃない。
冒険者同士のまぁ、たわいない戯言かな」
トナルルはふるふるっと首を横に振った。
「いえ。そういうことが大事なのです。
でも、ヴァナデールの背骨というのは
当たらずといえど遠からずなのかもしれませんね」
ルークは苦笑する。
「いや。研究者様の研究にゃほど遠い、戯言だけどな」
「いいえ。冒険者はヴァナデールの世界の謎に最も近い存在です。
研究者は力もなく、遺跡までたどり着く事すら難しい。
冒険者は遺跡の奥へ、真実へと知らずに進んでゆきます。
そして、それらはすべてがおおやけにされるわけではないですから」
「まぁ、な」
ルークはポリポリと鼻の頭を掻いた。
心当たりは、あった。
- 75 :ヴァナディール紀行:06/09/13 15:37:40 ID:t1ybVUf7
- 「でも、こんなもん調べて何になるんだ?」
「これは…この遺跡は巨大なエネルギーを送ったものに思われます。
それだけのエネルギーをどうやって造ったのか。
何のために必要だったのか。
何処に送ったのか…。私は、ロ・メーヴの奥があやしいと思います。
その先にあるものがなんなのか、貴方は知っていますか?」
その言葉にミストとルークは口を閉ざした。
「やっぱり、知っているのですね?」
「………神々の神殿、だろ?」
「あの神殿も謎が多いです。誰がどうやって造ったのか。
この世界は謎に満ちています。
獣人が握る謎。遺跡の謎。私達の過去。
あまりにも大きすぎる謎が多いです。
それらを一つでも、解明したいのです」
トナルルが白い巨大な骨のような建造物と
瞬く星を見上げ呟いた。
「あんたのスポンサーは、誰だい?」
ルークの言葉にトナルルは口をつぐんだ。
「それは…」
「三国、2人の様子からするとウィンダスかと思いたいとこだが違う。
三国は基本的に自分の国のことで手一杯だ。
世界の謎を追う気概と金がある奴は限られている。
ジュノかアトルガン、かな」
トナルルの眼鏡の奥の瞳が光った。
「推測は、そこまでにおねがいします」
ルークは肩をすくめた。
「ふん。やっぱりいろいろ動いているみたいだな。世界は」
「…?貴方も動いているでしょう?
時は止まりません。つねに前に進んでいます。
戻る事は永遠にない。これは絶対の真理です。
だから、現在を何より大事に行動しなくては」
- 76 :ヴァナディール紀行:06/09/13 15:39:36 ID:t1ybVUf7
- トナルルの言葉にミストはふっと星空を見上げ呟いた。
「確かに。時間が止まってるような旅してるけど
時間は止まっては、いないよね。
状況は刻々と変化している」
ふかい呟き。
ルークは肩をすくめた。
「まぁな」
「これがエネルギーを送るものだとしたら、何処に送るのか。か」
「それだけの科学力…というか、魔力を秘めた文明が
古代にあったのかもしれないね」
「ええ……」
「どうした?トナルル」
「お二人は獣人ってどう思われますか?」
その言葉にミストは面食らい、ルークは眉をひそめた。
「どうって…」
「人と獣人。どれだけ違うのでしょう。
タルタル族とミスラ族とガルカ族。
ゴブリンとヤグードとオークやトンベリ…。
私は意思の疎通ができるかどうか…
というだけの違いのような気がしてならないのです」
トナルルの思慮深い瞳に、ルークは肩をすくめた。
「フム。まぁ、意思の疎通ができりゃ、仲間になれる。
下層のゴブリン族のようにな」
「私達の種族は何処から来たのかしら?
ゴブリン達と何処で違ってしまったのかしら?
先祖はもしかしたら一緒なのかもしれない…。
そうは思いませんか?」
トナルルの瞳には焚き火の光が映っていた。
「たしかに、そうかもしれないが…。
だとしても、現在の俺達と獣人の関係はかわらねぇよ」
ルークの言葉にトナルルは俯いた。
「そうね。そうよね。そうだけどでも…
知識が増える事は、過去を知ることは、未来につながるかもしれない。
理解しようと努力しなければ、他種族の垣根は越えられない。違うかしら?」
「まあ、たしかに。な。んで、トナルルはどう思うわけよ」
「仮説は立てています。まだ様々な証拠は足りませんが。
獣人は…人が退化した姿だと、思います」
「退化…なの?進化じゃなくて」
「ふん。面白いな」
ルークの言葉にトナルルはポッと頬を染めた。
- 77 :ヴァナディール紀行:06/09/13 15:42:41 ID:t1ybVUf7
- 「ごめんなさい。研究の話しになると熱くなっちゃって…」
「そうだよ、トナルル。
あんたの話は難しすぎて、口をはさめなくて困る」
ミスラのイウォーレが焚き火に薪をくべ、言った。
「ふふ。イウォーレ、ごめんなさい。
でも、聞いてくれる人がいるなら話したくて、知ってほしくて。
私が考えている事、世界の事。すべて…」
「学者さんは夢を食べて生きてるからねぇ。
普通の人はとてもじゃないがそんなこと考えてる余裕もないし
考えた所で『だからどうした?』になっちまう」
「そうね。そうかもしれない。
でも、もしかしたらこの研究が世界の人の考え方をかえるかもしれない。
ちょっとでも、知識の扉を開いて、研究に、獣人に、世界に興味を持つかもしれない。
そうしたら、その子達が冒険に出たり…
研究者は、現在のためだけに研究しているわけじゃないの。
未来のために研究するの」
トナルルの言葉にミストは笑んだ。
「良いね」
トナルルは、大きく頷く。
「はい!」
「トナルル、あんたは怪我人なんだから、少しお休みよ」
「大丈夫よ、これくらい。イウォーレは心配性ね」
「あんたが無茶しぃだから、心配するんだろ」
「もうお休み」
ミストがトナルルの上に毛布をかける。
「ええ、おやすみなさい」
トナルルが、目を閉じる。
夢や希望に輝く瞳は、星より美しい。
「おまえさんも、大変そうだな」
心底からのルークの言葉に、イウォーレは苦笑した。
「諦めてるよ。トナルルと行動するようになってから」
「なるほどな。今夜は俺らが夜営するから
寝てていいぜ」
ルークの言葉にイウォーレは剣を抱いて、横になった。
「ありがとうよ」
「どういたしまして」
過酷な状況でも、そこに立って過去と未来を見つめるものがいる。
それなりの覚悟は必要だが、それでも、覚悟を持って行なう姿は美しいと
ルークは思った。
- 78 :ヴァナディール紀行:06/09/13 15:43:58 ID:t1ybVUf7
-
追記
「やさしい人たちだったわね。イウォーレ」
「そうだね。礼しかいえなかったけど、命を助けてもらったし。
もうちょっと何かしてやれたらよかったんだけど」
熱砂の中、ローブの裾が風にはためいている。
「クリスタルの力…なのかしら。
この装置は…クリスタルの力を運ぶ、ラインなのかもしれない」
「こんなもの造って、昔の人はどうする気だったんだろうね。
世界を全部自分のものにでもする気だったのかね」
あかるく笑うミスラに、真剣な瞳をする眼鏡のタルタル。
「かも…しれないわ」
「笑えないよ、トナルル。世界なんかみんなのもんだ。
獣人も、モンスターも、あたいたちも。みんな世界に生きてる。
みんなのもんだよ」
「そうね。そう考えてくれる人がいっぱいいれば
ヴァナデールはもっと違う形をしていたのかもしれないわ」
荒涼とした岩山を見ながら、トナルルは呟いた。
「現在と違うって…どんな、さ」
「緑が豊かだったり…気候がよかったり、かな?」
「そうかい?あたいは現在のヴァナデールが好きだけどね」
イウォーレの言葉にトナルルは笑った。
「そうね。私もこのヴァナデールが好きだわ」
その言葉は風にのって、空に消えた。
END
- 79 :ヴァナディール紀行:06/09/13 15:57:53 ID:t1ybVUf7
- 微妙にネタばれかとどきどきしつつの更新です。
研究者は好きなネタのひとつですので、
楽しんで書かせていただきました。
更新を喜んでくださる皆様ありがとうございます
おかげで続きがかけます。
スレをもり立ててくださる書き手の皆様、ありがとうございます
楽しく読ませていただきます。
季節の代わりめ、みなさま
お体に気をつけてくださいませ。
N
- 80 :(・ω・):06/09/14 10:20:57 ID:JQ0n+Sfi
- >>ヴァナディール紀行作者さま
いつも楽しく読ませてただいております。
そしてプレゼントをひとつ。
つ「ドロガロガの背骨」
いや、ホントに楽しく読んでるんですが、どうしてもこれだけ気になったもので・・・。
申し訳ない。
- 81 :ガルカのコック:06/09/14 17:14:06 ID:IHR6Z4eW
- The Phantom Pain作者様へ ご無沙汰しております。
先に教えていただいた方法で読めました〜お騒がせしました。
いよいよお話も佳境に入った様ですね〜!
他のメンバーの活躍が読めなくてちょっぴり残念ですが、
これからもドキドキしながら更新お待ちしております。
ヴァナディール紀行作者様へ
いつも楽しく拝見しております。
ネタバレな件はあまり気になさらなくても大丈夫かと。
各エリアの風景というか空気の醸し出し方も上手ですが、
そこの登場する人物もそれ以上に個性があって…
他のエリアのお話も今後楽しみに待たせていただきますね。
他の作者様達にも日々感謝感謝!
名無しの作者様…再降臨をダルメルして待っております。
- 82 :(・ω・):06/09/14 22:49:25 ID:96hxKTiz
- >ヴァナ紀行様
新ディスク解禁後の熱気ある喧噪とは無縁のように様々な土地を流れていた
二人の口からアトルガンの名が出て、ああ、確かに時は止まらず動き続けているのだなと
しみじみしてしまいました。過去がちら見えしている昨今の展開、楽しみに拝読しています。
……ミストの「助けていたわけだね」には思わず笑いましたw
- 83 :(・ω・):06/09/15 08:20:33 ID:rVrNZavR
- イイヨーイイヨー(゚∀゚)
ネタバレと言うほどでもないし、殆どの人はクリアしているんじゃないかな〜。
今回はこれまでにない「道連れ」が出てきて、世界と時間の流れについて語った部分
が良かった。
イメージしているヴァナ紀行としては微妙な感じもするけど、作者さんが何を言い
たいかもわかる気がするし、これはこれで良かった。
まあ、名前間違いはいつもの事ということでw
- 84 :ヴァナディール紀行:06/09/20 12:17:55 ID:JYu/TyKx
- オズトロヤ城
「どうした?ミスト」
ミストは土で作られたオズトロヤ城を見上げ吐息をついた。
「別に…」
ルークは呟いた。
「ここで何かあったか?」
「ルーク…忘れちゃったかな。
ガルカの冒険者に助けてもらったこと……」
ミストは顔に手を当ててちょっと耳を染めた。
若気の至りと呼べるときは誰にでも在る。
ミストはオズトロヤ城を見上げ吐息をついた。
まだ、駆け出しの白魔道師だったミストはルークと共に
冒険者組合の依頼でヤグードに届けものをしにいくことになった。
届け物をするに当たって、友好的にお願いします。
と付け加えられた。
駆け出しの二人が大きなオズトロヤ城の前で立ちすくんでいると、
数人の冒険者が話し掛けた。
「どうした?おまえ達」
「これからオズに用事?」
問われる言葉に、素直に頷く。
「あ、はい。仕事でこの城にちょっと用事があって」
ミストの言葉に青い鎧のガルカが眉をひそめた。
「これから、俺達は狩りに入る。
お前らは自分の身を自分達で守れるか?」
ガルカの言葉にミストは慌てた。
「それはもちろん!
でもヤグードといっても獣人…知識在るものです。
狩りだなんて…ひどくないですか?」
「酷いか?」
ガルカはビックリしたようにミストを見下ろした。
「あなた達は何のために戦うんですか?」
ミストの責めるような言葉に、ガルカは簡潔に答えた。
「ちっと依頼でな。歌と魔法のためだ」
ミストはキッとガルカを見あげた。
「魔法と歌って…私利私欲のために獣人を殺すのですか?
