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涙たちの物語9 『旅の果てに』

1 :(・ω・):05/08/12 02:10:23 ID:/h3eIQel
 ヴァナディールを舞台にした物語を語るスレです。
 あなたの中にあふれる物語を聞かせてください。
 
 前スレ:
  涙たちの物語8 『旅の始まり』
   http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/ff11/1105231828/
   
 倉庫等(現役稼働中):
 (Wiki)http://kooh.hp.infoseek.co.jp/
 
 歴代スレや旧倉庫は>>2あたりを参照。
 次スレは、400k越えたあたりで、宣言→立て→告知を願います。
 ※この板の転送量限界は512kなので、早めに対応しましょう。

2 :1:05/08/12 02:11:05 ID:/h3eIQel
歴代スレ(新しい順):
涙たちの物語8 『旅の始まり』
http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/ff11/1105231828/
涙たちの物語7 『旅の終わりは』(仮板からログ移転)
http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/ff11/1088379577/
【したらば@FF(仮)板】
涙たちの物語6 『旅の途中で』
http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/game/6493/1077148674/
【したらば@マターリ板】
涙たちの物語5『旅が続いて』
http://jbbs.shitaraba.com/game/bbs/read.cgi?BBS=6493&KEY=1069286910
涙たちの物語4 『旅は道連れ』
http://hyakuyen.nce.buttobi.net/FF11log2/1064882510.html
涙たちの物語3 『旅の流れ』
http://hyakuyen.nce.buttobi.net/FF11log2/1058854769.html
涙たちの物語2 『旅の続き』
http://hyakuyen.nce.buttobi.net/FF11log/1054164056.html
涙たちの物語 『旅は終わらない』(避難先)
http://hyakuyen.nce.buttobi.net/FF11log/1048778787.html
(※↑ログ消滅のため【過去ログ図書館】にリンク)

【xrea】
初代 涙たちの物語 『旅は終わらない』
http://mst.s1.xrea.com/test/read.cgi?bbs=ff11&key=042463790
(※↑見れるときと見れないときがあるらしい)

倉庫等
(Wiki)http://kooh.hp.infoseek.co.jp/
(新)http://f12.aaacafe.ne.jp/~apururu/
(旧)http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/4886/index.html

ここも姉妹スレ?
今はいないフレンドへの手紙2通目
http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/ff11/1103090107/l50

3 :(・ω・):05/08/12 02:50:13 ID:7VWyuZzi


4 :(・ω・):05/08/12 08:39:19 ID:OcQpCKPw
1さん、スレ立て乙〜。

作者の皆様、暑い日が続きますけど、
体調に気をつけてくださいです。
とか言う私は、夏風邪です・・・。orz

5 :(・ω・):05/08/12 19:39:10 ID:MFS+QUT/
スレタテおつ〜


6 :(・ω・):05/08/17 12:17:18 ID:htVFKZlQ
スレ立て乙〜。
そして物語かもーん!(゚∀゚)

7 :(・ω・):05/08/17 14:28:53 ID:oEwCaRjN
>>6
そう焦るなよ。前スレもまだ消費しきってないしな。
前スレに新作の短編とかファントムのup報告とかきてるし。

それはそうと>>1スレ立て乙。

8 :朱草 :05/08/18 09:02:38 ID:3t7BlllH
書き込ませて頂きとう存じます(´・ω・`)

「ラバンサラの振り子」


何とかして見つけだした宿で、僕は明かりを見ていた。
なんでも今日は、星詠みだか月詠みだかの催しとかで、水の都のウインダスは観光客で溢れんばかり。
他国の文化に触れることが、昨今の中流階級以上のジュノ人の風流らしい。

9 :朱草 :05/08/18 09:02:59 ID:3t7BlllH
思えばどうして、こんな、枯れたような国に来てしまっているのだろう。

久しぶりに国に帰りたい。

隣で眠る彼がそう言ったからだった。

特段ことわる理由もなかったので、二つ返事で受け入れていた。
けれど、来てみると、なんとも居心地はよろしくない。

10 :朱草 :05/08/18 09:03:18 ID:3t7BlllH
それは僕が、ジュノ生まれのジュノ育ちだからというわけではないように思えた。

「・・・まだ起きてた?」

「ごめん起こした?」

「ううん喉乾いただけ」

僕はリゴドンに、脇に置いてあった水筒を渡した。

彼は喉を鳴らして、それを飲む。

11 :朱草 :05/08/18 09:03:40 ID:3t7BlllH
たった一人の同じタルタルの友達。

僕は彼を親友と思うけれど、彼は僕を友達と思うだろう。
それでも気にならないんだ、リゴドンは自由が一番いい。

「外、まだやってる?」

「終わったみたい」

「そう、今日は人すごかったな」

12 :朱草 :05/08/18 09:04:16 ID:3t7BlllH
「今日のって結局なんだったの?」

「神子様が大変なことをするんだよ」

「リゴドン知らないんだ」

「うるさい、俺は難しいことは嫌いなの。それに、テネロだって知らないくせに」

「僕はここの生まれじゃないもの」

「生まれは関係ない、こういうのはコモンセンスなーの」

常識なら、どうしてリゴドンも知らないの、と言おうかと思ったけどやめておいた。
彼の機嫌をそこねるほど、僕の恐れることはないから。

13 :朱草 :05/08/18 09:04:43 ID:3t7BlllH
「散歩に行かない?」
僕の心を読んだかのようにリゴドンが言う。

「遅いけど、君さえ嫌じゃないなら」
今日は、やっぱり不思議な日なんだ。

「嫌なら誘ったりしない、行こう」

14 :朱草 :05/08/18 09:05:17 ID:3t7BlllH
森の区は淡い灯りに照らされて、
いつか見たウインダス行き飛空挺観光パンフレットと、わずかも変わりなく幻想の世界だった。

「俺、ここのミスラに銃の扱いを教えてもらったんだよ」

「弓の間違いじゃなくて?」

「確かに銃だよ、変わり者のミスラだったんだ」

「その人はいまどこなの?」

「さあ。俺が国を出る前に旅に出たから。珍しいもの好きの先生だったからなあ、色んな国を渡り歩いていると思うよ」

この手の、のばす先は何かな。
それは火を吐く銃口でも構わない、ばかげた僕の突飛な空想。

15 :朱草 :05/08/18 09:05:51 ID:3t7BlllH
「今日はいけると思ったのに、一人の女の子も捕まらなかったなあ」

「今日じゃなくたって、タルタルなんて相手にされやしないよ」

「俺だって夢なんか見ない。エルヴァーンにばかり声をかけたんじゃない。タルタルにもふられたのさ」

16 :朱草 :05/08/18 09:08:01 ID:3t7BlllH
魔法の国の青い月。

彼の顔には、緑ともつかない青白さが映っている。

僕も夢なんて、見ない。

「テネロは誰に教わったの?その鎌と魔法」

「誰でもない。寝て起きたら」

「変なの」
リゴドンが肩をすくめる。


思い出すように歌っていた。

17 :朱草 :05/08/18 09:08:41 ID:3t7BlllH
始まりはいつも 白い朝
果てまで旅した記憶 覚えてる
どこからどこまで
歩いてゆけたのか
今はもう ねえ 忘れたの

知らぬ町に掻き分けて
一人としてまだ触れぬ
声が見えないと泣いて ばかが叫んだ

人から人まで 渡っていけたのなら
今でもそこには 想いがむせている
覚えていた日々 忘れないことさえ
僕にはもう出来ないよ

18 :朱草 :05/08/18 09:09:34 ID:3t7BlllH
リゴドンの手が、僕の前に現れる。

「テネロ。まだこれから、これからたくさんやりたいことがあるんだ。
だからもっと歩こう、今日は石の区までだけど、夜が醒めて日が生まれたら、もっと、ね?」

僕は彼の手を取った。

終わりは、終わりが来たら考えればいい。
いつかは仕立てなきゃならない喪服も、そのとき考えればいい。
だって僕は、明日の朝ご飯も決めないで来たのだから。


宿に戻り僕らは同じ布団に休んだ。
彼の寝息が聞こえるまで起きていた。

19 :朱草 :05/08/18 09:13:38 ID:3t7BlllH
終わり。

携帯から書き込ませて頂いたとですので、改行とか逝っていたらすまないとです
(´・ω・`)久しぶりに書き物をしたので変かもだとですが、変かもです。

20 :(・ω・):05/08/18 14:06:36 ID:csqV5JOF
まだ前スレ埋まってないよ。
書いてくれるのは嬉しいが向こう先に埋めような。

21 :(・ω・):05/08/18 14:15:42 ID:TcSGPtyJ
いや容量がね?(´∀`;)

22 :(・ω・):05/08/18 16:12:04 ID:ZKoRbpAf
>>20,>>21
まあまあ。前スレはあと70KBくらい残ってるとは言え、
それがどんなもんか掴めなかったんだろう。
作品が増えるってのはいいことだ。

>>8
徒然な哀愁がいいね。雰囲気とか。
ただ、ちょっと詩的てか叙情に寄っていて、
不安定な文なのが気になった。
もうちょっと読者に見せようとしてくれると、
読むほうも安心して読めると思う。

23 :1/3:05/09/01 03:00:02 ID:5khexwrf
[ エリーにおまかせ! 女神は誰に微笑むか? 事件編 ]

僕はワトソン。
薔薇十字探偵所の探偵助手だ。

僕は探偵所の応接間で依頼人と対面していた。
今回の依頼人、タル戸タル造。
彼の依頼は、とてもとても風変わりなものだった。

タル造の話は、次の通りだ。

タル造は冒険者で、職業はナイト。
いま彼は同じリンクシェルに所属する
ネコ耳の白魔道士にドッキンハートに瞬きショットなのだ。
そして彼の所属するリンクシェルでは、
そのネコ耳の白魔道士をめぐり、
血で血を洗う骨肉の争いが繰り広げられている。

バトルの参加者は総勢14名。
戦士、モンク、シーフ、赤魔道士、黒魔道士、
暗黒騎士、獣使い、吟遊詩人、狩人、
侍、忍者、竜騎士、召喚士、そしてタル造が名乗りを上げた。

そんな殺伐としたリンクシェルに終止符を打つべく、
タル造はネコ耳の白魔道士に告白することを考えたのだ。
だが、勝ち目のない勝負はしたくない。

そこでネコ耳の白魔道士のフレンドに、
彼女の理想の男性について、
それとなく聞き出してもらったという。


24 :2/3:05/09/01 03:00:47 ID:5khexwrf
「にゃ〜、にゃ〜、にゃ〜?」
「なんにゃ〜?」

「にゃ〜の好きな人って、誰にゃ〜?」
「ふにゃ〜ん。そんにゃ〜人、いないにゃ〜」

「そうにゃ〜?にゃ〜、どんにゃ〜人、好きにゃ〜?」
「はにゃ〜ん。そうにゃ〜。にゃ〜、ケアルするの面倒にゃ〜。
にゃ〜、自己回復できる人、好きにゃ〜」

「にゃ〜、それでも白かにゃ〜。あとにゃ〜か、あるかにゃ〜?」
「ひどいにゃ〜。そうにゃ〜。にゃ〜、モンス殴るの好きにゃ〜。
にゃ〜、モンス殴る人、好きにゃ〜」

「にゃ〜、ホント白ちがうにゃ〜。あとにゃ〜か、あるかにゃ〜?」
「にゃ〜、にゃ〜にゃ〜?そうにゃ〜。
にゃ〜、マズイのキライにゃ〜。にゃ〜、釣りの上手な人、好きにゃ〜」

「にゃ〜、臼にゃ〜。あとにゃ〜か、あるかにゃ〜?」
「うにゃ〜ん。褒められたにゃ〜。そうにゃ〜。こんにゃ〜もんかにゃ〜」

「わかったにゃ〜。ありがとにゃ〜」
「にゃ〜?」

この話を聞いて、タル造は狂喜乱舞したという。
なぜなら、彼はナイトで自己回復が可能、
前衛なのでモンスターを殴る機会も多い。
さらに太公望を持つ釣りの名手で、
居眠りしながらでも魚が釣れるという。

タル造は、自分が全ての条件を満たしているという。


25 :3/3:05/09/01 03:01:19 ID:5khexwrf
このことで自信をつけたタル造は、
いまからネコ耳の白魔道士に告白しに行くのだ。

そして彼の告白に邪魔が入らないよう見守り、
その結果、二人を祝福して欲しいとのいうのが、彼の依頼なのだ。

「わかりました、タル造さん。
それでは物陰から応援させていただきます」

僕がそう言いかけたとき、刺すような視線を感じた。
肉食獣が獲物を射竦めるような視線。
僕は視線の先を顧みる。

そこには可愛らしいミスラの少女が立っていた。

彼女はエリー。
この薔薇十字探偵所の探偵だ。
見た目は可愛いミスラの少女なのだが、
その知識と食い意地には、目を見張るものがある。

だが、何かおかしい。
いつもと様子が違う。
彼女の微笑に、恐怖を感じる。

「エリー?ど、どうしたんだ?」
「ワトソン、話があるの!」

「え〜っと、ほら、いまは大事な依頼人が来てるから。だから、また今度で……」
「うるさい!そんな樽の玉砕に、付き合う必要なんてないわ!」

「え、えりー?ぎょ、玉砕?な、なにをいって……?」


26 :(・ω・):05/09/01 08:46:57 ID:9Pztmy06
釣りがfishingじゃなくてpulling、
つまりレベリングターゲットを釣る方ってことかな?
ほかの文章にも裏がありそうだけど、わからんorz

