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涙たちの物語10 『旅の行き先』
- 1 :(・ω・):06/05/09 07:22:35 ID:38OC3SEF
- ヴァナディールを舞台にした物語を語るスレです。
あなたの中にあふれる物語を聞かせてください。
前スレ:
涙たちの物語9 『旅の果てに』
http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/ff11/1123780223/
倉庫等(現役稼働中):
(Wiki)http://kooh.hp.infoseek.co.jp/
歴代スレや旧倉庫は>>2あたりを参照。
次スレは、400k越えたあたりで、宣言→立て→告知を願います。
※この板の転送量限界は512kなので、早めに対応しましょう。
- 203 :(・ω・):06/11/22 08:25:10 ID:8JlrCF/i
- >>201
なんと!
飼育係がちゃんと世話してるのかと思ったよ。
今夜辺りイン出来たら行ってみるか。
ところで、チョコボに餌ってあげられるのか?
と、すれ違いスマソ。
>>202
俺も最初そう思ったw
そして、振り向いて「肉をもっと・・」とにやりと笑われたりしたら・・怖っっ|゚Д゚))ガクガク
- 204 :(・ω・):06/11/22 08:46:38 ID:jNkp0i1K
- >>203
飼育係が最低限の餌はあげてるって設定。
ただステータスを聞くと「とてもお腹がすいている」って言われるが。
久しぶりに様子見に行くと、世話してない間の様子を1日ずつ延々と聞かされて時間かかるので注意w
- 205 :ヴァナディール紀行:06/11/22 19:58:10 ID:jIC8fK+5
- ソロムグ原野
「おや?」
「めずらしいな」
ルークとミストは慌てるでもなくソロムグの道ともいえないような道の端
干からびた大地に倒れた青年を見つけた。
ととっと、ちかよる。
「んん」
リザードジャーキンを着た戦士は、日の照りつける中
汗だくで岩場に倒れこんでいた。
すぐそばを、ウェポン族が徘徊している。
「呼吸はしっかりしているな」
「うん。怪我じゃなさそうだね。
何処を圧迫しても痛そうなそぶりもないし」
「ふん、ってことは」
「うん。空腹か疲労か熱射病か」
「のんきな冒険者だ。
しょうがない。こいつ連れて安全な日陰に移るか。
ジュノまで背負っていくには、ちょいと遠いしな」
ルークは言って、くいっと日陰を見た。
「そうだね。そのほうがいいね」
ミストは、冒険者を背負った。
ヒュム青年…とは、言えない。
その体重の軽さが、まだ青年とはいいがたい、少年の面影を残していた。
「若いな」
ルークの呟きにミストはうなずいた。
- 206 :ヴァナディール紀行:06/11/22 19:59:20 ID:jIC8fK+5
-
日がかげる頃、うなされていた青年は首を振り目を覚ました。
「んん…ん!!」
がばっと起き上がって自分の手をばっと見る。
「すっげぇ、まだ生きてたっ!?」
少年の頭を背後から拳でごんっと殴るルーク。
「そう簡単に、死んでたまるか」
「おはよ。具合どう?」
にっこりと花のように微笑むミストに少年はぽやーっと見惚れた。
「うわ。綺麗なおねぇさんだぁ」
その言葉にもう一度ルークは少年の頭を殴って、軽くシェイクした。
「あぁ?!何処がお姉さんだぁ?よく見ろってんだっ。
男だろうがよ!」
「え、だって、こんなほっそりしていて…華奢で…」
ミストは額に怒りを浮かべながら、にこにこ微笑む。
「君、エルヴァーン見るの初めて?」
「えっと、エルヴァーン族を見たことあんまりなくて…。
領事館は怖いしウィンダス出身のヒュムだから」
「男、だからね」
きっぱりはっきりさっくりミストは言い切る。
「あ、ごめんなさい。でも髪はさらさらだし…
瞳はあざやかだし…顔立ち優しいし…」
「あぁ?旅暮らしで髪なんかぼっさぼさ。
顔立ちがやさしい?
ニコニコしいてる奴は裏で何考えてっかわかんねぇぞ。
俗に腹黒っていうのか?」
「そこまでで十分。ルーク。
で、えっと…どうして行き倒れていたの?」
「あ」
ささっと少年は居ずまいをただし、頭を下げる。
「助けてくれたんですよね?
ちょーさんきゅーす。すっげ!!
本当の冒険者だぁ」
「………最近のガキぁ、言葉も通じねぇのか」
ルークがぼそっと呟いた。
「あ、えと、倒れてたって…どうしてなのかな?」
あはははは。
と天真爛漫に笑う少年のお腹がググゥ〜となった。
- 207 :ヴァナディール紀行:06/11/22 20:00:57 ID:jIC8fK+5
- 「飯、どんくらい食ってない?」
「えっと」
一、二、と指を折って数えていたが指が止まった。
どうやら思い出せないらしい。
「昨日の夜に…干し肉半分?その前は……?」
「水は?」
「あ……モンスターと戦ってて、モンスターに水筒の革袋破られちゃって…」
「……こンのッ、間抜けっ!!」
放り投げるようにわたされる水筒。
「いいの?」
「ゆっくりお飲み」
ミストの言葉に、こくこくと飲み始める少年。
あっというまに水筒は空になった。
「ぷはーーー。こんなうまい水、初めて」
「遠慮って文字をしらねぇのか。この馬鹿」
ルークはさらにぶん殴った。
「てーーー。へへっ。
でも、俺ってばほんとちょーラッキーだよな」
「あぁ。本当だな」
「だって、本物の冒険者に助けられたんだもん。
俺さ。冒険者になりたくて、あこがれてたんだ。
すっげ、本物だよ。どうしよう…!」
「どうもするな。ボケ。
ミスト…ガキのあいて頼む。
疲れた」
「まって、今料理できるから」
火をおこすところからは少々面倒なので
クリスタルの合成食ではあるが…ミストが材料をそろえて造っていた。
「たいしたものはないけどね」
そういって差し出された、草粥とキュスの香草焼き。
少年はガツガツと食べ終えてミストたちの食事をもの欲しそうにじっと見る。
「食えよ」
ルークはその視線に耐えかねて少年に碗を差し出した。
「いいの?さんきゅー!!」
遠慮という文字を知らない少年は嬉しそうにカツカツと食べた。
「で、旅に出るにはまだ色々と早そうだけど…」
「え?そっかな」
少年は首をかしげる。
「でも俺すっげー頑張って、金ためて装備も競売で買って、
修行もして強くなったんだぜ。これでも」
「あのね。冒険者は、力だけじゃダメなんだよ」
ミストの言葉に少年は首をかしげる。
「なんで?強ければいいんだろ?」
「そうじゃなくって…。冒険者は町に暮らすものより賢くないとダメなんだ」
「え?うそっ?!俺勉強全然できねぇよっ」
少年は困ったというように天を見上げた。
いつのまにかに、空には満天の星が瞬いていた。
- 208 :ヴァナディール紀行:06/11/22 20:02:16 ID:jIC8fK+5
- 「あのな。馬鹿は冒険者にはなれねぇよ」
「う〜ん。算数とか出来ないとダメか?」
少年の言葉にミストはうなずく。
「競売の計算、損得くらいの計算能力は必要だね。
剣の腕や、装備も勿論重要だけど…
冒険者に必要なのは、地図を読み、冒険の日程を綿密に立てて
その日の天候を読み、モンスターの生態を知り、自分の食事の計算
水の計算がきちんとできないと…すぐに死ぬ。
荒野は、怖いよ」
にっこり微笑みながら言うミストの声には、妙な迫力があった。
「それって…学校の勉強より大変じゃん!!」
「そ。学校の勉強は落第すればそれですむけど
冒険者はつねに自分の命と、引き換えだ。
軽い気持ちで冒険者になるつもりなら、やめなさい」
きっぱり言うミストに少年は、ぐっと言葉を詰まらせた。
「合成の技術は、あったほうがいい。
敵を倒し今日の食事を得る腕も勿論必要だ。
すべてを兼ね備えた冒険者でも、
アクシデントで……命を落とすこともある」
「でも…俺、冒険者になりてぇもん」
少年は唇をとがらせ、呟いた。
そして、自分の細い腕をさする。
「俺…もう、オヤジもお袋も死んじゃったから…帰るとこねぇし。
進むしか、ねぇんだ。
冒険者、やりてぇんだ」
ぽそぽそつぶやく少年にルークは吐息をついた。
- 209 :ヴァナディール紀行:06/11/22 20:03:39 ID:jIC8fK+5
- 「むやみにやめろっていってねぇだろ?
そうじゃなく、ちゃんと頭使って行動しろっつってんだよ。
剣振り回せりゃ冒険者。なんて、甘い世界じゃねぇんだ。
こんなとこで行き倒れてたてことは、ジュノ、行くんだろ?」
少年はコクンとうなずく。
「冒険者になる前に死んでちゃ意味がねぇっつってんだ」
少年はコクンとうなずく。
「明日、起きたら食料と水分けてやるから。
ジュノまでの道も教えてやるから。
行き倒れるような真似すんな」
少年はコクンとうなずき涙をこぼした。
「だああぁぁ!泣くな。
折角入れた水分がもったいねぇだろう!!」
少年は涙を拭いて顔をあげた。
「ちょーさんきゅー。
俺さ、オヤジとお袋亡くして…
叱ってもらったの久し振りで……
街でて、本当は怖かったんだ。
死ぬかと思って、俺すっげ…こわかったんだ」
ひっく、ひぃっくっと
少年の細い鳴き声が闇に染み込む。
「自分の命を、大切にしない子は、いい冒険者になれないよ。
死ぬのが怖いなら、大丈夫」
ミストの綺麗な指が少年の髪を撫でる。
「ふえええぇぇぇぇぇ」
少年は、ミストにすがりついて、大泣きした。
翌朝
少年はしっかりした顔でルークとミストを見た。
その手には、不恰好なルーク手書きの地図と、水と食料。
「あんたらのこと、わすれねぇ。さんきゅな」
「ありがとうございました、だ。ボケ」
「じゃぁな!」
少年はへへっと笑って、タッと身軽に駆け出した。
- 210 :ヴァナディール紀行:06/11/22 20:05:03 ID:jIC8fK+5
-
「まぶしいね」
ミストが少年の後姿を見て、呟く。
「なーんにも考えてねぇ一途さは、確かにすげぇよ。
ガキの特権だ」
朝日に向かってかけてゆく少年。
その後姿を二人は眩しそうに見つめていた。
追記。
「器用だよなぁ」
仲間にため息混じりに言われて、彼は笑う。
「普通だろ。こんなもん」
そう言って、武器の手入れを終えた。
「ほい、弓、直ったぜ」
「ありがとうよ。あんたがいれば、ほんとに百人力だね」
「そうかい」
「そうそう。器用で物知り。調理は師範。
どんな危機ものらくら乗り越えちまうんだから。
氷河で吹雪の中さまよってもう死ぬかもってときに
ソジヤに逃げ込んで、あんたの造ったハートチョコレートかちわって
皆で食べたろ。
あれには笑ったし、元気も出た。
あんなうまいもん食べたの私ぁはじめてだったよ」
「……あれは…別に。
非常用にバブルチョコ作ろうとしたら…
ああなっただけだろ?」
青年のふくれっ面に仲間が肩を叩く。
「野草の知識もモンスターの知識も…
あんたにゃ脱帽だ」
青年はやわらかに笑う。
「昔……叱ってくれた人がいたから、な」
遠い瞳で、過去を見る。
彼があの時ソロムグで受け取ったものは、
草粥とキュスの香草焼き
わすかな食料と水と不恰好な地図。
でも、それ以上に大事な智恵を、冒険者から受け取った。
生きてゆくために何より大切な、もの。
学ぶこと、知ることの大切さ。
少年だった彼の渇いた身体に、染み込んだやさしい助言。
それは彼の生きてゆく指針にもなった。
そして、あの冒険者2人の言葉が、今日も彼と彼の仲間を守る。
「さぁ、いこうか」
彼は歩く。
冒険者として、光ある道を。
END
- 211 :ヴァナディール紀行:06/11/22 20:07:25 ID:jIC8fK+5
-
コメント
今回は通常どうりのお話です。
前回は様々なコメントありがとうございました。
ほとんどの方が、ちょっとしたオマケをご理解くださって
びっくり嬉しかったです。
トウカ姉さんが生きていたかどうかについては
謎ということで、お願いします。
様々な書き込み楽しく懐かしく読ませていただきました。
あの5人の名前を書くと答えが出ている問いのようなので
アムスレムスにしたのですが、彼でもわかってしまうとは…。
さすがです。
これからも、気長にマッタリチョコチョコかかせていただきます。
読み手の皆様、様々なお声励みになります。ありがとうございます。
WIKIへのアップ、お手数おかけしてすみません。
ありがとうございます。
そして、書き手の皆様、新作楽しみにしています。
暁のひとみの作者様、楽しませていただいています。
ありがとうございます。
皆様お風邪を召されませんように。
N
- 212 :(・ω・):06/11/24 09:57:59 ID:O2BbeCA3
- N氏、めちゃ楽しませて頂いております!!
ついにミストが男にっ・・!(ぉぃ
脳内「時々エル♀」変換機もお役ご免となりました。
イイヨーイイヨー(*´Д`*)ノ
- 213 :ヴァナディール紀行:06/11/29 22:02:28 ID:3F+X2fJn
- ガルレージュ要塞
この先はジュノしかない。
荒涼としたソロムグ平原で、ジュノに行くともなくルークの素材の
ラプトルの皮を集めていたら、ガルレージュ要塞入り口に行き着いていた。
そこに不意に飛びついてきたタルタルの女戦士。
傷だらけの者。
このシュチュエーションにはミストは何より弱かった。
タルタルはミスト達を見つけてすがりついた。
「あ…助け…助けてくださいっ!!」
その小さな指の力強さは、必死さを示していた。
「ちょっと、て落ち着け!」
「私の名はラミルル要塞の奥で仲間がっ、エヴァオンがっ!!」
「なぁ…何で俺たち、こんな所にいるんだと思う?」
ルークはポソリと呟いた。
「ん〜〜〜〜なんでだろうね」
力なく微笑するミスト。
ここはガルレージュ要塞。
様々な穴があり、へたに落ちるととても危険な場所だった。
昔の戦闘の傷跡が残る地。
「すみませんっ。いそいでください!
仲間が…仲間がっ」
タルタルの必死の形相に、ルークは気圧されつつも足をいそがせる。
「了解っと」
「この扉の奥、なんです」
指し示す闇色の巨大な門。
これは大きな仕掛けで、人が4人必要だった。
幸い近くで狩りをしていた冒険者がいたのでミストが声をかける。
「すみません。狩りが終わったら仕掛けを踏んでいただけませんか?」
「おうよ」
黒髭のヒュムは剣を振るいながら気さくにうなずいた。
ルークが左手前、ミストが左奥の仕掛けに乗る。
タルタルは扉の前で足踏みしながら心配そうにルークを見た。
「いそいでるのはわかるが、ちとまてって。
こっちにはこっちの事情があるが、
向うには向うの事情がある」
「それは…わかるのですが…」
「お待たせだ。遅くなって悪かったな」
剣を鞘におさめ、
髭ヒュムはニヤリと笑い汗をぬぐって、仕掛けの上に仲間と共に立った。
「いや、こっちこそ。無理をいってすまねぇ」
ルークがぺこりと頭を下げる。
ミストは眉を軽くひそめた。
ガコン
と仕掛けが動いて扉が開いた。
- 214 :ヴァナディール紀行:06/11/29 22:03:15 ID:3F+X2fJn
-
ミストやルークはこの一門奥の敵くらいな、やられる心配はない。
「どこだ?」
「こっちです!!」
タルタルも周囲を気にすることなくかけてゆく。
自分も血を流している事などかまわないというように。
崩れかけた洞窟を抜け、そしてその奥の通路へ二人を導く。
「あ…っ」
タルタルの女戦士の鎧のかしゃかしゃとなる音が止まった。
その奥には、血に濡れたエルヴァーンが壁を背にもたれかかっていた。
「っ…、ひでぇな」
「これは……?!」
ミストがタッと駈け寄る。
エルヴァーンはミストの声にうっすら目を開け、乾いた唇で呟いた。
「あ…戦わないと…ー仲間が…」
力なく、周囲を見えぬ眼を凝らし見るエルヴァーンの戦士。
手には苦しいだろうに剣を握り締めていた。
そして…ミストにもルークにもこの傷は、
ハイポーションやエクスポーションでは治りようもないことがわかった。
「エヴァオン、ごめんね!!
ジュノから助けを呼んでこれなかったっ!