貴方みたいな冒険者がいるから、
獣人との溝が一向に埋まらないんじゃないですかっ?!」
ミストの言葉にガルカは苦笑した。
「悪いな、俺も養わなきゃならない家族がいるんだ。
お前さんたち、油断するなよ。ここは敵地だ」
ミストはその言葉にむっとした。
「そんな風に思っているから、
心を開けないから、敵対しか選択肢がないんです。
ヤグードが貴方に何かしたんですか?
戦いだけじゃ何も生まない!!」
ミストの言葉をガルカはじっと聞いていた。
- 85 :ヴァナディール紀行:06/09/20 12:18:59 ID:JYu/TyKx
- 絶えかねたのはルークだった。
「ミスト、行こうぜ。
噛み付く相手を間違えるなよ」
ルークがくんっとミストの手を引いた。
「でもっ」
「頑張れよ」
大きなガルカの手がぽふんとミストの頭の上に乗った。
ミストはオズトロヤ城に入って案内をされながら考えていた。
ヤグードのこと。
襲われれば闘うのは、わかる。
それは襲われたから、
命の危機に際して自分の命を守るのは当然のこと。
だが、魔法のために、歌のために、敵地に乗り込み獣人を殺し奪い取る。
それでは、人のほうが悪に思える。
今歩いていても、
オズトロヤ城のヤグード達は友好的とはとてもいえない眼差しだったか、
ミストやルークを傷つける者はいなかった。
そう…ジュノの下層のゴブリンのように
他種族でも友好的な関係を持つ事は可能だ。
可能のはずなのに、自らその溝を作る人間という種族
そして、あのガルカ達にミストは激しい嫌悪を覚えた。
「ミスト、どうした?大丈夫か」
「うん、なんでもない」
「まーた、考え事かぁ」
ルークはあきれたというように肩をすくめる。
冒険者がこの世界の事を考えずに、だれが考えるのか。
ミストには何も考えていないように見える
ルークのことも不思議だった。
「確かに、供物はいただいた。こちらに」
わたされた荷物を手に、
ミストはありがとうとヤグードにはにかんだ。
「気をつけて。
我は人を信じるが、そうでないものも多い」
ヤグードの細身の体が人間のように礼の形をとる。
そう、分かり合えるのだ。
分かり合おうという意思さえあれば。
ミストはそんな風におもうと口の端に笑みが浮んだ。
友好の掛け橋は、小さな勇気一つで広がった。
嬉しかった。
- 86 :ヴァナディール紀行:06/09/20 12:20:02 ID:JYu/TyKx
- 「簡単な仕事だったね」
オズトロヤ城の回廊を歩きながらミストが軽口を叩く。
ルークは無言だった。
不意に、焼けるような熱さがミストの身体に触れた。
ヤグードの炎のエレメンツがミストの背中を焼いた。
「わ、アツっ」
「ぎゃぎゃ、こんなトコロでヒトがナニをしている?」
周囲を囲む黒いしなやかな肉体を持つヤグードたち。
「あ、仕事で荷物を運びに…」
言ったミストの腕に鈎爪が一閃した。
「うわ!!」
ルークが片手剣を手に、ミストをかばう。
「ヒトが入る城では、ナイ」
「身のホドを・・・シれ」
笛の音が響き、マドリガルが周囲のヤグードの士気を高める。
ミストの目が泳ぎ案内してくれたヤグードを捜したが、
近くには見当たらなかった。
「な、ちょっとまって!!
ルークも剣をひかないとっ!」
「……いや。
剣を引いたら、殺られる」
ルークは剣を手に前のヤグードを睨みつけた。
「ギャギャギャ、たった二人で、
それもこんなか弱いザコが
我等のシロに紛れ込んで、クルとはな」
「ギャッギャッなぶり殺してやろう」
ミストは目の前が真っ暗になった。
友好とは名ばかりの、
根強い剥き出しの敵意にあてられた。
それどころではない。
いまこの瞬間、ミスト達は敵に囲まれ
命を狙われているのだ。
- 87 :ヴァナディール紀行:06/09/20 12:21:02 ID:JYu/TyKx
- 「ルーク…」
ミストはあえぐように呟いた。
「やべぇかもしんねぇな。
いざって時は俺盾にして、デジョンで逃げろ」
ルークの言葉にミストは首を横に振った。
「そんなこと、――できるわけが…」
「来るぞ!!」
いくつものヤクードの漆黒の鈎爪が伸びてくる。
剣で受け、精一杯伸び上がるルーク。
すっと鈎爪が、ルークの肌を裂く。
ピシャリとミストの頬に、ルークの血がとんだ。
生温かい…命の源。
その瞬間ミストは考えるより先に魔法を詠唱した。
「あ…アルタナの恵みよ。彼の者を癒せ…ケアル」
気を絞り魔法を唱えるが、心が乱れてうまく治せなかった。
「ルーク!!」
「クッ…やべぇや、逃げろ!!ミスト」
ルークのわき腹から流れる血が、鎧を赤く染める。
ルークは襲い掛かる鈎爪を
小さな身体ですばやくはじきながら叫んだ。
ミストの手は、武器を持つ事すら出来なかった。
「あ、や。ルーク…」
慣れぬ戦闘にミストの身体に震えが来た。
魔法呪文が唱えられない。
鋭いヤグードの一閃が、ルークの鎧を壊し、肩の皮膚が裂く。
「あ…アルタナよ。女神の…―祝福!!」
「ッ…、このっ…――バカミストッッ!!」
ミストとルークが光に包まれ、
同時にヤグードの敵対心をミストは最高値まであげた。
殺される!!
突き出される拳にミストは身をすくめたが、
その敵はミストに触れることはなかった。
敵は血しぶきを上げ、ドウッと倒れた。
「え…?」
ミストの正面に青い鎧のガルカが立っていた。
斧が血に濡れていた。
「闘うぞッ!!」
ガルガが吼えると、
ガルカの仲間達は身軽に戦闘に飛び込んできた。
飛び散る、黒い羽。
銀の刃が戦場に舞う。
魔法の小さな爆発があちこちに見られ、
ルークやミストに癒しの光が投げかけられる。
- 88 :ヴァナディール紀行:06/09/20 12:21:54 ID:JYu/TyKx
-
戦場。
命をかけた戦い。
訓練なんか目じゃなかった。
実戦の恐怖はそんな生易しいものじゃなかった。
ただ、そこにあるのは力。
各々の力と単純な計算。
強いものが勝ち、弱いものが死す。
それだけだった。
時間にしたら、ほんの数刻。
なのにミストにはやけに長く感じられた。
体はこわばり動けなかった。
咽喉は固まり声も出なかった。
覚悟の足りない、自分を知った。
黒い影はすべて倒れ伏した。
青い鎧のガルカは斧を腰に収め、ミストに手を伸ばした。
「無事か?」
そこで初めて、ミストは自分がへたり込んでいた事を知った。
ガルカの仲間が倒れたヤグードの懐を探る。
遁術や歌、魔法を手にしている。
ガルカはミストにほろ苦く呟いた。
「見苦しくて、悪いな。
だが、お前さんの使っている白魔法も黒魔法も、
高位なものになると人の手では…造れない。
獣人を狩って、奪って皆使っている。
競売に出ている魔法は、みんなそんなもんだ」
ガルカの複雑な苦い笑みと言葉に、ミストは小さく頷いた。
ミストの頬の血をガルカは武骨な指で拭き取る。
そして、アダマンバルブータを脱ぎ頭を下げた。
「すまんな。
お前さんの理想どうりの世界じゃなくて…。
獣人を狩るような冒険者で、
…すまん」
ミストは首を横に振った。
「あ…」
涙があふれた。
泣きながらただひたすら首を横に振りつづけた。
- 89 :ヴァナディール紀行:06/09/20 12:23:38 ID:JYu/TyKx
-
ガルカたちはミストとルークをメリファトに送り出した。
別れの時、ミストはガルカに問い掛けた。
「何故…貴方は僕に謝ったのですか?
甘いのは僕で…貴方は戦場を生きている。
正しいのは貴方なのに…」
ミストの言葉に、ガルカは目を伏せ首を横に振った。
「正しいかどうかは人それぞれで
他人が決める事じゃない。
自分が決めることだ。
俺はお前さんの理想のようには生きられない。
俺には、妻子や親がいる。
明日の飯のために獣人から奪わなきゃ、やしなってゆけない。
でも…お前さんがよければ、
俺からの頼みを一つ聞いてくれないか?」
ガルカの言葉にミストは頷く。
ガルカはまっすぐな瞳で、ミストを見下ろした。
「できるなら、お前さんは変わらないでくれ。
そのまま、お前さんの理想をお前さんが殺さんでくれ。
お前さんの理想どおりに俺は生きられんが、
お前さんの言葉は俺の胸に響いた。
お前さんの理想はいいと思ったよ。
こんな事俺が言う資格はねぇが
お前さんの言う世界は、俺もあこがれる」
ガルカはそういうと、
仲間たちと共にオズトロヤ城の奥に入っいった。
- 90 :ヴァナディール紀行:06/09/20 12:24:32 ID:JYu/TyKx
-
追記
「恥ずかしかったなぁ…」
ミストはオズトロヤ城を見上げ呟いた。
「ん?そういえば、そんなこともあったか」
ルークはおぼろげに思い出したようだった。
「一緒にいてルークは恥ずかしくなかった?
今思い出しても、赤面するよ。
理想だけ語って現実何も見えてなくて、
力も追いついていなくて…
あの時の自分の言葉は、
本当に、ただの子供のたわごとだった」
ミストは鼻の頭をかく。
あの時と変わらず風は今日も吹いていた。
「そうか?
俺は夢を見る奴、嫌いじゃねぇし。
その夢が、自分が考えもつかない夢ならなおさら、な。
お前のことばかだなぁとも、損だなぁとも思うが。
お前あの時と今と、考え方変わったか?」
ルークの言葉にミストは苦笑して、首を横に振った。
「いろんなことがわかったはずなのに、
獣人と人が…争う世界はおかしいと、いまも思っているよ。
なんでだろう…。こんな世界なのに。
毎日人と獣人は争っているのに……―
僕だって襲われれば獣人に剣を振るうのに……
僕には獣人と人が争う本当の理由が、わからない。
過去の恨み以上の理由が見つからない。
争いのために、争っているようにしか思えない。
その輪廻は、どこかで断ち切らないと…――
…甘いよね」
ミストの微苦笑にルークは頷く。
「甘ぇな。
でも、まぁ、お前はそれで良いんじゃねぇの?
うじうじ悩んでるのはうっとおしいが、
そういうこと考えてる奴がいるのは、悪くない。
変わる必要も、変える必要もねぇよ」
ルークの言葉にミストはうなずく。
あのガルカは今も青い鎧で斧を振るっているだろうか?
彼の気持ちも今のミストなら、わかる。
彼は生きるために必死だった。
恥じ入る事はなにもないのに。
彼はミストに、ミストの理想に敬意を表してくれた。
オズトロヤ城を見るたびに記憶から掘り起こされる。
理想は胸に秘め、声高に語る必要はない。
人に押しつけることは、無粋だとあの時学んだ。
ミストにとっては
恥ずかしくて恥ずかしくて、
胸の奥が少し熱くなる思い出だった。
END
- 91 :ヴァナディール紀行:06/09/20 12:28:10 ID:JYu/TyKx
- こんにちです。
ミストの青い時代ということでオズトロヤ城です。
たくさんのお声、ありがとうございました。
ヴァナデールの背骨といったのは実はフレでして。
その言葉が印象的で起用してしまいました。
すみませんっ。
ご指摘ありがとうございます。
応援と励ましのお言葉もありがとうございます。
皆様のおかげで、次がアップできます。
書き手の皆様、楽しい作品をありがとうございます。
N
- 92 :(・ω・):06/09/20 14:00:46 ID:Xe17XZos
- 目頭にグっと来た。 楽しかった。ありがとう (*´Д`*)
- 93 :(・ω・):06/09/21 00:41:25 ID:L4hN6NUh
- 自分のキャラが実際にヴァナで生きてたら、冒険者として生きていくために
複雑な思いを飲み込んで獣人を狩ってるのかもしれないし、もしかしたら
ミストと同じようなことを考えてるかもしれない。ちょっと目が熱くなりました。
ヴァナディールの背骨、個人的にはすごく格好よい言い回しかと!