27 :(・ω・):05/09/01 14:17:40 ID:PUVC21wh
自己回復>チャクラ
殴る>格闘
釣り>気孔弾

で、モンクが好きなのかなあと思った。

すいません自分モンクですorz

28 :(・ω・):05/09/01 14:33:35 ID:mQFH6M3E
>>27
漏れもそう思ったんだけど、チャクラの回復量って、
自己回復って言うほどではないからねぇ。ウェイト長いし。
シ/白かなぁとおもた。
んで臼猫にぬすんだ金貨を貢ぐんだよ。
ううん、知らないけd(ry

29 :(・ω・):05/09/01 15:07:22 ID:dLhD3AjC
チャクラは麻痺、毒、暗闇も治す効果が有る
白としては楽なのかもしれん

30 :1/2:05/09/02 02:42:11 ID:LfyNlHBW
[ エリーにおまかせ! 女神は誰に微笑むか? 解決編 ]

「エリー?」

「うるさい!ワトソンのくせに生意気よ!
そんな色狂の寸胴に付き合う必要なんてないわ!
それともなに?
惨めで無様な短足を横目に優越感に浸りたいの?
高尚な趣味だこと。
でも、そんなことは時間の浪費よ。人生への冒涜だわ。
あら?まだわからないのかしら?
そこの勘違い三頭身はフラれるわ。
これは絶対運命黙示録。
かわいそう。
今夜もまた、ハウスで自分を慰めるのね。ふふふ。
おや?納得できない様子ですこと。
やれやれですわ。しょうがないわね。
簡単な言葉で説明してあげますわ。
あそこで潰れている不細工は、条件を満たしていないのよ。
彼女の証言をよく見なさい。
魚釣りのことをマズイと表現する人はあまりいないわ。
普通なら下手という筈よ。
だから、彼女がいうところの釣りとは、モンスター釣りなの。
モンスター釣りは、パーティの時給に影響するから、
彼女はウマーとかマズーで表現したのよ。
おわかり?
なに?そのトコロテンが詰まった貧相な頭では、
いまの説明も理解できませんの?
まったく、困りましたわ!
そうね。むこうの朽ち果てたボロ屑より、
彼女の理想に近いのはモンクかしら。
チャクラによる自己回復、
高い格闘スキルは伊達ではないし、
マジックポイントを持たないから、
モンスター釣りにも慣れている筈よ。
次点は竜騎士ね。
飛竜のヒールブレス、強力な槍の使い手、
でも飛竜の体力回復を優先して、
モンスター釣りにでれないことがあるから。
あとはドングリの背比べ。
ふん!そうよ!
最初から色狂で寸胴で惨めで無様で短足で
勘違い三頭身で朽ち果てたボロ屑には、
これっぽっちの脈なんてないのよ!」


31 :2/2:05/09/02 02:42:35 ID:LfyNlHBW
「エ、エリー?」
「なによ!ワトソンのバカ!うっ……。うぇ……。うぅ……!
うわ〜ん!うわ〜ん!うわ〜ん!」

「ええ?えっと、泣くなよ、エリー。あ〜、その〜、ごめん。
エリー、とにかく落ち着いて。なにが原因だ?」
「うぐ、ひっ、ひぃ。うぅ〜。ワトソンが、ワトソンが……。
エリーのお菓子、食べたぁ!うわ〜ん!」

「え〜!それで?ハァ……。わかったよ。ごめん、エリー。
あとでお菓子、買ってくるから。もう泣き止んでくれよ」
「ヤ!ヤ!イヤ!いますぐ!じゃないとゆるさない!」

「わかった、わかった。じゃあ、いまから買ってくるから」
「チョコレートミルフィーユ!
それとフランボワーズタルトにドレスデンシュトーレン!
そうね、紅茶はミントティにして!
あ、食後のヴァニラアイスも忘れないでね!」

「え?エリー、もしかして……。嘘泣き?」
「くすくす。涙は女の武器よ。
そして、男は有言実行。それじゃ、お買い物お願いするわ」

どんな事件も見事に解決!
エリーにおまかせ!


32 :0/0:05/09/02 02:42:59 ID:LfyNlHBW
>26 >27 >29 Bravo !!
>28 Di molto !!

新スレ、オメデトウゴザイマス。


33 :(・ω・):05/09/02 09:45:21 ID:Kn2oNhPD
>ドレスデンシュトーレン!
それ何の必殺技?

34 :(・ω・):05/09/02 18:40:37 ID:mDdzELxc
「よっ おやじ」
薄暗い店内に陽気な声が響く

ここは、バストゥークにある天晶堂傘下の古物屋
目利きで名高いヒュームの老人が店主を勤めている

薄暗い店内を一人の冒険者が剣らしき物を手に奥へと向かっていく

「なんじゃい、おぬしか」
東方の磁器と思われる美しい器を眺めていた老人が目線だけを上げ、呟く

「そう邪険にしなさんなって」
「今回の獲物は、じぃさんでも見たこと無いと思うぜ」
「なんたって、イフリートの釜の主が、」

「で、物はなんじゃ」
冒険者にみなまで言わさず、老人が遮る

「お、おぅ」
売り込みの口上を遮られ、慌てた冒険者はドもりながらも、手にした獲物を差し出す

「刀か‥‥」
厚手の麻袋で包まれたソレを手にした老人は、呟く
「おう」
「ま、抜いてみてくれ」
冒険者は、悪戯を仕掛けた子供の様な瞳で老人の反応を待つ


35 :(・ω・):05/09/02 18:41:13 ID:mDdzELxc
麻袋から取り出された刀は、微かに水気を帯び
老人が刃を立てると、細かい水の飛沫が舞った

老人は、ジっと刃を見つめた

その凛とした美しさに、魂を奪われたかのような老人の反応に満足し、
冒険者は声をかける

「実は、仲間に侍が居るんだ」
「素人の俺が見てもなかなかの業物に見えるから、そいつに使ってもらいたいんだが‥‥」
「奴め、『素性の知れぬ刀など握れるか』と言いやがった」
その時の事を思い出したのだろう、冒険者の眼に険がやどる

「で、じぃさんなら解ると思い、急ぎ鑑定に来たって訳よ」

老人が口を開く

「この刀の銘は『村雨』‥」
「東(ひんがし)の国は、南総の犬塚信乃という侍の帯刀だったそうじゃ」

「本来「ムラサメ」とは東の国の言葉で「群雨」と書かれ、強い雨と弱い雨が群がって
 降ることから 群雨、この音を転じて 村雨 と呼ばれるようなったそうじゃ」

「『村雨』は雨の名を冠するとおり、常に刃に水をたたえており、
 抜刀すると水の飛沫が飛び散り、その切れ味は水による摩擦係数の低下も手伝って、
 非常に優れているといわれておる」

「水を纏った刀身には血糊も付かないため、半永久的にその切れ味を保つ事ができるそうじゃ」


36 :(・ω・):05/09/02 18:41:50 ID:mDdzELxc
そして老人は、続ける
「この刀を持った者は、その衰えぬ切れ味に魅入られ、次から次へと血を求めるそうじゃ‥」

老人は長いため息をつくと、
「仲間の事を思うなら、渡さんほうがええじゃろう」
「良い業物を見せてもらった礼に忠告じゃ、素直に聞いておけ」

いまだ、老人が抜きみで持つ村雨を見つめながら、冒険者は
「妖刀って訳かい‥‥」
「さすが、刀の本職、奴の眼は曇ってなかったって事だな」
今さらながら、仲間の侍が言った 素性の知れぬ物 の意を解し冒険者は一人ごちた

「じぃさん、すまねぇがソレの処分よろしくな」
「うむ」
「せっかく、戦力UPになるかと思ったが、残念だったなぁ」

呟き、冒険者は店を後にした

静寂が戻った店内、老店主はソっと村雨を鞘に戻すと
商業区の競売所へ向かって歩き出した。


37 :(・ω・):05/09/02 18:42:29 ID:mDdzELxc
初めて書かさせていただきました。

発想は、Wizなどに代表される「鑑定」がメインになっています。
ご支持頂けるようなら、ヴァナのいわくありげな物を書いていきたいと思っています。

                               ボ○○ック


38 :(・ω・):05/09/03 01:41:10 ID:m+lRofU8
売るんか、じいさん!……というツッコミが聞こえてきそうだ。

その辺フォローないと、ギャグかと思うがな。

39 :アイテム物語No.1(01/14):05/09/03 03:34:29 ID:QitJXKBM

 グルオオオオッ!
 有翼獅子の咆哮が熱砂に轟く。
 橙の体毛の巨躯は疾走し、その腕が鉄槌の如く振り回して魔獣は
猛り狂っていた。
 薙ぎ散らされた騎士たちの奥、騎乗した兵たちに守られながら、
そのエルヴァーンの女は魔獣を見遣る。チョコボが引く車に乗り、
その上に毅然として立っていた。
 強い陽光にさらされた彼女の瞳の色が透け、そこに不思議な輪を見せる。
「王」
 騎士の群れの中からひとつの声があがった。
「聞けませぬ」
 女は先を聞かずにそう言い、声の主に向かってわずかに笑みを見せた。
 白い陽除けのヴェールを頭に頂き、薄くしかし豪奢なローブを
纏った女は、躊躇わずに魔獣を指差した。凛然とした美しい顔立ちは
太陽に彩られ、さながら戦乙女かと見まがう神々しさに包まれていた。
「フォンブルール・S。私が退くことなど」
「いえ」
 フォンブルールと呼ばれた騎士は応えながら、外套につけられたフードを
後ろに落とした。
 銀色の長髪を後ろで一つに束ね、小冠を戴いた鋭利な面が露わになる。
ぴんと伸びた耳はエルヴァーン族の特徴を現し、切れ長の瞳をさらに
細めて、彼はチョコボの背から降りると女に一礼した。
「天蓋を降ろしていただければ、それで」
 そう言うと確認もせずに振り向き、暴威を撒く有翼獅子に眼を向ける。


40 :アイテム物語No.1(02/14):05/09/03 03:35:40 ID:QitJXKBM

 すらりと腰から抜いた佩剣は、簡素ながら落ち着いた刃。それを
眼前に捧げ、彼は小さく何事かを呟いた。
 砂を蹴る。
 マンティコアの凶爪が年若い騎士の首を薙ごうとした、正にその時。
魔獣の懐に躊躇い無く跳び込んだ男は、勢いもそのままに、左腕に
据えた青い盾を全力で振り抜いた。
 オオオオオオオッ!
 マナを伴った強打は魔獣の側頭に吸いこまれ、その巨体が大きく傾いだ。
「参る」
 冷徹な声とともに挑発。純粋な敵意の塊をマナに変えて撃ちだす
アビリティを受け、魔獣は怒りに燃えた眼を男に向けた。
 強い陽光に剣閃が翻る。
 殺到する巨大な爪は必殺の威勢。だが所詮は大振り、男は軽やかに
それらをかいくぐり、返しの斬撃を放つ。その所作は舞うが如く、
洗練されたひとつの様式美を為していた。
 女は既に座席に腰を下ろし、そこから男の姿を見ている。顔にあるのは、笑み。
「閃光よっ!」 
 短い口訣とともに閃光が疾る、フラッシュ。突然、眼前に現れた光輝に
マンティコアは思わず手で眼を覆い、顔を背ける。
 瞬間、さらに冷たい閃光が疾り抜けた。逆袈裟から瞬転に払い切り落とす。
死角から死角へと斬り抜ける瞬速の三連。その尽くが魔獣の命脈を断つに
十分な威力を伴っていた。
 断末魔の声もなく、有翼獅子は砂の上にその巨躯を横たえる。頚脈から
激しく噴き出す血液はすぐさま乾いた砂に吸われてしまい、大きな染みを
作ることは無い。
 男は血振りをして持剣を腰に戻すと、何事も無かったかのように騎乗した。
 女はその背中を見遣りながら、やはり小さく何事かを呟いた。


41 :アイテム物語No.1(03/14):05/09/03 03:36:44 ID:QitJXKBM

 のちに旅王と称されるマレリーヌ・R・ドラギーユがここ、アルテパ砂漠の
オアシスを訪れたのは、何も外遊のためではない。
 即位してのちの時間、そのほとんどを旅に捧げている彼女にとって、安定した
休息地の建設は重要であったし、またそうした辺境の整備こそ自分が成すべき
仕事であるという思いもある。
 ゼプウェル島は砂漠の島だ。かつてこそガルカ族の都が繁栄していたが、
今は見る影も無い。それでも、人がこの地の特産品や事物を求めて
訪れることは絶えなかった。であるなら、この砂漠を渡る者達のための
休息地を作るという事は、彼女にとって至極当然の帰結だった。
 もちろん、周囲の人間は常に反対をする。
 何故、国王自らがそんな所まで、と言う。けれど彼女にとっては、
本国の箱城にいるよりも旅の途上に身を置いたほうが心休まるのだった。
 もともと妾腹で、本来は王位の継承権など無かったのだ。それを
お国の(言い換えれば特定の貴族の)都合で担ぎ出されて、いいように
利用されるなど我慢ならない。その反発が彼女を旅に駆り立てた。
 しかし今は、どうだろうか。
 マレリーヌは星空を映すオアシスを眺めながら思う。
 ――何を願い、私は旅をしているのだろう?
 彼女が立つ水辺は、ラバオ・オアシスと呼ばれている。
 砂漠には何箇所かのオアシスはあるが、唯一このラバオ・オアシスだけが、
古くから休息地として利用されてきた。理由は幾つかあるが、オアシスの
豊富な水量と、洞窟を隔てているため砂漠の猛獣が滅多に入りこんでこない
からであろうか。
 マレリーヌはここに幾つかの資材を運び込んで、ひとつの集落にしようと
考えていた。タブナジア及びサンドリア本国との交易路を拓きたいと。
事実、既にこの地に居ついてしまった行商人もいるようで、先ほどから
侍従長に取り入ろうと盛んに何かを捲くし立てている。