ごめん。ごめんね。ごめん……」
小さなタルタルの手がエルヴァーンの手を握り締める。
エルヴァーンの戦士はわかっているのか、いないのか。
「水を…熱い…咽喉が……――乾い、て」
エルヴァーンが粗い呼吸の中、呟く。
「あ…お水…水っ」
タルタルが慌てて自分の荷物をゴソゴソと探すが、水は見つからなかった。
「ごめんね…お水…ないや。苦しいよね、辛いよね?エヴァオン…」
タルタルが涙をぽろぽろこぼしながら
エルヴァーンにしがみつく。
タルタルの散った髪が、柔らかな頬に落ちた。
- 215 :ヴァナディール紀行:06/11/29 22:07:02 ID:3F+X2fJn
- ミストは眉を細めて、自分の鞄を探った。
「ルーク。蒸留水あったよね?」
「おう」
ルークが自分の水を探そうとした時に
ミストはぼそっと呟いた。
「光のクリスタル、蒸留水にあててもらえるかな?」
竿の修理用にと、ミストが持ち歩いている光のクリスタルをルークにわたす。
「えっ?!おまえ…どういう…」
「お願い」
「まぁ、水には変わりねぇけどな」
ルークは座り込みしゅわしゅわと音を立てて光を散らしながら合成をする。
そして出来たものは、聖水。
ミストはそれを受け取り、タルタルに手渡す。
「はい。お水だよ」
「あ…ありがとうございます!!」
タルタルは涙に濡れた瞳でじっとミストを見あげ、そして聖水をエルヴァーンの口に注いだ。
「お水だよ。エヴァオン…」
エルヴァーンの唇からこぼれる水はそれでもわずかに咽喉を通ったようだった。
「あぁ…うまい……ラミルル
…ありがとう」
エルヴァーンは目を細めにっこりと笑んで…
そして、
まるで砂のようにサラサラと空気に溶けていった。
「っ…!?」
ルークが目を見張る。
様々なモンスター。
このヴァナデールの世界の不思議は見てきたが、
やはり眼前でこのような光景を見ると衝撃的だった。
「大丈夫だよ。ラミルル。
彼はアルタナの御許に帰ることをやっと許されたんだ」
涙をこぼすラミルルの肩にミストがふれる。
「まに…あったの?…――私…」
ラミルルは涙の中で、ミストを見て首をかしげた。
「うん」
「ずっと…ずっと間に合わなかったのに…。
私…ー私……」
- 216 :ヴァナディール紀行:06/11/29 22:09:46 ID:3F+X2fJn
- 「うん」
「エヴァオンが戦ってて、皆皆戦ってて…私は足手まといで…
だから戦局が厳しくなって、私に伝令係が任されて。
戦闘の増員を求める伝令だったわ。
私は、ジュノまで走っていったの。
いそいで。とてもいそいでいったのに。
夜も寝なかった、食事もとらなかった。
ずっとずっと走っていったのに…、私、間に合わなくて。
私が帰ってきたときは、もうエヴァオン一人だけだった。
そのエヴァオンも…息を引き取る寸前で」
「うん」
タルタルの双眸からぽろぽろと大粒の涙が、要塞の瓦礫に染み込む。
「誰も助けられなかった。
ジュノからも助けが呼べなかった。
私は何にも出来なかった…!!!」
両手に顔を埋めて泣くラミルルにミストはやさしく語りかけた。
「君は、僕らを呼んで
エヴァオンを永久の悪夢の輪廻から解き放ったよ」
ラミルルは首を横に振った。
「だって…私は…私は……ー」
「だからもう、自分を許しておあげ。
君も十分戦ったんだ」
ミストはやさしく、聖水に手を添える。
「え…」
「アルタナの女神の御許にいっていいんだよ。
ラミルル…君がこれ以上苦しむ必要はない」
ミストは聖水を口に含み、それをラミルルの咽喉に流し込んだ。
ラミルルは困ったように、不思議そうにミストを見あげた。
「もう…いいの?」
「もう、いいんだよ」
「本当に?」
「本当に。エヴァオンは先に逝って君を待ってる」
「………ん…」
首をかしげる血に濡れたタルタルの女戦士は、
小さく口元に笑みを浮べた。
「あぁ…光、が…」
夢を見るようにラミルルは呟き、そして光の粒となって空気にとけた。
茫然としていたルークがはっと我に返った。
「うわああぁぁ、すげぇてか、
びっくりしたああぁ」
ルークの言葉にミストは苦く笑う。
「ん。びっくりしたね」
「あいつら一体、何もんだ?!」
ルークの問いにミストは眉を寄せた。
「ルークはここがどんな場所だかしっているよね」
ミストは荒涼とした廃墟と、さまようスケルトン族を見るともなく、見た。
- 217 :ヴァナディール紀行:06/11/29 22:11:46 ID:3F+X2fJn
- 「ここは、要塞、だろ?ガルレージュ要塞」
「そう。クリスタル戦争のときの最前線。
この要塞を守ろうと人が獣人と戦った場所だよね。
多くの死者がでて、その死者がいまも、
この要塞を守ろうと入る冒険者を容赦なく襲う要塞」
「てことは…やつら?」
「クリスタル戦争の時代の、名も無き戦士…だったと思う」
「あぁ…」
ルークは眉間にたてじわをきつくし、瞑目する。
「ここには救われない魂がさまよっているんだ。
僕らに助けを求めても、不思議じゃない」
ミストはスケルトン族を悲しい眼差しで見た。
「あいつらずっと…ここ人を待っていたのかな。
自分を救ってくれる、人を」
ミストは小さく頷く。
「多分ね。器を無くし魂だけになっても
なんどもなんども
おなじように同じ時を繰り返しながら、
救ってくれる人を待っていたんだ。
身体を失ってなお、
思いは強くこの地に残っていたんだと思う」
周囲にさまよう剣や鎌を持つガイコツの
闇に似た眼窩をルークは見据える。
「まだここにはこんなに、すくわれねぇ魂があるんだなぁ。
戦いってのは、何処までも残酷だ」
「うん……」
ミストは肩を落とし、頷く。
「永遠の業火で焼かれる苦しみ。
自我すら失っても、残る憎しみ。
妄執。
敵を倒すという執着、
守りたいものがなんなのかわからなくなっても
なお、この要塞を守ろうと剣を取る亡霊達…。か。
辛いな。
ヒトゴトじゃねぇけどよ」
ルークはミストを見て小さく、にがく笑った。
「ヒトゴトじゃ、ないけどね」
ミストも口の端に皮肉な笑みを、浮べた。
- 218 :ヴァナディール紀行:06/11/29 22:13:06 ID:3F+X2fJn
-
追記
間に合わなかった…。
ラミルルは失意の内に俯いていた。
間に合わない。間に合わない。
何度も何回も繰り返しても、誰に助けを求めても
エヴァオンは死に、ラミルルは狂気のまま叫んだ。
だれか、だれか助けて。
エヴァオンを、仲間を助けて!!
叫びながら、時をかけた。
もう一度やり直したら
次こそは…。
信じて走った。
次こそ、次こそ…っ。
そして、ラミルルは
タルシーフと飄々としたエルヴァーンに出会った。
彼らは、ラミルルには、光だった。
ありがとうと、いえなかった。
エヴァオンを苦しみから、
渇きからすくってくれてありがとうといえなかった。
彼らに、思いが届けば良いのに。
ラミルルは光の中に足を進める。
振り返ることはもう許されない。
アルタナの神の御許へ続く、光の道。
その先は苦しみも憎しみも無く、
他人も自分もない
ただ満たされた空間が広がっていた。
二人の魂を救ってくれた彼らの未来に祝福を
ラミルルは祈りながら世界にとけた。
END
- 219 :ヴァナディール紀行:06/11/29 22:20:10 ID:3F+X2fJn
- こんにちわです。
要塞といえば、
やはりクリスタル戦争が思い出されてしまいます。
そんなわけで、こんなお話しいなりました。
いつもお声下さるみなさま。ありがとうございます。
励みになります。
スレを守ってくださる皆様、感謝いたします。
そして、書き手の皆様、新作楽しみにしています。
N
- 220 :(・ω・):06/11/30 08:25:55 ID:5DlFmQ/C
- イイヨイイヨー(゚∀゚)
ルークとミスとの過去話は辛かったが、ここ2作はヴァナ紀行らしさが帰ってきて
凄い良かった。
物語って、前の話を引きずる事が甥のに、切り替えできるのが流石。
- 221 :(・ω・):06/11/30 09:53:18 ID:5DlFmQ/C
- 甥じゃない、多いだよ・・orz
- 222 :ツユハル :06/11/30 11:25:45 ID:KMywPiyq
- はじめましてこんにちは。
ヴァナを去って長い者ですが、プレイ中に自キャラやフレを使って勝手に妄想してた話を
最近になって形にしまして、このスレで眼の肥えてるみなさんには御見苦しいかもしれませんが
ひとつ張らせて下さいませ。
タイトルは決まってないので副題だけ・・・。
1:瞳の先、勇者の国
────
死を恐れず勇敢に戦って散った戦士の魂は、神に導かれその国へ辿り着くと云う。
そしてまた、終末に向けて終わりなき戦いと宴を繰り返すのだと・・・
だからオークの戦士は決して死を恐れない。
血が渇くほどに傷ついても
倒れはしない。
────
カンテラの灯りが室内を薄く照らす、揺れる度に影が躍る狭い石造りの部屋。
「ハッ・・・・ハッ・・・・・・──。」
「・・・・・・・・・・。」
室内に苦しげな女性の息遣いが響く。暗がりにベッドに横たわる女性と、彼女を見つめる銀の髪をした少年の姿が浮かびあがる。
「デュー・・・・・。」
母は息子の名を呼んだ。銀色の髪が揺れる。
「ごめんなさいね・・・。」
銀の髪が大きく揺れる。
「最期にもう一度会いたかった・・・・でもあのヒトはプロマシアの・・・私達アルタナの子らとは違う国へ逝くのでしょうね。」
「・・・・──えるさ。」
「え?」
青年の声はか細く、彼女には聞き取れなかった。
「会えるさ・・・・。」
青年が繰り返す。
「会えるよ、・・・勇者の国で。母さんはずっと戦ってきた、銃士を辞めさせられても病気とずっと。父さんだって・・・!だから」
最後は言葉にならなかった。
──勇者の国で、また逢える──。
- 223 :ツユハル2:06/11/30 11:28:29 ID:KMywPiyq
- バストゥーク共和国、豊富な鉱山資源とヒュームの技術力によって成長著しい大国。
その国内、鉱山区で新たに開発が進んでいるツェールン鉱山に足音が響く。
「おっと。」
声の主は急に慎重な足取りになった。彼の目線の先にあるモノは
──ワーム。
バストゥーク周辺に生息する生物であり、普段は地中で生活しているが
まれに間違ってクリスタルを摂取し、方向感覚を失ったものがこうして地上に顔を見せることがある。
このワームはクリスタルの他にさまざまな鉱石を食い鉱山を荒らすため、
有害生物(モンスター)として鉱山関係者の中では嫌われている。
そのためツェールン鉱山では鉱山夫以外にワーム退治専門の仕事を設けてある。
彼はまさにそのワーム退治の仕事中というわけだ。
下手に近づくと地面の振動で気づかれてしまう、方向感覚が狂っているとはいえワームは振動に敏感だ。
「・・・ふっ!」
一呼吸置いて男が一気にワームに向かって駆け出す。
振動で敵の接近を感知したワームは地面に潜ろうとするが一閃、青年が握っているハンマーがワームを叩きのめす。
強烈な一撃を受けてワームは完全に失神した。
「ぃよっし、イイモン食ってろよ〜。」
そう嬉しそうに言うと青年はナイフを取り出しワームの体を切り裂く。
ワームが食い荒らす鉱石のほとんどは消化され使い物にも売り物にもならないが、
希に希少な鉱石や個人で売買するには十分な質の鉱石が体内に残っていることもあり、
これらはすべて退治した物の物になるわけだ。が、結果はよろしくなかったようだ。
「ちぇー、石くずばっか・・・・お、よーデュー、そっちはどうだ?」
青年は仕事仲間を見つけると声をかけた。
- 224 :3:06/11/30 11:30:10 ID:KMywPiyq
- デューと呼ばれたその少年、背格好はヒュームの19歳頃その歳相応のモノだったが、ひとつ目立つのはエルヴァーンのような銀色の髪。
「・・・ん。」
デューは戦利品と思しき石を取り出した。それを見たガルカの青年がヒュゥと口笛を吹く。
赤石、銀鉱、鉄鉱、黒鉄鉱、銀鉱・・・・・これだけで十分な給金になりそうな量だった。
「やっぱお前はすげーなぁ、なんかコツとかあるのか?運がいいってわけでもなくて退治数が全然違うもんなぁ。」
同じワーム退治仲間の中でもデューの退治数は群を抜いている。今回は運よく成功したが、大抵は一撃を決める前に逃げられてしまう。
「別に・・・気づかれる前にやるだけだ。」
簡素な答えにガルカの青年はガックリとうなだれてみせる。
「それができたら苦労しねーよ、どうやったらそんなに速く動けるんだ、やっぱお前は普通じゃねぇな!」
そういってガハハと笑いながらデューの肩を叩く。
「コラァ!そこサボってんじゃねぇぞ!!」
「うひっ!親方!」
「・・・。」
大柄なガルカが怒鳴り込んでくる。
「ほれほれ、戦利品の自慢大会は後だ後!昼飯までしっかり働けい!」
「へーい。」
──
ゴォォン ゴォォン
鉱山内に昼の休憩時間になったことを伝える鐘の音が響く。
それと同時にさまざまな金属音は休憩を心待ちにしていた鉱夫達の声へ変わってゆく。
- 225 :4:06/11/30 11:32:03 ID:KMywPiyq
- デューは先ほど話をしていたガルカの青年の横で食事を摂っていた。その膝の上には無愛想な表情、煤臭い鉱夫の格好には似つかわしくない、
可愛らしい柄のナプキンに包まれたこれまた丁寧に作られた弁当。
「お、お?また例の“彼女”のベントウか?」
「あぁ、・・・・・なぁドルゾ。」
「おう?なんだ?」
軽く茶化すように話しかけたガルカの青年は神妙な顔つきで自分の名を呼ばれて戸惑う。
「オレは・・・・・やっぱり、普通じゃないんだろうか。」
「え・・・あ・・・・・。」
伏目がちなデューの表情を見たドルゾは、彼の母親が死んだことを思い出す。
そしてその日のうちに流れた噂のことも。
“不治の病だったそうだよ”“やっぱりあの子供が原因なんじゃないか”“近付かないほうがいいよ”
──“獣の血が感染(うつ)る”──
デューが変わっているところはその銀色の髪や突出した身体能力だけではなかった。
獣の血──。
彼の父親はオークだった。
大陸北部、サンドリア王国周辺に居を構えるオーク族はヒュームやエルヴァーン、ミスラの女性を襲い子を作る。
その多くはオーク族として産まれてくるが、ごく希にオークではないヒトの姿をして産まれてくる子がいる。
ヒトの姿をしていてもその多くはオークの様に凶暴でヒトとは思えぬ力を持ち、
過去の大戦時には多くの混血児たちが野に捨てられ、体内で増殖しつつける獣人の血に体を侵され死んでいった。
デューもまた、この時代には珍しい混血児の一人だった。
大戦時彼らはその生い立ちや凶暴性からブリード(混ざるモノ)と呼ばれ、
多くが産まれると同時に捨てられたように、生きた者も蔑まれ疎まれた過去がある。
そしてその習慣は今になっても変わらない。
- 226 :5:06/11/30 11:33:42 ID:KMywPiyq
- デューがここまでバストゥークで育つことが出来たのも、優秀な鋼鉄銃士として国内に名を知られた母に守られ続けたおかげだった。
それに、ドルゾのように彼の体のことを知りながらも関係なく接してくれる友人にも恵まれた。多くの人々に忌み嫌われようとも彼はまっすぐ成長してきた。
しかし自分を守り続けてくれる母のために始めた鉱山の仕事ももう続ける意味もなくなった。
母が病に倒れ、隊を抜けることになった途端に銃士隊名義であった家を追われ、
家財のほとんどを失い、鉱山区の奥深くの貧民外へと追いやられた。
そして、母は死んだ。それと同時に多くの人々が死んだように彼から離れていった。
──ああ
───自分がこの国で“人”でいられたのは、母が大きな人だったからなんだ。
それを実感した時から何かが変わった。“人”という存在との間には大きな壁が建った。
この大きな国で、ただ独りで立っているような感覚。
「はぁ・・・・・・。」
大きくため息をつく。鉱山の出口から見える夕日が眩しかった。おつかれ、と声を掛け合いながら鉱夫達がゾロゾロと鉱山から列をなして出て行く。
そして家に帰って眠り朝を迎えまたこの鉱山で仕事をする。
その繰り返しなのだろうか・・・ずっとこのままなのだろうか・・・・・。ずっとずっと・・・・・・・・・・。
「でゅーくん。」
不意に名を呼ばれ意識が戻る。声の主はよく知った少女だった。西日を浴びて紅く輝く黒い長髪が揺れる。
およそ鉱山区には似つかわしくない上品で落ち着いた姿のその少女は、バストゥークでも有名な商家の一人娘。
「お弁当、全部食べてくれたんだ。」
うれしそうな顔をする少女。デューが鉱山の仕事を始めてから毎日、彼女は自分で弁当を作り朝早くデューの元へ届けていた。
彼の体のことを知りながらも自然に接してくれる数少ない幼馴染だった。
- 227 :6:06/11/30 11:35:30 ID:KMywPiyq
- 「アーリイ、いいんだぞ毎日毎日・・・。」
「いいの、好きでしてることだから。」
こんなやりとりも毎日。仕事仲間に冷やかされることにも慣れた。
「早く帰れよ、親、良く思ってないんだろ。」
そう冷たくあしらってデューが独り家路に着くのもいつものこと。きをつけてね、とその背中に言葉が送られる。
「気にすんなよアーリイ、あいつうまそうに弁当食ってたぜ。」
そういってポンポンとドルゾが彼女を叩きながら言う。
「うん・・・。」
デューの背中を追い続ける彼女にドルゾの言葉はあまり聞こえてなかった。
最近の彼は考え込んでることが多いような気がする。瞳もどこか、遠いところを見つめている。小さい頃からずっと彼と仲の良かったアーリイには
いつも無愛想な少年の小さな変化も判っていた、・・・判っているつもりだ。
“あの日”から彼の様子は少しおかしい。彼はどこを見ているんだろう。何を考えてるんだろう。
アーリイの頭の中はいつもそれでいっぱいだった。
ドスッ
家に着くなりベッドに倒れこむ。明かりも点けずに薄暗い天井を見つめる。
「母さん・・・・・・。」
目を閉じ考え事に耽る。
──将来は立派な銃士ね──。
誰もが彼にそう言った。鋼鉄銃士として交易路の発展、安定に大きく貢献した母。社交の場に連れてこられることもしばしばだった。
友達もたくさん居た。港区でよく一緒に遊んだ。
開発の中止になった工事現場など、子供には格好の遊び場だ。
喧嘩もした、自分より二まわりも大きなガルカの子供を圧倒していた。そんな毎日が続いた。
- 228 :7:06/11/30 11:39:51 ID:KMywPiyq
-
そしてある日、デューは大量の吐血をして倒れた。
そのときだ、彼が混血児と知られたのは。
そのときからだ、何かが変わったのは。
友達は一人二人と離れていき、社交の場に連れてこられることも無くなった。それから彼は混血児について調べた、ブリードという蔑称、
オークによって齎されること、対戦時には多くが獣人と同じ扱いを受け捨てられ、殺されたこと。
そして、ヒトとして生き残ったものも、やがて体内で増殖する獣人の血によって死に至る、と。
自分もまた、そんな風に死ぬのだろうか。明日も知れぬまま毎日を過ごすのか。
言い知れない不安に襲われたのを覚えている。
「ウィンダス・・・・。」
──知と魔法の国。
そこには目の院と呼ばれる、ありとあらゆる事に関した様々な本が収められた建物があり、
鼻の院という場所では生物に関する研究が行われ、大戦時にはブリードの研究も行われていたと云う。
はるか海の向こう、ミンダルシア大陸の南方に位置する大国。
まどろみのなか、見たことも無い異国を思う。タルタルと呼ばれる小さなヒトが走り回る自然豊かな国、ウィンダス連邦。
・・・・・行こう、ウィンダスヘ──、日は昇った。
- 229 :ツユハル :06/11/30 11:41:56 ID:KMywPiyq
- ・・・長い!!