「ドロガロガの背骨」って固有名詞とは別の話として、あれを世界を支える
基盤として捉えている冒険者が例えて言った台詞、というイメージをしてました。
ところで、ガルカって妻帯するのだろうかと思う自分がいたりしt
- 94 :ウ゛ァナディール紀行:06/09/21 08:43:29 ID:SHIyWPTZ
- 作中説明出来なくてすみません。
ガルカは仲間の冒険者が冒険で死ぬと、仲間の家族にギルを送っていましたが、その一家族から望まれて、
家族を得ました。
あのガルカには、バスにヒュム家族がいます。
彼はガルカの中では外れ者でしょう。
何時も突っ込ませてしまう大きな穴を、見せてしまう作りですみませんっ。
N
- 95 :(・ω・):06/09/21 09:26:17 ID:NHMSwozg
- 普通に結婚して孤児引き取ってるとか、何となく脳内補完してましたよ(´∀`)
- 96 :(・ω・):06/09/21 15:53:04 ID:/PcgaYIR
- 戦乱で帰る場所を見失った、
エルヴァーン少女を養っていたガルカも居ましたしね。
- 97 :暇つぶし :06/09/22 02:36:02 ID:4nPbfgZo
- ヴァナディールには多くの魔法が存在する
イタ・・イ
それはヴァナディールに住む者達にとってなくてはならないものであり、
アルタナの民だけではなく獣人や到底魔法を使えそうにもないモンスターまでもが魔法の恩恵に預かっている
タスケテ・・・
しかし魔法に満ち溢れる世界の外観とは裏腹に、ほぼ全ての魔法には多くの経験が必要になってくる
ヤメテ
それはヒトであろうとモンスターであろうと変わらない絶対の掟
・・・イタイ
それを破るとどうなるか
その者は身をもって知る事になるだろう
- 98 :暇つぶし :06/09/22 02:36:46 ID:4nPbfgZo
- 薄暗い部屋に温度の差異から発生する霧が充満している
一つしかない明り取りの天窓から入ってくる光に反射してそれはキラキラと光り輝いていた
壁は全て本棚に囲まれ、部屋の中心には木で出来たテーブルが置かれていた
本棚には分厚い黒魔道の本がびっしりと詰まっている
恐らくここの部屋の持ち主の物であろう杖がテーブルの上に置かれていた
その脇にある椅子は無残にも砕け散り、辺りに散らばっている
よく見ると埃一つないよく掃除されているであろう床には赤い液体が転々と散らばっていて
さらにその脇には・・・
身体から氷を生やした少女がうずくまっていた
その身体は寒さに凍え手足も麻痺したかのように動きが鈍い
「痛い・・・」
少女は声を上げる事も泣き叫ぶ事も忘れて身を捩る
しかし少女が身を捩るとともに新たな氷の柱が突き出てきて少女の素足を貫いた
「っっ!!!!」
痛みに声にならない声を上げ身体を捻る少女
その顔のすぐ横を今度は先程よりも若干太い氷柱がすり抜けていく
アイススパイク
:本来は外敵からの攻撃に反応して敵にダメージを負わせるカウンター系の魔法である
:位置付けは黒魔法であり、ある程度の経験を積んだ黒魔道士とそれよりも若干多くの経験を積んだ赤魔道士が使う事の出来る魔法である
その魔法が外敵のいない場所で反応し、更には使用者であると思われる少女の身体を貫いている
まだ魔法の基礎すら知らないような未熟な者が使った魔法はただ消失するだけか
もしくはなんの反応も得られずに終わるかのどちらかだったろう
しかし、この少女は違った
天性の魔法の才能を持った少女が使った魔法は消失する事もなく発動し明確な目標もないまま手当たり次第に辺りを攻撃する
「い・・た・・・ああっ!!」
貫かれた足を庇うように身体を折り曲げた少女の腕に新たな氷が生える
それは中央に置かれたテーブルから生えており少女の腕を貫通していた
それは少女が身を護ろうとするたびに発動し少女の身体を傷付ける
その
その場の勢いで書いた
勢いで書きすぎて途中で止まった
今も反省はしていない
- 99 :(・ω・):06/09/22 16:11:51 ID:/F0txbpX
- それは少女が身を護ろうとするたびに発動し少女の身体を傷付ける
その氷は赤く染まり、少女の心の炎を少しづつ吸い取っていく
「っう・・いっ・・・」
いっそ痛みで気を失ってしまえば楽になれただろう
しかし少女の心はそれを許さなかった
その小さな体に天性の魔法の才能と、計り知れないほどの強靭な精神力が
備わっていることに少女が気づくのはその数ヶ月後のことである
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(まぁ、若気のなんとやらですわ、今となってはいい思い出ですこと・・・)
気が付くと先程まで4人で座っていたテーブルには空席が二つできていた
「あら?人が考え事してる間に先に行ってしまうとは失礼ですこと」
そう呟くと席に残っていた騎士がそっと一枚のメモを差し出す
”何やら思案中のようですので、先に舞刀会に行きます 某国銃士”
「主役は最後に登場がお似合いですわね
でも、皆さん、殺気お盛んですこと
あくまで教・育・的・指導なのをお忘れかしらオーホッホホホホ!」
そして数分後、舞刀会には教育的指導を受けた6人の冒険者が横たわっていた
- 100 :(・ω・):06/09/22 16:12:39 ID:/F0txbpX
- その場の勢いで書いた
今もちょっと反省はしている
- 101 :(・ω・):06/09/22 17:36:08 ID:4nPbfgZo
- シャントットかyo!!
- 102 :(・ω・):06/09/22 18:45:35 ID:1x1Lx5c4
- TGSのローズカルテット、出陣の前のヒトコマですか…
さすがにTGS行けない。あとでファミ通DVDに収録とかしてくれへんかのぉ。
- 103 :(・ω・):06/09/24 01:01:23 ID:oItUgLMR
- またうまく纏めたなぁw
>>102
【君にこれをあげましょう】
ヒロインズコンバット1戦目
ttp://ktkr.vip2ch.com/upload.cgi?mode=dl&file=4054
ヒロインズコンバット2戦目
ttp://sneg-kuma.ddo.jp/cgi-bin/up/upload.cgi?mode=dl&file=803
ヒロインズコンバット3戦目
ttp://ktkr.vip2ch.com/upload.cgi?mode=dl&file=4063
アサルト1戦目
ttp://ktkr.vip2ch.com/upload.cgi?mode=dl&file=4061
アサルト2戦目
ttp://ktkr.vip2ch.com/upload.cgi?mode=dl&file=4062
- 104 :(・ω・):06/09/24 15:41:44 ID:gNsGSxY+
- >>103
見られないのだが
- 105 :The Phantom Pain:06/09/24 21:11:24 ID:7utj8uK7
- 毎度、失礼いたします。
先ほど、wikiさんに「The Phantom Pain」最新36話をupして参りました。
>>66=白き〜作者様
お久しぶりです。
ご無事だったようで、という表現が相応しいかちょっと悩みますが、
何よりです。後ほど続きを読ませていただきますね。
>>81=ガルカのコックさん
読めたようですね、良かった。
そして、いつもながら読んでいただいて、感謝々々なのです。
では、よろしければ、こちらで。
http://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=The%A1%A1Phantom%A1%A1Pain
- 106 :(・ω・):(・ω・)
- (・ω・)
- 107 :ヴァナディール紀行:06/09/27 09:21:09 ID:qwCv7SiD
- 聖地ジ・タ
聖地ジ・タ
そこは深い霧と年月を経た巨木がうっそりと茂る土地。
「本当にこっちで良いのか?」
ルークの言葉にミストは頷く。
「ん」
空が見えないほどそそりたった樹々を見あげた。
冷たいシンとした空気が胸の奥から身体を綺麗にしてくれるようだった。
太古の匂いのする、土地。
「ちょっとボヤーダ寄って行こう」
ミストの言葉にルークは頷く。
「別に良いけどよ」
のんびり歩く風景は昔チョコボで走り回った時とは違い
ただ、ひたすらにのどかで静かだった。
ふっと視線を移すと、栗色の髪の女性が岩場に座っていた。
透けるように白い肌。
小柄な体、冒険者とは思えない軽装。
女性はルークとミストを見てにこりと笑んだ。
「こんにちは、はじめまして」
「よ」
「こんにちは」
二人はいぶかしげにしながらも、頭を下げた。
「すごい所ですね」
綺麗な女性の感嘆のため息にミストは頷く。
「本当に。
ヴァナディールの自然の記憶が古くから残ってる場所
って感じですね」
「こちらに来て少しお話していただけませんか?」
にこっとそこだけ、
花の咲いたように微笑む女性にルークとミストは顔を見合わせた。
急ぐ旅でもないし…。
二人は巨木に寄りかかり、あるいは根元に座り休む体勢をとった。
- 108 :ヴァナディール紀行:06/09/27 09:22:32 ID:qwCv7SiD
- 「あんた…何処から来たんだ?」
「ジュノからです。私の名前はリア」
「リア…ね。何でまたこんな所に?」
リアは両手を合わせて小さく笑んだ。
紫の瞳がやさしく細くなる。
「世界を、見たくて」
「ほぉ―――。お付きの冒険者はどうした?お嬢様」
ルークの目が細くなる。
リアはにっこりと笑った。
「もうじき夜露が降ります。
その夜露を集めて、アトルガン茶葉と幾つかのスパイスで煮詰めると
よいお薬になるそうですので、夜露をあつめに行っています」
「いくらアクティブな敵がこの辺はいねぇからって…安心しすぎ、だろ?
いつアクシデントが起るかわかりゃしねぇのに」
「私、別に…モンスターに襲われてもいいの」
「はぁ?!」
「?!」
ルークとミストの驚きに女性は小さく頷いた。
「私、もう治らない病気なの。
ゆっくりゆっくり死んでゆくんだって」
「………だったら」
「ベットで寝ていても、どうせ死ぬんだもの。
だったらいろいろ見てみたいじゃない?
いろんな人とお話してみたいじゃない?
だから…いままでの貯金全部崩して、旅をしているの」
リアの笑みは死を思わせるようなものではなかった。
むしろ、夢見る少女のような輝く瞳だった。
「……変わってるな」
リアは細い栗色の髪を揺らす。
「そう―?
私の両親は冒険者で、いろんな土地のお話をしてくれた。
アルテパの砂漠、ウルラガン山脈の山々…そして、この聖地ジ・タ。
時が止まったような場所だって言ってたけど本当にそのとおりね」
「両親…心配してんじゃねぇか?」
リアは天をあおいだ。
- 109 :ヴァナディール紀行:06/09/27 09:24:51 ID:qwCv7SiD
- 目眩がするほど高い木々。
「私のためにって、傭兵やって、お金稼いで…。
そして闘って戦って、死んじゃったから。
きっといまは、空の上で待ってるとおもうの」
ミストは言葉を詰まらせた。
「………あんた。それでも笑えるのか」
家族を失い、自分自身が死するさだめだと知ってなお、
やわらかな微笑を浮かべるリア。
ルークのボソリとした呟きに、リアは頷く。
「だって、旅が出来てうれしいんだもの。
いろんなものが見れて…いろんなところにいけて。
私ずっと不思議だったの。
私みたいに病で死ぬ人間は終りが見えるけど
冒険者って、終りが見えないでしょう?
いつ、命が消えるか…わかならない。
なのに、どうしてそんなに未来を信じられるの?