42 :アイテム物語No.1(04/14):05/09/03 03:37:39 ID:QitJXKBM

 それを尻目に、マレリーヌは水辺を歩いていた。
 脱いだサンダルを手にぶら提げ、裸足を水に濡らしながら、歩く。
どうかすると、微笑みながら空を見上げる彼女は、幼い少女のように
すら見える。
 マレリーヌにとって、こうして供も連れずに出歩くのは日常茶飯事と言えた。
幼い頃はごく普通の町娘であったのだから、それを小さな楽しみにしていても
何もおかしくはないはずなのだ。
 それに……と思い返したところで、マレリーヌは水辺に生えた木に
もたれて立つ影を見つけた。
「フォン」
 そう名前を呼ぶ。
 彼は全く何の感情も示さぬまま姿勢を正すと、彼女に向かって一礼した。
銀色の尾のような髪が緩やかに弧を描く。白い上衣に、防砂用の外套を重ねた
彼の姿は、どこかくすんで見えた。
 フォンブルール・Sと、そう呼ばれた騎士であった。 
 マレリーヌは猫のような足取りで素早く彼に駆け寄ると、その腕を
胸に抱えるように取る。背を向けかけていたフォンブルールは、それで
動きを封じられてしまう。
「逃げようとしたでしょ」
「…お放しください」
 問いには答えず、彼はそう言った。
「放すけれど、今この場を去ることは許しません。騎士フォンブルール・S」
 慎重にそう言って、マレリーヌは彼の顔を見上げる。今にも泣き出し
そうな瞳を向けられて、フォンブルールはわずかに、眉根を緩めた。
「承知しました」
 ぎゅうぎゅうと身体を寄せる彼女に辟易したのか、フォンブルールは
微かにため息をつくとそう言った。途端に、マレリーヌは笑顔になる。
 ただの、23歳の娘の顔になる。


43 :アイテム物語No.1(05/14):05/09/03 03:40:03 ID:QitJXKBM

「ありがと」
 言って、彼女はオアシスの周りを生えている下草の上に腰を降ろした。
フォンブルールはやはり立ったままで、
「座って」
そう彼女が言うと、渋々といった様子でその場に腰を降ろす。
 湧き出す水のせいか、オアシスの水面は小さな波紋を広げ続けている。
澄んだ砂漠の空気を透いて、夜空の星々は揺れる湖面にうたかたの輝きを
投げ掛けている。
「婚前の御身なのですから、このような事はお控えください」
 フォンブルールの声は低く、冷たい。けれどマレリーヌはそれを
気にした風も無く、微笑む。
「そうね。…まだ全然実感がわかないけれど」
 マレリーヌには、タブナジア侯子フィレディナンとの結婚が既に
決まっていた。本来ならばクゾッツに渡る前に婚礼の儀を挙げるはず
だったのだが、マレリーヌのたっての願いにより、このクゾッツ視察を
済ませてから挙式ということになっていた。
 口がさない人々は政略結婚などというが、実際のところその縁は
偶然以外の何ものでもなかった。何せ、お忍びでタブナジアの町に
入っていたマレリーヌと、やはりお忍びで城を抜け出していた侯子とが
街中で出会い、意気投合したのが切っ掛けだったのだから。
 ラバオでの仕事ももうすぐに、明日にでも終わるだろう。そうしたら
クフタルの洞門を抜けて、ヴォルボーからタブナジアに向かい、式を挙げる。
 それを前にして、マレリーヌの心には何かがわだかまっていた。
 それが何なのか、彼女自身も分からない。
 そういう時、マレリーヌは決まってフォンブルールを頼った。
幼なじみで、年上で、優しく頼もしいお兄さん。ただの町娘だった
彼女を、いつも見守ってくれた人。そして王となった自分を、ずっと
変わらずに守り続けてくれる騎士。


44 :アイテム物語No.1(06/14):05/09/03 03:42:17 ID:QitJXKBM

 フォンブルール・S。家名が無いのは、彼が孤児だからだ。もちろん、
剣の達者とは言え、そんな青年が王立騎士に任命され、近衛騎士隊を差し
置いて女王の警護役に抜擢されたこと自体が既に異例づくめだが、そのうえに
彼は子爵位までも与えられている。
 無論、それはマレリーヌによるものではある。だが、今やそれに
口を挟むものは無かった。フォンブルール・Sは女王を守る、最も
優れた盾であったから。
「フォン」
 彼女は言い、かつてそうしていたように、彼の肩へ頭を乗せた。
 柑橘と太陽の香りがふわりと、フォンブルールをくすぐる。色の薄い
柔らかな金髪が揺れていた。
「何でございましょう」
 いつからだろう、不意にマレリーヌは思う。
 こんな風に、彼が冷たい声を出すようになったのは。他人行儀に、
主従の言葉を使うのは。マレリーヌ自身、周りに目がない時だけは、
幼い頃と同じくフォンブルールに声を掛けてきたというのに。
 彼が言葉を変えたのは、いつだろう。
「ううん」
 寂しいとは思わない。フォンブルールはいつでも、彼女の味方だから。
彼女のために、そうしているのだから。だから、それを疑ったりしては
いけないのだ、と。
「フォンは、優しいね」
「…私の務めです」
 その『務め』が職務を意味しないことを、マレリーヌは知っている。
「ね、フォン」
 その名前ばかりをくり返していると気付いて、彼女は少し可笑しかった。
でも、その名前を口にしているだけで、こんなにも気持ちが安らぐのだ。
 だから、それでいいと思う。彼は困るかもしれないけれどと、彼女は
イタズラっぽく笑った。
「私、ここで眠ります」
 出し抜けに言ってみた。


45 :アイテム物語No.1(07/14):05/09/03 03:42:59 ID:QitJXKBM
「は?」
 案の定フォンブルールが間の抜けた声と顔をしたので、マレリーヌは
くすくすと笑ってしまった。
 でも、口にしてみると、本当にそうしたかったのかもしれないと思えた。
『フォンがいる』という穏やかさと安らぎのなかで眠りたいと。
「騎士フォンブルール・S。あなたもここを離れてはいけませんよ」
「何を、仰られるのです」
 言いながらも、彼は決してマレリーヌを乗せた肩を動かそうとはしない。
 心地よさが不意に、彼女の瞳に掛かる。昼の強い陽射しのせいだろうか、
そういえば疲れていたなと、眠気の片隅で思った。
 眠ってしまおう、この安らぎを抱いて。
「決して…そばを、離れないで…ね……」
「王?」

 フォンブルールはマレリーヌの頭を抱えると、そっと、草の上に
彼女の身体を横たえた。
 ヴェールを外す。こぼれ落ちる薄い色の金髪がわずかに、指に絡んだ。
 畏れるようにその指を離すと、身につけていた外套を折りたたみ、
彼女の頭の下に挟む。
 そうして、彼はマレリーヌの寝顔をじっと見ている。
 安らかな寝息を立てる彼女から、爽やかな柑橘の香りと、太陽の
暖かな匂いとが届いた。昔から、彼女が好きな香りだ。
 いつか、彼は右手を伸ばして、マレリーヌの頬に指を掛けようとしていた。
 無自覚だったのだろうか、慌てて右手を戻すと、それを左手で
握りしめ、彼は眉間を歪めた。
 まるで、何か大切なものを手放した少年のような、その顔。
 振り仰ぐ夜空はただまばゆい。それを映す水面は、星を湛えた輝きの海のようで。
 青年はそのまま、長嘆する。
 その嘆きは、何に向けられたものであったか。
 フォンブルールはそのまま腰に手を遣ると、佩剣を抜いた。
 澄んだ剣身は星を映し、瞬く。
 その柄を、マレリーヌの手に握らせる。彼女の手を柔らかく包みながら、
彼もまた身体を寝かせた。
 星を映した長剣を握り合い、互いの身体の間に剣を横たえて、
フォンブルールは瞼を閉じる。
「…おやすみ、マルゥ」
 かつて呼んでいた名前を、口にして。


46 :アイテム物語No.1(08/14):05/09/03 03:43:59 ID:QitJXKBM

 チョコボに騎乗した一団が砂漠を行く。
 旅王の一行は縦に長い錘形の陣を組み、強風にも隊伍を崩すこと
なく進んでいく。
 その日は吹き上がる砂塵がひどく、視界は非常に悪かった。
ラバオ・オアシスの行商人は砂嵐がくるのではないかと言って
いたが、侍従長は出発を強行した。
 実際問題として、日程をかなり押しているのは確かであった。
これ以上の遅れは挙式の差し障りになり兼ねない。今はともかく、
タブナジアに向かうべきなのは明白だった。
 既に数年もの旅に暮らす一団のこと、この程度の悪天候は幾度となく
経験していた。さすがに砂嵐に見舞われた経験こそないものの、では風が
強くなる前に洞門に向かってしまえばよい。そのような判断がなされ、
彼女たちは出発した。
 連日の施設設営や熱砂での行動によって、近衛騎士隊の面々も
疲れていたのかもしれない。視界を奪う砂の嵐のせいもあったで
あろう。いくつもの小さな、小さな要因が重なったとも言える。
 ラバオ・オアシスからクフタルの洞門に向かう道程の半ばで、
旅王の旅団は、アンティカ族の大軍に襲われた。
 ――当のアンティカにも、旅王の一団にも知りえないことである。
 アンティカ族は女王の統制のもとに組織された軍社会で成り立つ。
女王が代変わる際にはそれまでの巣を捨て、別の巣に向かう習性があった。
 この度移動先まではそれほど遠くないものの、ごく短い距離だが、
地上を通らねばならない箇所がある。そこを通過しようと女王が地上に
出たところで、アンティカの斥候が至近距離で隊列を成すアルタナの民を
見た。それを、女王の移動に合わせて襲撃を掛けてきた敵と見えても、
仕方の無いことであったろう。
 かくして、不幸な偶然は重なった。
 アンティカの兵達は錘形をした陣に横合いから喰らい付いた。散々に
矢を射掛け魔法を打ち放つ。突然の襲撃に近衛騎士隊が隊列の乱れを
正そうとする間も与えず、突撃兵たちが切り込んだ。


47 :アイテム物語No.1(09/14):05/09/03 03:44:45 ID:QitJXKBM

「何事です!」
 旅団は混乱を極めていた。奇襲、何よりそれが砂の中から現れた
襲撃者ということが、状況の伝達を遅らせていた。
「なっ、なにやら敵襲の様子ですが」
 侍従長の狼狽ぶりが、事態の切迫を彼女に告げる。
 既に彼女は天蓋を下ろし、そこに立ち上がっていた。濛々と煙る
砂塵に煽られようとも、その強い意志を秘めた瞳は少しも翳らない。
 ――まずいけなかったのは、あまりに双方の位置が近すぎたことだった。
 互いの王からあまりにも戦場が近く、それ故に兵は必死となる。
また、そこにいる者の密度が高くなり、敵味方が入り乱れた乱戦に
なってしまう。
 そして天候。砂塵は視界を遮り、状況の把握を困難にしていた。
それはアンティカにとっても同じで、両者は同じ閉塞感と焦燥感
を持って戦っていた。
 勢い、戦闘は泥沼化していく。
「お逃げくださいっ、マレリーヌ様!」
 近衛騎士隊長も、警護役であるフォンブルール・Sもそこにはいない。
だが目の前で凄絶な乱戦が行われていては、侍従長もそう言うしかない
であろう。
「しかし!」
 目の前で倒れていく兵を見捨てる事が、マレリーヌにはできない。
その躊躇いが致命的となった。
 御車に立ち尽くすマレリーヌの目がそれを捉えた。遠く戦場の向こう、
整然と並ぶアンティカ族の戦列を。そしてその全てが、矢をつがえた
半弓を引き絞っていることを。
 先行していたアンティカの一団が食い破られた左翼へと殺到した。
彼らは同士討ちというものを厭わない。既に左翼に突入していた自軍兵を
もろともに、大量の矢を射掛けるつもりなのだ。