ダラダラとすみません。目を通して頂けたら幸いです、小躍りします。
ありがとうございました。
- 230 :(・ω・):06/11/30 12:18:25 ID:5DlFmQ/C
- おおっと、本日は大漁だ、もうひとつ来てルー(゚∀゚)
混血児ってのは新しい目線だねー、面白いし。
長いと言えば長いのかもしれないけど、それを感じさせない文章の流れだったかな。
今後の展開に期待!(゚∀゚)
- 231 :ツユハル :06/11/30 18:47:51 ID:KMywPiyq
- 連投はよろしくないのでしょうかこんばんは。
>>230サン
うほほい、感想ありがとうございます(小躍
読みやすい文章を心がけて頑張ります、ありがとうございます。
それでは第二話、張らせていただきます。
2:二つの星
「それでは、みなさんにも楽園の扉が開かれますように。」
そう言って司祭は両手を広げ天を仰ぎ、話の終わりを告げる。
それと同時に司祭の話を聞いていた少女達が静かに席をたつ。
エルヴァーンばかりのその空間で一人、栗色の髪をした小柄なヒュームの少女は机に突っ伏したままだ。
ピクッとその肩が震える。
「・・・・・ん、終わったのかな。」
ん〜、と伸びをしあくびをひとつ、荷物をまとめると部屋を出た。大聖堂の外は雲ひとつ無い青空の下、人々の喧騒で賑わう。
- 232 :2:06/11/30 18:51:34 ID:KMywPiyq
- 広場の中央にある噴水の周りでは先程まで司祭の話を聞いていたエルヴァーンの少女達が話に花を咲かせ、
冒険者が行き交い、聖堂へは信者達の出入りが絶えない。
「いつ見ても賑やかなこと。」
そんな様子をどこか他人事のように眺めて少女は家路についた。
「ただいまー。」
そういうと同時に家のドアを開け、居間のテーブルに鞄を投げ椅子に座る。
「ふぁわわ。」
あくびが止まらない。そうしていると母がお茶を持って話しかけてきた。
「おかえりなさいハカナ、司祭様のお話はどうだった?」
「ん〜?アルタナの女神様がどうの楽園がどうのエルヴァーンがどうのなんていつもの話、退屈でつまんない。」
と手をヒラヒラさせ、さもだるそうに机に突っ伏す。
「カミサマがどうの楽園の世界がどうの、いい大人が幻や夢物語を真剣に語っちゃって馬鹿みたい。自然界の奇跡なんてみんな大精霊が起こすこと、
人が死んだって土に還るだけだわ。楽園の扉なんて──」
「こらこら、そんな話人に聞かれたら大事よ。」
国民の9割以上が女神アルタナを信奉するこの国で、暴言とも取られかねない娘の発言を母は優しく諭す。
「この国は遅れてるのよ〜、いつまでもカミサマカミサマ、古い伝統にも縛られっぱなしで・・・・あーあ、バストゥークやウィンダスで暮らしたいなぁ。」
「またそんなこと言って、仕方の無い子ねぇ。お父さんに告げ口しちゃうわよ?」
母がいたずらっぽい笑みをハカナに向ける。
「い゛ッ、そそそそれだけは勘弁して。」
彼女の父はエルヴァーンの、ともすれば人種差別的な強い選民思想の中でヒュームながら数々の武功を立て栄誉ある王国騎士となったいわゆる“叩き上げ”だ。
頑固で古い頭の持ち主だがハカナ達が多少なりとも裕福な階層に居られるのは父のお蔭である。
「はぁぁー・・・。」
父のことを考えると複雑な気分に考える。尊敬はしているがどうにも頭が古い、前に精霊学の本を読んでいるところを見つかって大目玉を喰らってしまった。
サンドリアの禄を食みながら他国の学問に没頭するとは何事か、そうでなくともお前は日頃から云々と顔を真っ赤にして叫んでいたことを思い出す。
「エルヴァーンみたいな人だよねぇ、あーあ。ユテのところに行ってくる。」
そう言って席をたつ。
- 233 :3:06/11/30 18:53:20 ID:KMywPiyq
- 「夕ご飯までには帰るのよ。」
ハカナの愚痴を聞いてるのか聞き流してるのか、おっとりした口調で母はハカナを見送った。
「ふー、ユテいるかなー。」
そう呟きながら南サンドリアを西から東へ駆け抜ける。ここには古くからの市場や競売所もあり冒険者が集うことでいつも賑やかだ。
雑踏を掻き分け目当ての屋敷を目指す。
ユテと呼ばれたその人物──、本名をユテラルドという。
南サンドリアの東奥に住む有名な騎士の家の三男で、ハカナとは小さい頃から共に過ごしてきた幼馴染だ。
「あっ。」
彼の屋敷に近づいたところで見知った顔に出会った。
「ヴォルフォードさんこんにちはっ。」
「お、ハカナちゃんか、ユテなら家に居るぜ、兄貴が遠征から帰ってきたんでな今日の晩飯は豪勢だぞっと。」
じゃあな、と市場の方へ向かう赤毛のエルヴァーンはユテラルドの兄、ヴォルフォード=クローソ。
神殿騎士団に属する一家の次男だ。王都の見回りなのかサボっているのか、
街中をフラフラしているところを良く見かけるためすっかり顔馴染みになってしまった。
「そうかそうか、家に居るのかー。」
自然に走る速度も上がってゆく、屋敷までもう少しだ。
- 234 :4:06/11/30 18:56:29 ID:KMywPiyq
- カンッ、カッ!ガンッ、キィン!
金属音が聞こえる、屋敷の庭はすぐそこだ。花で飾られた背の高い柵に頭を突っ込み中を覗き込む。
「あ。」
そこには対峙する二人のエルヴァーン、短く刈り上げた短髪の若い剣士の突きを長髪の剣士が軽やかにかわす。その動きに合わせて銀色の髪が美しく流れた。
「ふっ、ふっ、せいやっ!」
若い剣士は右に左に斬撃を放ち相手を中央に捕らえると、踏み込みながら撃ち下ろした剣を一気に斬り上げる。
長髪の剣士はすべての攻撃を舞うように紙一重でかわし、最後の踏み込みも半身をずらして避ける、
そして右手に握られた剣は相手の喉元に突き付けられていた。
「あっ・・・!」
思わず漏らしたハカナの声に二人の剣士が顔を向ける。一人はユテラルド、もう一人は先程遠征から帰ったという彼の兄だ、
名前は・・・・忘れてしまった。エルヴァーンの名前は覚えにくい。
「あ・・・ハカナ。」
「これはこれはハカナ様、お久しぶりです。手をお貸ししましょうか?」
そう言って長髪の兄の方が剣を収め手を差し出す。
「え?・・・あ、・・・あ!」
自分の体勢を理解したハカナは顔を真っ赤にし大慌てで抜け出そうとするが身動きが取れない。
二人の決闘(?)に夢中になって身を乗り出しすぎたようだ。完全に嵌ってしまっている。
花に囲まれて顔だけをのぞかせて・・・外の街路側では下半身を突き出した格好で・・・・・・。あぁ、恥ずかしい。
───
「す、スミマセン。」
「普通に門から入っておいでよ・・・。」
「ハハハ。」
そのままお茶に招かれたもののハカナは緊張しっぱなしだった。ユテラルドと仲がいいとはいえ、こうして屋敷の中にお邪魔することはめったにない。そしてなにより向かいに座ったユテラルドの兄・・・。
「かっこいい・・・・。」
「ん、何か仰いましたか?」
「う?うぇああぁ、い、いいえ!」
これぞエルヴァーン。彫刻のような精悍な顔つき、透き通った青い瞳としなやかな銀色の長い髪。鍛え上げられた肉体。涎が垂れそうだ、
失礼ながら彼の話は半分ほど右から左へ流れてしまっている。
- 235 :5:06/11/30 19:00:27 ID:KMywPiyq
- ユテラルドの強い希望で“このような話でよろしければ”と彼の兄──エルミノソの遠征の話を聞かせてもらっているのだが・・・。
ちらりと横を見ればユテラルドは兄の話に夢中になっている。
その瞳はまるで子供だ、昔から少しも変わらない。臆病で、泣き虫で、おおよそ二人の兄とは違う。
「ほんと子供だなぁ・・・。」
ポツリ、呟いた。
「凄いなぁ兄さん達は、ボクも早く騎士の叙任を受けてあんなふうになりたいなぁ。」
「ユテじゃオーク目の前にしたとたん腰が抜けちゃって逃げられもしないんじゃないの?」
日も傾き、ユテラルドに送られながら道すがら雑談を交わす。屋敷から南サンドリアの市場へ向かうこの道は、二人が成長した今でも変わらない。
その道を通る二人もまた、幼い頃のままだ。
ユテラルドは今、従騎士といういわゆる騎士見習いで修行中の身だ。ハカナが聖堂で居眠りをしている間、彼は厳しい修練を積んでいるのだろう。
積みあがった成果がこのなんとも頼りない青年では疑わしいものだが。
「あ、そうだ、こないだの話の続きなんだけど・・・」
「あーっ!ユテラルド君!ねぇねぇ聞いて聞いて!司祭様がね──!」
ハカナがユテラルドに話しかけようとした瞬間、同い年くらいのエルヴァーンの女性が強引に彼の手を引いて話しかける。
「え、ちょっと、うわわっ!」
そのままずるずると引きずられるユテラルド。女の方はなにやら早口で捲し立てて何を言っているのか聞き取れないが聞く気もない。
「ちょ、ちょっと待って、今ハカナが──。」
「いいよここまでで。送ってくれてありがとね。バイバイ。」
よろめきながらハカナの方に向き直るユテラルドに背を向けてハカナは歩を進めた。
「あ、えと、ハカナぁうぇっぷ。」
彼女を呼び止めようとして再び今度は首元をつかまれるユテラルド。
- 236 :6:06/11/30 19:02:03 ID:KMywPiyq
- 「ふぅ、ただいまー。」
おかえりなさい、と母の言葉に手のひらで返事をして二階の自室に向かう。そして椅子に座った。
「はぁー、なんで帰っちゃったんだろ・・・。」
ゴツン、と音をたてて机の上に頭を落とす、ついでに溜息をひとつ。
「・・・・・・。」
気晴らしに商隊がウィンダスから持ってきたという精霊魔法についての本を開く。
“自然界で起こる事柄には全て8種の元素が関係している。即ち炎、氷、風、土、雷、水、そして光と闇だ。
水は炎を消し、炎は氷を溶かし、氷は風を妨げる。風邪は土を削り、土は雷を吸い、雷は水を沸せる。
そして光と闇は互いに相容れない反発属性なのである。光と闇以外の6属性の優位性が循環しており──・・・・”
「サンドリアの堅物が、祈る心の力なんて説いてるケアルだって光の精霊のエネルギーが作用してるだけなのよねぇ・・・・
バストゥークの錬金術書には、この世界の木、草、海、獣、鳥、人、全てがこの元素で出来てるなんて書いてあったっけ。あーあ。」
伸びをして窓の外を見る。遥か南東、ウィンダスの方角の空にはビチャープと呼ばれるガルーダ座の先端をなす緑色の大きな星が輝いている。
「ウィンダス、か──。」
眠たいわけではない、ただ、瞳を閉じた。
同じ頃ユテラルドもまた、遠い夜空に輝くビチャープの星を見つめていた。
- 237 :ツユハル :06/11/30 19:08:42 ID:KMywPiyq
- 第二話は舞台を移してサンドリアでした。
読んで下さった方々ありがとうございますます。
一文一文が横に長すぎでしょうか・・・。
- 238 :(・ω・):06/12/01 10:43:58 ID:pZp8dtpr
- GJ!!!
次のお話も楽しみにしております (*´Д`*) ちょっと横に長いかもw
- 239 :(・ω・):06/12/01 12:26:55 ID:WKW/5sru
- !(゚∀゚)
連続できてますなぁ、その勢いで今後とも宜しく。
夢見る女の子らしさが出てて、良いですな〜。
あと、サンドらしい雰囲気や、家族や環境が上手く伝わってくる文章が上手い。
三男坊との絡みがどうなるか、どうしてウィンに行く(のか?)事になるのか興味
津々。
ああ、>>238氏言うとおり、掲示板で読むにしては横に長いかもね。
- 240 :(・ω・):06/12/04 04:29:09 ID:9fgO1zBb
- 個人的に、気さくでフレンドリーな雰囲気のガルカは大好きなので
ドルゾ君も一緒にウィンに行ってほしかったり。
もちろん作者様の世界をこう変えてくれ と言う事ではございません。
バス サンド 両国の雰囲気が伝わってきました。
3話(ウィンになるのかな?)楽しみにしております。
- 241 :カカシ・マスター:06/12/04 20:06:35 ID:VpQ8zq7l
- 〜シャクラミの迷宮〜
「テン!とどめだ!」
テンはメッタ打ちの構え。
「トドめ★デス コノヤロー。」
怒涛のラッシュを前に、
巨大なサソリが地に崩れた。
「どうだ?落としたか?」
両手に持った短剣をシャシャッと鞘に収め、
タルタルが獲物に近付く。
「お!あるある。これでカバン一杯だぜ。」
「コレで☆カエレ マスね。」
「ああテン。これだけあればギルドの連中も文句ないだろ。」
彼の名はネテロモトロ。
元々は冒険者だったらしいが、
今は手の院で働いている。
ご存知の通り手の院の財政は万年火の車。
院長であるアプルルを筆頭に、
職員達はあの手この手で資金を集め、
なんとか組織を維持している。
今回ネテロモトロが請け負った仕事は
骨細工ギルドからの依頼で、
サソリの爪をありったけ調達する、
という内容だった。
ウィンダス周辺でサソリが生息する場所と言えばココ、
シャクラミの迷宮が真っ先に思い当たる。
というわけで相棒のカーディアンを連れ出し、
狩りに来たのであった。
「しかしアレだな。爪、こんなに集めて何するつもりなんだろうな?」
「ワタシ☆ノメモリによルト サソリノツメ☆カラ は
ヤ☆ガ ツクラれル ようデス」
「矢…ねぇ。ミスラ傭兵団にでも卸すのかな。」
そんな話をしながら出口を目指していると、
コーンコーンと心地よく響く音が聴こえて来た。
やがてネテロモトロ達はせっせと地面を掘り起こしている
エルヴァーンの女性に出くわした。
- 242 :カカシ・マスター:06/12/04 20:11:04 ID:VpQ8zq7l
-
「やぁ姐さん。精が出るねー。」
「……。」
赤髪を束ねたエルヴァーンの女性は片手を上げてサッと額の汗を拭うと、
タルタルと、その傍らのカーディアンをまじまじと見つめた。
「ソレ、あなたの…?」
「ああ、このカカシかい?テン・オブ・クラブス、俺の相棒。」
「ハジメ☆マシテ」
エルヴァーンの女性が軽く会釈する。
「カカシ使いの冒険者なんて珍しいわね。」
苦笑するネテロモトロ。
「ハハ。あんたはこんな所で何してるんだい?」
「竜騎士。」
「え?」
「…に、なりたいと思って。ここには竜の卵が埋まっていると言われてるの。
でもなかなか掘り当てられなくて…。」
「ふ〜ん。」
ネテロモトロは手を顎にあて、しばし考えた。
「ゴニョゴニョ…(なぁテン、少し帰り遅くなってもいいよな?)」
(カマイマセんガ テツダう☆の デス☆ネ)
(タダでは手伝わねぇけどな。ぐふふ)
(ワルい☆カヲに ナッテいマス☆ヨ)
「なぁ、俺も竜の卵掘り手伝うよ。」
「え、いいの?」
ネテロモトロはニンマリと微笑んだ。
「ああ。その代わりあんたも俺達の仕事手伝ってくれねーかな。コレなんだけど。」
ネテロモトロはかばん一杯に詰めたサソリの爪を見せた。
「分かったわ。サソリ狩りを手伝えばいいのね?」
「その通り!交渉成立!早速掘るぜ。これ、代わりに持っててくれよな。」
ネテロモトロは大量のサソリの爪とつるはしを強引にトレードすると、
掘れそうなポイントを探し始めた。
- 243 :カカシ・マスター:06/12/04 20:11:49 ID:VpQ8zq7l
-
コーン。コーン。
コーン。コーン。
それから数時間の間、シャクラミの迷宮には
つるはしが岩を砕く音がこだました。
「なぁテン、お前もやってみないか?」
「ワタシ☆にハ サイクつ☆キノウハ ツイテいマセん」
「ちぇ〜。」
コーン。コーン。
コーン。コーン。
「ところで、何でまた竜騎士なんて目指そうと思ったんだ?