明日は絶対あるって信じて…明日死んじゃうなんてこと
思っても見ないで…。
みんな希望に瞳を輝かせていた。
父さんも、最期の冒険に出るまで元気いっぱいで
楽しそうだった…」
リアの言葉にルークは眉を寄せる。
「俺らだってわかってるさ。
明日死ぬかもしれないって。
本当は街にいようが荒野にいようが
いつその命がモンスターや他の生き物によって
断たれるかわかんねぇってな。
終りははっきりわからねぇが…
俺もリア、お前も一日の大切さは一緒だ」
ルークの言葉にリアは大きく頷いた。
「でしょう?やりたい事やって生きなきゃもったいないよね。
いっぱいいっぱい思い通りに生きたら、
自分の生きた意味がわかってきた気がするし」
「へぇ、すごいな。そりゃ。
いったいどんな意味だ?」
ルークは目を輝かせた。
- 110 :ヴァナディール紀行:06/09/27 09:26:24 ID:qwCv7SiD
- リアは細い指を合わせて、高い空を見上げた。
「私はね。私が楽しむために生まれてきたの」
サラリといって、あざやかに笑うリアにミストは眩しそうに目を細めた。
「いいね」
「うん。…いいな」
ミストとルークの言葉にリアは得意げに笑う。
「いいでしょ?
はじめはね。病気だってわかった時に
苦しくて辛くて、周りの元気な人みんなうらやましいなぁ
ってずっと思っていたの。
うらやましいな。うらやましいなって。
死の心配もなく、生きてる人皆が妬ましかった。
でも、本当にそんなにうらやましいかなって気がついたの。
私のお父さんみたいに、明日死んじゃうかもしれない人が
ジュノの街にはいるし。
人をうらやむだけで人生終わらせたら、
それこそもったいないなぁって。
そんな風に思ったら、やりたいことやらなきゃって」
リアの言葉にミストは俯く。
「そんな風に…生きれたら、いいね」
ミストの言葉にリアは笑う。
「生きれるよ。自分が望めば」
「うん。そうだね」
ミストの言葉にリアは首をかしげた。
「このジ・タは聖地って言われるだけあって…
静かでいいわ。
心が、澄んでゆく」
リアの言葉にルークは目を閉じた。
「ああ…。そうだな」
遠く鳥の鳴き声と、樹の葉ずれの音だけが響き渡る。
- 111 :ヴァナディール紀行:06/09/27 09:29:47 ID:qwCv7SiD
- 「自分の生きる大事な時間。
誰かを恨んだり、
悲しみを誰かのせいにしたりしたら、辛いよね」
リアは小さく呟いた。
その声は風に消えるほどの小さな呟きだったが
リアの心には、葛藤は消えることなくくすぶっているのだと知れた。
それでも、小さく微笑むリアに、ルークとミストは元気をもらった。
「うん。リア。あんたと逢えてよかった」
ルークが手を差し出す。
リアは手を握り、笑う。
「私も…お話できて楽しかった。
またどこかで、逢えると良いね」
話は、終り。
ミストがリアの手を握り、手を放す。
抜けるように白い肌の、小柄なリア。
笑顔がきれいなリア。
ほんの少し、すれちがって心通わせた。
でも、確かに心に残る人間だった。
「また、どこかで」
ルークとミストは手を振って、ジ・タの巨木の中に分け入っていった。
追記
リアは、吐息をつく。
そして薬湯を飲む。
偉そうな事を冒険者に言ったが、
迷いはいつまでたってもリアの中にある。
でも、最後のその瞬間まで満足して生きれるように。
それがリアの目標。
「大丈夫か?」
護衛についてきてくれる冒険者は心配そうにリアを見た。
冒険者は、リアを依頼主以上の誠意を持ってつくしてくれている。
不器用な男だ。
でも、この不器用な男は、リアがいつか治るかもしれないと信じて
薬湯を処方している。
そんなやさしい男だった。
この出会いもリアが動き出さなければなかったもの。
そう考えると、心が明るくなる。
「ありがとう。次は何処を見にいこうか?」
「まずは休め。今日は疲れただろう」
冒険者は寝床を用意してくれた。
リアは目を閉じる。
いつか、その日がくるまで…
リアが前を向いて、生きることは
誰にも止められない。
「次はウルガラン山脈の夜明けがみたいなぁ
世界で一番に朝日が当たるって言われるくらい
高い山なのよね?」
リアの夢見る眼差しと明るい呟きは、ジタの濃い霧に消えた。
END
- 112 :ヴァナディール紀行:06/09/27 09:40:05 ID:qwCv7SiD
- 聖地ジ・タ
命を感じさせる荘厳な空間は、音楽とともにお気に入りです。
あの高い木々を主観視点にして空を見て走るのが
お気に入りでした。
さまざまなフォローと思いやりある言葉をいただき
ありがとうございます。
ミスも多いですが、楽しんでいただけると幸いです。
いろいろな書き手さんがんばってくださいませ。
シャントット先生のまとめはお見事でしたv
読み手の皆様、暖かい眼差しで見守ってくださって
ありがとうございます。
WIKI を守ってくださる方、感謝いたします。
N
- 113 :(・ω・):06/09/27 22:38:02 ID:Ga5qF4u1
- てっちゃんのDS配信フラグならある
- 114 :(・ω・):06/09/27 22:38:19 ID:Ga5qF4u1
- ごめん、誤爆
- 115 :(・ω・):06/09/28 12:20:36 ID:7vJ4TPQ9
- ジ・タ、良いよな。
初めて訪れた時、まさに「聖地」だと思ったものだ。
- 116 :(・ω・):06/09/28 14:08:09 ID:yc8w5ezK
- ひさしぶりに見に来た
ほっとさせてくれた紀行の人に感謝
あとシャントット様の少女時代とか思い浮かばない
たぶん生まれたときからあんな感じだと思う
- 117 :(・ω・):06/09/30 17:47:40 ID:FcLMpgqp
- イーアルカンフー?
おれにはスパルタンXにみえたぜ
- 118 :(・ω・):06/09/30 17:47:51 ID:FcLMpgqp
- 誤爆
- 119 :ヴァナディール紀行:06/10/04 22:36:48 ID:kTDZV3l5
- ボヤーダ樹
「何でボヤーダ樹なんだ?」
ルークの言葉にミストははにかんだ。
「花を…ここにはきれいな花が多いから
生命の源って感じがするから。ここの花好きなんだ」
ミストの言葉にルークは俯いた。
巨大な樹の内部のような空間。
天井も見えない中、薄蒼いキノコがぽぉっと輝き
ランプのように周囲を照らす。
むっとするような太古の…生命力あふれた場所。
ここは水も草花もモンスターも生き生きとしていた。
草の上を歩いていると、大きな影が突然ぬっと出てきた。
「え?」
「おっと…?」
ルークの小さい足を巨大なガルカが踏む。
「痛って―――!」
片手斧を振るうガルカは、慌ててよけた。
「すまんっ」
「大丈夫?ルーク」
ミストが屈み込んでとう。
ガルカは戦闘中だった。
といっても獣使いらしく、獣が闘っているのを見ながら
敵対心を調節しつつ斧を振るうという感じだったが。
ペットがスパイダーに最期の一撃を仕掛けた。
バチバチと黒くはじけるダークスポアに
スパイダー族は蜘蛛の網を残して沈んだ。
その網を拾い、ガルカは頭を下げた。
「すまんな。後ろに人がいるとは思わなくて」
「いや…戦闘中だし仕方ねぇよ」
ルークは言った。
「でもな…俺とお前さんじゃ体重差がありすぎる。
ブーツを脱いで見せてくれ」
ガルカは大きな背を丸め、ルークの足元にひざまずいた。
「大丈夫だって…」
「いや、一応傷を見ておかないと。そこに座って」
ガルカの言葉にルークは不本意ながら座ってブーツを抜いだ。
小さなルークの足の甲はうっすら赤く腫れはじめていた。
ガルカは自分の布を水に浸し、足の甲につけて冷やす。
「酷くはいためてなさそうだが…注意不足だった
すまんな」
そう言ってテキパキと手当ての準備をする。
セージの葉をもみこみ、布につけて貼る。
- 120 :ヴァナディール紀行:06/10/04 22:38:01 ID:kTDZV3l5
- 「あ。きもちいい」
ミストはその二人を見て、言った。
「ルーク、そこで休んでいて。
奥に行って来るけど、すぐ戻るから」
にこっと笑んで、ミストは身軽に歩き出した。
「あ、おい!ミストっ」
「少し休んでてね!」
ミストは叫ぶように言って、奥に消えた。
「………」
「………」
無音の世界。
モンスターが草を踏むさくさくという音だけが小さく時折聞こえる世界。
沈黙は重かった。
「あ――…」
「ん?」
手当てを終えたガルカの大きな指が丁寧にルークにブーツを履かせてくれる。
「戦闘邪魔して、ワリィな」
いう事が見つからず、とりあえずそんな事を言ってみる。
ガルカは人なつっこく笑った。
「いや」
大きな手がくしゃりとルークの髪をかきまぜる。
「おい。ガキ扱いは、するな」
ぐりぐりと子供のように撫でられるのは、ルークは嫌いだ。
その手を振り払うと、ガルカはビックリしたようにルークを見た。
「お前さん、撫でられるの嫌いか?」
「好きな奴がいるかよ」
ルークはぶすったれて言った。
「そうか。タルタル族は撫でられるのが好きなのかとおもった」
「はぁ?何でそうなるんだ?」
「俺の知っている子が…タルタルの魔道師だったんだが…―
撫でられるのが好きでな。
俺の名前は、イヴァって言うんだが
『イヴァさん撫でて撫でて』って足元によくまとわりついたもんだ」
ガルカは遠い目で呟いた。
「魔道師…ねぇ」
「ちびっちゃい女の子で、かわいいんだ」
ガルカは少し誇らしげに言った。
「ふぅん。いい友達なんだな」
その言葉に、ガルカの動きは止まった。
そして、ガルカは首を横に振る。
「俺は……その子に酷い事をした」
「ん?酷い、事?」
- 121 :ヴァナディール紀行:06/10/04 22:40:50 ID:kTDZV3l5
- 「ガルカは頑丈だ。バストゥークでも、有名だ。
炭鉱で働かされて、働かされて生きてきた」
話が急に飛んでルークは首をかしげながらも相槌を打った。
「あぁ」
「相手はタルタルの魔道師様だ。
頭もよくって高位な魔法も使える子だった。
それでも種族で分け隔てなんかしない子だった。
その子が俺と親しくなって俺のふるさとが見たいっていって
俺は彼女をバストゥークに連れて行った…」
「ふん」
「ガルカってのは横のつながりが強くてな。
みんな…ヒュムもタルタルもエルヴァーンも時の流れが早すぎて
俺たちは置いていかれる。
だから、俺たちはどうしても仲間同士が一番みたいな風潮があってな。
仲間の一人が俺とその子のことを…からかったんだ。
はじめはそんな感じだったのに、
俺が否定すればするほどそいつはムキになって…
タルタルの女なんか、信頼できない。
魔道師なんてガルカとは別世界の話だ。
他にも耳を覆うような事を言われた。
タルタルのその子はそれでも笑って許してくれた。
でも…へこまないその子に、切れたガルカの一人が
…その子が大事にしていたものを
夜の闇に隠れて、ずたずたにしたんだ。
その価値も知らず」
「ズタズタに…?」
ガルカは大きな手で頭を抱えていた。
「ナイフで切り裂かれて、用水路に捨てられてた。
とても着れるような状態じゃなかった…」
「服、だろ?
別にそんな…買ってやれば良いじゃないか」
ガルカは震える唇で呟いた。
「バーミリオクロークは、その子の宝物だった」
- 122 :ヴァナディール紀行:06/10/04 22:42:16 ID:kTDZV3l5
- 「なっ」
普通の人間には到底手の届かない高級装備だった。
「誰がやったのかわからない。
なんとなくはわかったが確定的な証拠はなかった。
俺は………どうしていいのかわからなくなった。
同族が犯した罪に、
タルタルのあの子はどう思ったのか…」
「別に、お前のせいじゃないだろ?!
