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今はいないフレンドへの手紙3通目
- 1 :& ◆bLDZf./c4g :06/02/18 21:09:05 ID:lka+M/15
- ここは前の人が出したお題でプチ小説を書いて次のお題を出すスレです
前の人が出したお題にあわせてプチ小説を書いてください
・小説の最後に次のお題になるタイトルを書くこと
・書き込み前のリロード忘れるべからず!( `д´)
・リロードしてみて先こされてしまった人は、「第〜章 外伝」とタイトルつけて
次のお題をださずに書き込むこと
・書き込み一つにまとまらない話は、メモ帳などに一度全文まとめてから
「第〜章 ○話」とつけて間をおかずに書き込むこと
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今はいないフレンドへの手紙
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鯖移転前前スレ
今はいないフレンドへの手紙
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現行まとめサイト
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- 213 :第382章「寂れたジュノの街」外伝1:06/10/18 18:28:28 ID:6ZecGv1h
- >>190 こんな話でよければ
「何時までも惨めな敗北者を慕い続けてるなんて馬鹿な野郎だぜ!」
ヤツの嘲笑が耳について離れない俺は、居ても立ってもおられず、
カドゥルハイドゥルの手に白銀貨を押し込んでジュノへと飛ばしてもらった。
時間は21時少し前。
急いでジュノ下層まで駆け下りた俺は、人通りも疎らな大通りを目の当たりにして愕然とした。
半年前まで溢れていた活気とか喧騒とか、そういうものがきれいさっぱりなくなっていた。
人気も無く薄暗い石造りの大通りはヤケに寒々として見え、
俺は堪らず雪山で凍える人のように両手で自分を抱きかかえた。
ぽっと視界の隅が明るくなった。
ひとつ、またひとつと暗い街路を照らす明かりが増えていく。
誰かが街燈をつけて歩いているのだ。
俺は目を凝らして闇を退けながら歩いてくる、その誰かを待った。
最後に灯った街燈の下に立っていたのは、白髪の老エルヴァーンだった。
彼は満足そうに明るくなった大通りを眺めて頷くと、左足を引きずってゆっくり歩き出した。
俺は彼の前に立ち、声を掛けた。
「お久しぶりです」
「おやおや、ぼうずか、元気にやっとるかの?」
老エルヴァーンは嬉しそうに眼を細めて俺に笑いかけた。
「もう子ども扱いは辞めてください。これでも引退した時のあなたと同じぐらいの実力はありますよ…」
「ふふん、それぐらい見れば分かるわい。ふぅむ、何やらワシに話があるようじゃの」
俺が切り出す前に、彼は自宅へ来るようにと言った。
- 214 :第382章「寂れたジュノの街」外伝2:06/10/18 18:29:12 ID:6ZecGv1h
- 大通りの一筋奥の通りにある彼の家は、老人が余生を送るには充分過ぎる広さと快適さを備えていた。
「故郷には帰らなかったのですか?」
彼が入れてくれたサンドリアティーを飲みながら、俺は切り出した。
「おや?ぼうずは知らなんだかのぅ。ワシの故郷は今はダボイと呼ばれる場所じゃよ、帰る家も迎えてくれる家族もとっくの昔に亡くしておる」
「でも、引退する時に“故郷に帰る”と…」
「冒険者として半生を過ごしたジュノはワシの第二の故郷なのじゃよ。さて、話とは何じゃ」
どきんと胸が鳴った。そうだ、それを聞くために俺は来たんだ。
「何故、街燈ボランティアなんてやってるんです?かつて世界を救った英雄であるあなたが!あんな惨めなことしなくてもいいじゃないですか…っ!」
彼はきょとんとした顔で俺を見詰め、やがてワハハハと大笑いし出した。
「何がおかしいんです!?」
怒りをぶつける俺をやんわりと諭すように彼は話し始めた。
彼がジュノに来た頃は、冒険者はならず者と大した違いはないと思われ、ろくな扱いを受けないのが常だった。
そんな彼をジュノの街人は懐深く受け入れた。
まだ都市国家として機能し始めたばかりのジュノは、様々な問題を抱えていた。
彼は率先して街のトラブルを解決し、押し寄せるモンスターを撃退した。
傷付き疲れ果ててモンスターの徘徊する荒野から戻った彼の眼に、
ジュノの灯はまるで時化の海で道を示す灯台のように見えたという。
誰が毎日灯りを点けているのだろうと、ふと気になった彼は、暗くなるのを街燈の下で待ってみた。
しばらくすると小さな子供の手を引いた女性が、カンテラを下げてやってきた。
「あなたが毎日街燈を付けているのですか?」
彼は若い母親に向って問いかけた。
彼女は首を振って答えた。
―ここはかつては漁村でしたから。
夜の海に出ている夫のために明かりを灯し、帰りを待つのは妻の勤めでした。
私の夫は商人です。今も何処かの荒野でキャラバンを率いてジュノを目指していることでしょう。
私はここに居るよ、あなたの帰る場所はここですよ…そんな願いを込めて、毎日誰かが点けているのです。
今日は、それが私だっただけのこと―
軽やかに笑うと、彼女は街燈を灯して去って行った。
彼の抱いた思いは間違ってはいなかった。ジュノは灯台なのだ。
- 215 :第382章「寂れたジュノの街」外伝3:06/10/18 18:29:38 ID:6ZecGv1h
- やがて、異国からの傭兵募集に飛びついた腕利きの冒険者たちが去っても、
ジュノは駆け出しの冒険者が初めて訪れる街としてそれなりに賑わっているという。
ただ、腕利きの者たちが居なくなってしまい、危険な夜の狩りに出る者は少なく夜は少々寂しくなる。
そんな冒険者のために彼は街燈を点けて歩くのだという。
お前たちの帰る場所はここだよと。
「それでもぼうずはワシが惨めじゃと思うか?」
立ち上がった彼の身体は、引退した時と変わりなく引き締まり鍛え上げられていた。
最後の戦いであわや切断かと言われた大怪我を負った左足は、あの時はぴくりとも動かなかったはず。
引退式の時も両脇を人に支えてもらって、やっと立っていたのに。
彼は今、引きずりながらではあるが杖も持たずに歩いているではないか。
その努力や、押して知るべし。
なんてことだ、彼は未だに現役のナイトだった。
―我は常に先陣にありて、未来を切り開きし者なり!―
かつて彼が、皆を鼓舞した言葉が耳に蘇る。
「いいえ…ちっとも変わってないんですね」
「当たり前じゃ。そうそう人が変わるものか」
彼は壁まで歩いていくと、そこに掛けられていた一振りの片手剣を手に取った。
「もし――また世界が滅亡の淵に立たされることがあろうとも、ジュノはワシに任せておけ。ぼうずたちが異国から駆けつけるまで、充分持ちこたえてみせるぞ」
ぶんと空を切る切っ先の鋭さに衰えは見えなかった。
「俺らが来た頃には、ひとりで片付けちゃってるくせに」
「ワハハハハ!その通りじゃ!」
ああ、この人は、本当に…
俺は溢れそうになる涙をぐっと堪えた。
まだまだ俺は彼の足元にも辿り着けていない。
この人は永遠に俺の師だ。
彼の家を後にした俺は、すっかり人通りの無くなった大通りの真ん中で立ち止まった。
暖かなオレンジの光のひとつひとつが、彼の思いを強く優しく宿して輝いていた。
―ワシはここにいる―
風は冷たかったが、ちっとも寒く感じなかった。
俺も俺の居るべき場所へ帰ろう――
呪符を一枚、星空に放り投げた。
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