色々と厳しいジョブだって聞くけど。」
「……。大事な人を、亡くした。この槍はその人の形見なの。」
エルヴァーンの女性はそう言うと、鈍い光を放つ一本の槍を手に取った。
「その人の遺志を継ぐために、私は竜騎士になりたい。絶対になってみせる。」
彼女の、槍を見つめる目は寂しくも固く、強い決意に満ちている。
じーっと彼女の目を覗き込んでいたネテロモトロには、そう映った。
「なるほど…な。よっし、もうひと頑張りするか!」
コーン。コーン。
コーン。コーン。
・
・・
・・・
コンっ。
「あ…。あった!あった!!」
エルヴァーンの女性はついに竜の卵を掘り当てた。
「おお!やったなあんた!へぇ、これが竜の卵かー。」
つるはしを手渡しながら、ネテロモトロは言った。
「ヲメデトう☆ゴザいマス」
「ありがとう!これで竜騎士になれるわ!」
「よかったなぁ見つかって。んじゃ、続いてサソリ狩りと行こうか。」
腰に挿した短剣をシャシャッと抜き、ネテロモトロが近くのサソリに襲い掛かると、
テン・オブ・クラブス、エルヴァーンの女性もそれに続いた。
その日の夕暮れ時、タロンギ大渓谷にはカバンに溢れんばかりの
サソリの爪を詰め込んだ2人と1体の姿があった。
地平線には、燃えるように紅く、大きな太陽が沈もうとしていた。
その紅は、シャクラミの薄闇から出てきたばかりの2人にとっては
たまらず目を覆ってしまう程に眩しかった。
「ナニカ☆イやナ モノ アリまス☆カ?」
「いや、いいんだ。気にするな。」
- 244 :カカシ・マスター:06/12/04 20:27:48 ID:VpQ8zq7l
-
─・─・─・─・─・─☆─・─・─・─・─・─
〜ウィンダス・森の区〜
「おうペシィ。依頼の品持ってきたぜ。たくさん取って来たから色付けてくれよな。」
骨細工ギルドのテーブルにドサッと置いたカバンをひっくり返すと、
ガラガラと音を立ててサソリの爪の山が出来上がった。
「おやおや、すごい量やね。助かるわ。おいロナナ!コレ、明日の昼までに全部削っときや。」
「ええええええ!そんな無茶な…。」
「問答無用!」
ぶつくさ愚痴りながら作業に取り掛かるタルタルの骨細工職人。
「ハハ…。相変わらずだなぁ。(俺、ここの職員じゃなくてよかった。)」
ペシィ・ヨーンツの猫耳がピクッと敏感に反応した。
「何か言うたか?」
ぶんぶんぶん。頭を左右に振るネテロモトロ。
「ま、ええわ。コレ、お代な。また頼むで。」
「ありがとよ!」
ギルドを出た3人は、森の区の中心にある広場を通り抜け、
石の区へと続く坂道を歩いて行った。。
「ありがとな。あんたのお陰で稼ぎがだいぶ増えたよ。」
「気にしなくていいわ。こっちも手伝ってもらったし。」
エルヴァーンの女性は大事そうに竜の卵を抱えている。
その卵を見つめながら、
「その卵が孵ったら、あんたもついに竜騎士ってわけだ。名前は決めてるのかい?」
「あの人の飛竜と同じ……ミカン。」
「……。ユ、ユニークな名前だな。」
ネテロモトロは、エルヴァーンのセンスはやっぱり理解できない、と思い、肩をすくめた。
「ま。大切にしろよな。相棒ってのはいいもんだ。なぁ、テン。」
「ハイ☆カケガエノ なイ モノで☆ス」
ネテロモトロが笑いながら照れるのを、
エルヴァーンの女性は微笑みながら見つめた。
「ええ。もちろん大切にするわ。」
- 245 :カカシ・マスター:06/12/04 20:31:03 ID:VpQ8zq7l
-
「おっと。俺達はここまでだ。」
ネテロモトロはクイッと親指で目の前の建物を指した。
「ここはたしか…手の院?」
「ああ。俺は手の院の職員なんでね。ところであんた、名は?」
「レンネル。あの身のこなし、てっきり冒険者かと…。」
「へへへ。なかなかのもんだったろ?俺はネテロモトロ。今日はありがとな。」
2人は握手を交わし、そこで分かれた。
モグハウスの方へと歩いて行くレンネルを眺めながら、
ネテロモトロは思い出したように叫んだ。
「あ!機会があったらまた来てくれよな!」
寄付はいつでも!1ギルから歓迎するからよ!」
レンネルは微笑みながら振り返り手を振ると、モグハウスへ続く通りに消えて行った。
「ヒトコト☆ヨケい ダッタの☆デハ」
「…やっぱり?」
その後、予定以上のギルを院のために持ち帰った
ネテロモトロとテン・オブ・クラブスは、
アプルル院長にたいそう褒められた。
そして、新たな資金稼ぎの任務を言い付けられたのであった。
「今度は裁縫ギルドからの仕事です!
サルタバルタやギデアスで採れる貴重な赤モコ草をありったけ!」
その手には大量の草刈鎌が、返事をする前に手渡されていた。
「…へ?」
「ネテロモトロ、手の院の命運はあなたの働きにかかっているのです。
よろしく頼みましたよ?じゃあ、行ってらっしゃい!」
あれよあれよと言う間に次の仕事を命じられ、
ネテロモトロとテン・オブ・クラブスは手の院を後にした。
「タハーッ!うちの院長もペシィの姐御に負けてないや…。
行こうか、テン。お前も手伝ってくれよな。」
「ワタシ☆にハ シュウカく☆キノウハ ツイテいマセん」
「ちぇ〜。」
手の院のため、院長のため、ネテロモトロは今日も働く。
その傍らには相棒のテン・オブ・クラブスが、やはり一緒であった。
〜つづく…かも?
- 246 :カカシ・マスター:06/12/04 20:33:49 ID:VpQ8zq7l
- みなさん今晩は。
いつも楽しく読ませて頂いてます。
カカシの物語を書いてみました。
またいずれ続きを書けたら、と思います。
UM
- 247 :ツユハル :06/12/04 22:01:44 ID:x4xpY70Y
- こんばんちは、風邪をひきましたコンバンワ
お腹に来ます、皆さんもお気をつけて。
ご意見感想ありがとう御座います。
文章が長すぎるというのは行数制限なのでしょうか。。横の長さには注意します。
カカシ物語、ヴァナの金策全てを制覇するまで応援してますね★
それではうpさせていただきます。
3:君と
「『こないだの話の続きなんだけど──。』・・・・・・か。」
霧のたちこめる肌寒いサンドリアの朝。天井に向けて伸ばした手を意味もなく握ったり、広げたり。
ユテラルドはあまり眠れず、ベッドの上でそんなことを繰り返していた。
─────
ことの始まりは唐突にしてあまりにも突飛だった。
「あたし決めた!ウィンダスにいく!」
「・・・・・え?」
ハカナがよしっ、と気合を入れて叫ぶ。キッ、とユテラルドを見つめた目は本気だ。
「なにあほ面してるのよ、耳まで垂れ下げちゃってさー。」
とハカナがユテラルドの長い耳をつまんでピコピコと上下させる。
- 248 :ツユハル2:06/12/04 22:05:43 ID:x4xpY70Y
- 「うわわわわっ、やめてよ!ウィンダスってずっと南東の向こうの大陸の国だろ?
何しに行くのさ、ってかすっごい長旅じゃん、危ないよ、やめなよー。」
やや間の抜けた声でユテラルドが当然の質問と制止をする。世界地図を端から端まで斜めに行くような旅路だ、
飛空挺に乗ることの出来る裕福な人や冒険者ならともかく、ただの人、と言っては失礼だが
一般人の彼女には”無理“と言い切ってもいい。
それに彼女の暮らしはサンドリアに住むヒュームの中でも悪くない、むしろ裕福な方だ。
それがどうして・・・。
「って顔してるね。」
「え?えええっ!?」
ユテラルドの考えは完全に読まれているようだ。顔に出やすい自分と幼馴染の彼女、無理もない。
「あたしね。」
ハカナが急に真顔になる。ヒュームの少女とエルヴァーンの男、上目遣いに見つめられて
ユテラルドは少し恥ずかしくなって目を逸らした。改めて彼女を見つめ返してみる。
長い栗色の髪を頭の後ろで結い上げ、同じ色をした整った眉と澄んだ瞳、
本人は気にしているがユテラルドは好きな団子っ鼻、
ほんのり赤い頬、柔らかそうなくちび・・・・ベシン!!
「痛い!!!!」
ハカナの飛び平手打ちが発動、ユテラルドに192のダメージ。
「ななななに女の子の顔見つめてるのよ!失礼ねー。」
耳まで赤くしてハカナがそっぽを向く。“自分も相手と同じことをしていたくせに”
そんな心の突っ込みと恥ずかしさを打ち消すために大声で叫んでしまう彼女。
「いたたた、ごめん。」
左頬をすりすりしながらそんなことにも気付かず、素直にユテラルドは謝った。
「もう・・・、あたしね、精霊について学びたいの。」
仕切りなおすようにハカナが言った。
「アルタナ信仰のユテの前でこんなこと言うのも悪いけど、ごめんね、
司祭様のおとぎ話なんてつまんなくて。」
“うわ・・・ザックリ言うなぁ。”と心の中で突っ込む。まぁ、彼女らしいが。
- 249 :ツユハル3:06/12/04 22:09:08 ID:x4xpY70Y
- 「知ってる?世界の全ては8種の大精霊とその元素で出来てるんだって。バストゥークの錬金術とか、
ウィンダスの“院”って場所ではそういうことをいろいろ研究してるみたいなの。」
「へぇぇ、・・・・そういうことを色々ってどういうこと?」
「それが知りたいから行くんじゃない!!この馬鹿!」
「ごごご、ごめん。」
大のエルヴァーンの男がどうしてこうもヒュームの女の子にどやされるんだろう。二人のこんな関係は昔からだ。
「でも当てはあるの?どこかの商隊に入れるとか?冒険者になるの?」
幼馴染の彼女が心配であれこれ訊いてしまう。
「ないないない、なーんにもない!でもあたしは行くわ!
でも一人じゃ無理なことくらいは分かってる。」
そこで、とハカナはユテラルドを見つめなおした。
────
「『ユテがあたしを守って。』ってなぁ・・・・。」
その時は彼女の瞳と勢いに負けて“うん”と言ってしまった。
が、彼にだって彼の生活があるし、兄の様な強い騎士ならともかく自分で務まるのか、
運よくウィンダスに辿り着いたとして自分はその後どうするのか・・・・悩みは尽きない。
そもそも頼み事にしては無茶苦茶すぎないか、ボクはハカナの召使いでもなんでもないし、
学問なら始めるのが遅いなんてことはない、なのに今二人で旅なんて危険が大きすぎる。
と言ったところで彼女は聞きはしないだろう、だが、彼女を引き止める理由を
自分があまり真面目に考えてないことにユテラルドは気づいていた。
- 250 :ツユハル4:06/12/04 22:12:37 ID:x4xpY70Y
- 自分だって少し惹かれているのだ、伝説に残る騎士達の噺や兄の遠征先での話、
広い広い外の世界、遠い異国の地に。
そっちのことを考えると体がうずうずしてくる、えいっ、と剣を振る仕草をする。
「こういうの、“若い”って言うんだろうなぁ。」
ぼんやりと年寄りじみたことを呟いてみた。
コン、コン。部屋のドアがノックされる。
「どうぞ〜。」
入ってきたのは下の兄、ヴォルフォードだった、手には封筒を持っている。
「どうしたの?兄さん、手紙?っていうか騎士団の任務は・・・・あいてっ。」
ベシッ、と鼻先に封筒を投げつけられる。
「愛しの姫様からだ・ぜ☆」
茶化すように言うと兄はさっさと部屋を出て行った。なんだろう・・・・彼女が手紙だなんて。
ビリビリと不器用に封を破く。
“ユテラルドへ
元気にしてる?こないだの話の続きの事なんだけど未だに無理とか嘘だとか思ってないよね?
ちゃんと準備は出来てる?あたしはバッチリ、って言いたいんだけどもうちょっとかかりそう、
でもそうも言ってられないの、あたし聖堂での勉強真面目にしてなかったし
精霊学のことばっかり考ててふらふらしてばかりだったから、
またお父さんに思いっきり怒られちゃった。
だけど今回はそれだけじゃ済まなくて、どうやら近いうち王都の修道院に入れられそうです。
だから出発の日を少し早めるね。次の炎曜日の2時、
南サンドリア西ロンフォール門前で落ち合いましょう。
一日間違えたりするんじゃないよ!次の炎曜日の2時だからね!
親に見つかって引き止められたりでもしたら、
あたし一生ウィンダスに行けないんだから!
絶対ばれないように来てね!
ハカナより“
- 251 :ツユハル5:06/12/04 22:14:14 ID:x4xpY70Y
- 「うわぁ・・・・。」
最後の一文だけ大文字でデカデカと書かれている。とうとう出発の時か、
なんて感慨も何もかも、手紙から伝わるハカナの気迫にかき消されてしまった。
これはしくじったら一生呪われるだろう。なんとしてもうまく屋敷を抜け出さねば。
それより肝心の出発の日、次の炎曜日の2時だから解りやすく考えると闇曜日の夜に出発か。
どれどれと日付を確認する。
・・・
「今夜じゃん。」
脳天を両手棍で思い切り殴られたような衝撃。え、ウソ?本当に?
何度も確認するが、間違いなく今夜だった。
「・・・・・・・・。」
足の震えが止まらない・・・・。
- 252 :6:06/12/04 22:18:42 ID:x4xpY70Y
- 連投失礼、続いて4・5話もうpさせて頂きますー。
4:ふたり旅
炎曜日、午前1時。お手伝いの人はまだ起きているが
父も母も眠りについたようだ。
ユテラルドは物音を立てないように、慎重に
準備した旅の荷物を取り出し鎧を着込む。
ここから南、ウィンダス側の大陸へ渡る船が出ている、
セルビナと言う村近辺のトカゲのモンスターの皮から出来た鎧だ。
本当はもっと頑丈な金属のものがあるのだがガチャガチャとうるさいので
静かに抜け出すのが難しくなる。ここで失敗したら全てがパァだ。
そしてハカナは修道院に入れられ長い間共同生活を強いられ・・・・
彼女なら脱走もやりかねないなと思ってみる。
「食料、地図、星図、コンパス、寝袋・・・・と。」
一度荷物を取り出して確認しなおす。大丈夫だ。
「・・・・・・。」
壁にかかった自分の剣を見つめる。後戻りは出来ない、出来ないんだ。
木の板に革張りの盾と荷物を背負い、己の剣を提げ
ユテラルドはゆっくりと部屋を出た。
- 253 :7:06/12/04 22:21:27 ID:x4xpY70Y
- 幸い屋敷の者には見つかることもなく抜け出すことが出来た、
あとは広い街道に出てしまえばこんな時間でも外は冒険者で賑わっている。
それに紛れ込めば見つかることもないだろう。
屋敷前の細道を足早にかけるユテラルド、足が震えてうまく走れない。
“ついに来た”その言葉がぐるぐると頭の中を回り続ける。
彼の緊張は王都を出る前にしてすでにピークに達していた。
そして道の真ん中に立っていた男に気づかずにぶつかってしまう。
ドスッ
「うわわわわぁ!」
衝撃はそれほどでもないし下り坂ももう終わったと言うのにユテラルドは派手にこけた。
鎧のおかげで怪我はない、が、ぶつかられた人物がゆっくりと近づいてくる、
男性のようだが薄暗くてよく見えない。
「すすうすいませんごめんなさい、よく前を見てなくて。ごめんなさい。」
ひたすらに謝った。こんなところで揉め事を起こしてる場合ではない。
「おい兄さん。」
男が話しかける。
「ひっ、す、すみません!ごめんなさい急いでたんですごめんなさ・・・モガ。」
口を塞がれた。
“??????”