犯人見つけて突き出してやりゃよかったんだ!!」
ルークの言葉にガルカは首を横に振った。
「俺ら…貧乏なんだよ。
確かに取り返しがつかない事をしちまった奴がいるけど…
弁償できる金持ってる奴なんて…いねぇんだ。
やっちまった奴も、その価値なんかわからなかったんだろう。
俺は同族の奴らが許せなくて、
その子に顔向けが出来ないくらい恥ずかしくて
どうしていいのかわからなくなって…その場を逃げ出した…」
「はぁ?!逃げ出したのかよっ。
その子に何も言わず?!」
こくりと頷くガルカにルークは深く吐息をついた。
「で、お前さんこんな所で何やってんだ?」
「裁縫のギルドに通って、金を稼ぎながら裁縫の技術を上げた。
やっとバーミリオクロークも縫える技術を身につけた。
あとは、金だ。
ここで蜘蛛の網から虹糸紡いで…金稼いでる」
「ばっ……――ばかかっ!!テメェ」
ルークは叫んだ。
ビクッとガルカが身をすくめた。
「バ…馬鹿…?!」
「不器用にもホドがあるってんだ。
何年かけてるんだ?!」
「え…と、一年と半年…位か。でもまだまだ金は…」
「一年半も?!その子に連絡はしてねぇのかよっ」
「だって…だって…あわせる顔、ないだろ?」
- 123 :ヴァナディール紀行:06/10/04 22:43:33 ID:kTDZV3l5
- 小さくなってゆくガルカと態度が大きくなるルークは対照的だった。
「合わせる顔?
こんなでかい顔してんのになに考えてんだ、ぼけっ!!
その子が弁償しろっていったのか?」
ガルカは慌てて首を横に振る。
「そんなこと…
……―きっともう、あの子は口もきいて…くれない」
「あのなぁ、その子は大事な装備を失ったかもしれねぇ。
それは痛手だ。
でもな、お前が逃げ出した事によってその子は
装備だけじゃなく、大事な友達まで失ったんだぞ?!
二重の痛みだっ」
ガルカは、はっと顔をあげる。
「逃げ出した?彼女が口をきいてくれない?
お前が逃げでどうするよ。
非難だろうが、なんだろうがしっかりそのでかい身体で受け止めろよ。
ったく。信じられねぇな。このでくの棒は」
「でも…でも」
「でももなにもねぇだろう!!
仲がよかったんだろ?その魔道師と。
なんで話し合わなかった?何でそのままバッくれた?
その子のことなんか、お前なにも考えてねぇだろ?
自分の事だけしか考えてないだろ?」
ミストと言うストッパーのないルークの言葉はきつい。
グサグサとガルカの胸に刺さった。
「あ…でも、じゃ、どうすれば…」
「やるこた、一つだ。
まずその子の所いって土下座だな。
許すか許さないかはその子が決める事だ。
お前が決める事じゃねぇ。
でも、許すも許さないもその子が決める前に
お前が逃げ出してたんじゃ…
最低だ」
「あぁ…でも…でも…」
「こんな所で悠長に蜘蛛狩ってる場合じゃねぇだろ。
お前さんの言うとおり時の流れが違う。
ガルカには長いときでも、
俺らはガルカにくらべればあっというまに生を終える。
その大事な時間を浪費させんなっ」
「許すか許さないかは…あの子しだい…」
ガルカはゆっくりとルークがいった事を反芻する。
- 124 :ヴァナディール紀行:06/10/04 22:51:19 ID:kTDZV3l5
- 「そうだよ。テメェで勝手に決めてんなっ。
判断あおいで、それでも許されねぇてんなら…
改めて金ためりゃイイだろうが。
相手もテメェも生きているのに、
やりようはいくらでもあるのに
何で一番遠回りな道を選ぶ?
傷つきたくなくて逃げてるのは、テメェだろ?!」
「うぅ…」
ガルカはがばっと顔をあげた。
「どうした?ん」
「いってくる・・・ウィンダスへ」
ガルカは呟いて、駆け出した。
「おぅ!がんばれよ――」
ルークは手を振って、天を仰いだ。
しん、とした空間が戻ってくる。
ルークはぽつりと俯いた。
「ったく、贅沢だってんだ。
生きてるんならいくらでも償いなんか出来るじゃねぇか」
ルークの泣きそうな、
辛そうな呟きは、ボヤーダ樹の中に消えた。
- 125 :ヴァナディール紀行:06/10/04 22:53:04 ID:kTDZV3l5
-
追記
汗にまみれたガルカが、息を切らして小さな家の前にたつ。
ウィンダスの水の区。
ここまでボヤーダからニ昼夜かけて走ってきた。
走ってきたが、ここで止まってしまった。
家は知っていた。
でも、ノックが出来ない。
戸惑って…戸惑って…。
やっぱりダメだときびを還した瞬間、何かを踏んだ。
「あ…」
「きゃ!!」
一年半の時をへての再会は、足を踏むというものだった。
「イヴァさん!!!!」
少女は座り込んだまま昔のままの笑顔でガルカの巨体を見上げた。
「あ…その。あ…ごめん」
腰には斧、獣の衣装。
網をかついで、何をしに来たというのか。
いまさらに恥ずかしくなったガルカは、駆け出そうとした。
その前を小さな体いっぱい広げて立ちはだかる、タルタルの少女。
「イヴァさんもう逃がさないからね。
まったくこんなに長い間音信不通で…どこにいっていたの?」
「あ……」
相方の不器用さを知るタルタルの少女は、
小さな手で大きな手を握り締めた。
「逃がさないから…。一年半分のお話、聞かせて?」
くんと小さな手に力が入り、家へ誘う。
ガルカは逆らうすべもなく、少女の家に入っていった。
暖かなウィンダスティを前に
タルタルの少女はガルカの長い長い話を聞いて、
家の奥から荷物を出してきた。
小さな手に広げられた光沢のある織物。
ダマスクの織物三枚。
「最近ずっとこれを名入りで縫ってくれる職人さんを捜していたの。
お願いできるかな?イヴァさん」
「え…俺が?でも…」
「職人さん、中々いないし。
リスク高いからみんな嫌がっちゃって…。
お願い」
見あげるタルタルにガルカは小さく頷いた。
ガルカの瞳に輝くものが浮んでいたが、
それが何かは語るまでもないことだった。
END
- 126 :ヴァナディール紀行:06/10/04 23:06:57 ID:kTDZV3l5
- 今日はボヤーダです。
ボヤは獣さんの聖地なので、獣さんの話にしようと思っていました。
ガル獣さん好きです。
秋の夜長、ちょっとした楽しい時間になってくれれば幸いです。
読み手のみなさま、お声いつもありがとうございます^^
書く支えになります。
書き手の皆様、新作楽しみにしています
N
- 127 :(・ω・):06/10/05 09:39:29 ID:DX6+KwXl
- ガル獣の{岩}さんに見えて笑ってしまったり。
まったりまったり・・(*´ω`) いい話や・・
- 128 :ヴァナディール紀行:06/10/11 12:59:30 ID:E9Dzzekd
- ロ・メーヴ
サイレントオイルを使い、二人はゆっくりと歩き出す。
どんなに強い者も、モンスターにはかなわない。
そう思わせてくれる、場所がここだった。
たとえレベルが高くても、オイルが切れたら…
ひやりとさせられる場所だ。
けれど薬品を使えばあっけないほど簡単に抜けられる道でもある。
不思議な、白い建造物。
集合住宅のような…装置のような。
きれいな幾何学的な白い道が続いている。
風に削り取られ角のなくなったゆるやかな階段を上がろうとして
「キキッ」
という、モンスターの声に振り返った。
誰かが、モンスターに見つかった。
ルークとミストが振り返ると、そこにはタルタル族が立っていた。
「うわっ」
群がるモンスター。
「救援っ」
ルークが叫び、ミストがメリーのホルンでララバイを奏でる。
モンスターの動きが止まり、眠りにつく。
「立てるか?」
ひざまずいたタルタルの手にサイレントオイルを握らせ、立たせる。
「行こう。そんなにもたない」
ミストは呟いて、すでに駆け出していた。
夜。
満月の月が明るく皆を照らす。
オイルを振り掛けて、白い回廊を駆け出す三人。
背後から追って来るモンスターを何とか振り切り、神々の間に3人は飛び込んだ。
「ふぅ」
「無事?」
「あ……ありがとう」
タルタルは立ち上がって頭をぺこりと下げた。
「ピーアン歌おうか」
ミストのピーアンに癒され、タルタルは顔をあげた。
「奥で休もうぜ」
ルークの引く手に、タルタルは首を横に振った。
「ここには、いたくない」
タルタルは小さく呟き
そして、ロ・メーヴにでる。
「おい!!!!」
慌ててルークとミストは後を追った。
- 129 :ヴァナディール紀行:06/10/11 13:00:42 ID:E9Dzzekd
- タルタルは月光の下、二人を手招いた。
「大丈夫です。ここのロボたちは、魔法を使わなければ…襲ってきません。
さっきは奥までいっちゃいましたけど…この広場なら」
「おまえっ」
「こっちに来て見てください。
幸い今日は満月。満月の泉が満たされる夜です」
タルタルの言葉にルークとミストがついてゆくと、
白い窪みの中に清水がたたえられ、水の底がなんともいえない輝きを放っていた。
「大丈夫なのか?お前」
怪我はないかと問う二人に、タルタルは頷く。
「お二人が、助けてくれましたから」
タルタルは、水に手を浸して、笑った。
「こんな危険なところで、何してるんだ?お前」
「・・・・・・・・・」
「どうかしたの?」
タルタルの装備にルークは目を細めた。
輝くように白い装備は、ナイトの服。
アーティファクト2と呼ばれる、アーティファクトのさらに上を行く装備。
押し殺されたタルタルの呟き。
「どうして…
タルタルは…タルタル族はどうしてこんなに脆弱なのでしょうか」
「あ?脆弱?!」
ルークの眉がぴくんとはねる。
タルタルは自嘲する。
「わかっているんですよね。
自分でも、体力ないって。
エルヴァーンにも、ガルカにもまったくかなわない。
僕には、なれないんです。
『神々の背中を守るもの』といわれたHNMの聖騎士のようには…」
タルタルは顔をあげ空を見上げた。
「泉の輝きも、天にある月も、手が届きそうなのに届かない。
あの輝きを持つような人たちには、わからない。
見えるのに、輝いてるのに手が届かないって…
まるで凡人を嘲笑ってるようで…」
言いかけたタルタルの頬をルークが握り拳で殴った。
タルタルは突然の衝撃に、え?というようにルークをみる。
「うっせぇ。凡人?良いじゃねぇか。
背負ってるものはみんな一緒だ。
テメェの言う月には月の、泉の輝きには泉の輝きの
人にいえねぇ苦しみがある。
テメェ一人悲劇の英雄気取ってんじゃねぇよ。
男のくせに」
「大丈夫?」
ミストはいそいそとタルタルを抱き上げ、
その頬を泉で浸した布でぬぐった。
口の端が、少し切れていた。
- 130 :ヴァナディール紀行:06/10/11 13:02:11 ID:E9Dzzekd
- 地の底を這うようなくらい呟きがタルタルの口から漏れる。
「あんたに、何がわかる?」
タルタルの言葉にルークは胸を張って答えた。
「わかんねぇよ。
テメェの痛みなんか、わかってたまるか。
でもお前もわかんねぇだろう?
他人の痛みを。
輝いてる所だけ見て、
遠くからうらやんでるだけなら気楽でいいよな。
限界ギリギリまで戦って、それでもダメで…
輝いている?!そんなもん他人から見たら、だろ。
自分じゃいっぱいいっぱいだったりするんだよ」
「……―」
タルタルは頬を押さえて泣きそうな顔でルークを見あげた。
ミストはやさしく語りかけた。
「もしかしてさ。
君は空で四神と戦うつもりでここに来たんじゃないのかな?
でなきゃ、君がここに一人でいるのは不自然だ」
タルタルは、うなずく。
深い森の静謐な空気が、心を満たす。
タルタルはうつむいた瞬間に、涙がぼろっとこぼれおちた。
「リンクシェルの奴が…タルタルが盾だと…ナイトだと
危険が増すって…。俺がガルカならよかったのにって…。
種族なんて、どうにもならないだろ?
俺はそれでも守りたくて、皆を守りたくてナイトを選んだんだ!!
でも、確かに言うとうり危険だ。
仲間守りきれてないって…自分で思う
俺はやっぱり、ナイトになんかなっちゃいけなかったんだ」
ルークは肩をすくめる。
言葉は何処までもそっけない。
「言う相手が、違うだろ。お前」
ルークはしゃがんで、泉の光を見下ろした。
「…」
「仲間の元に、帰れよ。まってるぞ、みんな」
「……―」
「確かにタルタル族はナイトにゃ不利だ。
不利だってわかってナイトを選んだ。
マイナスからの出発だ。
でもお前は聖騎士になった。
それほど、仲間を守りたかったんだろ。
そのために戦ってきたんだろ?