48 :アイテム物語No.1(10/14):05/09/03 03:45:33 ID:QitJXKBM

「皆っ、下がって!」
 絶叫が合図であったかのように。矢は、放たれた。
 まるで黒い雲霞のような一群の矢が迫る。何故だろう、マレリーヌの
目にはそれがやけにゆっくりと見えた。侍従長が針鼠のようになり、
御車を引くチョコボが絶命していく様さえも。
 そしてそれは、いずれ彼女自身にも突き立つであろう事が、分かる。
(フォン)
 最初に浮かんだのは、婚約者でも母親でもなく、その顔だった。
昨夜の安らぎと、ずっと胸にあり続けたわだかまりが甦る。
(ああ…フォン!)
『マルゥ』
 声が、聞こえた。
「っ!」
 そして彼女は、そのわだかまりの正体を知った。それを待ってでも
いたかのように、冷酷な鏃は既に彼女の目の前にある。
 小さく、しかし万感の意をこめて、マレリーヌは笑みながら
その名を口にした。
「フォン」
 刹那だった。
 白い閃光が彼女の前に現れ、幾条もの軌跡を描いた。青い盾が、
彼女が彼に授けた特別な盾が、最後のひとつを叩き落とした。
「申し訳ありません、王」
 フォンブルール・S。彼女だけの盾。
「バカぁ…遅いよぉ…」
 こみ上げてくる涙を隠しもせずに、マレリーヌはその胸元にすがりつく。
「王…」
「バカバカバカ…フォンのバカ…!」
 そこにいるのは誇り高く慈悲深い女王ではなかった。明るくて
人懐っこい、彼の幼なじみでしかなかった。


49 :アイテム物語No.1(11/14):05/09/03 03:46:17 ID:QitJXKBM

 フォンブルールは一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、あの少年のような
顔をした。そして軽く、マレリーヌの髪に触れる。
「っ、フォン」
 彼は答えず、後ろを振り返った。
 劣勢だった。そもそも兵の数か違い過ぎた。この混乱では分から
ないが、少なくとも倍以上の兵力差があっただろう。乱戦が続いて
いることで、その兵数の差が次第に効果を現し始めていた。
 もう間も無く、旅団は瓦解するであろう。
 フォンブルールはわずかに瞳を閉じた。そして再び眼を開いたとき、
彼は仄かに、微笑んだ。
「王、逃げるのです」
「えっ?」
「私のチョコボがあります」
 そう言うとマレリーヌの手を引いて、彼の愛鳥の元へと連れて行く。
「ちょっ、フォン?」
 困惑する彼女に、
「あなたをお守りするのが私の使命です」
そう答えると、鞍にくくってある荷物を外し始めた。必要最低限の
ものだけを残し、可能な限り身軽な状態にしていく。
「最後までお守り致します。侯子に、あなたをお渡しするまでは」
「…ちゃんと、タブナジアまでだよ?」
 マレリーヌの確認に、フォンブルールはまっすぐに頷いた。
「ええ。さあ、前鞍に乗ってください」


50 :アイテム物語No.1(12/14):05/09/03 03:47:12 ID:QitJXKBM

 鐙に足を掛け、彼の肩を借りて、彼女はチョコボの背にまたがる。
すると奇妙なことに、フォンブルールは手綱をマレリーヌのベルト
にくくり付けた。
「フォン、これ…」
「振り落とされないための用心です。手荒に走りますから」
 少しも表情を変えることはなかった。いや、何時に無くその声は
明るかったのかもしれない。
「クフタルへ行きます。暁号!」
 愛鳥の名を呼び、フォンブルールはその腹を盾で殴りつけた!
 クエエェェェッ!
 途端にチョコボは急加速した。ラテーヌ随一と謳われ俊足を
存分に発揮し、凄まじい疾走を開始した。主の命に従って。
「待って! 止まって、フォンが!」
 マレリーヌが力いっぱい手綱を引き絞ろうとも、暁号の疾走は
止まらない。そして、手綱はきつくベルトに結び付けられて緩める
ことすらままならない。
 予感していたはずなのに。
 マレリーヌは止め処無く溢れる涙を拭おうともせず、最後の最後で
自分を裏切った男を振り返る。
 絶叫が、彼女の喉から広がった。

 暁号を見送ると、フォンブルールは微笑んだ。
 安心したように。
 そして己の佩剣を抜き、眉間の前に掲げる。そうして、いつもの
ように呟く。
「我に女王を守らせ給え」
 そう、小さく。
 飛来する矢を一寸に見切って躱し、突撃してくるアンティカ族の
戦士に向け走りこむと、たったの一太刀でその首を刎ね飛ばす。
「女王は無事に下がられた! 全軍クフタルまで退け!」
 戦場を、砂嵐をも割る大音声で彼は叫んだ。
「殿軍はこのフォンブルール・Sが務めさせて頂く!
 全軍退けえええっ!」
 そう繰り返し叫びながら彼はただ一人、白刃とともに舞いながら、
アンティカの群れへと突き進んで行った。


51 :アイテム物語No.1(13/14):05/09/03 03:47:55 ID:QitJXKBM

 砂の上に、青い盾が転がり落ちた。
 既に女王直属の兵の大半は討ち取られていた。
 それがたったひとりの人間によって為されたということに、「彼」は
武人として感嘆を禁じえなかった。
 目の前に立つ、満身創痍の男のどこに、それほどの力が残っていたのかと。
 「彼」は女王の軍のなかでも随一の剣の腕を誇っていた。アンティカ族
全体でも五指に入るという自負があり、そして実際、その通りだった。
 それが、この男とは五分。いや、確実に押されていた。凄まじい気迫と
それに裏打ちされた剣技は確かに「彼」を凌駕していた。
 これほどの傷を負っていてさえ、なお。
 元は白かったであろう上衣は煤と血に汚れ、赤黒くくすんでいた。
背中には幾本もの矢を生やし、砂に落ちた盾は完全にひしゃげている。
 激烈な戦闘を物語る、その姿。それを眼にして見くびった自身を「彼」は恥じた。
 それは敬うに値する偉大なる戦士の姿に相違なかったからだ。
 そしてその偉大な戦士は、己の全てを込めたであろう剣を手に、
立ち尽くしたまま動かない。
 「彼」は己の喉元に手をやった。ぬらりとした体液がにじみ出ている。
男が最期に放った連斬のためだった。その目にも止まらぬ剣閃は、
一の太刀で「彼」の肩甲を刎ね、二の太刀で剣を砕き、終の太刀で
喉元を切り払っていた。
 もう僅かでも男に力が残っていたならば、その剣先は「彼」の首をも
刎ねていただろう。そう思わせるほどに凄絶な剣だった。


52 :アイテム物語No.1(14/14):05/09/03 03:48:58 ID:QitJXKBM

 そして、男は動かなくなった。
 「彼」は男に近づき、なお握り締めた剣をそっと、その手から抜く。
 偉大なる戦士が、その魂の全てをこめた剣を。
 アンティカたちはそれを認めると、速やかに移動を開始した。この
ような襲撃がまだあるとも限らないのだ。少しでも速く、女王を新たな
巣へと送らなければならなかった。
 熱砂の嵐のなかに、その男の躯だけが残っていた。

 ――その後、彼の姿を見た者はいない。


 Fin.


●セイブザクイーン
生涯を旅に生きたサンドリア女王マレリーヌに、最期まで忠義を
尽くした王立騎士の佩剣。許されぬ想いを忠誠心に変え、女王の
危機を何度も救った彼の念は、今も剣身に宿されている。その茎
には、以下のような言葉が切られている。

 「我が剣を、我が最愛のマルゥに捧ぐ」


53 :アイテム物語orPPの作者 :05/09/03 03:55:15 ID:QitJXKBM
失礼いたします、The Phantom Painの作者です。
前スレを埋めるためにショートを書こうかと思ったのですが、
書いていたら長くなってしまったので新スレへupさせていただきました。

個々のアイテムに秘められたストーリー。
以前から書きたいと思っていたものなのですが、
いかがだったでしょうか。
機会があれば、また別のアイテムについて
書いてみたいとも思います。

では、また。

54 :(・ω・):05/09/03 11:45:03 ID:cl7oMck/
>>38
高く売れる刀だったが、持ち主がそれを知らなかったから
「こいつはカモだ(´_ゝ`)」と思った爺は
妖刀と言って冒険者を騙し、手に入れた刀を競売で(゜▽゜)ウマー
……なわけないよな(´Д`)

>>39-53
フォンカッコいい!
>>52の最後の一行とか特に(´ω`)=3
PPの続きも楽しみにしております!

55 :(・ω・):05/09/03 13:34:29 ID:X5aoJT+v
>>38
うむ…その、なんてぇか勉強不足って感じだな。
例えば刀は刃の摩擦が減ると切れなくなる。
だから、武士ってのはいつも携帯砥石を懐に持っていて
戦闘の前にかけて刃をざらつかせる。「寝刃を合わせる」ってヤツ。
んで、鑑定するにしてもその描写がないから、一目見て分かったような
不思議感覚に。刀の鑑定って作法が大事だったりするし。
「鑑定」をテーマに、というならそのへんは勉強するべきだろう。

んでまあ、元ネタだけ挙げるってのはなぁ…。
「こいつを見てくれ」
「ふむ、これは(元ネタの説明)じゃな」
「そうなのか」
だけだよな、これ。ぶっちゃけ元ネタだけならググれば出てくるし。
元ネタをいかにFF11内の設定に近づけるか、が面白いと思うんだが。
んで話にしても>>54の言うとおりにしか見えなかったし。
もうひと工夫ほしい。がんばれ。

>>39
こういう設定を埋める話が好きだね、この人は。
いや、漏れも好きなんだけどね。


56 :(・ω・):05/09/03 13:36:08 ID:X5aoJT+v
うああ、アンカーミスったorz
前レスの前段は>>37へのものだす。

>>38スマソ。

57 :(・ω・):05/09/07 08:26:17 ID:R07CmxZQ
>>37
普通にギャクだよね?
>>55氏の言うように書き込みがいまいちなところがあるけど、ギャグと思えば
俺は>>55氏の言うよなマニアックな表現をそれほど載せなくても良いと思った。
要はその刀がどういう物かと言う表現方法(演出)じゃないかと思う。

>>39
楽しく読ませていただきました。
表現方法が上手いです。
フォン格好いい!!(゚∀゚)


58 :ヴァナデール紀行:05/09/07 08:53:49 ID:jjgjMo3c
コロロカの洞門

砂のさっくりした感触が足を包む。
海底の道。コロロカの洞門。
そこには石化した海洋植物が薄白く輝いて道を示していた。
「クゾッツは久し振りだね」
ミストの言葉にルークは頷く。
「あぁ、ダルメルの毛皮がどれだけ取れるか楽しみだ」
もう少しで海底トンネルを抜けられるか。
といところで背後から駆けてくるタルタル族がいた。
「うあぁぁっ」
手にした剣は血にぬれ、顔面は蒼白。
死の恐怖を真近に感じた表情だった。
駆け抜けようとするタルタルの青年の首根っこをルークは左手で引っつかみ
同時に右手で自分の剣を抜いて、周囲に気を配る。
「ぐっ」
青年はその場にへたり込んだ。
「どうしたの?」
ミストはハープを手にやわらかな笑顔で問い掛ける。
「あ…、あぁ」
「落ち着け。モンスターにやられたんだな?」
ルークの言葉にタルタルの青年はコクコクと頷く。
「なにがあった?モンスターは、まいたみたいだぞ」
「本当に?もう、平気ですか?あぁ…よかった…」
くったり。
弛緩したタルタル族をルークは正面から覗き込む。
タルタル族は、剣を持った戦士だった。
「何に追われていたんだ?」
「巨人に…みつかって…」
「ふん。なるほどな」
「一人?」
ミストの言葉に、タルタルの戦士は泣きそうな表情で顔を上げた。
「いえ。白魔道士と―仲間と一緒でした」
タルタルの声が震えている。
「そいつはどうした?」
「…戦って。でも勝てそうもなくて。周囲に人もいなくて…。
あの子…逃げろって俺に言って…―女神の祝福を…」
俯いた戦士。
それが何を意味するか、問わなくても全員がわかっていた。

59 :ヴァナデール紀行:05/09/07 08:57:16 ID:jjgjMo3c
ルークは堅く握り拳を作り、思いっきりタルタルの青年を殴った。
ばきっ!っという重い音とともにタルタル族の青年が吹っ飛ぶ。
「白魔を、おいて逃げたのか?お前、何で逃げた」
ルークは低い声で呟いた。
「だって…逃げろって…―とてもじゃないけど、巨人なんて勝てない…」
ルークはタルタル族の鎧をつかんで、顔を近づけ殺すような強い瞳で睨みつけた。
「場所は、どこだ」
「ぇ…」
「場所は、どこだ」
「この、道をまっすぐ…丁度真中ぐらい…」
「こいっ。案内しろ」
「えぇっ?!」
タルタル族の動揺を見て、ミストは呟いた。
「君の命は保証するよ。僕らが確実に守るから、来い」
冷静を装っても、言葉は荒い。
二人に引かれるようにタルタルの戦士は逃げてきた道を走り出した。


「確か…ここ、らへんかと」
タルタルの青年が指し示した戦場は、収束していた。
巨人の姿はなく、周囲は水の流れる音だけがやけに響いていた。
白い砂浜にルークが座り込んだ。
ミストが覆い被さる。
「血、だな」
「うん」
血の後をたどると、
タルタルの戦士が逃げた方角と逆の方角に少し行った岩陰に人影があった。
ローブの、ヒュム。
ここからでは息があるかも、見ては取れなかった。
「ミスト…見てくれ」
「ん」
ミストがヒュムの背を抱き上げると、
ローブが重力に従い落ちて顔があらわになった。
栗色の髪が流れ落ちきれいな少女の顔に血が流れている。
「息は、ある」
ミストの言葉にタルタルの青年はほっと息をつき、その瞬間ボロッと涙をこぼした。