「あんまり大声出すと屋敷のモンに見つかっちまうぜ?」
「・・・・・あ。」
目の前まで男が近づく、星明りでその姿が見えるようになる。男は兄、ヴォルフォードだった。
神殿騎士団に属している彼だが見回り中だったのだろうか。
なんて冷静な分析は今のユテラルドには出来なかった。
ただ目の前が真っ暗になってゆくのを感じた。終わった、
まさかここで身内に見つかるなんて・・・もう駄目だ。
一気に全身の力が抜けてその場にへたり込むユテラルド。
その目には涙すら浮かんでいた。
「おいおいおいおいおいおぃイ、なっさけねェ騎士様だなぁ。大丈夫か?ホラ。」
よっこらせ、とヴォルフォードはユテラルドを抱きかかえて立たせる。
ついでに平手打ちを一発食らわせて彼を正気に返らせた。
- 254 :8:06/12/04 22:29:04 ID:x4xpY70Y
- 「に・・・兄さん。」
「何泣いてんだよ、しっかりしろぃ!」
もう一発平手打ち。
「痛い!兄さん、通して下さい!お願いです!」
思わず土下座するユテラルド。ここで連れ戻されるわけにはいかない。
確かに騎士の叙任ももう少しで受けられる、そして多くの同年代の若者達のように
二大騎士団のどちらかに属し、名実共に騎士として名を上げてゆく。
それがこの国の男の人生なのだ。ましてユテラルドの様な名門の家の子なら尚更である。
それを真っ向から否定している自分を、今初めて恐ろしく思った。肩の震えが止まらない。
「クローソ家の男なら剣で通れ、と言いたいがそのなまくらにリザードジャーキン、
あとなんだその盾は、見たこともねェぞ。そんな格好じゃ・・・・」
しだいに声のトーンを下げる兄。お調子者の彼だが悪ふざけでユテラルドを脅しているのか
本気なのか、図りかねたユテラルドは己の剣に手をかける。
「あー、無理無理無理無理無理、もうぜーんぜん無理。おらっ!」
掛け声と共に兄が何かを突き出す、それに敏感に反応したユテラルドは後方に飛び下がり
間合いをあけると同時に抜刀する。
「お、いい反応。と、殺気立つなって、悪ィ、ちょっとからかっただけだ。」
ヘラヘラと笑いながら兄が近づいてきた。
「え?・・・あ、ああ・・・・・。」
反応の遅れたユテラルドが剣を収める頃には目の前に兄が何かを積み上げていた。
「これは・・・?」
しゃがんで確認する。
「ふふふふん、お前そんなしょっぼい装備で姫サマ護る気か?正気?マジ?」
兄がぽんぽんとユテラルドの頭を叩く。
「あーもー、心配だー。はぁ心配だなっと。まぁほれ、なんだ、みんなからの餞別だよ、ユテ。」
そういって兄はちょいちょいと詰まれた荷物・・・・鎧を指差した。
「そんな貧弱装備じゃ姫サマは護れないぜ。腕の方は後でなんとかなんだろ。」
「・・・・。」
全てバレていた。少しずつ携帯食料を溜め込んだり、武具を整えたりしていたこと。
装備を全て剥がされ、兄に新しい鎧を着付けてもらいながらユテラルドは話を聞いていた。
父も、母も、上の兄エルミノソもみんな知っていたと。
- 255 :9:06/12/04 22:35:12 ID:x4xpY70Y
- 「いやー、あの手紙はわかりやすかったなー。
下っ端に聖堂行かせたら姫様は修道院行きだって言うし、
“こりゃそろそろ来るな”って思ったわけよヘッヘッヘ。」
鎧下、鎖帷子、サーコート、肩当と、手際よく弟に鎧を着せながらヴォルフォードはそう言った。
「うんうん、立派な騎士様じゃねぇか。」
と、満足げに頷く兄。
「兄さんボクはまだじゅうき・・・・?」
ユテラルドが否定しかけたとき兄は首を横に振った。
そしてユテラルドの両肩に手を置き思い切り顔を近づける。
「いいか、ユテ。この国で王国騎士とか神殿騎士だとか、
紙切れ付きで呼ばれる奴だけが騎士じゃない。
剣を持ち、護ると誓ったモノがある男はみんな騎士なんだ。
お前だってその腰の剣に誓ったんだろ?彼女を護ると。それならお前はもう彼女の騎士なんだ。
お前たちがどんな旅をするかまでは知らない、いつかその剣が折れ、盾も砕け、
鎧も朽ち果てるときが来るかもしれない。
でもお前の心の中に誓いがあるなら、いつまでもお前は騎士で居られる。誓いを忘れるな。
いいな、イッちばん大事なのはなんでもない、“ココ”さ。」
そういってユテラルドの胸をごんごんと叩いた。
こんな真面目なヴォルフォードは初めて見る。
いつも事を茶化すような態度で、ふらふらへらへらしてて、
なんで神殿騎士になれたのかよくわからない兄。
いつも優しかった。
苛められて泣き帰ったとき、抱き締めてくれるのはいつも彼だった。
ユテラルドは思わず兄に抱きつく。優しく頭を撫でられた。
あぁ、これで別れなのだと、遠いいつかの再開の日まで家族に会うことはないのだと・・・。
その事実がユテラルドの胸を突く、涙が止まらない。彼は声を上げて泣いた。
兄もまた、彼が泣き止むまでその体を離さなかった。
- 256 :10:06/12/04 22:41:49 ID:x4xpY70Y
- 「さ、て、そろそろ行きな。」
ひとしきり泣いて真っ赤になったユテラルドの頬をポンポンと叩く兄。
「そら、これで最後だ。」
そう言って取り出したのは、神殿騎士団で正式に使用されている立派な盾と、
見たことのない剣だった。
「う・・・・わ。」
思わず声を漏らす。盾もそうだがこの剣、何かが違う。決して派手なわけではない、寧ろ地味だ。
とりたて大きいわけでもない、でも、何か言い様のない“力”を感じた。
でも──。
「盾の方は紛らわしいから紋章削っちまおうかと思ったんだけど、
良く考えたら冒険者どもがあちこちで着けてやがるから関係ねぇな、わはは。
あとこっちの剣は兄貴からだ。」
「エル兄さんが・・・あ、でも剣は・・・。」
ユテラルドが躊躇う。
「ん?」
──そうだ。
「兄さんが言ったように、確かにボクはこの剣に誓いました、
命に代えても彼女を護ると。この剣に誓ったんです。
だから、たとえなまくらだとしてもこの剣で旅を乗り切ってみせます。」
真剣な面差しで言った。“誓いを忘れるな”兄の言葉が心にこだまする。
「・・・・。いやいや、この剣な、抜けねぇんだわ。」
「・・・え?」
なんだそれ、と小声でつっこむ。
「兄貴が遠征先で見つけたらしい。なんか抜けねぇんだけどよ、
お守り代わりにいつも持ってってたんだとさ。
つーわけでほら、あれだ、お前らの旅の無事を願って“お守り”ってことで持ってけや。」
そういって剣を突き出す。
エルミノソがお守りとして持っていた・・・彼もこの剣から何かを感じていたのだろうか。
遠征先で数多の戦闘を戦い抜いてきた兄の思い、そんなものを感じた。
「わかった、ありがとう兄さん。エル兄さんにもよろしく・・・あ、と、どこに提げよう。」
「ふふふん、抜かりないぜ、ちょっと腰の裏っ側に細工しといた。」
よっこらせ、と腰から水平に提げるように剣を取り付けられた。
- 257 :11:06/12/04 22:44:55 ID:x4xpY70Y
- 「おー、やっぱこう馬鹿正直に両脇に提げるよりこっちのがかっこいいな、うんうん。」
と、勝手に満足する兄が急に真顔になる。ユテラルドもわかっていた・・・・時間だ。
「じゃぁ、行ってきます。」
「おう、やばくなったらガキんときみたいにびーびー泣け、
兄貴と一緒に駆けつけてやるよ、わはははは!」
相変わらずだ。だけどそんな兄の優しさを背中に受け、
ユテラルドは待ち合わせの場所へと駆けていった。
やっぱり、大きな通りに出ればそこには夜中にも関わらず多くの冒険者が居た。
ユテラルドは門へと急ぐ、ハカナは家を抜け出せただろうか。
今になってそんな心配をしてみるが不用だったようだ。
待ち合わせの場所に黒いチュニックのフードを被り、大きな荷物を持った人物が独り立っていた。
遠くからだって解る、命を賭して護ると誓った“姫”なのだから。
──遠目にもわかる間抜け面、とは言いすぎか、
こちらを目指して真っ直ぐやってくるエルヴァーンが見えた。ユテラルドだ。
「お待たせ、ゴメン。」
「おっそーい、冷や冷やしたよ。荷物選別してられなくてさ、へへへ、多かったかな。」
「ここまで来れば大丈夫だよ、ちょっと軽くした方がいいかもね。開けてもいい?」
「うん、すっごい鎧着てきたね。」
手早く荷物の餞別を済ませるユテラルドを眺める、素人目にも見事なサーコートだ。
赤地に銀の糸で複雑華麗な紋様が表されている。鎧の事はよくわからないが、
街灯に照らされて冷たく光る重厚さに何か頼もしさを感じた。勿論それを着ている彼にも。
──いつも頼りない感じなのに・・・・。
不思議と嬉しくなる。
- 258 :12:06/12/04 22:47:09 ID:x4xpY70Y
- 「ちょっと勿体無いけど、本とかは向こうで揃えた方がよくないかな、
どうしてもってのだけ持っていこうよ。あれ?これ町内地図だよ。えーと他には・・・。」
慣れた手つきでユテラルドが選別を終える。
「不器用だと思ってたけど、凄いね。」
正直な感想だった。
「いやぁ、従騎士ですから、
遠征の準備とかで慣れててね、ヘヘヘ。実戦はこれからだけど。」
いつもの彼とどこか違う──。
押しが弱くて、いつもどもってて、周りに振り回されっぱなしで、泣き虫で──。
目の前に居るのは・・・・・誰────?
「ねぇユテ、なんかあんたいつもとちがくない?」
目の前に居る“人”に訊いてみる。
「ん?そうかなぁ。それより本はこれで大丈夫?他はバッチリだよ。」
──虚勢を張ってるわけじゃない。
──彼は真っ直ぐ私を見つめていた。真っ直ぐ。
「ん・・・・ありがとう。」
胸が苦しくて、そう言うのが精一杯だった。
彼に背を向けて屈みこみ、広げられた荷物を詰め込む。
“要らないもの、結構あったな・・・。”
・・・・・・────。
モヤモヤしたよくわからない気持ちを振り払うように勢いよく立ち上がった。
「よしっ、行こうユテ!目指すはウィンダスっ!」
無理やりな笑顔で彼に言う。彼も続いた。
「うん!」
二人は西ロンフォールに続く門へと入る。
壁に等間隔に据えられたランプがトンネル内を照らす。
何人かの冒険者とすれ違う。
不思議と胸は落ち着いていた、足どりも軽く二人は進む。
そして赤い月の照らす元、ロンフォールの森へ──。
- 259 :13:06/12/04 22:53:03 ID:x4xpY70Y
- 5:迷いの森
迷いの森とも呼ばれる広大なロンフォール、
北西にはオークが王国の目と鼻の先に築いたゲルスバ野営陣があり、
斥侯が周辺を徘徊している。
その森を駆け抜ける二つの人影。
「ハカナぁ〜、もう少しゆっくり行こうよ。」
先程までの頼もしさはどこへやら、
鎧をガチャガチャ言わせてユテラルドが情けない声を上げる。
「あたしは一秒でも早くサンドリアから離れたいの!
今でも振り向いたらお父さんが追っかけてきてるんじゃないかって心配で心配で・・・。」
「その気持ちはちょっとわかんないけどもう少し慎重に行こうよ、
オークは夜目が利くんだ。騎士団の人が襲撃を受けるのも夜が圧倒的に多いって聞くよ。」
ユテラルドのもっともな意見にハカナは少しペースを落とす。
それに“もう疲れちゃった”なんて言い出したわけでもないようだ、
一歩一歩確実に、ラテーヌ高原を目指そう。
「わかったわかった、ごめん。王都からは結構離れただろうしこの辺で休もうか。」
「そうだね、今何時なんだろう。」
ユテラルドが事前にキャンプにふさわしい場所をいくつか候補に挙げたので、
そこまで進んで休むことにした。
──
兄から渡された荷物の中に一枚の地図があった。
ただのロンフォールの地図だがあちこちにバツ印と時間が記してある。
警備兵がオークに襲われた最近の場所と時間を示しているらしい。
これを元にユテラルドが安全だと思われる場所をピックアップしたわけだ。
- 260 :14:06/12/04 22:55:19 ID:x4xpY70Y
- 「ここかな。」
ユテラルドが立ち止まる。地図を見ながら予定の進路を辿ったつもりだが、
はっきり言って自信はない。
ハカナは慣れない手つきで野営の準備を始めていた。灯り用の薪には困らない、
ウェザーリンクシェルの予報ではこれから3日は晴れるようだから
雨よけを作る必要もないだろう。
火を焚き、寝袋を取り出した。この後は交代で見張りをしながら朝を待つ。
森の朝はきっと街よりも寒いだろう、いきなり風邪をひいてしまわないように
ハカナはしっかりと寝袋に包まった。
「おやすみ、ユテ。」
「うん、おやすみ。」
短い言葉を交わすとハカナはすぐ眠りについた。疲れているんだろう、
これからずっと先、穏やかに済むとは思っていないが
できるだけ剣を抜くことが無いように、とユテラルドは兄の剣に祈った。
「ほんとに不思議な剣だなぁ・・・。」
火に照らしてまじまじと見つめる。当然試してみたがヴォルフォードの言う通り、
鞘から抜くことは出来なかった。一体化しているかのようにビクともしない。
大きさはナイトソードくらいだろうか、若干軽いことを除けばとにかく普通だ。
“フゴッ”
「!」
ユテラルドは明らかに物音ではない、“吐息”に敏感に反応した。
剣に手をかける・・・・、木の陰から現れたのはゴブリンだった。
- 261 :15:06/12/04 22:57:13 ID:x4xpY70Y
- 獣人だからといってむやみに襲い掛かっていいわけではない、
罠を警戒するのもひとつだが、
一応相手に敵意があるかどうかを確認せねばならない。
特にゴブリンは人間と商売をする者も居るため判断が付けづらい。
これがオークなら問答無用でもいいのかもしれないが・・・。
そうしてユテラルドが構えたまま考え込んでいるとゴブリンが近づいてきた。
これ以上は彼の間合いに入る。
「キミ、共通語は話せるの?後ろからもう一人が襲い掛かるなんて手は通じないぞ。」
目には映らなくとも気配は判る、伊達に修練を積んできたわけじゃない、
自身を過信し過ぎることも無く、必要以上に神経を尖らせることも無く、
ユテラルドは集中していた。
そしてゴブリンの反応を待つ。
「オマエの剣、危ない。」
“・・・・何?”
「オマエの腰の剣、危ない力感じる。珍しい物オレ欲しい。オマエ危ない要らないならよこせ。」
「商人か。」
一応警戒しつつもユテラルドは構えを解いた。
- 262 :16:06/12/04 22:59:15 ID:x4xpY70Y
- 「悪いけどこれはボクの大事な物だ、キミには渡せない。」
「フゴゴ。」
残念そうな声を漏らすゴブリン。戦わずに済んだことに安堵するユテラルド。しかし、
「んー、何の話し声?誰か居るの?」
ハカナがもぞもぞと寝袋から顔を出す。そして、
「わっ!キャー!!!じ、獣人!?ゴブリン!?ゴブリンなの!?わー!ユテ!!!」
今まで見たこと無いくらい取り乱して大声を上げる彼女。
“やばい!オークに聞こえる”
ユテラルドは咄嗟に彼女の元へ向かうと落ち着くように言った、
彼(彼女?)は商人で襲いに来たわけではないと。ハカナはおとなしく彼の言葉を聞き、
安心したように胸を撫で下ろす。が、あわてて寝袋の中で暴れたせいだろうか、
袋は破れ、綿が散乱してしまっていた。
「あぁーあ・・・。」
今度はがっくりとうなだれるハカナ、お忙しいことだ。
“ブグルルルル”
そんなやり取りを見た後、ゴブリンは影へ消えてしまった。
「あ、ちょっ、ごめ・・・・・。」
その背中に何故か謝罪の言葉を投げようとするユテラルドが口を止めた。
「・・・?どしたの?」
「シッ。」
感じる。さっきのゴブリンとは全然違う・・・・・殺気だ。
腰に提げた剣を抜く。
“ユテ?”先程ユテラルドに諭されたハカナが今度は小声で彼に話しかける。
「ハカナ、下がってて・・・・何か来る。」
その一言にハカナは身を凍らせた。ユテラルドの口調、剣を抜いていることから
来る奴がろくでもない奴だってことだけはわかった。彼の言う通りに後ろに下がる。
“ゴルルルルルルルル”
低く喉を唸らせながら出てきたのは
「オークの斥侯か・・・・。」
「ハナシ キイタ。おデ 武器ホシイ。武器 ヨコセ!!!」
そう叫び終わらないうちにオークが突進してくる。
──落ち着け、落ち着け!訓練通りに。正面からの攻撃は・・・・!──
「ユテッ!」
「ッ!」
間一髪、オークの斬撃を身を転がしてかわす。
- 263 :17:06/12/04 23:02:33 ID:x4xpY70Y
- ──ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ──
ハカナに危険を伝えるまではよかった。だが今はどうだ。
頭が働かない。汗ばかりが吹き出る。
初めて遭遇する“完全な殺意を持った相手”に今までの教示は霧散していた。
“グルオオ ォ ォ ォ ! !”
オークはむちゃくちゃに突進を繰り返し斧を振るう。
「くそっ!」
人相手の訓練とはまるで違う。あの斬撃を盾で受け止める勇気すらない。
瞳にはオークの姿しか映らない。
“ ォ ォ ォ !”
頭上にオークの持つ片手斧が振り上げられる。
咄嗟に両手で頭を庇った、もう滅茶苦茶だ。
そして次の瞬間、衝撃が襲うことは無く、突然目の前が明るくなる。
「ゴァァァァアアアアアア゛ア゛ア゛!!!」
「な、なんだ!?」
オークが炎に包まれていた。
「“こっちの方”は真面目に勉強してるんだからね!!」
ハカナがオークのほうに両手を向けて立っていた。今のは彼女が放った魔法か。
オークはユテラルドに背を向けハカナを標的に据える。──まずい!