神に力を与えられてない分、
逆に必死に自分の力で頑張ってきたんじゃないのか?」
すくいあげる透明な水は、キラキラと月光に光りながら
ルークの手からこぼれおちた。
「お前にまだ、守るものがあるなら。
こんなとこでうろうろしている時間なんかねぇだろが」
「…」
タルタルの俯く表情。
握り締めた震える拳。
- 131 :ヴァナディール紀行:06/10/11 13:03:10 ID:E9Dzzekd
- ルークはその姿をみて呟く。
「守るものがあるってのは、騎士にとったら最高の幸せだ。
それは、絶対失っちゃいけねぇんだ。
お前が一人欠けたせいで、もし失っちゃいけないもの失ったらどうする。
空では、戦いがもうすでにはじまってるかもしれねぇぞ」
顔をあげた、タルタル。
その瞳には、決意があった。
そして、神々の間から駆け出してくるエルヴァーン。
ノーブルチュニックを着込んだ女性は、タルタルに手を振った。
「お迎えが、来たね」
「仲間ってのは良いもんだ」
ルークはタルタルの背中をとんっと軽く、押す。
タルタルは、一瞬二人を振り返り、
そして大きく頷きノーブルのエルヴァーンの元へかけていった。
タルタルの後姿に二人は手を振る。
タルタルは振り返ることなく、神々の間に入っていった。
月光だけが静かに二人を見守っていた。
追記
「いう事の重みが違うね」
「あ?」
ルークは怒気をこめてミストをみた。
「『神々の背中を守るもの』のリクルクさん」
ミストの言葉にルークの眉がピクンと跳ねる。
「うっせ。『アルタナの慈悲を受け継ぐ者』
なんて呼ばれたミスティアノリア様には言われたくねぇな」
ルークがミストの大腿を叩く。
「お互い、空が近くて興奮しているみたいだね」
「久し振り…だからな。あの地に行くのは」
遠く、見あげる。
はるか上空にある地上とは別世界。
「そうだね…ずっと、いけなかったから」
ミストは白銀の月を見て呟いた。
ふかい深い森。
人の手の届かない神々の住む場所に
再び彼らは足を踏み入れようとしていた。
END
- 132 :ヴァナディール紀行:06/10/11 13:09:38 ID:E9Dzzekd
- こんにちわです。
ルークとミストの本名とジョブがわかる場所になりました。
お空はキーポイントになりそうですし、
ちょっとしたおまけも描けたらと思います。
にしてもルークは短気すぎで困ります。
書くたびに怒っているような・・・・
コメントありがとうございます。
そのまんま・・・名前考えるの苦手ですみませんっ。
読み手の皆様、いつもありがとうございます。
書き手の皆様、新作楽しみにしています。
N
- 133 :(・ω・):06/10/11 13:51:49 ID:cgCQWS7w
- (*´ω`*) イイヨーイイヨー!
がんばれ樽ナ・・ありがとうNさん
- 134 :(・ω・):06/10/12 12:33:29 ID:vAni2vRB
- ガルナの俺にとっては、タルナは羨ましいけどな〜。
まあ、PTメンを絶対守ると言う意志と、自分の種族にあった戦い方をすれば、種族どうのと
卑下するようなことはない、とルークは言っているような気がする。
ルークの怒りっぽいところとか好きだな〜、ミストと良いコンビだ。
俺としては、ミストがちとなよっぽい方が困りもののような。
- 135 :(・ω・):06/10/12 17:03:34 ID:Pu8PfG7l
- ときどきエル♀ってことで脳内補完している。完璧だ。
- 136 :(・ω・):06/10/12 18:23:38 ID:vAni2vRB
- その手があったか!?
- 137 :ヴァナディール紀行:06/10/18 09:59:13 ID:rb3BMESx
- 神々の間
朽ちた白亜の廃墟。
神々の間と呼ばれる、空間。
誰が作ったのか、いつからあるのか。
ミストとルークは知らない。
天上から包み込むような静かな曲が流れ
水をたたえる荘厳な神殿。
巨大な彫刻はかの神話の世界の像だと聞いた。
昔々。
神々と人が近しかった頃
神々が眠りについた。
その隙を見計らい、人は神に近づこうとした。
目を覚ましたプロマシアは怒りを覚え
人々を海の底に沈めた。
それではあまりにかわいそうだと涙を流した女神アルタナの
五粒の涙が、今の種族に変わったという。
神々しい女神アルタナ
そして、長いロープに捕われたプロマシア。
その二人の間にたたずむ巨大な彫像。
あきらかに現代のヴァナデールの科学力ではない何かに
造られ、そして風化せずに残る
神々の遺跡。
ミストはかつりと足音を立てた。
「誰?」
振り返る小さな姿に、ミストとルークは逆に驚いた。
「あ、おどかしてごめんね。
こんな所に人がいるなんて…めずらしくて」
青い長い髪をさらりと揺らし、少女が振り仰ぐ。
青い大きな瞳が印象的だった。
ノーブルチュニックのあざやかな青い服が、少女の青い髪によく映える。
「いいえ。こんにちは」
にこりと、花がほころぶように微笑む。
ルークが軽く口笛をふいた。
「可憐なお嬢さん。こんな所で何やってるんだ?
ここはまぁ、安全地帯っちゃ安全地帯だが」
「お祈りを…」
首をかしげて、ぎこちなく振り返る。
その視線のやり方。
巨大な彫像を見あげるでもなく、何気なく振り返る。
「あのよ」
ルークの言葉に少女は顔を戻す。
が……ルークもミストもわかってしまった。
視線が合わない。
なんとなく声のほうを見ているが…きれいな青い瞳が
ルークの視線と絡むことはなかった。
この少女は、目が…見えない。
言わずとも、わかった。
- 138 :ヴァナディール紀行:06/10/18 10:01:03 ID:rb3BMESx
- 「はい?」
「祈るって…神様に、か?」
「はい」
不思議そうに首をかしげた。
「なんで、祈るんだ?」
彼女の祈りの対象はアルタナではなかった。
「何故…?」
質問に質問で返され、ルークは面食らった。
「祈れば、世の中どうにかなるのか?」
ルークの言葉に少女は首を横に振った。
「いいえ…」
「だよなぁ。
自分で何とかするならわかるが祈るだけで世の中変わるわきゃない。
なのに、お前さん、こんなとこで何をそんなに熱心に祈ってんだ?」
少女は桜色の唇を開いた。
「人が…ヴァナデールのすべての生き物が
仲良くなれたら…仲良く生きれたらっ…て」
少女は夢見るように俯いた。
「すべての生き物かよ?人じゃなく?」
ルークの言葉。
人ですら種族間で様々な争いを繰り広げているのに。
少女は頷いた。
「獣人族も人も…仲良く暮らせる未来が、いつかくるように。
私の力で、出来る事ではないから…。
だから、せめて心にあることを祈りたいのです
神々に」
目を伏せ、小さな指を組む。
薄淡い光さす神々の間でひざまずく少女。
その姿は神々しくすらあった。
「ミストと同じ人種か」
ルークが肩をすくめる。
「え?」
「こいつも、人と獣人の共存なんて馬鹿げた夢を見てる奴なんだ」
くいっと指差すルークに苦笑するミスト。
「酷いな。ルーク。馬鹿げたなんて」
「だってそうだろ?もうお互いの恨みなんて積もり積もって
どうしようもない所まで来ているんだ。
なのに、それでも和解したいと望んでる。
面白い事を考える奴がこの世の中に何人もいるなんて
驚きだよ。俺には」
腰に手を当てルークは笑う。
- 139 :ヴァナディール紀行:06/10/18 10:03:40 ID:rb3BMESx
- その笑みにミストは肩をすくめた。
「仲良く、出来るよ。人と獣人は。
ゴブリン族だってヤグード族だって
人と共に生きようとしている者達はいるもの。
諦めたらそこで終り。
諦めなければいつだって可能性はゼロじゃない」
ミストの言葉に少女は顔をあげた。
「そうっ!…そうですよね」
すがるような言葉にミストは大きく頷く。
「そうだよ」
「博愛主義者ねぇ。
でも、何でまた獣人と仲良くなんて、願うんだ?」
ミストはわかるが、普通の人はそんな事願わない。
「お友達が…獣人、だから…」
はにかむ少女の手をミストは取る。
「素敵だね」
少女は大きく、頷いた。
「ありがとう…。
そんな風にいってくれた人ははじめて。
ありがとう…
嬉しい、です」
「お前さん、名前は?
俺はルークでこっちはミスト」
「私はポロルルといいます」
優雅にちょこんとお辞儀をして会釈をする。
その愛らしさにミストの瞳はなごんだ。
「何かお菓子でも食べる?
コインクッキーくらいしかないけど」
ミストの差し出すクッキーをポロルルは受け取った。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
「あの…変な事を聞いていいですか?」
少女は首をかしげてミストを見あげた。
「なんでも、どうぞ」
ルークも聞く体制をとり、地面に座る。
「あやまちを犯した者は、
永遠に許されないのでしょうか?」
その言葉にミストは、一瞬言葉を失った。
ルークがミストの様子を見て、ポロルルの質問を取る。
「いんや。許されないあやまちなんて…ないと思いたいね。
どんな罪も…長い時をかければいつか許される。
それがいつかわわからないが…
許しのない世界では、生きていたくはねぇな」
ルークの言葉をポロルルは噛み締めるように受け止めた。
- 140 :ヴァナディール紀行:06/10/18 10:08:13 ID:rb3BMESx
- 「ありがとう…。
そう言ってももらえると…うれしい、です。
いつか…いつか許される日がくるなら…
いえ、許される日がこなくても…
それでも前に進むしかないのだけど。
…――何故人は、憎みあうのでしょう。
何故人は、他者を排除するのでしょう。
受け入れあえば、それで皆が幸せになれるのに…」
「まだ、人間って種族に
すべてを受け入れる度量がねぇんだな。
きっと。
でもよ、いつかミストやポロルルみたいなのが増えていけば…
世界は変わってゆくかもしんねぇな」
ルークの言葉に少女は笑う。
「いつか…。いつかが来ると、いいですね」
その瞳の色は、ビビギー湾の海の青。
ルークの頬に朱色が差す。
「なぁ。えっと ポロルル」
「はい?」
「また、逢えるかな?」
ルークの問いにポロルルは悲しげに首を横に振った。
「私。旅、しているから…」
「国があるなら、どこか連絡先がわかれば。
ポストが使えれば送るから。
その、何か面白いもんがあったら…ポストに送るし…」
リークの言葉は尻つぼみだった。
めったにないことに、ミストは驚いたようにルークをみて微笑む。
「私はポスト…は、使えない、から」
首を横に振るポロルル。
青い髪が波のように揺れた。
「え。と。んと、じゃ」
かばんの中を慌てて探る。
「これ。よかったらもらってくれ」
「これ…なぁに?」
手に受け取って眼の見えないポロルルは首をかしげる。
「平穏のピアス…ラピスラズリの使われているピアスだ。
大して高いもんじゃないけど」
それは、ルークの名入りの青いピアス。
ラピスラズリは持ち主に幸いをもたらすといわれている。
ポロルルは自分のピアスを取って、その耳につけた。
そして、そのピアスを差し出す。
「変わりにもらってください」
ルークはそのピアスをぎゅっと握り締める。
「サンキュ。な。必ずまたどこかで逢おう。
俺らも旅暮らしだから、きっと逢えると思う」
その言葉をさえぎるように、影が見えた。
「いくぞ」
- 141 :ヴァナディール紀行:06/10/18 10:10:31 ID:rb3BMESx
- 小さな姿が叫ぶ。
目深にかぶったフードでタルタルの顔はわからない。
だがミストはその声に眉をひそめた。
どこかで聞いた事があるような…それも、最近。
でも、思い出せない…。
「では。ルークさん。ミストさん。
失礼いたします」
優雅にお辞儀をして、ポロルルは影の方に歩いていった。
少女は小さな杖を持っていたが、その足取りはしっかりしていて
神々の間に過去に来た事があるのだという事を
ルークたちに教えてくれた。
「かわいい子だったね」
ミストの言葉にルークはふいとそっぽを向く。
そして、その頬をさらに朱色に染めた。
「儚げな子だったけど、芯は強そうだね」
「弱きゃ、眼の見えない奴が
こんなとこまでこれるかってんだ」
「だね。でも、ウィンダスにもちょっといない
独特の雰囲気を持った子だったね」
神々しい、というのか。
孤高というのか。
そう、こんな風にたとえるのはとてもおこがましいが
強いて言うのならば、星の神子様に似た雰囲気を持つ少女だった。
「いい…な」
ルークの感情に暖かなものが、芽生えた。
それは久しく感じていなかった、感情だった。
- 142 :ヴァナディール紀行:06/10/18 10:12:07 ID:rb3BMESx
-
追記
「兄さま…?」
「ん」
黒い影が振り返る。
ポロルルには見えない。
でもだからこそ、感じる。
血の、匂いを。
「兄さま…何をしてきたの?」
兄と呼ばれたタルタルの言葉は、そっけない。
「聞いてお前に話したことが、あったか?