60 :ヴァナデール紀行:05/09/07 09:01:20 ID:jjgjMo3c
「腕は折れてる。足は平気そう。内臓も見た感じ殴られた跡はなさそう。
傷は頭と、そして、手かな」
「意識がないうちに、腕の手当てしといてやるか」
ミストは少女の唇に布を噛ませた。
「ルーク、押さえておいてね」
「OK」
手首と肘を掴み、引く。
ぎりりっ!
折れた骨を補正する。
少女は意識がないにもかかわらず、苦悶の表情で背を跳ねさせた。
「ルーク、固定用の堅いもの、ある?」
傷の手当てをしきれいな布と包帯で巻いた後、
ルークが手渡すたたき折った周囲の白石灰化したサンゴで腕を固定する。
そして、少女の額に浮ぶ汗をぬぐってやった。
「どうだ?」
「う…ん。腕は折れてるけど…ほかはたいした事はなさそう。
意識が戻ったら歩けそうだから、肩を貸してバスに戻るのが一番かな。
腕を怪我していると背負うことは出来ないし
僕らだけで運ぶのは難しいね」
ミストの言葉にルークはやっとつめていた息を吐いた。
そして、少女に語りかける。
「偉いぞ。よくがんばったな」
さらりと、前髪を撫でてやる。
「本当にね」
ミストも少女の汗をぬぐい、化膿どめの薬とハイポーションを少女の口に注ぎ込んだ。


ミストがテキパキと少女が休む準備をし、ルークは周囲を見にいってきた。
「ただいま」
「どう?ルーク」
「ここは安全っぽいな。巨人も誰かが狩ったんだろう」
「そう。よかった」
泣きつづけるタルタルの戦士にルークは吐息をついた。
「ウゼェ…いい加減、泣きやめ」
「でも…ひっく…ーっ…っく。俺のせいで…ひっく」
「泣いてもどうにもなんねぇだろうが」
「そう、なんですけど…ひっく…っくん!」

61 :ヴァナデール紀行:05/09/07 09:04:01 ID:jjgjMo3c
ルークは座って、ミストの入れた熱いウィンダスティを一口飲み呟いた。
「お前、やめろ。剣を持つの」
「…ぇ?」
「むいてねぇよ。街で生きろ」
「どう……?」
青年は顔を上げルークを見た。
ルークは苦く呟く。
「モンスターは怖い。それは当たり前の事だ。
誰だって、俺だって怖い。自分より力がつええ、自分よりデケェってなれば
恐怖は相乗効果でのし上がってく。
でもな、だからって、仲間おいて逃げ出すのは……―最低だ」
タルタルの青年は歯を食いしばって、俯いた。
じわりっと新たな涙が、滲む。
「仲間、それも俺らの命を守ってくれる白魔をおいて逃げ去るのは…
冒険者としちゃ、恥ずべき行為だ。
その白魔は女神の祝福でタゲとって、お前と反対の方向に逃げた。
こういう奴を守らないで、お前はなにを守るんだ?
お前は何のために戦士しているんだ?」
青年は弾かれたように声を出した。
「でもっ。俺っ…!」
ルークは言葉を続ける。
「自分の命は大事だよな。
でもな、仲間犠牲にして戦士が逃げ出していいのか?
仲間の命も、お前の命も一つっきりだ。
お前はわかってて、逃げたんだよな?」
普段は短気なルークが、噛んでふくむように丁寧に話す。
タルタルの青年は手に顔を埋め、首を横に大きく何度も振る。
「俺…―おれっ…は…、おれ…
――何で、逃げたりしたんだろう。
この子は俺より弱いのに…俺、怖、怖くて―」
ミストがタルタルの青年の背を撫ぜる。
「泣かなくて、いいよ。僕は君を責めてはいないから。
命は大事だ。君も彼女も無事でよかったって僕は思うよ」
「な…んで…―、俺は…ぅ…
うわああああぁぁぁぁ」
タルタルの青年は白い砂に突っ伏して泣いた。
涙がぽたぽたと白い砂に染み込んでゆく。

62 :ヴァナデール紀行:05/09/07 09:07:01 ID:jjgjMo3c
ルークは、白い洞門の闇を見据えて呟いた。
「それでも…それでも―もし、
…もしも、今後もお前が戦士をするなら。な。
剣を持って戦いたいと思うのなら。
今日の事は、生涯忘れるな。
仲間を見捨てた自分を、忘れるな。
そうすれば、お前は二度と仲間を見捨てない」
ルークの言葉に青年は泣きながらコクコクと頷いた。
その絶叫にか、少女がきつく眉を寄せ、うっすらと目を開く。
「フリスクリス…?泣いているの?怪我をしたの?」
小さな苦痛を押さえた少女のふるえる声に、タルタルの青年は首を横にふった。
「ごめん…逃げて。一人で逃げて…ごめん、傷負わせて…ごめん…」
頭を砂にこすりつけて懺悔するタルタルの青年に少女はほっと息をついた。
「顔を上げてやれ」
ルークは言って、タルタルの青年の鎧を掴み少女に視線を合わせさせる。
少女の瞳がタルタルの青年の泣きじゃくった顔をとらえ優しく細まる。
「逃げてっていったの、私だもの。
白魔はみんなの命を守るのが仕事。
貴方が無事で…よかった―」
苦痛に浮ぶ汗の中微笑む少女に、
タルタルの青年はさらに涙で顔をグチャグチャにした。
罪悪感がタルタルの心を浸していた。
深い悔恨が、そして自己嫌悪が青年の心を包む。
「ごめん。おれ、意気地なしで…ごめんな。ごめん…」
謝りつづける青年に少女はただ優しく微笑んでいた。

ミストとルークは二人をバストゥークに送り、医師に任せた。
「彼…どうするかな?」
ミストは洞門の中でポツリと呟いた。
ルークは笑う。
「前衛なら大抵誰でも一度は、通る道だ。
そこで挫けるなら、そこまで。
続けて初めて一人前の戦士になれる」
そのわりにルークのタルタルの青年を責める言葉は厳しかった。
「ルーク、意地悪だね」
「命のやり取りに生易しいもの求めるなよ。
覚悟がなきゃ、戦えねぇよ」
「そっか。――そうだね」
ミストは呟いた。
この洞門を出れば、灼熱の砂漠がまっている。



63 :ヴァナデール紀行:05/09/07 09:09:10 ID:jjgjMo3c


追記
タルタルの戦士は、赤いスコピオハーネスを身につけ両手斧を背におさめる。
そして、ふりかえる。
「みんな、無事か?」
ヒュムとガルカとミスラが答えた。
「ええ」
「もちろん」
「あぁ」
それぞれの言葉に、タルタルの戦士はにこっと笑む。
何度となく、戦闘後自分の背後に向けて同じ問いを繰り返した。
あの事件以後、タルタルの戦士は一つ、心に決めた。
それは、退くときは、自分が最期になる、ということ。
あんな苦い涙はもう二度と味わいたくはなかった。
あんな恥ずかしい思いはもう二度としたくなかった。
あのコロロカの二人組の彼らにもう一度逢う機会があったら、
タルタルの戦士は話したいことがあった。
「お前、何のために戦士をしているのか?」
あの時は、問われて答えられなかった。
でも、今ならまっすぐに答えられる。
「自分に恥じずに生きるために、
自分自身と戦うために戦士でありつづける」と


「じゃ、いこうか」
タルタルの青年は、フィールドを歩きだす。
仲間達の一番最後をゆっくりと。
いまも、これからも。
ずっと。

                 END


64 :ヴァナデール紀行:05/09/07 09:26:57 ID:jjgjMo3c
埋め立て終了したためこちらにお邪魔いたします。
スレたてありがとうございます。
緊急時の行動は、あくまでケースバイケースですが。
こんなお話もいいかなと。

新しい方がたくさん書かれていて読むのがうれしいです。
お話しをありがとう。
お言葉くださる方ありがとうございます。
そして、毎回wikiにupしてくださる方のおかげで
今回も書けました。
皆さんのお気に召す話が書けないときも、見てくださってアップしてくださってるのを見ると
嬉しくなります。

書き手の皆様新作を楽しみにしています。
このスレを守ってくださる皆様、ありがとうございます。

                           N

65 :(・ω・):05/09/07 11:01:26 ID:gfSmtjHJ
今回もGJ!
白からすると、いーからお前等とっとと逃げんかい!ということも
あったりなかったりするわけで、たしかにケースバイケースです
けど(笑
でも戦士のというか、前衛の『心意気』ってもんだよね。<最後に逃げる

前衛は後衛を守るし、後衛は前衛を支える。
それでこそPTは回るってもんだ。

66 :55:05/09/07 15:21:17 ID:VjS4j8Tb
>>57
>>37が「鑑定」をテーマだと言うからには、摩擦係数云々のような、
現実的で、かつ致命的な間違いを含んだ説明はいかんと思ったのよ。
魔力で〜とか呪いで〜とか、そういうファンタジーとしてなら、
まったく気にならないんだが。
それもひっくるめてギャグというか、もっともらしく語る
爺さんの表現ってなら漏れが無粋の極み。スマソ。

>>64
「誰よりも先に死ぬことが俺の誇り」と言ってたフレを思い出した。
傍迷惑の覚悟かもしらんが、>>65のいう『心意気』ってやつに共感。
んで書き手のNさんGJ!

67 :ヤクソク:05/09/07 17:23:59 ID:+Du7bsYi
こちらでははじめまして。拙い書き手の拙い話ですが「ヤクソク」終了を勝手にw
記念すべく一本投下させていただきます。
スターオニオンズ関連クエのネタバレがありますので、未了の方は以下あぼんを
お願いいたします。


68 :ヤクソク:05/09/07 17:24:42 ID:+Du7bsYi
―ヤクソク―


「だああああっ!」
 ダスクは目の前の敵を思い切りどつき倒すとその場にどっかりと腰を下ろした。
黒を基調とした装備品も宝珠を嵌め込んだ杖も既に砂まみれで、今更その量が
少しくらい増えたからといって気にはならない。
「くそめんどくせえ!なんだって俺がんな事しなきゃなんねーんだよ!」
 倒された蜘蛛の吐いた糸を身体にまとわりつかせたまま、ダスクは砂の中に倒
れこむ。身体の下で細かく真白い砂がさらさらと音を立てた。
 夜もなく昼もない海底洞窟。クフタルの洞門を呼ばれるそこは、入口の狭さとは
対照的なだだっ広い(そう、竜でさえねぐらとする事ができる程に)空間が広がっ
ている。中は意外なほどに明るく、様々なモンスターが徘徊している。そしてモン
スターがいる処には、必ず冒険者の姿が見られるのがヴァナディールという場
所だ。
「だーかーらー、普段と違う武器の練習したいんだってば。ダスクだって両手棍
の練習したいって言ってたじゃない?」
 その横で、レイシアが上目遣いにダスクを見た。彼女の方が身長が高いので、
実際には見下ろす格好になるのだが。
「裁縫の勉強用に蜘蛛の網も欲しいしー」
 そう嘯きながら倒したばかりの蜘蛛をひっくり返す。背中を確かめてため息を
一つ。それから腹に持っていた網の塊を手早く回収した。
「だったらもう大概集まったし、俺の手もタコでいっぱいだ」
「でもぉ……」
 銀の髪からはみ出たレイシアの耳がしょんぼりと垂れる。
「遠浅の苔、見つからないんだもん……」
 レイシアがいくつも理由を並べ立ててダスクを誘い、ウィンダスからはるばるや
ってきたのは、ここの蜘蛛がまれに身体につけているという珍しい苔を探す為だ
った。ある品物を作ってもらうのに必要だという。
「大体お前、遠浅の苔なんてもん使う合成品なんて聞いたことねーぞ。騙されて
んじゃねーのか?」
「そんなことないよ!だってチャママさん、昔は有名な冒険者だったって聞いたも
ん」

69 :ヤクソク:05/09/07 17:25:00 ID:+Du7bsYi
「いつの大昔だよ」
 レイシアは頬を膨らませてダスクを睨んだ。
「んな顔したって恐くねー……てっ、痛っ、やめろって、こら!」
 真っ赤な顔をしたレイシアが、手に持っていた両手棍でダスクをぽかぽかと殴
る。体格で劣るダスクは慌てて起き上がると逃げ出した。
「なんでそんなひどい事言うのぉ!馬鹿ぁ!」
 終にぐすぐすと泣き出したレイシアを見て、ダスクは天を仰いだ。これだから女
ってのは!
「大体なんでそんな必死なんだよ」
 大らかと言えば大らか、むしろいいかげんでアバウト(すぎる)青年は、彼女に
呼ばれたから来たのであって、何の為に欲しがっているのかまではまったく気に
していなかった。
「だって、うっ、えっ、ジョ、ジョーカーが」
「まーだあのガキんちょ共にかかずらってんのかお前は」
「だって最初に紹介してくれたのダスクでしょぉ!」
「知るかヴォケ」
 窮屈すぎるほど窮屈な家と国を投げ捨てるようにして逃げ出したレイシアにと
って、初めて足を踏み入れたウィンダスは、ちっちゃくて可愛い天使が一杯の緑
溢れる楽園にしか見えなかった。
 彼女が躊躇いもなくウィンダスを所属国として冒険者登録をした頃、(レイシ
ア言う所の)天使の役に立とうとして空回りばかりしていた(ダスク言う所の)
図体ばかりでかい頭の軽いガキを見て、港の倉庫裏にお仲間がいるぞと皮肉を
言ったのは、確かに彼ではあったのだが。
「俺は政府の暗部に首突っ込むのも、国の名士に嫌がらせを受けんのも、ガキ
の面倒見んのも嫌だからそいつらの話は聞かねえって言わなかったか」
 かつての手の院院長が作り出し、ホノイゴノイがその心臓部である魔道球に執
着し、スターオニオンズ団と称するタルタルの子供達が再起動させたあげくに隠
しているカーディアンなど、関ったら厄介でしかないとダスクは思っている。思っ
ているが何故か関る羽目になっているのはレイシアが一々ガキ共を真面目に相
手にするからだ。という事にしておく。
「だから言わなかったのにぃ……」
「だから俺を引っ張り込むなつーとんじゃ」
 そもそも見下ろされるのが嫌いな彼が、背の高いエルヴァーンの中でも更に大
柄な彼女と行を共にしている事自体が想定外で予想外で不本意極まりない事だ
ったのではあるが。