──やった!
オークにファイアを命中させたとき、少しの満足と優越感で
ハカナの心は埋まってしまっていた。
そして突然向けられた殺意をむき出しにしたオークの眼光に恐怖した彼女は腰を抜かした、
だが直後、へたり込んだ彼女の頭上を斧が風を切って飛ぶ。
運がいいとしか言いようが無い。
「ウウゥウァ!」
人間の女が頭を割られ、中身をばら撒いて死ぬ様を想像していたオークは
予想外の結果に憤怒し今度はハカナにむけて突進を始めた。
「やめろォ!」
ユテラルドは夢中でオークに飛びつく。
- 264 :18:06/12/04 23:06:02 ID:x4xpY70Y
- 「このっ、ハカナっ!立って!離れるんだ!」
突進は止めたが腕を?まれ投げ飛ばされるユテラルド、
そのまま焚き火をけ散らし転がりながら大木に激突した。
「ぉ、げぇ。」
月明かりだけではハカナとオークがどこに居るのかわからない。
ずるずると体を起こす。
聞こえるのはオークの咆哮のみ。
「ハカナッ!どこにいるんだ!ハカッ、ゲホッゲホ!」
「ユテ!」
遠くでハカナの声が聞こえた、その方角に向かって走り出す。オークはどこだろうか・・・。
「ユテ!ゆてぇ・・・!」
声は半泣きになっていた。
「ハカナ、それ以上叫ばないでっ、今行く!」
オークは夜目が利くとは言ったがどれほど見えているのか、
とにかく彼女の居場所がつかめた以上もう声を出さないほうがいい、音で場所が特定され・・・ッ!
────思考が飛ぶ。
ユテラルドの体は宙に浮いていた。
「がぁぁあああぁああ!」
ドガシャン!と派手な音を立てて地面に叩きつけられる。息ができない、
敵の居場所がわからない。近くに居るはずだ、どこに───ッ!
右の頬を殴られた、続いて左、右、左、顎。フェイスガードをしているものの、
すさまじい衝撃の連続がユテラルドの脳を襲う。
──ここで気を失っては駄目だ!
必死で意識を保つ。これだけ連続で顔面を殴れる位置・・・正面、正面に居るはずだ・・・・!
「うおおおおおおおおああああ!!!」
雄叫びを上げ、目を開く間も無く剣を振るう。
ズドン!
手応えはあった、硬く加工された皮鎧と肉を切る感触。
「グオォオオオオォオオオオオオオ!!!」
痛みからオークが絶叫を上げ攻撃が止む───見えた!!
一瞬ハカナのことが頭をよぎったが今は止めを刺すことが先だ。
「いりゃぁ!」
ユテラルドの放った突きがオークのたるんだ腹に深く剣を刺す。
そのまま剣をねじりながら引き抜き、さらに攻撃を加えようと構え直す──!
ド ガァン!ドズッ・・・!!
オークの最期の一撃を盾で受け流し、渾身の力でその体を切り裂いた。
“グル・・・グ、グゥ・・・・・”
ズン、と音を立てオークはその巨体を地に伏せた。
- 265 :ツユハル19:06/12/04 23:12:33 ID:x4xpY70Y
- 「ハ、はぁ、はぁ・・・ゲホッゲホッ。ハカナ・・・。」
ぜぇぜぇと肩で息をしながら時折咽返り、ユテラルドはその場に座り込んだ。
そして近づいてくる人の足音に安堵しながら、その目を閉じた・・・。
───
やりすぎましたごめんなさい。
名前欄に数字を打つ度に罪悪感がorz
それではおやすみなさいませ。
- 266 :(・ω・):06/12/05 10:07:57 ID:IXCTX8s0
- (*´Д`)b 楽しかった!
- 267 :(・ω・):06/12/05 12:50:41 ID:KqnSmKIg
- イイヨイイヨー1(゚∀゚)
「かかしの物語」、アプルルたんはいつも苦労してるなぁと思ってたんだけど、職員
はもっと苦労していたのねw
そのわりにほんわかした感じで良かった。
各院の職員の苦労話とか面白そうだね。
水の区の酒場では愚痴合戦だったりしてw
題名無しの方w
面白いね〜。
オークがすぐ来るかと思いきや、ゴブが先に出てくるフェイント、そんな所がにくい
演出だぁね。
ユテの家族は、エルのわりに理解力あって、末っ子に甘いというか、愛情を持って接
しているのがわかるところも良かった。
それが彼の性格にも反映しているんだろうね。
頑張ってほしいものだ。
- 268 :(・ω・):06/12/06 00:22:39 ID:1CJ1YiM/
- 面白いねー!
装備を想像出切るってか解説がカコイイ!にくい!!
応援してますだー!
- 269 :ツユハル :06/12/09 18:36:37 ID:OJi2z+G4
- 冷えますねこんばんは、自分の投稿で埋まってしまうことに抵抗を感じつつ
第六話目うpさせて頂きます。他の書き手様の新作はマダカナ(´∀`)
6:朝日昇れば
──こんなことなら真面目に司祭の話を聞いていればよかった。
ユテラルドの傷はなかなか治らなかった、ケアルTでは限界がある。
競売で高値で取引されている治癒薬“ポーション”を
いきなり使うのか一瞬迷ったが、今が無くては先が無いと思い使った。
それでも彼は目覚めない。
ハカナは寝ずの番でユテラルドを看ていた。夜明けまではまだ時間がありそうだ、
血の臭いを嗅ぎ付けてまたオークが来たりしたらどうしようと何度考えたことか。
だが今動けるのは自分しかいない。
しっかりしないと、そう自分に言い聞かせる。
オークの骸の横で気を失ったまま座り込む血まみれのユテラルドを見つけたとき、
彼女は彼が死んだものと思って泣き叫んだ、喉も裂けんばかりに。
暫くしてユテラルドが咳をしたことで彼女は正気を取り戻し今に至るわけだが・・・。
「ユテラルド・・・。」
火に新たな薪をくべながら彼の頬に触れる。
怪我のほとんどは打撲で、全身を覆っていた血はオークの返り血だと判ったとき
どんなに安心したことか。
鎧を脱がせたほうがいいのだろうがやりかたがまったくわからない。
疲れた・・・・そんなことを言っていられないのは分かっているが本当に疲れた。
────。
- 270 :2:06/12/09 18:39:24 ID:OJi2z+G4
- 「ハカナ、起きて。ハーカナ、朝だよ。」
“????”
「ん?・・・・んん?」
「寝ぼけてないで、野兎のスープできたよ、ご飯を食べたら出発だ。」
───!
ガバッと勢いよくハカナが体を起こす。朝だ、寝てしまったのか・・・・。
キョロキョロと辺りをうかがう、昨夜とは違う場所のようだ、
彼が運んでくれたのだろうか。
いや、それより───!
「ユテ!体大丈夫なの!?」
「うわ!びっくりした、危ないなぁスープこぼれるところだったよ。」
そう言ってハカナの前に朝食を差し出した。
「ありがとね、傷診てくれて。もう大丈夫、兄さんの鎧頑丈すぎだよ、ハハハ。」
擦り傷の痕が目立つが、いつもの笑顔だった。
「ごめん・・・・。」
「ごめんね。」
・・・・・──。
同時に謝る二人。お互いに理由もなんとなく分かっていた。
あまりにも惨めだった、先が思いやられるほどに。
朝食をとりながら大反省会をする二人。
“初めてだから”ではこの先済まないのだと散々に実感した。
オークの斥侯ごとき相手であのざまではこの先本当に死んでしまう。
改めて無茶な旅を押し付けたんだなと思うハカナ。ユテラルドもまた、
戦いになった途端頭が真っ白になった自分を恥じた。こんなことで彼女を護りきれるのかと。
先は長い──。
霧に包まれたロンフォールの森を二人は歩く。
「う〜っ、寒い。」
南に向かうんだから防寒具はいいよね、と思っていたが甘かった。
ファイアであちこち燃やして暖を取りたくなる衝動を抑える。
「もうちょっとで森を抜けて、高原に続く道が見えるはずなんだけど・・・・あ。」
地図を片手に先導するユテラルドが動きを止めた。
「何、どしたの?」
手をこすり合わせながらハカナが横に並ぶ。
「ほら、見えたよ。」
ユテラルドが指差した先、両脇を山に挟まれた高原へと続く坂道が見えた。
「体は暖まりそうね・・・。」
ため息混じりに言う。
- 271 :3:06/12/09 18:42:17 ID:OJi2z+G4
- ユテラルドに荷物を持ってもらっているのに自分が先にねをあげるわけにはいかない。
ハカナはその一心で前を行くユテラルドに必死で着いていった。
凄い体力だなと感心する余裕も無い、
ていうかあたしが疲れきってるのに気づいてよ!この馬鹿。と心の中で叫んでみる。
「もう高原には入ってるんだけどね、もう少しで湖だからそこで少し休もう。」
「う・・・うん。」
“もう少しってどれくらい?”子供のような言葉が喉をつく。
それから歩くこと数分、鮮やかな紅葉に彩られた木々の中に目当ての湖が見えた。
周辺に何匹かのゴブリンが居たため、
湖周辺で休むので場所を借りたいという旨を伝えるも虚しく剣と剣との交渉が始まった。
「縄張りだったのかなぁー。」
そういいつつユテラルドは荷物を降ろす。
ハカナは湖の傍ら、水筒に水を入れなおしていた。と、彼女がユテラルドの方を向いておずおずと口を開いた。
「ねぇユテ、ちょっと・・・汗流したいんだけど・・・。」
困ったような表情で告げる彼女。こんなにも水があるのに何が困るのだろうか。
「ん?いいよいいよごゆっくり。」
「そうじゃなくて・・・」
「ん?なに?」
湖の中にモンスターでも居るのかと近づこうとした瞬間、
「暫くあっち行っててって意味よこの馬鹿!!」
「うわ!あ・・・ごめん!!」
盛大に怒鳴られた。
そそくさとその場を離れる、まぁゴブリンは退治したし大丈夫だろう、
彼女だって魔法が使えるみたいだし。
“何かあったらすぐ呼んでね。”と一応警戒するように伝えてみたがまた怒鳴られただけだった。
どうしてああも怒るのか・・・・。
「余裕ができてきたってことかな。」
のほほんと空を見上げて呟く。
ここに辿り着くまでに幾度かの戦闘を経験した。もうロンフォールのようなミスは犯さない、
緊張はするがユテラルドは少しずつ訓練のときの感覚を取り戻し、
先程のゴブリン相手の戦闘も教え通りきっちりばっちり片付けた。
“こうやって余裕ができ始めたときが一番危ない。”そんなことも学校で経験済みだ。
何より常に命がかかっている。小心者の彼に余裕をかますなんて事は無理だった。
- 272 :4:06/12/09 18:45:35 ID:OJi2z+G4
- 風は強く、遠い空を次々と雲が流れてゆく。
「綺麗な空だな・・・・。」
仰向けに寝転がる。風が頬を撫でた。このまま眠ってしまいそうだ・・・・・。
あぁ、羊がこっちにやってくる・・・・・・数でも数えてみようか。
あれ・・・?
まだ遠くに居るはずなのにとてもはっきり見える。
なんでだろう、自分はこんなにも遠目が利いたのか。
いやいやいや、呑気な事を考えてる場合じゃない、それは“とんでもなくでかい”ってことだ。
「なんだ・・・?」
上半身を起こし、遠くからやってくる羊の姿を目を凝らして見つめる。
その眼前には人の影。
───!
「襲われてるのか!?」
素早く立ち上がりハカナにモンスターの接近を伝えるとユテラルドは駆け出した。
しだいに地鳴りと、襲われている人の声が聞こえてくる。
“誰か助けてー!”“駄目だ追いつかれるっ”
ユテラルドと羊の距離はぐんぐん縮まってゆく、
逃げる人々も彼に気づいたのか口々に助けを求めてきた。
そして肝心の羊・・・・とはもう呼べないだろう、その姿は近付くほどに大きさを増してゆく。
一瞬躊躇うユテラルドだが、見過ごすことも、こっちに向かって来ている以上無関係で居られることもない。
覚悟を決めて剣を抜き放った。
「今行くぞ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ・・・・・ッ!
大羊はユテラルドの姿を捉えるとその眼前で足を止め咆哮する。
“ブオオォォォォオオオォォッ!!”
「でかっ・・・!」
予想以上にでかい、が、怯んでも居られない。
助けを求めてきた冒険者は素早くユテラルドの後方に回った。
- 273 :5:06/12/09 18:49:07 ID:OJi2z+G4
- 「ありがとうございます、ゼェ、ぜ、前衛がやられてしまって。」
「逃げる途中で、もう二人も・・・ハァ、ハァ。」
二人とも魔道士なのか、冒険者がいう“ジョブ”というモノに詳しくないユテラルドに
判別はつけられなかったが、とりあえず前線を任せられる職業ではないと判断した。
二人とも鎧を着ていない、という単純な理由だったが。
「来ますよ!」
大羊がユテラルドめがけ突進する。ガルカでもこれを盾で受け止るのは無理だろう、素早く横にかわす。
“ブルルルルッ”
大羊はユテラルドから目をそらさず突進を繰り返す。
でかいだけの猪ならオークよりもずっと楽な相手だが、問題はどう攻撃するかだ。
大羊の体は剛毛に覆われ、毛の薄れた額部分からは分厚そうな皮膚が顔をのぞかせている。
──この剣が通るのか。
一撃を与えるだけでもかなり危険を伴うだろう、
止まない突進を次々にかわしながらユテラルドが攻撃の方法を思案していると、
冒険者が後方から叫んだ。
「ナイトさん、そのまま挑発し続けて下さい!魔力が回復し次第魔法で押します!」
「それまでどうか耐えて!」
「なるほど、魔法も無限に撃てるわけじゃないのか・・・・・。」
二人の準備が整うまでこいつを引き付ければいいわけだ、
それなら簡単、このまま突進を避け続ければ・・・。
そう思った矢先、大羊が急に動きを止める。ここで向きを変えられてはまずい。
「どうした!こっちだこっち!!」
剣で盾を叩き気を引こうとしたときだった───。
「ブルオォォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
「ううおわああああああああっ!」
羊が大咆哮をあげる、猛烈な振動にユテラルドの動きが固まった。
「ぐぅ・・・・──!」
──ドンッ!
回避行動をとることもできなかった。
ユテラルドは突進の直撃を受け、その体は風に吹かれた木の葉のように舞い上がった。
「ユテーーーーーッ!」
ハカナが駆けつけ宙に舞うユテラルドを見たとき、彼の意識はすでに途絶え
地面との激突を待つのみだった。
- 274 :6:06/12/09 18:52:21 ID:OJi2z+G4
- ズシャァァッ!!
地面に叩きつけられ土しぶきを上げる。大羊はすでにユテラルドに狙いを定めていた。
「ユテッ、しっかりして!」
ハカナが彼を起こそうとすると同時に羊の突進が始まる。
「んーっ!んんんーーーー!」
渾身の力を込めてユテラルドの体を引きずるがこのままでは二人とも巻き込まれる。
だが今のハカナには、あの大羊の突進を止めることも向きを変えることもできない。
間に合わない・・・!
ヒトの防衛本能か、無意味な防御体制をとったハカナの眼前で閃光が炸裂する。
大気を揺るがせ、巨大な雷が大羊を貫く。羊はそのまま横に倒れこみ、突進は止まった。
「ま、間に合った・・・・。」
冒険者の一人、黒いコートを羽織った男がほっとした声を上げる。
「凄い・・・。」
ハカナはユテラルドのことも忘れて呆然とした。
あの巨大なモンスターを一撃で仕留めた雷の魔法。
彼は相当な技量の黒魔道士なのだろう・・・ハカナの憧れる姿がそこにあった。
「お連れの方は大丈夫ですかっ?」
もう一人、ガンビスンを着た女性がユテラルドの方に駆け寄る。───そうだ!ユテラルド!