お前は何も心配しなくていいんだ」
「でも!」
「それより天王のピアスはどうした?」
ポロルルの耳にタルタルはふれる。
「あ…」
「こんな安いピアスを…何処の馬鹿からもらった?
エンジェルストーンのほうが、お前には似合っているのに」
「兄さま。やめて。
初めて人からもらったものなの…。
見えないけど、青い石なのですってね。
私の瞳と同じ色なのでしょう?」
「まぁいい。
また新しいいいピアスがあったらやるから
ポロルルつけておけよ」
「兄さま!」
「宝石も、アクセサリーも、装束も!!
すべてお前の身を守るためのものだ。
最高級品をそろえてやる。
人が何をしたか、お前だって覚えているだろう。
俺もお前も、傷つけられ…殺されかけ…
お前から光を奪ったのも、人だ」
「兄さま…やめて!!
そうだけど…そうだけど。でも。
憎しみからは、何も生まれない」
フードを目深くかぶった青年は、首をかしげる。
「何故、許す?ポロルル。
この世界の最大の悪は人だ。
争い、けものの土地を奪い、
獣人の本拠地にすら忍び込み謀略の限りをつくす。
狩り、殺し、自分達の豊かさのために人が何をしているのか
お前の見えぬ瞳にも、映っているだろう」
「兄さま…。やめてください。
ポロルルは、半分は、人です」
その言葉に青年は自嘲した。
「だからこそ、俺はその半分の血すら憎いがな。
行こう。もうここでの仕事は終りだ」
音もなく気配すらなくよってくる、
黄色いフードのトンベリ達が
二人を守るように、囲む。
ポロルルは空をあおぎ、小さな唇で祈りを刻む。
この世界が、平穏であるように。
そして、兄が人に恨まれる行為を行なわぬように。
END
- 143 :ヴァナディール紀行:06/10/18 10:18:04 ID:rb3BMESx
- こんにちわです。
ミストが実はエルヴァーン女性だったとは!
書き手も知らない事実が判明しました!!
今回は神々の間ということで、キーポイントの一つになります。
お楽しみいただければ幸いです。
書き手の皆様、新作楽しみにしています。
読み手の皆様、コメントいつもありがとうございます。
N
- 144 :(・ω・):06/10/18 16:22:01 ID:Ha4NFQep
- >>143
ずーっとエル♀と思ってたけど、143コメント見て読み返してみたら「女」と言及してるところって無いですね。
1人称が「僕」なので、ボクっ子だと思ってますた。
空はカンストして長い私でも、神威とジラミ最終章のとき以外行ったこと無い(空に縁が薄いですorz)ので
これからどういうことになるか興味有ります。
- 145 :(・ω・):06/10/19 13:10:01 ID:y5fMkAn1
- アルテパ砂漠編の追記で、ミストが「僕って、女顔?」と言って
呆然とする場面があるんだが……さて、どう解釈したものか?
- 146 :(・ω・):06/10/20 16:19:40 ID:liXO2Ys9
- なんだろう、どっちの性なのか、元はどんな人物だったのか
そこらへんはN氏のインスピレーションにまかせてただ受身に
読み進めていくのが楽しくてしょうがない。
オススメ。
- 147 :(・ω・):06/10/21 19:22:25 ID:8jmCFdaM
- >>134の
俺としては、ミストがちとなよっぽい方が困りもののような
>>135の
ときどきエル♀ってことで脳内補完している
に対して
>>143の
ミストが実はエルヴァーン女性だったとは!
書き手も知らない事実が判明しました!!
だと思うのだが?
- 148 :ヴァナディール紀行:06/10/25 22:08:01 ID:NGoeKt1o
- ヴェ・ルガノン宮殿
なんとなく、足が向かなかった。
あの地には。
だからこそ、なのか…
ルークは沈んだか顔を隠しきれないミストをいたわるように
手をひいた。
「懐かしいなぁ」
ルークは呟く。
小さな声なのに、高い天上にはよく響いた。
ヴェルガノン宮殿。
何度も何度も、ミストとルークはここに通った。
その時にはいつも多くの仲間たちがいた。
ミストはミスティアノリアと呼ばれ、
ルークはリクルクと呼ばれていた頃の話だ。
「あんたも様になってきたね。リクルク」
LSリーダーの女狩人。
エルヴァーンのトウカに言われて、ルークはちょっと得意そうに笑った。
「まぁな。そりゃ伊達に戦い潜り抜けてねぇよ」
「ミスティアノリアも、おどおどしっぱなしで
最初は本当に大丈夫かって思ったけど。
まぁ、一通りこなせるようになって、後輩の指導まで出来るようになるとは
あんた達、飲み込み早いし、技術も上がってきてるし。
何より努力家で向上心が高い。
いいこった」
ミストは俯いてはにかんだ。
「そんな…。僕なんかまだまだです」
「なにいってんだい。いまや、パーティの守護神とまで言われる
神速の状態異常回復術を持ってるくせに」
「そんなっ。
まだまだ遅いです。
ゼファーやカトゥーの空蝉の術を妨げる敵の攻撃は
即解除したいのに、一昨日も詠唱中断一回させちゃいましたし」
トウカは肩をすくめた。
「一日中戦って、詠唱一回位別にいいだろうに…」
ミストは力いっぱい首を横に振った。
「だめです!!
HNM戦ではそれが命の取りになります。
昨日だって…アーヴィさんを、怪我させちゃって…
パーティの癒し手として…怪我人を出してしまうのは
やはり白魔道師としての力不足です。
怪我人を出さない事が、白魔道師の務めです」
ミストの言葉にトウカは笑う。
- 149 :ヴァナディール紀行:06/10/25 22:09:56 ID:NGoeKt1o
- 「おいおい。あんたぁ何処までのぼりつめるつもりだぃ?
他のHNMLSと比べると、死者がうちは段違いなんだよ。
それもこれも、パーティを守る魔道師さま達の腕が良いからだ」
「トウカの姉御。盾の腕はどうでもいいのかい?」
ルークの言葉にトウカは笑う。
「こいつぁ失礼。そりゃ、盾の腕も必要だ。
リクルクみたいなタルナはキッツイかとおもったが、なかなかどうして。
ブーガのおっさんが怪我して退いてから
あんたはうちにゃなくてはならない、一級の盾だ」
トウカの言葉にルークはへへっと笑った。
「タルタル族でナイトなんか
どうかしてるよなぁたぁおもうけどよ。
でも、やっぱ、やりてぇから。
まもりてぇから…。
それに最前線で敵と戦うときは、ほんっとゾクゾクすんぜ」
ミストはその言葉にちょっと不快気な視線を向けた。
「ありえないよ。ルーク。
あんな大きなモンスター相手に、身一つで立ち向かうなんて…。
それこそ簡単に飛ばされて終りな感じするし」
ミストの言葉にルークは笑う。
「はじめはだれだってそうだろうよ。
でも、装備整えて、技術身につけて、戦略おぼえて
ちゃーんと外堀埋めていけば、
そんな怖がる事なんかねぇんだよ。
それにミストはわかってねぇな」
ルークは首を横に振り、ふっと吐息をついた。
「え?」
ミストが顔をあげる。
「身一つで戦ってるわけじゃねぇ。
ちゃんとパーティがあって、仲間は後ろにいるから
安心して俺は敵の前に立てるんだ。
そうでなきゃ、あんなモンスターに突っ込めるかってんだ
お前らいなきゃ、フラッシュなんかできねぇよ」
ルークの言葉にミストははにかむ。
みんなの力になれているんだ、と。
それはそれは幸せそうに、ミストが笑む。
トウカはぱんっと手を叩いた。
- 150 :ヴァナディール紀行:06/10/25 22:11:42 ID:NGoeKt1o
- 「さて。またトリガー取り頑張ろうか。
そろそろポップする時間だし、それまで雑魚やりながらまとうか」
「おぅよ。姉御」
ルークは立ち上がり、剣をすらりと引き抜く。
ミストはライトスタッフを背負い、立ち上がる。
その身には青い衣が輝いていた。
「気がつけば…私らいつのまにかに
ヴァナデールで最強の一つといわれる
ハイノートリアムハンターになっちまったね」
トウカの言葉にミストは笑う。
「気がつけばって…前から僕はあこがれてましたけど」
「ふふ。
でも、私はそんな強くなろうとか別に思ったことなかったけどねぇ。
それが、いつのまにかに、ジュノに帰ればいつも凱旋騒ぎさ」
ルークはトウカを見あげる。
「そりゃそうだろう?
俺らが帰れば、競売に高級素材が並ぶからな」
ルークはクッと前を見る。
「んじゃ、行こうか」
「おぅ!」
「やるべな」
「いっくぜー」
口々に漏れる仲間の言葉。
男達の鍛えられらた剣が鋭く振られる。
魔法の詠唱が口々に囁かれ、精霊魔法が敵を襲う。
堅い鎧に、重い攻撃がのしかかる鈍い音が響く。
この頃は、まだはるか未来にある痛みを
ルークもミストも知らなかった。
若い瞳は、ただ前だけを見つめいていた。
未来の惨劇は…彼らの時代を、壊した。
彼らのすべてを、一瞬にして奪い去った。
追記
「なつかしいね」
ミストは、小さくはにかむ。
かつんっという2人の靴音だけがやけに響いた。
白い空間に、ただ敵だけがいた。
「よくここいらで、トリガー取りもやったなぁ。
あんときゃ、若かった」
周囲を見渡すルーク。
「なにいってるのさ。ルーク。
今だって十分に若いくせに」
ミストの突っ込みにルークは肩をすくめ苦笑する。
「だな」
けれどその苦笑は人生の苦渋を知る、
痛みを経た男の顔だった。
END
- 151 :ヴァナディール紀行:06/10/25 22:21:31 ID:NGoeKt1o
- こんばんわです。
今回は短めです。
本編になるのか・・・・過去編です。
はじめにすみません。
当方お空はまったくもって縁のない生活を送ってまして
LSの方にお空の戦いを見せていただいたり
歩き回りましたが、不備がありましたらすみませんです。
お楽しみいただければ幸いです。
書き手の皆様、新作楽しみにしています。
読み手の皆様、いつも楽しいためになるお声をありがとうございます。
N
- 152 :(・ω・):06/10/26 00:14:11 ID:eyWYnwBS
- >ヴァナディール紀行の人
今回も楽しかった
>ファントムの人
読み返したら、ため息が出た。これからどうなるの?