70 :ヤクソク:05/09/07 17:25:21 ID:+Du7bsYi
「じゃあいいもん」
 レイシアは涙目のまま立ち上がった。置いてあった荷物から乱暴に砂を叩き落
として背負い直した。
「ダスクは帰っていいよ、私一人でやるから」
 両手棍を握りしめたままでずんずんと歩き出した背中に向けて、ダスクが毒づく。
「聴覚遮断の魔法も唱えられないのに何ほざいてんだお前は」
「オイルあるもん」
「帰りどーすんだよ」
「歩いて帰る!」
 ムキになって大股に歩を進めるのに舌打ちし、ダスクは小走りに彼女を追った。
曲がり角に姿を消したのを見て、慌てて後に続く。
「ぶぎゃ」
 その途端、ダスクは目の前に立ち止まっていた鎧に衝突して砂の上に転がった。
 かなり間の抜けた体勢だったが、幸いにしてレイシアがそれを目にする事はな
かった。ダスクは反動をつけて立ち上がると、あたりを見渡してわざとらしく大
きなため息をついた。
「で、オイルがなんだって?」
 カサカサと音を立てながら、レイシアの周りを蜘蛛が囲みつつあった。一匹二
匹ならともかく、この数を2人で捌くのは無茶というより無謀に近い。その間も蜘
蛛は縄張りを侵す者への怒りで次々と集まってくる。
「ダスクぅぅ」
 両手棍を勇ましく構えながらも、レイシアは小さな声で背後の青年に助けを求
めた。
「助けて〜〜〜」
「今更声潜めてどーすんだダァホ」
 そう言いながらもダスクの手にも既に杖が構えられていた。身体を揺すりなが
ら今にも飛び掛ろうと迫ってくる蜘蛛たちに向けて闇色の宝珠が突きつけられる。
『闇よ来たれ、偽りの夜よ来たれ』
 ダスクは石の力を借りて眠りの呪文を完成させる。
『今は休みの時、安らぎの時、眠りの時』
 呪文に誘われて眠り込み動きを止めた蜘蛛たちを見て、レイシアは武器を収め
た。喜色も顕わに振り返る。

71 :ヤクソク:05/09/07 17:25:33 ID:+Du7bsYi
「すごいすごいすごーい」
「ふん」
 その賞賛をダスクは鼻で笑い飛ばした。エルヴァーンにしては素直すぎる彼女
の賞賛を真に受けていると、駆け出しの冒険者でも大魔道士の気分になれるに
違いない。
「いいからこいつらが起きる前に帰るぞ」
「ちょ、ちょっと待って」
 レイシアは脱出の呪文を唱えようとしているダスクを押し留めた。
「こんだけいっぱいいるんだから、一匹くらい……」
 音を立てないように触らないようにしながら、レイシアは蜘蛛の背中を一匹づ
つ確かめ始めた。
「あった!」
 一際大きな一匹の背中に、濃緑色の苔がうっすらと生えている。
「これ剥がしたら起きるよね」
「起きるだろうなあ」
「毟っちゃうから準備お願い!」
「へいへい」
 レイシアはそっと手を伸ばすと、張り付いていた苔を一気に音立てて剥がし取
った。痛みで眠りを覚まされた蜘蛛が目を覚まし、先ほどに倍する怒り様で襲い
掛かってくるが、今度はこちらも準備ができている。
「取れたか」
「取った!」
「ありがてえ、さっさと帰るぞ」
 レイシアは懐に苔を押し込むと、ナイト得意の片手剣と盾を構えた。それを鮮
やかに操って蜘蛛の攻撃を防ぐ。命のやり取りのくせにその動きはひどく滑らか
だ。どこか優雅にすら見えるそれを見る度に、ダスクはいつも密かな感嘆を覚える。
 一歩間違えば血まみれの舞踏を横目に見ながら、ダスクは脱出の呪文を唱え
始めた。

72 :ヤクソク:05/09/07 17:25:48 ID:+Du7bsYi
「うふふふふふ」
 ゴキゲンな顔のレイシアが、ステップを踏まんばかりにしながらウィンダスの
港区を歩いていた。鎧は付けず、軽装のダブレットに眼鏡をかけている。それで
も盾と剣だけはしっかりと身に着けているのは冒険者の性というものだ。
「ったく」
 それに半ば引きずられるように歩くダスクの方は、いつもと変わらない暗色の
装備を身に纏ったまま。
「何をそんなに入れ込んでんだかな」
「だって可愛いじゃないカーディアン」
「……お前眼鏡直した方がいいぞ」
 そうは言ってもダスクがカーディアンを醜いと思っているわけでもない。彼に
とってはあって当たり前の故郷の風景が、彼女には特別なものに見えるだけなの
だ。
「これでやっと外に行けるね」
 懐に収めた透明人間シールを服の上から押さえて、レイシアは満面の笑みを浮
かべた。
「お前それ犯罪なんだぞ、わかってんのか?」
「ダスクも共犯〜」
「だから一緒にすんなっつーの」
 彼女には息苦しい少女時代があったからか、誰が相手であっても閉じ込められ
縛り付けられたものに手を差し伸べずにはいられない。それを知っているから、
ダスクは渋々ながらも彼女の行動を止め様とはしないでいる。
「まあカーディアンもあんだけ居るんだしな、1人2人はおかしな奴も逃げ出す
奴も出たっておかしくないわな」
 半ば諦めの心境でダスクは倉庫の裏に忍び込むレイシアの姿を追った。


73 :ヤクソク:05/09/07 17:26:02 ID:+Du7bsYi
「こぉんにちわ」
 レイシアが手をあげて挨拶をすると、深刻な顔をしてたむろっていた子供達が
一斉にそちらを見上げた。やって来たのが顔なじみになったエルヴァーンの娘で
ある事を知ると、明るい顔になってその周りに集まってくる。
「冒険者さーん」
「こんにちわ、ピチチちゃん」
 レイシアは走ってきたタルタルの女児を軽々と抱え上げ、一際高い所に座って
いた少年に向けて透明人間シールを示した。
「ほら!チャママさんから貰ってきたよ!」
「やったあー!」
 子供達は口々に彼女を褒めちぎった。聞いている方も得意満面の笑顔だ。多分、
星の神子直々にお言葉を拝領してもここまで素直に喜ぶ事はないような気がする。
 正直、口では同類だのなんだのと毒づくダスクも、レイシアがここまで子供達
に溶け込んでいる事までの予想はつかなかった。
「まあ同レベルってこったな……」
 一緒になって騒ぐ姿に、後ろに立っていたダスクはひとり頷いた。それをコー
ラコロが見咎める。
「なんだお前?」
「お前に"お前"なんぞと言われる筋合いはないが……」
「お前じゃないぞ!オレっちは正義のスターオニオンズ団の団長コーロラコロ
だー!」
 コーロラコロの口上を半ば聞き流して、ダスクはレイシアを指差した。
「俺はこいつの保護者だな」
「ホゴシャ?」  
「保護者というのは、小さい子供の面倒を見る人の事です。お母さんとかお父さん
とか先生とか」
 眼鏡をかけたひとりが説明すると、レイシアに抱きかかえられていたピチチが
目を丸くする。
「冒険者さんはオトナでしょー?小さくないよー」
「脳味噌がちっちぇーんだよ」
 レイシアがダスクの言い草に抗議する前に、コーロラコロが素朴な疑問を口に
した。

74 :ヤクソク:05/09/07 17:26:17 ID:+Du7bsYi
「レイシアの方がお前よりずーっとオオキイぞ?」
 小さいとか可愛いとか言われるとキレる性質の黒魔道士は、コーロラコロに向
かってすかさず怒鳴り返した。
「てめーそっから降りて来い、教育しなおしてやる!」
「ダスクってば大人気ないなあ、もう」
「ガキの教育は大人の役目だ!」
 つい先程まで同レベルだと笑っていた中に入って、ダスクまでぎゃいぎゃいと
騒ぐ。
「やっぱり仲間に入って来たかったんじゃない〜」
「違うわー!」
 呑気に子供達に混ざっていた2人の冒険者はいきなり手で触れそうなほどの圧
力を背中に感じた。
「!?」
 怒気、殺気。一旦フィールドに出ればそこここで衝突する戦いの気配が、有り
得べからざる場所に膨れ上がった。
 レイシアはすぐさまピチチを下に降ろして剣の柄に手をかけた。ダスクは背負っ
ていた杖を構え直す。
 2人は子供達を背後に庇いながら振り向き、攻撃に備えて油断なく目を配る。
「な、なんだなんだ?」
「下がってろガキども」
 その勢いに気圧されかけたコーロラコロだったが、入口を指差して叫び声をあ
げた。
 入口から現れたのは3体のカーディアン。その手には小さなタルタルの少女が
ぶらさげられて、悲鳴をあげている。
 人間に危害を加えない。それは常時彼等を縛る基本命令のひとつだ。誰に命じ
られることも無く、それに縛られずに行動する事ができるのは。
「エースカーディアンですよ!」
「なんだお前ら!シャンルルを放せー!」 
 ダスク達の背後から、子供達が叫ぶ。
「やっと……見つけたぞ。タルタルとミスラよ、われらの王の命を返してもらお
う」

75 :ヤクソク:05/09/07 17:26:30 ID:+Du7bsYi
 立ちはだかるダスクとレイシアを無視して、エースカーディアン達は子供たち
に迫った。
「オレは、おまえらなんか悪いやつらなんか、怖くないぞ!」
「俺は恐ぇよ」
 その言葉にダスクが苦笑いを漏らす。真直ぐで真っ白な心はまた無知の裏返し
でもある。そう叫ぶ事ができるのは力の恐さをまだ知らないからだ。
 場数を踏んできた冒険者の2人には、カーディアンの強さが、そして人質と
なった少女だけでなくこの場に居る子供達全てが危ない事がはっきりと見て取る
事ができた。この2人でシャンルルを助け、全員を逃がす事が出来るかどうか。
 ダスクは、飛び出しかけたコーロラコロに向けて、呪文を唱えた。バインドの
呪文が少年の足をその場に縫いつける。
「ちくしょー!大人めヒキョーだぞー!」
 うんざりした顔で、ダスクがレイシアに呟いた。
「サイレスも入れとくかおい」
「やりすぎると警らの人が来ちゃうよ」
 本来、街中で過剰な魔法を唱える事は禁止されている。特にウィンダスでは魔
法を感知するカーディアンが周回しているので、何度も呪文を唱えるのはご法度
だ。少なくともシャンルルを解放させるまで、余計な騒ぎは起こせない。
「おい、エースカーディアン」
 ダスクは手から杖を離し、帽子を取って口元がはっきりと見えるように顔を晒
した。両手を広げて、敵意のないことを示す。
「お前さん達、魔道球を探してるんだろ」
「そうだ、冒険者。あれはおまえらには必要ないもの。おとなしく返さねば……」
 言いながらその一体は少女の身体を高く持ち上げた。その小さな身体を害する
のは、カーディアンの腕力で地面に叩きつけるだけで事足りる。
「そいつはもうこのガキどもの手元にはない」
 見えない冷や汗をかきながら、ダスクは淡々と話し続けた。少しでも隙を作ろ
うと、意図してわかりきった事を並べ立てる。
「そいつは最初ホルトトにあった。あんたらはそれに限らず魔道球にえらい執着
してるからな」
「そは我らの命」