白魔道士であろうその女性が彼の傍らに膝をつき、祈るような仕種をする。
やがてハカナも感じるほどに
周囲に光の精霊のエネルギーが満ち溢れ、ユテラルドの体は光に包まれた。
ハカナはただ、その光景を見つめていた──。
- 275 :7:06/12/09 18:56:11 ID:OJi2z+G4
- 「本当にありがとうございます。」
5人の冒険者は口々に礼を言った。
最初の二人に案内され途中で倒れたという仲間を探す間に日は暮れ、
共に一夜を過ごすことになったのだった──。
「いやぁ、ボクなんて闘牛士の真似事してて
結局吹き飛ばされて最後にはお世話になっちゃって・・・」
ユテラルドがしどろもどろに返すと、パーティの盾らしいヒュームの青年が
ユテラルドの肩に手を乗せて彼の言葉を否定する。
「いやいやぁ、“盾”が敵の攻撃を引き付けているからこそ他の仲間が全力を出せるんすよ。」
そうそう。と仲間達が口を揃える。
「大事なのは個人の活躍でなくて仲間の連携ですものね。」
「そうじゃぁそうじゃぁ、ようこの二人を助けて下さった!さぁさ飲んでくだされイ。」
「ぼぼぼボクはお酒はっ・・・」
「ガハハハハ!酒も飲めねぇでこの先何の楽しみがあるんだっつの。ほれほれ!」
「うわー!」
────久々の賑やかな夜だった。
────
というわけでわたくしも夕食を。
読んで下さった皆さん、感想等述べて下さった方々、ありがとうございます。
拙いモノですが今後とも宜しくお願いします。
- 276 :(・ω・):06/12/11 10:11:03 ID:JECqgl24
- 食事は人生の中の大いなる楽しみ。
ごちそうさま(*´Д`)ノ 次も楽しみにしております。
- 277 :カカシ・マスター:06/12/15 19:55:18 ID:PpWXI1qy
- 〜ギデアス〜
シャクシャクシャク
今日、ネテロモトロが振るっているのは
いつもの短剣ではなく、草刈鎌であった。
あちこちにある藪を回り、
お目当ての赤モコ草のためにシャクシャクシャク。
黙々と、草を刈る。
「………はぁ…飽きた…。
なぁテン、なんで俺はこんな地味な仕事してるんだろ…。」
「オカネ☆アリマセん カラ」
「あ〜ぁ。どうしてうちの院は予算こんなに少ないんだよ。」
「アプルル☆インチョウ アタラシい カーディアン
アタラシい シクミ☆つクッテ イマす」
ネテロモトロは大きくため息をついた。
「少ない予算は全部開発費、ってか。
にしても赤モコ草、あんまり採れないな…。
時間の無駄に思えてきたぞ。」
赤モコ草は貴重な素材。
どこにでも生えている、という植物ではなかった。
元冒険者だけあって狩りの腕前はなかなかの
ネテロモトロだったが、この手の作業は、苦手であった。
ぶつぶつぶつ。
ぶつぶつぶつ。
愚痴り愚痴り、ネテロモトロは草を刈る。
採れた素材はテン・オブ・クラブスが持つ。
時折、ヤグードを相手に剣を振るう冒険者とすれ違ったりもする。
この辺りのヤグードはさほど強くないので、
冒険初心者の修行にはもってこいだ。
しかしそこは獣人。
侮っていると大怪我をしかねない。
なので、そんな冒険者を見かけると、
ついその戦いぶりを見守ってしまう。
「イイ☆タチスじ デス☆ね」
「ああ。あいつは一人で大丈夫そうだな。
少々眩しいけど…。」
- 278 :カカシ・マスター:06/12/15 19:56:21 ID:PpWXI1qy
-
キンッ!
キィィインッ!
剣と剣がぶつかり合う金属音が響く。
二人の近くで戦っていたヒュームの男は、
斬り合いの末、ヤグードの剣士を打ち負かした。
汗に濡れたスキンヘッドは、
ギデアスに差し込む太陽の光を見事に反射し、
ピカピカに光っていた。
「ふぅ…。」
ヒュームの男は二人に気付いたのか、汗を拭うと
ニコニコと笑顔を浮かべながら話しかけてきた。
「やぁ。カーディアンと一緒とは、珍しいですねぇ。
君もここで修行ですかぁ?」
「ん。いや、赤モコ草を刈りに来たんだ。
あんたはここでレベル上げかい?
さっきの戦いっぷりからすると、初心者ではなさそうだけど。」
スキンヘッドの男は自分自身にケアルをかけ、
ヒーリングを始めていた。
「もちろん、経験を積むのが目的ではあるんですがねぇ。
あわよくば、敵の技も習得できればと思いましてねぇ。」
「敵の技…!
あんたもしかして、青魔道士ってやつか!?」
スキンヘッドの男はニッコリ笑顔を浮かべて頷くと、
グレゴリーと名乗った。
「新しい道を、歩んでみようと思いましてねぇ。
つい先日までは母国のバストゥークに滞在していたんですよぉ。
そこではこんな技を覚えましたよぉ。」
グレゴリーはメタルボディの構え。
「おおお。カニが使う技だな。」
「よくご存知ですねぇ。
知人の何人かはこのジョブにチャレンジしたんですがねぇ。
皆、技の習得に挫折して、辞めて行ったんですよぉ。」
「良く分からんけど、技の習得ってのはそんなに難しいのかい?」
グレゴリーはうつむき、頷いた。
「種類が多い上に、何度も何度もこの目で見ないと、
憶えられませんからねぇ。
なのに、習得していることが当たり前のように扱われる…。」
「ふ〜む。」
青魔道士というジョブは、
ネテロモトロがまだ冒険者だった頃には存在しなかった。
ごく最近、近東へ傭兵として進出した冒険者達が身につけた、
新しい職業であった。
ゆえに、ネテロモトロにはその知識がほとんどない。
- 279 :カカシ・マスター:06/12/15 19:57:36 ID:PpWXI1qy
-
首を傾げるネテロモトロを見て、グレゴリーは説明を続けた。
「青魔道士の技は敵の技。
強い技だってたくさんあるハズなんですよぉ。
でも、その強い技を習得するためには、
それを使うモンスターと何度も戦わないといけないわけでぇ。
…そんな強い敵は、普通の狩りでは敬遠しますからねぇ。」
「なるほど…普段戦わない、やっかいなモンスター程、
役に立つ技を教えてくれる、ってわけか。」
「そう!そうなんですよぉ。
今の私のように、一人で習得できるレベルの間はいい。
でも、強くなればなる程、一人では限界が出てくるそうなんですよぉ。
先輩達は、そこで挫けてしまったようですねぇ…。
技を求めるだけ求めて、習得の手助けはしない…。
理解のない冒険者に、嫌気が差したと…嘆いていましたぁ。」
「相変わらず、ギスギスした世界があるんだな…。
でもよ、そこまで知りながら、
どうして青魔道士やろうと思ったんだ?」
少し寂しげな表情をしていたグレゴリーだったが、
一転してにこやかな笑みを浮かべ、
夢を語った。
「どうしてって…新しい力ですよぉ?
他の者には真似できない、
スペシャルな戦い方を、 自分自身で模索する。
わくわくするじゃないですかぁ!
苦労は覚悟の上です。
でも私は、行けるところまで行ってみますよぉ!」
グレゴリーの瞳は、彼の頭以上に輝いていた。
夢と希望に満ちたその瞳の中に、
ネテロモトロは冒険者のあるべき姿を見た気がした。
好奇心。
探究心。
やり遂げる覚悟。
くじけぬ心。
こいつなら、やるんだろうな。
そう思ったネテロモトロの拳には、自然と力が入った。
「あんた、かっこいいな。
うん。あんたならきっと、偉大な青魔道士になれる気がするよ。」
驚いた表情のグレゴリー。
「ハッハッハ。そうですかねぇ?
まだまだペーペーですがぁ。がんばりますよぉ!」
「ガンバッテ☆クダサい」
「じゃあ、俺達はそろそろ行くよ。
修行、がんばってな!」
「はいぃ!」
赤モコ草を求めて、二人は新米青魔道士と別れた。
- 280 :カカシ・マスター:06/12/15 19:58:08 ID:PpWXI1qy
-
グレゴリーは、そんな二人を眺めつつ、
ヒーリングから立ち上がった。
「あのぉ!」
振り返るネテロモトロ。
「ん?」
「話…聞いてもらって、ありがとうございましたぁ!
なんだかスッキリしましたよぉ!
あ、そういえば、その先の池の近くに、
良さそうなポイントありましたよぉ!」
「おお?ありがとよー!」
ネテロモトロ達は大きく手を振ると、
教えてもらったポイントを目指し、
ギデアスの細道を奥へと歩いて行った。
グレゴリーは、姿が見えなくなるまで
二人の背中を見つめ続けた。
「ほんとうに…ありがとうございましたぁ。」
見えなくなった二人に対し、
グレゴリーは深々と頭を下げた。
「迷いは、晴れましたぁ。
さぁそこのヤグード。手合わせ、願いますよぉッ!」
グレゴリーは腰に挿したサパラをスラリと抜くと、
近くに居たヤグードの僧に戦いを挑んだ。
まだ見ぬ世界への真の挑戦が
今、始まった。
─・─・─・─・─・─☆─・─・─・─・─・─
「お。あったあった。」
教えられた通り、池の畔にポイントはあった。
シャクシャクシャク
シャクシャクシャク
…
「あちゃ〜。サルタ綿花か…。
しかも、最後の鎌が壊れちまったよ。」
「サルタめンカ☆も ナカナカノ ネダンデス☆よ
ソレに カエル りユウガ デキマシ☆た」
「へへっ。違いないや。帰るとするかー。」
ネテロモトロは大きく伸びをして、
荷物の整理に取り掛かった。
- 281 :カカシ・マスター:06/12/15 19:58:51 ID:PpWXI1qy
-
帰路の途中、ネテロモトロは
先ほどギデアスで出会った青魔道士や、
シャクラミで出会った竜騎士のたまごの事を考え、
黙り込んでいた。
「ボウケンシャ☆の チガ サわギマスカ」
「ん?まぁ、ちょっとな。
ちぇ〜、カーディアンにウソはつけないなぁ。」
「ボウケンシャ☆に モドりマスカ」
ネテロモトロは少し考えると、
目をつぶって頭を横に振った。
「いんや。あいつらにはあいつらの、
俺らには俺らの戦いがあるからな。
…まぁ、不本意な仕事も多いけどさ。
俺は手の院職員として頑張って行くさ。
お前と一緒に、な。」
ネテロモトロは相棒の頭をポンッと叩いた。
その言葉が真意であるか否か、
カーディアンであるテン・オブ・クラブスは
知ろうと思えば知ることが出来た。
が、彼はあえてその能力は使わなかった。
彼にとって、ネテロモトロは大切な主人であり、
守るべき人物である事に変わりはないからだ。
ウィンダスに到着した二人は、
早速裁縫ギルドに行き、採れた素材を換金した。
思わしくない戦利品に、
内心ドキドキしていたネテロモトロだったが、
赤モコ草が貴重な素材である事を理解していたギルド長は、
納得し、他の素材も含めて充分な額で買い取ってくれた。
そこそこのギルを手にし、
二人は足取りも軽く、手の院へと報告に向かった。
次はどんな任務を言いつけられるんだろう。
そんな不安が若干頭をよぎったが、
今悩んでも仕方がない。
手の院のドアに手を掛けようとしたその時、
中からアプルル院長の怒鳴り声が聞こえてきた。
二人の留守中、手の院で一体何が起こっていたのか?
その話はまたいずれ…。
- 282 :カカシ・マスター:06/12/15 19:59:41 ID:PpWXI1qy
-
─・─・─・─・─・─☆─・─・─・─・─・─
二人がギデアスで出会ったスキンヘッドのグレゴリーは、
後に青魔道士のLSを立ち上げた。
様々な青魔法を習得すべく、同志や協力者を募り、
一人では難しい強敵への挑戦を、幾度となく実施した。
そこは習得した技の特徴や、
組み合わせにより発現する特殊な効果、
青魔法を交えた戦術等を議論・検証する場でもあり、
未知の力が少しずつ、少しずつ
解き明かされて行った。
こうして、新しい力は数々の冒険者に広まって行った。
まだ見ぬ青魔法を求めて、
惜しまれつつも遥か東方へと旅立つその日まで、
グレゴリーは青魔法普及のため、奔走した。
彼は間違いなく、そして文字通り、
謎と言う闇に包まれた青魔道を照らす、
一筋の輝かしい光であった。
〜つづく〜
- 283 :カカシ・マスター:06/12/15 20:20:44 ID:PpWXI1qy
- sageを忘れてました…ごめんなさい(-_-;)
水の区の酒場で愚痴合戦。イイ…
いつかそんな話を書けたらいいなと思います(゜д゜)
私は青魔Lv13なので、詳しいことはわかりません。
悪しからず(゜д゜)
ラーニングが大変そうだけど、奥が深そうなジョブですね。
ツユハル様
ユテラルド達とハイブリッドの青年が
どこで出会ってどうなるのか…気になりますねぇ。
続きが楽しみです!
ではまたいずれ。
UM
- 284 :(・ω・):06/12/18 08:26:27 ID:tzY3MYWN
- イイヨイイヨー!
ここのところ、読み応えのあるのが多くて嬉しい。
はよ、二組?が出会ってほしいね。
合流場所はセルビナになるのか、ジュノになるのか、ウィンでなのか。
サンド組の方は、ジュノ経路の方がおのぼりさんっぽくて話的には面白そう。
どういった展開になるか楽しみにしてますよ。
かかしさんところも、良かった。
ジョブの悩みのところとか、一瞬ヴァナ紀行に似てるとも思ったけど、
ヴァナ紀行はジョブじゃなくて人としての悩みの部分が多いから、ま
た各ジョブでの悩みなんかもまた加味してくれると面白いかも。
水の区での愚痴話、一考してもらって嬉しいです。
- 285 :ヴァナディール紀行:06/12/20 15:35:40 ID:Y9NoZugJ
- ロランべりー耕地
ミストがロランベリー耕地の草の間をさくさくと歩く。
「お、あのへっぴり腰見ろよ、ミスト」
目の前では暗黒騎士が鎌を振るっていた。
「うん。まだまだこれからって感じだね」
「柄の握りがあめぇな。鎌の長さをもてあましてる感じだ。
お、ハチにやられてる」
「いざとなったら、言ってね!助けに入るから!!」
ミストが叫ぶと、暗黒騎士は必死の形相でうなずいた。
「まぁ、ジュノのすぐ近くでやってるってことは
自分の腕を知っているってことだろうけどな」
ルークの言葉にミストはうなずいた。
「そうだね」
そうつぶやいたとき、ミストの頭をゴスッと結構強く打つモノが…。
「っ!!」
振り返ると目の前にチョコボの大きな顔。
そして、チョコボに騎乗していたのは錬金術師のマモリだった。
「やっと捕まえた!!あんたら、一体どれだけ
放浪していれば、気がすむんだい!」
ひらりとチョコボから降りて、マモリはチョコボの手綱をはなす。
よくならされたチョコボは自力で厩舎までかけてゆく。
「おいおい。挨拶も無く怒鳴るなって。姉御」
ルークの耳をマモリは強く引っ張った。
そして、城壁の影に腰を降ろす。
「あんたらも、座りな」
「え?」
「なにか、お話でも?」
ミストの言葉にマモリは肩をすくめる。
「話が無きゃ、
わざわざあんたら捜して走り回るわきゃないだろう?
ったく。手間かけさせて。
メリファトにいた研究者があんたらの姿見たって聞いたから、
この辺一体捜させといたが、見つかってほんとによかった」
ニヤリとわらうマモリ。
- 286 :ヴァナディール紀行:06/12/20 15:36:44 ID:Y9NoZugJ
- 「えっと。とりあえず、グレープジュースでも…」
マモリの隣に腰をおろしてミストがすすめる。
「いいよ。ヤグドリ持ってきたから」
きゅぽっと口を開いて、コッコッとマモリが勢いよく飲み干してゆく。
「姉御…酒、真昼間から…」
ルークはあきれて天をあおいだ。
ぐいっと口をぬぐってマモリはルークとミストを
真剣な瞳でじっと見た。
「つい、十数日ほどまえ、クラウンが襲われた」
「え?!」
「ちょ…それって……ー襲われたって、モンスターにか?」
クラウンとは今もっとも旬といわれる凄腕のHNMハンター集団の一つだ。
「いや、違う。空で白虎と戦闘中に……、
何者かに襲われたそうだ」
「………―」
ミストは息を飲んだ。
「幹部連中はあんたらの時ほどじゃないが、結構やられて、
重症な者もおおい」
「ふ…ん。で?」
ルークはマモリの丸い瞳を見あげた。
「状況があんたらの時と似通っている。
空で、何者かに襲われた。
本来、人が人に攻撃魔法を使うのはご法度だ。
こればっかりは、バリスタでもなきゃありえない。
でも、それをした奴がいる。
あんたら、なんか知らないかい?」
「……――」
ミストはぎゅっと自分の手を爪が食い込むほど握り締めた。
トライマライの水路での事件は…偶然だろうか。
「情報を探している。
そして、それだけじゃなく腕の立つ冒険者も」
ルークがふっと目を細めた。
「冒険者…」
「クラウンの生き残った奴らが、
いままでのハイノートリアスリンクシェル資金を解放して
腕の立つ名のあるフリーの傭兵をヴァナデール全域で募ってる。
復讐のために。
あんたらの名前も募集リストに入っていたよ。
ナイトのリクルク。そして白魔道師のミスティアノリア」
マモリの言葉にミストとルークは唇を噛み締めた。
そういう厄介ごとすべてから逃げていたのに
名指しで言われるときついものがある。
昔の名が売れていた頃の、名残だ。
- 287 :ヴァナディール紀行:06/12/20 15:37:31 ID:Y9NoZugJ
- 「俺たちの事は……」
「安心おし。あたいはあんたら売るつもりは無い。
だからあたいが自分のルートと自分の足であんたら探し出したんだから。
マモリ姉さん。見くびってもらっちゃ困るよ」
「ありがとう…助かるよ」
ルークの言葉にマモリは首を横に振った。
「だからって…―
一方的にあんたらの肩持つわけでもないけどね。
もし、敵の情報知っているなら教えとくれ。
ジュノもアトルガンも名のある冒険者仲間はいま、
この話題で持ちきりだ。
人が人を魔力を使って襲う。
本来あっちゃならない事だ。
魔法大国ウィンダスも黙っちゃいないだろう。
もっとも詳しくはしらないが、
ウィンダスも色々あって大変みたいだけどね。
トライマライの水路…とかで事件があったと小耳にゃはさんだ」
ミストが口を開きかけた。
そのしぐさにルークは先に反応した。
「姉御。俺たちは今じゃ世間とは隔絶された冒険者だ。
そんな情報は、あいにくねぇよ。
でも、なんか心当たりがあったら、知らせる」
ルークの言葉にマモリはうなずいた。
「頼むよ。あんたらなら信頼できるし。
あと……クラウンの傭兵の件は
じきあんたらに接触があるかもしれないから
覚悟だけは決めておおき。
もし、あんたらもあの時のかたきを取りたいなら
戦うのもいいとおもう」
マモリの言葉にミストは首をかしげた。
「マモリ姉さんは…?」
マモリは笑ってつまみにか、干し肉をガシッとかじる。
「あたいは出来る範囲で力を貸すつもりだ。
冒険者仲間が戦ってるのに、
のうのうと私腹を肥やすために稼いでなんかいられないからね。
今回はあたいも裏方として手伝うつもりだ」
マモリの強い瞳に、ルークとミストは遠い目をした。
「話す気になったら、
何でも、どんな小さな事でも良いから教えておくれ。
今一番必要なのは、情報なんだ」
マモリの言葉にルークはにがく笑った。
ルークたちが何かを掴んでいる事が、ばれているようだった。
- 288 :ヴァナディール紀行:06/12/20 15:38:59 ID:Y9NoZugJ
- マモリは立ち上がって、尻尾を揺らした。
「さて。話す事ははなせた。よかったよ。
あとね。別件だけどあんたら捜してるのがいるよ」
「なぁ…ミスト。
俺ら指名手配になるほど悪い事してたっけかよ?」
ルークの遠い目に、ミストも困ったように笑った。
マモリは声のトーンを落として、揺れる草を見てつぶやいた。
「昔のあんたらの仲間がね…探してる」
マモリの言葉にルークは泣きたいような笑いたいような
不思議な表情をした。
「それが昔話をしたいだけなのか、
リンクシェル再結成の話しなのかはわからないがね。
時はだいぶたったし、傷もそろそろ癒えてる者もいるだろう
あんたら野に放っておくのは惜しいと
あたいも思うよ」
ルークは低い声でつぶやいた。
「……ーありがとよ。いろいろと。
マモリの姉御」
「どういたしまして。さ。
でも、嫌だねぇ。
また戦いがおこって仲間を失う気がするよ」
マモリの言葉にルークは軽く笑う。
「…なら、手ぇひけばいいじゃんかよ」
ルークたちが今までしてきた事だ。
マモリはカラカラと笑った。
「あたいが?錬金術から?