- 153 :(・ω・):06/10/26 11:13:23 ID:ObBOrbNT
- ヴァナディール紀行の人へ。
今回の話、個人的にすごく経験ある世界だったので
涙出そうになりました。なんでしょうね。。
よい物語をありがとうございます。
引退して放浪してるのもそっくりだ (´;ω;)
- 154 :(・ω・):06/10/31 12:23:42 ID:V2gi8Ygs
- そろそろ名無しの話が読みたい・・・
- 155 :(・ω・):06/11/01 00:23:17 ID:szt+9R8P
- age
- 156 :ヴァナディール紀行:06/11/01 12:38:23 ID:glPfLhoh
- ル・アビタル宮殿
めずらしく、ワープは一回ですんだ。
こんな時だから、とその皮肉さに笑みが浮んだ。
ボヤーダ樹で摘んだ花を捧げるルークとミスト。
がらんとした空間。
モンスターすらいない、広い広い空間でミストはひざまずき祈りを捧げた。
「変わらない…なぁ。
血の跡すらねぇや」
ルークの呟きにミストは困ったように微苦笑した。
「…そうだね」
目を閉じる。
思い出す。
痛みは今も胸にあった。
麒麟との戦闘。
慣れている戦いだった。
いつもどおり順調に、モンスターと戦っていた。
白虎、朱雀、青龍、玄武を倒す。
多少崩れる事もあったが、
修正は簡単だった。
怪我人は下がり。
白魔道師はケアルを詠唱し
黒魔道師はエアロを詠唱し
召喚師はディアボロを召還し
盾と呼ばれるナイトや忍者が敵の注意をひきつけ戦う。
言葉はいらなかった。
言葉を交わさなくても、意思の疎通が出来る。
そんな仲間だった。
- 157 :ヴァナディール紀行:06/11/01 12:39:44 ID:glPfLhoh
-
「余所見すんなっつってんだよっ!」
麒麟にフラッシュを詠唱するルーク。
ターゲットが移った瞬間、仲間のダメージを予想し
ケアルの詠唱準備に入るミスト。
キリリッと弓をひくトウカ。
空蝉の術を唱えるゼファー。
敵の範囲にタッと飛び込みエアロの詠唱を開始するマゥロロ。
バラードを奏でるミノアノ。
リフレシュをルークに詠唱するアーヴィ。
完璧だった。
順調だった。
なのに、その流れがふいに壊れた。
盾役のガルカ忍者のカドゥルが、崩れた。
「え……」
ミストのそばでヒーリングをしていたルークは顔をあげた。
「リクルクっ。すまない。サブ盾に入ってくれ!!」
トウカの指示に戦線に駆け込むルーク。
ミストはルークを視線で追っていると、不意に不吉な声がした。
「くぁっ…ー!」
振り返ると、頭を綺麗にそったヒュム白のキェインがひざまずいていた。
「キェイン?」
ミストがケアルを詠唱する。
ふいにミストにかけられた魔法にミストは戸惑う。
声にしていたはずの、詠唱が不意に止まった。
声が出ない。
詠唱したいのに…固まってしまった咽喉。
ミストにかけられた魔法は、沈黙の魔法サイレスだった。
何故?
誰が?
考えるまもなく、荷物からやまびこ草を取り出し口にふくむ。
麒麟が目前であばれている。
ケアルが入らなければ。
グラビデが入らなければ。
麒麟は目の前で、その力を振りかざし人を襲う。
獣と人、
彼らは今、命をかけた戦いをしているのだ。
ルークが必死に敵対心をあげるが、白魔道師のケアルが入らなければ…
盾役の忍者やナイトが怪我を負う。
倒れる。
そして麒麟の血に濡れた鋭い爪は、後衛に襲い掛かる。
「やべぇ」
額から血を流したルークが、ケアを自分に詠唱する。
ミストもルークにケアルを詠唱するが、スタンでとめたものがいた。
ミストは固まる。
え?
振り返る。
多くの仲間にまぎれてわからなかったけれど。
飛び交う魔法の中…ありえないことが起きていた。
小さな…タルタル族の魔道師が、
人に―仲間にむかい、魔法を詠唱していた。
- 158 :ヴァナディール紀行:06/11/01 12:40:41 ID:glPfLhoh
-
何故ー?
どうしてー?
そんな事をしたら、どうなるか…わかっているのか?
戦いはとても危険だ。
気心の知れた仲間と、そして冒険者の最高峰といわれるスキルが無ければ
この空といわれる地に立つ事は出来ない。
人は弱い。
だからこそ完璧に計算している。
敵の行動、味方の役割。
そのすべてを仲間が把握して初めて成り立つ戦い。
人より巨大で強い生き物に剣を向けるとは、そういうことだった。
だが、これはあきらかな…そして過去に無い計算外だった。
誰かが、戦闘中に仲間に対し攻撃魔法を行なうなど…。
「なにを…」
している?!
ふつり、とミストの腹のそこから湧く怒り。
麒麟との戦闘は、高スキルな彼らでも死者が出る危険があるくらい危険なものなのに。
予期せぬ事態に戦闘は混乱し
そして…事態を理解せぬまま戦線は崩れていった。
「ミスティアノリア!ケアルXだ!!」
肩をざっくり抉り取られ、血にまみれたトウカの叫びに
ミストは視線を動かし、茫然とした。
仲間達に襲い掛かる麒麟。
その爪は仲間の血に濡れ赤かった。
多くの仲間が倒れ伏している。
みんなが、血を流している。
苦痛に顔を歪ませて。
ぐったりと横たわり、あるいは
苦悶に血の海で転げまわっている。
一度崩れたものを立て直すのは難しい。
腕を失ったものもいる。
足をえぐられたものも…
周囲すべてが怪我人の中で
誰に、ケアルをすればいいというのか…?
ミストはたっと前に駆け出した。
もう、皆を一気に回復するにはケアルガしかない。
戦線を建て直すには…。
しかし、ミストの足を止める、何者かの魔法バインドがミストの足に絡みついた。
前線にいくことすら許されない、体。
ミストは舌打ちをし、イレースの詠唱を行なう。
あいつを睨む間すら、惜しい。
その間も、血飛沫が飛び、麒麟の牙が仲間に襲い掛かる。
倒れてゆく…。
アーヴィが…マゥロロが。
麒麟の足に踏まみにじられ、その爪に裂かれる。
医術に精通したミストだからこそ…わかる。
倒れた彼らの魂が…その身体からはなれようとしているという事を…。
- 159 :ヴァナディール紀行:06/11/01 12:41:52 ID:glPfLhoh
-
間に合わない。
守りたいのに…。
守りたいのに…。
守りたいのに…。
血が滲むほど唇を食い縛ったミストの咽喉から
倒れ伏す仲間達に、吐き出される想い。
「女神の…祝福!!」
ぱぁ…っとミストの周囲がやさしい空気に包まれる。
輝く光の中。
ルークの小さな体がミストの前に飛び出してきた。
「バカ野郎っ!!!!!!」
ミストに襲い掛かる巨大な麒麟を目前に
ミストをかばい、インビンジブルを発動させるルーク。
その小さな背中を、ミストは見ていた。
かばわれる自分が情けなかった。
その瞬間、トウカは最後の力を振り絞り、イーグルアイを叩き込んだ。
もう…無理だとわかった。
崩れたパーティで勝てる相手じゃない。
仲間達は地に伏せている。
麒麟の爪に引っ掛けられ、ルークとミストは空を吹っ飛んだ。
「退却しろっ!!逃げれる奴は逃げろっ!!!」
トウカはその細身の体で麒麟の攻撃を空蝉で避けながら叫んだ。
空蝉の切れたトウカの細い身体は、麒麟の腕に振り飛ばされ、
壁にバンッと叩きつけられた。
ずるずると崩れ落ち、意識を失うLSリーダー。
ミストの意識も遠のく。
目が、霞む。
もう、駄目…なのか…。
死ぬのか?
この凄惨な…地獄のような光景の中
耳を疑うような、声を聞いた。
「みんな…死んでしまえばいい…
薄汚いハイノートリアスハンターなんか…
世界を乱す、悪だ。
死ね…死んでしまえ」
憎しみに満ちた低い低い声は、
ローブを着たタルタルから発せられていた。
タルタルの周囲の空気は
モンスターにも似たどす黒い憎悪で固められていた。
胸が悪くなるほどの…目をそむけたくなるほどの、憎しみ。
タルタルはゆっくりと振りかえる。
そしてワープポイントから消えた。
その口元には、笑みが刻まれていた。
- 160 :ヴァナディール紀行:06/11/01 12:43:40 ID:glPfLhoh
-
「ぁ…」
ミストが倒れたまま手を握り締める。
手にはまだ、力が入る。
足にも。
なら、立ち上がれる。
背中から血を流し、ミストは何とか立ち上がった。
「ミスティアノリア、逃げれるか?」
隣でひざまずいていたガルカ忍者のカドゥルは呟いた。
「あぁ。なんとか」
「余力は?」
「……すこしなら」
「トウカを、頼む」
ミストは背中に意識を失ったトウカを背負わされる。
そして、そばに倒れていた血に濡れたルークを抱く。
よろめきながら、息を乱し、
血の流れる唇を食い縛ってワープポイントに向かった。
何故、ミストには手が二つしかないのか。
皆を抱えてこの場を離脱したいのに…
たった二人しか抱えられない。
足元にはいつも明るい笑顔だったヴィラルルが
ぐったりと血を流して倒れていた。
倒れ伏した仲間から目をそむけ、ミストはよろよろと歩く。
そのミストに襲い掛かる、麒麟。
「く…ぅ」
あとすこし…。
あと少しでこの部屋から離脱できるのに。
そう思ったミストの瞳には涙が滲んでいた。
自分の命なんかいらない。
背負ったトウカの命を。
抱いたルークの命を。
みんなの命を。
みんなの命を守るために白魔道師になったのに…。
こぼれ落ちる、悔し涙。
必死に歩いているつもりでも、怪我を負ったミストの歩みは遅い。
麒麟がミストに襲い掛かる瞬間、カドゥルは傷だらけの身体で挑発をした。
「こっちに来やがれ!!」
「カドゥル…ッ!!」
ミストが振り返るその先。
ワープポイントに立って、ミストがその地から消える寸前に…
ミストは、カドゥルの口元の微笑と
微塵がくれを見た。
命をかけた最期のアビリティ…。
麒麟部屋にはもう蘇生を行なえるものなどいないのに。
- 161 :ヴァナディール紀行:06/11/01 12:44:45 ID:glPfLhoh
- 「ぁ……」
滲む涙を振り払う。
ここはまだ、安全な場所じゃない。
泣いている場合じゃない。
ミストは荷物から、サイレントオイルを出す。
指がこわばって、うまく背後のポーチから取り出せなかった。
血で、滑る。
首筋を流れる血は、自分の血か、トウカの血かもわからなかった。
それでも、トウカの息遣いが。
ルークの温もりが。
生を感じさせて…ミストに力を与えた。
血の跡を残しながら、ミストはル・アビタル宮殿を後にした。
追記
「俺は意識を失ってて…あんときのことぁあまりおぼえちゃいねぇんだが」
ルークは呟く。
ミストは目を伏せる。
「うん」
「お前はその目で、全部みていたんだな」
ミストは俯いたまま小さくこくりとうなずいた。
倒れてゆく仲間たちの絶叫。
苦悶の表情。
血の海でのた打ち回る仲間たちの壮絶な光景。
目を閉じれば、今も感じられる。
ここが、ミストとルーク…
2人旅のはじまりの場所だった。
END
- 162 :ヴァナディール紀行:06/11/01 13:22:20 ID:glPfLhoh
- こんにちはです。
あと1話でとりあえず過去編決着つきます。
お話のストックがなくなってきたのでちょっとどきどきですが
まったりアップしてゆきます。
書き手の皆様新作楽しみにしています。
スレを守ってくださるみなさまありがとうございます。
お声うれしく拝見しました。
冒険にはいろいろな形があります。
>>153様、皆様にとって、楽しいヴァナでありますように。
N
- 163 :(・ω・):06/11/01 14:36:24 ID:DXtRJbig
- (´;ω;`) ブワッ
- 164 :(・ω・):06/11/02 03:32:18 ID:o3AlbPyJ
- ル・アビタウ
- 165 :(・ω・):06/11/02 07:57:08 ID:Hx/EB3zb
- 隊長!ただいまWikiへの追加終了しました(・◇・)ゞ
[やったー!][やったー!]以前にWikiの使い方分からずアップできなかったけど、
勉強に一週間かかったけど何とかアップできたぁ(≧∇≦)
いつもお世話になっている作者様の少しでもお役に立ててたら嬉しいです<(*´ω`)
- 166 :(・ω・):06/11/02 08:24:46 ID:3l74O2/L
- >>165
乙
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