76 :ヤクソク:05/09/07 17:26:42 ID:+Du7bsYi
カーディアンとは思えない流暢な話し方で、エースカーディアンの一体がそう
答えた。 
「ああ、そうらしいな。そん中でも重要なそいつをナナー・ミーゴが見つけて盗
んでいった、だろ?」
「かのミスラは我らの敵だ」
 抑揚はまったくないのに、その言葉に込められた憎しみが感じられた。手の院
の院長が見たら、それを悲しんだかもしれない。だが、機械は憎しみを知らない
代わりに愛情も感じない。これほどに何かに憎しみを表すのは、何かへの愛情の
裏返しなのだろう。彼らは、カーディアン達は、作り手の思いを越えた者になり
始めたのかもしれない。
「まさかお前さん達、ナナー・ミーゴがそいつを欲しがってたなんて思わないよ
な?」
 そんな事を頭の隅で思いながら、ダスクは続ける。小さな隙でいい、後は相棒
の仕事だ。
「ありゃ金になる事はなんでもするが、ならない事には指一本も動かさない盗賊
様だぜ?」
「誰が探そうと我らには関りなき事」
「我らがなすべきは我らの手に王の命を取り戻す事のみ」
 手をひらひらと動かして、ダスクは嘲るように言葉を繋ぐ。
「そいつを欲しがってたのはホノイゴノイっておっさんだ。大枚叩いて探させて
た」
「……そやつが王の命を持つと言うか」
 食いついてくれる事を祈りながら、ダスクは否定でも肯定でもない、曖昧な
笑いを見せた。
「や、ま、可能性としてね」
「我らを謀るか、タルタルよ」
「王の命、あの者の手には落ちておらぬ」
 エースカーディアン達から立ち上るのは明らかな怒り。怒りは拙攻を呼び、
拙攻は隙に繋がる。
「あー、ご存知だったのね」
「愚かだ……。なぜに、人はこうも愚かなのか……」
「では、見せしめに……」

77 :ヤクソク:05/09/07 17:27:32 ID:+Du7bsYi
 ぶん、と唸りを上げてカーディアンの腕が振り上げられた。甲高い悲鳴が辺り
に響き渡る。
「きゃぁぁああぁぁ……」
 刹那。
 静かに、音一つ立てずにじりじりと体を沈めていたレイシアが剣を抜きざまそ
れに迫ったのと、ダスクがスタンの呪文を投げつけたのは同時だった。
「…………ぁぁああぁぁ!!!!」
 叫び声が終わる前に、カーディアンの腕と少女の身体が宙に舞う。
 エースカーディアン達は既に人質には目もくれなかった。盾を構え直すレイシ
アに一気に殺到し、ダスクはその隙に少女へと手を伸ばした。
 しかし、その身体を受け止めたのはダスクではなく、更に現れたカーディアン
だった。
「ジョーカー!」
「……止めるのだ」
 その静かな声に、得物を振り上げていたカーディアン達はぴたりと動きを止め
た。
「この子らは、私を蘇らせてくれたのだ」
 エースカーディアン達はジョーカーを王と呼び、その帰還に喜びの声をあげた。
「行くとしよう。ここは私たちのいる場所ではない」
 カーディアンの王は臣下に向かってそう告げた。
「……じょ、ジョーカー……」
 子供達が力なくその名前を呼ぶ。

78 :ヤクソク:05/09/07 17:27:41 ID:+Du7bsYi
「だめよ!」
 行きかけたカーディアン達を止めたのは、レイシアの声だった。
「人は誰だって居たい人と一緒に居ていいし、したい事していいんだから!」
 カーディアンの腕を刎ね飛ばしたその殺気はまったくなりをひそめ、そこには
誰かの望みに一生懸命な姿だけがあった。
「我らは人間ではない、エルヴァーンの娘」
 そう言ったジョーカーはまるで笑っているように見えると、誰もが思った。
「だがそう言ってくれた者がいた事を私は忘れない」
「お化けさん行っちゃやだあ!」
 背後で震えていた子供達が一斉に飛び出してきた。ジョーカーの体にしがみつき、
堰を切ったように口々に引き止める。
「仲間じゃないよ!ジョーカーの仲間は、オレたちだよ!そんなヤツラについてっ
ちゃだめだ!」
「ありがとう、友よ」
 その身体をひとりひとりそっと退けて、ジョーカーは車輪を軋ませながら後ろに
下がった。
「そう、私は、スターオニオンズ団の一員。『いつか再び、君達のそばに戻る』と
約束する」
「『約束は絶対に破らない』。スターオニオンズ団の鉄則に加えるのだ」
「加えるぞ! だから、ぜったい、破っちゃだめなんだぞ! ヤクソクなんだからな!」
 3体のエースカーディアンを従えて去っていくジョーカーに、子供達はぼろぼろ
と涙を流しながらいつまでも手を振りつづけた。


79 :ヤクソク:05/09/07 17:28:06 ID:+Du7bsYi
「ふぇええええ」
「いつまで泣いてんだよおまーは」
「だっ、じょ、ぅぇえええええん」
「何語だよ」
 レイシアとダスクは子供達を置いて表通りに戻った。
 海沿いの道にはいつも強い潮風が吹いている。その風も次々零れる涙を乾かす役に
は立たないようだった。
 大泣きするエルヴァーンの美女を連れて苦虫噛み潰したような顔のタルタルという
のは目立つ事この上なく。ダスクは知り合いに会わない事を心の底から祈りつつ深く
俯いた。
 人目を避けた建物の上で、ダスクは帽子を顔の上に載せてごろりと寝転がる。しば
らくしゃくりあげていたレイシアもどうにか落ち着いて、その横に座った。
 まだ目は赤いし肌は紅潮したままだし、なにしろ睫やら頬やらに白い粉が噴いてい
て、明らかに泣いていましたという顔ではあるが。

80 :ヤクソク:05/09/07 17:28:18 ID:+Du7bsYi
 吹く風も凪ぐ海もいつもとまったく変わらない表情で、世界の片隅で何かの運命が
動いた事など知らぬ気に人々が忙しく立ち動いている。
 冒険者としていくつもの"瞬間"に立ち会って来たのは幸運かもしれないが、ではそ
れに成した役目はと問われた時に、どんな答えも返せずにいる。だからといってそれ
に意味がないとも思わないが。
 しばらく銀の髪を風に任せて、ぼんやりと海の向こうを眺めていたレイシアがぽつ
りと呟いた。
「……帰ってくるよね」
 2人とも冒険者として随分な時間を過ごしてきた。
 破れた誓いも守れなかった約束も、心の中にはいくつも転がっている。
「約束したんだろ」
「……うん」
 彼らのヤクソクが守られるかどうか、それは誰にもわからない。
 それでも。
 誓ったその言葉のどこにも嘘は無いから。

 ……いつか、こんな噂が聞こえて来ないだろうか?タルタルやミスラ達と世界を駆
け巡る、優しい心を持った機械仕掛けの冒険者の噂が。

「あのね、ダスクもスターオニオンズ団に入れてくれるって」
 気を取り直したように、レイシアはダスクに向き直った。
「あぁん?」
 うとうととしかけていたダスクが、帽子の端を上げて彼女を見上げる。
「皆いっつもあそこにいるから、また遊びに行こうね」
「一緒にすんな!俺は行かねえ!大体あのガキは箱の上から降りて来ねーのが気に食
わん!」
「降りてきたってあんまり身長変わんないじゃ……」
「違うわヴォケェ!」
  


〜終〜

81 :(・ω・):05/09/07 18:19:08 ID:u7AAvvFl
ネタバレじゃね?

82 :(・ω・):05/09/07 18:19:50 ID:u7AAvvFl
あ、ちゃんと断ってるか。スマンコ

83 :(・ω・):05/09/07 18:41:47 ID:+o2HTZe7
ちょっとオニオンズクエやってくる!

84 :アイテム物語orPPの作者 :05/09/08 01:45:06 ID:w41iTMHw
>>54さん
ありがとうございます。
PPもゆるゆると進めておりますので、そのうちまた、
upの報告ができるかと思います。

>>55さん
そうですね。
何故アンティカが持っているかという点。
また旅王に仕えた王立騎士の佩剣である、という公式資料の解説文。
そしてラバオがサンド競売と繋がっている理由。
それぞれを説明できればと考えました。

>>57さん
フォン、なかなかの人気のようで。
黙って決意し、粛々と実行する。
そういう人物はステキですね。

>>Wikiにupしてくださった方
とても助かりました、ありがとうございます。
先程、少し空行や段などを調整いたしました。

それでは、また。

85 :(・ω・):05/09/08 12:52:10 ID:30R5Sy4t
オニオンズクエはなぁ…おいらは根っからのウィン人で、召喚なんだが。
このクエ全部終わった時は、心底ウィンダスで始めてよかったと思ったもんだ。
設定とか物語に目覚めたのもこのクエのおかげだなぁ。
明るい雰囲気のウィンダスクエより、真面目一辺倒のサンドクエの方が笑えるのは何故だろうw

86 :(・ω・):05/09/08 13:50:01 ID:U9ULZds8
初期はそれぞれの国で特徴が出るようにシナリオ担当者が国別だったんだっけ?

87 :(・ω・):05/09/08 15:15:33 ID:bCCxr7mm
>>66
いえ、表現方法としてどう表現するかの差ですので、>>55氏の意見ももっともだと
思いますし、物足りないと思ってたのも同じです。
次回作を期待しているのも同じ!かと(゚∀゚)

今回のヴァナディール紀行も良かった!(゚∀゚)
何というか、最後に勇気がでる終わり方が良イイネ。

ヤクソクはネタバレだけど、いい感じだった。
オリジナルも読んでみたかったり。



88 :(・ω・):05/09/09 00:07:26 ID:EikEN2eq
>>84
女王蟻守るためだと思ってたら公式でそんな設定あったとは…


89 :(・ω・):05/09/09 09:00:18 ID:qYFDuGsW
>>88
 公式設定資料集 Life in Vana'dielの109ページ参照。
 なお、物語最後のアイテム説明は、作者の付け足しがあります。
 でも、本当に一文が彫り込まれてそうだ。

 

90 :白き〜作者 :05/09/13 02:17:45 ID:Vns3bHP0
ほい、お久しぶりでしたー!

また新たな作家さんが増えていらっしゃる!
あとアイテム物語はPP書いてる人ですな。相変わらず読みやすくて
ハマれます。素敵。
俺もこういう歴史の埋め埋めって大好きですなあ(*´∀`)

白き〜も新作UPしてきました。お暇な方はどうか遊びに来てください。
http://www.miracle-key.gr.jp/white/

では、また!これから寒くなります!皆様風邪にはどうかお気をつけて!

91 :(・ω・):05/09/13 14:00:54 ID:wC7o+Or8
遠距離攻撃では詠唱は止められませんよ

92 :(・ω・):05/09/13 18:31:19 ID:alOUvr6k
☆それゆけWR☆


あぁ、世界なんて燃えてしまえばいいのに。

悲しみがよぎる雲、空はまだ青い。
夕暮れに死のうと剣を取った。
それまでは、死ぬつもりは無い。

〜真っ白な魔法使い〜

それは、偶然だった。

「すいません、あぶないところを」
舌足らずに、タルタルの女が礼を言った。
多種族の年齢は分かりづらいが、
彼女はまだ若いのかも知れないと感じた。
「どうってことないよ。これでも僕、
 冒険者なんだから」
彼女が、俗に亀と呼ばれるクゥダフと言う獣人に
襲われていたところを、
僕が助けたのだ。
「あら、私も冒険者なんですよ」
そう言って、とても冒険者とは思えない
屈託の無い笑顔を見せてくれた。
ほんとに冒険者なのだろうか。
不思議に思い、腰に眼をやると、
やはりちゃんと武器はくくりつけてある。
重そうなハンマー。
冒険者なのだ。彼女も。
「なんでこんなところに?」
僕が尋ねると、彼女は笑顔のまま答えた。
「ちょっと人助けにベドーまで」
ちょっと驚いた。
いつも曇り空が憂鬱に僕らを
見下ろす湿地帯を哨戒する亀の雑魚兵にさえ
四苦八苦している冒険者が、
果たしてどのようにベドーで人助けをするのだろうか。
亀がよく、人を拉致するという話は聞いたことがある。
だけど彼女が彼らのところまで行き着き、
そして安全なところまで護衛をすることができるのだろうか。
見たところ彼女は教会の僧侶のような格好をしていた。
白魔法を得意とする魔道士がよく身につけている装備だ。
体格的に脆弱なタルタルの魔道士が?一人で?無理だろう。
「ええと、アナタは何故こんなところに?」
彼女が尋ねてきた。
ハッとして、組んでいた腕をほどいて答えた。
「・・・なんとなく?
 そう、なんとなく。ただブラブラ」
「へぇー」
とっても嬉しそうな笑顔だった。
口元が声に合わせて上がっていくのが分かった。
「それじゃあ、ちょっとお手伝いしてもらいたいな」
まったく、まったく屈託の無い、
むしろ、それが当たり前の様に言った。

93 :(・ω・):05/09/13 18:31:50 ID:alOUvr6k
なぜか僕はベドーにいた。
不思議だった。
僕は頼まれたってすぐに二つ返事で返せるほどお人よしじゃない。
そりゃあ、グラマラスでセクスィーでお姉さんな冒険者に
頼まれたならともかく、
こんなジャリに縋られたって着いて行くなんて考えられない。
あれだろうか、死後の世界なんて信じていない僕でも、
せめて死ぬ前に一度くらいは人助けをしようと思ったのだろうか。
不思議と僕は、その小さい背中の後を着いて行く。
まるでアヒルの後に着いて行く雛みたいに。

死神に導かれる、哀れな魂のように。

続くのだ

94 :(・ω・):05/09/13 18:34:38 ID:alOUvr6k
長かったので二つに分けようとおもったら、
なんか二話目のほうが著しく長くなってしまいました。
もしかすると3つに分けるやもしれませぬ。(知るか