ありえないね。
この世界がひっくり返ってもありえない。
あんたらだって、やめられないだろ?
あんな事があったのに…いまでもまだ
世界を渡り歩く冒険者を続けてる」
「………」
「人はそういう運命ってもんがあるのさ。
危険を顧みず冒険者になるもの。
先が辛いのがわかっていてもギルドに日参して
合成スキルを磨くもの。
平和に町で暮らしてりゃ良いのに
なにをわざわざ苦しむのかわかりゃしないが。
しょうがないよ。生きるってそういうことだ。
これがあたいの生きる道だ」
マモリは振り返ってにっと笑った。
「生きる道かい」
「そういうこと。さてっと、シゴトシゴト。
あんたらも、気をつけなよ。
あたいに見つかるって事は、
遠からず別の追手にもつかまるってこった」
草をはらって、マモリは背中を見せ手を振った。
- 289 :ヴァナディール紀行:06/12/20 15:39:47 ID:Y9NoZugJ
-
追記
暗黒騎士が鎌を振るう。
がつっとクリティカルヒットを出して、ハチが地に落ちた。
ふぅっと汗を拭き、鎌を磨く暗黒騎士を見つめていた。
「あの頃が…一番何も考えていなかったかもなぁ」
ルークの言葉にミストはうなずく。
「そうだね…」
「仇討ち…か」
ルークの言葉に、ミストは地面をじっと見た。
「ルークは……戦いたい?」
ミストの言葉にルークは青い空を見上げた。
「ワリィ、ミスト。
頭んなか混乱してて、今は考えられねぇや。
今答えても正しい答えは出せそうにねぇ。
その答えはしばらく待ってくれ」
ルークの苦笑にミストはうなずく。
「お前は…?ミスト」
ルークの深い言葉にミストは空を見てつぶやいた。
「僕もルークとおんなじかな。
でもとりあえず…詩人じゃなく…
しばらく白魔道師になろうかと思う」
ミストはそう言って立ち上がる。
幸いジュノは目の前だ。
「そうか」
「ルークは?」
「俺は……もうしばらくシーフでいいや」
「じゃ、ジュノに行って来るね」
手を振るミストはそのまま駆け出す。
ルークは短剣を手に立ち上がりざま、蜂を狩る。
一撃で沈むハチに、暗黒騎士は感嘆の眼差しでルークを見た。
「あの頃には、もどれねぇ。か」
ミストの走り去る後姿に、ルークはつぶやいた。
あれほど…サポートジョブですら白魔になることを嫌悪していたミストが
昔のジョブに戻るという。
動き出す時が、近づいているのかもしれない。
END
- 290 :ヴァナディール紀行:06/12/20 15:45:01 ID:Y9NoZugJ
- お久しぶりです^^
ロランベリー耕地はまったりととは行きませんでしたが。
ミストがサポ白をつけられなくてずっと薬品で通してきましたが
やっとその気になってきたようです。
さまざまな作品が読めて幸せで満足してしまい
更新ゆっくり目になってしまいました。
楽しい作品をありがとうございます。
そして、読み手の皆様、いつもご感想ありがとうございます。
WIKI への更新も本当にありがとうございます。
寒い冬 お風邪など召しませんように。
N
- 291 :(・ω・):06/12/20 16:25:14 ID:DggbR7Fa
- じんわりと心に来た (*´ω`)
Nさん、いつもいい話をありがとうございます。
風邪などひかぬよう、お気をつけて。
次を楽しみにしております (*´Д`*)
- 292 :(・ω・):06/12/20 18:51:17 ID:o24qyWg8
- 紀行さんの話はええなぁ・・・・。
エキストラつーか・・・暗黒騎士もいい味だしてるw
風景が想像つくよねw
- 293 :カカシ・マスター:07/01/11 19:21:52 ID:AhCOapQp
- 〜ウィンダス港〜
ネテロモトロがギデアスで
草刈鎌を振るっていた頃、
一組のヒュームの男女が飛空艇から降り立った。
漆黒の遮光眼鏡。
漆黒の綿鎧にズボン。
男は立派な髭を生やしており、
口元には不敵な笑みを浮かべている。
その左頬には、獣に引き裂かれたかのような、
三本の傷跡が残っている。
女は艶やかな黒髪をサイドに束ね、
無表情で男の横に立っている。
飛空旅行社の入国カウンターでは、
担当者がいぶかしげな表情で二人に対応し、
飛空艇パスを確認したが特に問題は無く、
二人は入国を許可された。
「ふ〜。久々のウィンダスだ。
うまいメシにムチムチのネェちゃん。
くっくっく。」
男は大きく伸びをして、ニヤリとした。
「その前に、仕事です。」
女が遮光眼鏡の位置をクィッと直すと、
冷ややかに指摘する。
「わーかってるよ。そこの倉庫だな?」
二人は港の一画にある倉庫へと、
誰にも気付かれる事なく忍び込んだ。
遮光眼鏡を外してランプで薄暗い倉庫を照らすと、
そこには各地から運び込まれたのであろう、
様々な物資が整然と保管されていた。
コツコツコツ。
静かな倉庫に足音が響く。
「左側、手前から11番目、オポオポ印の箱、っと。
…あった。これだな。」
- 294 :カカシ・マスター:07/01/11 19:23:35 ID:AhCOapQp
-
ギィィィィッ。
ガコン、ゴンッ。
木箱を開けるとそこには…
「パママ、ですね。」
「うむ。いい色してるな。甘くてうまそうだ。」
「真面目にやって下さい。」
「くっくっく。そうカリカリすんなって。
美人が台無しだぞ?」
男は女をからかうように笑いつつ、
パママを次々と箱から取り出していった。
「…あったぞ。」
箱の底には、パママに紛れてカバンが一つ、
仕込まれていた。
カチャッ。
ロックを外す音が、短く鳴る。
「間違いありませんね。」
先程までとはうって変わり、
男は真剣な表情でカバンの中身を見定める。
「ああ、間違いない。行くぞ。」
再びカバンを閉じ鍵をかけると、
二人は倉庫を後にした。
向かうはウィンダス手の院。
ウィンダス軍の一大勢力である魔動兵、
カーディアンを製作している組織だ。
─・─・─・─・─・─☆─・─・─・─・─・─
〜ウィンダス森の区〜
「う〜ん。う〜ん。」
ぶつぶつぶつぶつ。
手の院院長アプルルは、
試作中のカーディアンを前に
あーでもないこーでもないと、思案していた。
「魔力をもっと効率よく使うにはここをこうして…
う〜ん。でもそうすると…」
ぶつぶつぶつぶつ。
研究に没頭するアプルルだったが、
ドアをノックする音が不意にそれを邪魔した。
コンコンッ。
「ウィンダス連邦手の院院長、アプルル様。
我々は貴女にある商品をご提案させていただくため、
この扉を叩きました。どうか入室の許可を。」
アプルルは振り返ると、
ドアの向こうから聞こえてくる低い声に答えた。
「どうぞ。でも、いそがしいので手短に願いますよ。」
「ありがとうございます。では、失礼します。」
- 295 :カカシ・マスター:07/01/11 19:27:22 ID:AhCOapQp
-
バタン
手の院の扉が開いた。
漆黒の遮光眼鏡。
漆黒の綿鎧にズボン。
怪しげな雰囲気の二人に、アプルルは少し身構えた。
「初めまして。私はギンガム、こちらはロッテと申します。」
男は笑顔で名乗ると、ウィンダス式の礼をした。
ロッテと紹介された女も、それに合わせる。
「手の院院長、アプルルです。早速ですが、何の用でしょう…。」
「まずは、これをご覧ください。」
男は手に持っていたカバンのロックを外すと、
アプルルに差し出した。
「これは…いったい?」
中にはカーディアンの腕と思われるパーツが入っていたが、
通常の物とは少し異なり、
腕の中程からは金属で出来た筒状の部品が突き出ていた。
「銃…という武器をご存知ですね?
我々はそれを、カーディアンに応用する事を考え、
そして成功しました。」
改造されたカーディアンの腕を、
アプルルは険しい表情で見つめ、説明を聞いた。
「腕の付け根、この部分ですが…ここに弾丸をストックします。
アイアンブレット、シルバーブレット…。
市場に出回っている一般的な弾丸であれば、
大抵使用可能となっております。」
ギンガムがパーツの説明をしている間、
ロッテは一切口を挟まず、
冷静な眼差しで部屋を見回していた。
「単刀直入に申し上げます、アプルル様。
我々のこの技術、買って頂けませんか?
例えばこれを両腕として装着すれば…
カーディアンの戦闘力が、
大幅にアップする事は間違いありませ…」
「ひとつ」
ギンガムのセールストークを、
アプルルの一言が遮った。
「ひとつ、聞いてもいいですか。」
「…何なりと。質問は大歓迎ですよ。」
ギンガムは笑顔で答える。
「この腕は…暴走したカーディアンの物ですね。
あなた方はそれを解体し、改造した…。
もしこれが正常に機能すると言うのなら、
専門知識を持った術者が必要だったはずです。
一体誰が…?」
- 296 :カカシ・マスター:07/01/11 19:28:16 ID:AhCOapQp
-
ギンガムは一瞬ロッテと目を合わせたが、
すぐにアプルルの方へと向き直った。
「さすがはアプルル様、お目が鋭い。
確かにこの商品の開発にあたっては、
ある技術者の協力が不可欠でした。
ですが申し訳ございません。
これ以上の事は、どうかご勘弁を。」
若干青ざめた顔色のアプルルに対し、
ギンガムは終始変わらぬ笑顔で答えた。
ぶつぶつぶつ。
アプルルは小さく呟いていたが、
その表情は厳しく、眉間にはシワが寄っていた。
(院内にスパイがいる…?いえ、それはありえないわ。
となれば、私達以外にも…
カーディアンの製造技術を持つ者が現れた事に…)
「お気に…召されませんでしたか?」
「あなた方を、拘束します。」
笑みを浮かべていたギンガムだったが、
右手を額に当てて、天を仰いだ。
「やはり、買っていただけませんか。
残念ですね…。ロッテ、帰るぞ。」
二人はカバンを閉じ、手の院を去ろうとしたが、
その行く手を2体のカーディアンの、
クロスさせた棍が遮った。
「おっと。参りましたねこれは。」
「カーディアンの技術は国家機密。
このまま返すわけにはいきません!
セブン!ファイブ!二人を捕らえて!!」
カーディアン達の車輪が激しく回転し、
手にした棍が唸りを上げた。
しかし、渾身の力を込めた打撃は、
空を切って床を叩いた。
ドドンッ!
ギンガムとロッテは信じがたいスピードで背後に回り、
カーディアン達を背後から蹴り飛ばしていた。
「ご無礼をお許し下さい。
ここで捕まるわけには行きませんのでね。
では、失礼します。」
ギンガムはウィンダス式の礼をして、
出口の扉に手をかけた。
- 297 :カカシ・マスター:07/01/11 19:29:16 ID:AhCOapQp
-
「まっ、待ちなさい!!!」
ネテロモトロが手の院のドアに手を掛けようとしたその時、
中からアプルル院長の怒鳴り声が聴こえてきた。
と同時に、開けようとしていたドアが奥へと退き、
黒服のヒュームの男女が飛び出てきて、ぶつかった。
「わっ、っと。なんだなんだ!?」
突然の出来事に驚き、見上げたネテロモトロの視線の先には、
左頬に傷のある髭面の男の顔があった。
二人はネテロモトロ達をジロリと睨むと、
何も言わずに、猛スピードでその場から走り去った。
「捕まえて!!」
やや遅れて、アプルル院長が慌てた様子で指示を飛ばしたが、
時すでに遅し、2人組の姿はどこにも無かった。
・
・・
・・・
「どうしよう…どうしよう…!」
「あの…何かあったんですか?さっきの奴らは一体…?」
ネテロモトロは、オロオロするアプルルの顔を覗き込んだ。
「あ…。戻ったのですね、ネテロモトロ。
ご苦労様…。私、ちょっと出かけて来るから、
コプロポプロを手伝っててちょうだい。」
そう言い残すと、アプルルは港の方へと
小走りで消えていった。
「はぁ。」
わけのわからぬままアプルルを見送ったネテロモトロの右手には、
ギデアスでの収穫で稼いだギル袋が握られていた。
「金、渡しそびれちゃったな…。」
「ナニゴト☆ダッたの デショウ☆ネ」
「ん!?おいテン、これ…」
ネテロモトロが手の院へ入ると、
そこには2体のカーディアンが倒れていた。
「さっきの2人…もしかして強盗か!?」
「カネメ☆の モノなド アリマセん☆ガ」
「そうだよなぁ。って、そうじゃないって。
ギルは無いけどさ、カーディアンの技術とか…。」
「ナルホド アリエまス☆ネ」
「アプルル院長、大丈夫かな?
あの慌てよう、ただ事じゃなかったぞ。」
「シンパい☆デスネ」
- 298 :カカシ・マスター:07/01/11 19:30:19 ID:AhCOapQp
-
─・─・─・─・─・─☆─・─・─・─・─・─
〜東サルタバルタ〜
黒服に身を包んだ二人の姿が、そこにあった。
モグモグモグ
ゴクン
「やはりパママはオポオポ印に限るな。
甘みが違うんだよ。うん。」
「失敗でしたね。」
「あぁ?まーな。でも種はまいたぜ。」
「種?」
「くっくっく。お前、まだまだ分かってないなぁ。」
「…。」
「俺達の敵は何か、分かるか?」
「敵など…いません。」
「いーや。いるんだよ、天敵がな。」
「…?」
ポイッ。
チョコボの上から、パママの皮が投げ捨てられた。
「いいかロッテ。俺達の敵はな、平和だ。
平和な世界は俺達武器商人を殺す。
だからこうして、火種をまく事が大事なんだよ。
火種をまいて、世の中がもっと乱れるのを待てばいい。
かの大戦の時のようにな。
くっくっく。そうなった時こそ、俺達が踊る時間さ。」
そう語る男の目の奥には、
果て無き暗黒が広がっているように見え、
ロッテは少しゾッとした。
「自分達以外にもカーディアンの技術を持つ者がいる。
あの娘はそう思ったはずだ。
うまくすれば、ウィンダスが動くかもしれんぞ。」
「アレを売るつもりなど、始めから無かったんですね。」
「ああ。それにしても、捕らえに来るとはな。
大人しそうに見えたが…流れている血は父親と同じ、
ってか。」
・
・・
・・・
「次はビビキー、でしたね。」
「ああ。迎えの船が来るはずだ。」
のどかなサルタバルタに吹く爽やかな風を切り裂くように、
この地に似合わぬ闇を纏った二人が、チョコボを駆る。
彼らのまいた種が、いずれ大きな災厄へと成長するのかどうか。
今はまだ、誰にも分からない。
- 299 :カカシ・マスター:07/01/11 19:42:05 ID:AhCOapQp
- 皆様、あけましておめでとうございます。
今年も色々な物語を楽しみにしております。
年明け早々、アプルルの悩みの種を
一つ増やしてしまいました。
【許してください。】
それではまたいずれ。
UM
- 300 :(・ω・):07/01/12 09:49:26 ID:g7pcvFot
- あけましておめでとうございます。
今年もよい物語ができることをお祈りしております。
アジマル兄貴光臨クルー!?(*´Д`)
わくわくしてお待ちしております!
- 301 :(・ω・):07/02/13 12:25:51 ID:9pO35keq
- すでに一月
- 302 :(・ω・):07/02/14 08:14:40 ID:h7rq9dox
- 寂しいねぇ。
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