95 :ヴァナデール紀行:05/09/14 16:34:20 ID:pmO085Lr
アルテパ砂漠

昼間は熱砂の蜃気楼に揺れるアルテパ砂漠も夕暮れ時には気温が下がってくる。
そして、その頃になってくると一夜を明かすために
砂漠のオアシスには人が集まってくる。
ルークとミストが早めの夕食をダルメルステーキで済ませて
火の傍で一息ついていると、ノソリと一人のガルカがオアシスに来た。
ボロボロの革の衣服を身にまとい、眼光だけは異様に鋭いガルカだった。
静かに砂の上に座って手馴れたしぐさで、料理をはじめる。
が、ガルカの視線がミストに釘付けだった。
ミストは軽くガルカに会釈する。
ガルカは視線を外すでも会釈を返すでもなく、ただミストをみていた。
「なんか、ついてる?ルーク」
自分の顔にふれ、その視線の熱さに困ったようにミストは問う。
「いや。気にするな。ミスト。ガルカは俺には何考えてんのかわかんねぇ」
ルークの言葉にミストは納得行かないような顔をしつつ頷いた。

が。
その視線の強さは半端ではなく…
夕日の中でミストはきつく眉を寄せた。
「知り合い、かなぁ?」
「記憶にない顔、だがな」
「居心地わるいな。ちょっと話してこようか」
ミストが立ち上がった瞬間ルークがとがめる。
「いいよ。俺が話してくる」
「ルークが行ったら話し合いじゃなくなっちゃうよ」
仕方ない。
肩をすくめて二人は立ち上がった。

96 :ヴァナデール紀行:05/09/14 16:36:15 ID:pmO085Lr
「こんにちは」
ミストは愛想よくガルカに話し掛ける。
ガルカは小さく口を開きミストを見あげた。
「あぁ……―」
「あの、何かついていますか?それともどこかで…」
ミストの言葉をぶった切ってルークは口火を切った。
「人のツレなに、じろじろみてやがんだよ!」
「ルーク・・・・」
ミストは、はじめから喧嘩腰のルークに小さく吐息をついた。
「あぁ……その。みてたら迷惑か?」
重く深い声で問うガルカにルークの中でブチン…と音がした。
「迷惑だよ、理由もなく人の顔じろじろみんじゃねぇよっ!」
「理由は、あるんだ」
ガルカは座ったまま、ミストを見あげる。
その瞳はまっすぐで透きとおっていた。
「どんな?やっぱりどこかでお会いしていましたか?」
ミストの言葉にガルカは大きな手をぬっと伸ばしミストの頬に触れた。
「…―知ってる奴に、にているんだ。お前さん」
ミストは困ったように苦笑する。
「え…と…」
「だったら、そいつに会いに行きゃいいだろうっ!
人のツレなめまわすようにみてんじゃねぇよっ!!」
ルークの言葉にガルカは静かな声でいった。
「逢いにいければ良いんだが…あいつはもうアルタナの御許にいるからな…」
その言葉にミストとルークは一瞬息を飲んだ。
「それは…―」
「っ…」
「あんた。そっくりだ。あいつが帰ってきたみたいだ。
声も似てるよ」
「そう…でしたか」
ミストは困ったように苦笑する。
ガルカはミストの顔をじっと見ながら眼を細める。
「気持ち悪いかもしれないが、一夜だけあんた見てていいかい?」
ガルカの言葉にミストは微笑する。
「こんな顔でよろしければ。それより、こちらどうぞ。
よければ一緒に夜を過ごしませんか?」
ミストの言葉にガルカは一瞬の迷いの後のそりと立ち上がった。
「いいのか?」
ガルカの問いに、ルークは小さく頷く。


97 :ヴァナデール紀行:05/09/14 16:38:17 ID:pmO085Lr
そして、火の傍に三人が集った。
ルークがグラスを用意しロランベリーワインをガルカのコップにそそぐ。
「すまないな…」
ガルカは言って、ワインに口をつけた。

夕日が音もなく落ちて、満天の星空が広がる。
気温は冷えるが地面は太陽のぬくもりを残していた。
「旅、してるのですか?」
ミストの会話の糸口に口の重いガルカはそれでもアルコールのせいか
ぽつぽつと口を開いた。
「旅…か?」
「旅じゃないのか?」
「わからない。俺には帰る場所もないし目的地もない。
こういうのは旅というのかな」
ガルカの言葉にルークは肩をすくめる。
「じゃなんで、こんな荒野にいるんだ?
理由なくこんなとこさまようのか」
「理由。あんたらはあるのか?」
ガルカの視線にミストは胸が突かれたように押し黙った。
ルークは口を開く。
「こいつは釣り。俺は合成素材を集めるためにあちこち旅をしている」
「なるほど…立派な理由だ」
「お前さんは?釣りとかなにか…」
ガルカはゆっくり赤いワインを口に含み星空を見上げて呟いた。
「街にいると、くるしくてな。窮屈でかなわん。
それに、こうやってあちこちを歩いているとあいつの空気を感じるんだ。
あいつにはもうあえないってわかっているんだが…。
あいつと旅したところは、あいつが今にも出てきそうだし
あいつが旅したこともないところは、あいつに見せてやりたいと思う
――あちこち歩き回るのにも、やはり理由が必要なのか…」
ガルカは重く吐息をついた。
「そんな事ねぇけど…親友、だったんだな」
ルークの言葉にガルカは小さく笑う。
「あいつとの関係を言葉にしたことはないがな。
友達なのか、親友なのか俺にもわからん。
ただ、あいつがいると楽しかった。世界が輝いて見えた。
あいつの隣にいれば何でもできると思っていた。
まさか、あいつが戦って…俺をかばって死ぬなんて…―
カケラも思ったことはなかった。
今でも信じられない」
ミストを優しい瞳で見つめるガルカ。
その視線の先には、ミストではなく「あいつ」がいるのだろう。
ミストは目を伏せた。
そして、その瞬間涙があふれた。

98 :ヴァナデール紀行:05/09/14 16:40:37 ID:pmO085Lr
「俺、なんかまずい事、いったか?」
ガルカはちょっと戸惑ったように問う。
ミストは首を横にふった。
「ううん。ごめん。違うんだ。
ただ。失うってカケラも思ったことがない仲間を失った事があって
思い出して…、ごめん」
ミストが歯を食いしばって俯く。
涙がとめどなくあふれていた。
「なんで、人は死ぬんだろうな―」
ルークは火にまきをくべて独り言のように呟いた。
「ガルカのように、転生してくるなら…
俺はあいつを捜すのに、あいつが帰ってくるのをずっと待つのに。
いくらでも、まってやるのに…。
ガルカ以外の種族は、あまりにも儚い。
みんなが俺より先に逝く…―」
ガルカの呟きにミストは掌で自分の涙をふいた。
「どんなに泣いても、叫んでも―戻ってきてくれないんだよね。
なんで、帰ってきてくれないんだろう…
まっているのに…こんなに待っているのに…―」
ガルカの大きな手が、ミストの頭を乱暴に撫でる。
「泣かないでくれ。
あんたが泣くと、あいつが泣いてるような気がしてならん。
あんたは、今夜は笑ってくれ…」
ガルカの言葉にミストは涙をふき微苦笑する。
「戦えば怪我をするかもしれない。死ぬかもしれない。
戦闘はいつだって死と隣り合わせだ。
すごく当たり前の事なのに、どうして戦いに明け暮れていると
そんな大事な事を忘れちゃうんだろうね」
ミストの言葉にルークは肩をすくめた。
「もう、寝るか」
小さく呟く。
ミストとルークが横になり、ガルカはミストをやわらかな眼差しで見つめている。
ガルカは心の中で語りかけられなかったことを、語り掛けたかった事を
ミストを通して語りかけているのだろう。
夜空に輝く星たちの無言の瞬き。
そして、白銀の月が夜の船のように星の海を渡ってゆく。
ミストは目を閉じる。

99 :ヴァナデール紀行:05/09/14 16:42:43 ID:pmO085Lr
ガルカの気持ちがわかる気がした。
「あいつ」はもういない。なのに。
それでもガルカは「あいつ」を捜している。
捜しながら、ヴァナデールを旅している。
捜さずにはいられない思い。
自分の命より大切だと思ってた人を失ってなお、生き残っている自分。
どうして?!
何度問うても答えなんかないのに、虚空に叫びつづけてしまう。
魂の一番大事なところを抉り取られた、痛み。
死。
冒険者と切り離す事が出来ないものでありながら、
冒険者はいつだって自分だけは死に飲み込まれないと思っている。

グスタベルクでであった、親父のように。
人は、生きることは止められない。
自分らしく、自分の望む通り生きることは止められない。
たとえその先に死がまっているとしても、回避して死んだように生きることは出来ない。
いま、彼のことがミストの脳裏に鮮明に思い出された。

時は止まらない。
止まらない時を、みな進んでいる。
ミストにもルークにも、そしてグスタベルグの親父にも
いつかは等しく死は訪れる…。

ガルカが低い声で、詩を口ずさむ。
ミストはゆるやかに眠りにひかれていった。
死者の魂が安からんことを祈りながら。


追記
ガルカは翌朝、ミストに手を差し伸べた。
「ありがとう。あいつと語り合えた気がするよ」
ガルカの言葉にミストは首を横に振り、握手をしてはにかむ。
「いえ。お元気で」
去り際にルークが問う。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
ガルカは振り返る。
「お前の親友って、どんな奴だった?」
ガルカはミストをみて言った。
「優しく誇り高く美しいエルヴァーンの女性騎士だった」
言って、ガルカは大きな背をゆらしアルテパ砂漠の波に消えた。
「女騎士…――僕、―――女顔、か…な?」
ミストの驚きの言葉にルークはちょっと笑って肩をすくめた。
熱砂に空気が揺らぐ。
真っ青い空に、灼熱の太陽がやけにまぶしかった。

                END


100 :ヴァナデール紀行:05/09/14 16:52:16 ID:pmO085Lr
生と死は冒険者から切り離せないものなので
おりにつけ、書いてゆけたらいいなとおもいます。

新しい方もいつもの方も、いろいろなお話が読めるのは嬉しいです。
応援しております。楽しみをありがとうございます。
お声くださる皆様ありがとうございます。
今はそんな戦いをあまりしなくなってしまいましたが
心意気、気持ちのよい言葉です。
スレを守ってくださる方々に感謝を。

                  N



101 :Scrapper:05/09/14 22:02:53 ID:U7R+vZ75
毎度ありがとうございます。
忙しさにかまけてしまい大幅に遅れてしまいましたが、続きをアップしました。
次回の最終回、このまま書き上げれればいいのですが…
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ango/5451/

ゲーム…というかサーバ中でのNPCとPCの関係ってなんなんでしょうね?
ただシナリオに沿って動くNPCと、自由に動きまわりNPCを変える力を持つPC。
今回の話、正直こんなもの書いちゃってよかったんだろうかと悩みましたけど、
まぁこれがScrapperという話だってことで、自分を納得させました。

それでは読者の皆様方も作者の皆様方も頑張ってくださいね。


102 :(・ω・):05/09/15 02:36:18 ID:Hf/YIFL3
みつめるネタだと思ったw

103 :(・ω・):05/09/15 02:57:38 ID:Hf/YIFL3
あんこくw

104 :(・ω・):05/09/15 04:39:05 ID:F4bqD/4A
>91
そういうこと言わずに黙って読もうぜ。
FFXIの世界設定を使った創作小説なんだから、
ゲームの中のバトルなんかの設定に細かくケチつけたってしょうがないだろ。
もっと広い心で楽しもうぜ、こういうのはさ。

105 :(・ω・):05/09/15 16:46:07 ID:yd1vPWXR
☆それゆけWR☆


僕は救われる。
それが結論だ。

彼女が助けるヒトは、僕だったのだ。

〜夕暮れの夕焼け〜

「そういえばお名前は?私はジャムム。
 みんなジャムって呼ぶけど、好きに呼んでね」
「僕はイム。ひんがしの国出身の友達は、
 ホトケ様ホトケ様って拝んでからかうけど、
 未だに意味、分からないんだ」
「奇特なお友達ね、イムさん」
ぼくは「うん」と頷いて、久しぶりに笑った。
彼はもう、僕の友達じゃないから。

ベドーを護る亀たちは、
足音を消すスニークという魔法を掛けた
僕たちに気づくことも無く、平和な見張りを堪能していた。
ちょっと前に雨が降ったのか、
抜かるんだ地面の続く溝の様な
迷路の様な道をしばらく進むと、
洞窟が口をあけているのが見えた。
中に入ると、そこには侵入者対策の罠がしかけてあった。
近づく女神の子等を呪う恐ろしい罠だ。
だけど、ジャムが呪いを解く白魔法を習得していた為、
そんな罠、気にしないで突っ走った。
ちょっとゾクッとして体が重くなったけど、
亀たちが居ないところで呪いを解いてもらうと、
いつもの様に動けるようになった。
「便利だね」
と、お礼の代わりに言うと、
ジャムは当たり前の様に微笑んだ。

106 :(・ω・):05/09/15 16:46:39 ID:yd1vPWXR
幾つかの呪いの罠を超え、
僕とジャムは時に励ましあい(嘘)
時に助け合い(嘘)ながら、
ベドーの最深部へとたどり着いた。
亀たちの王がいると言われる部屋へ続く通路に来たときだ。
さすがに奥からは強い殺気を感じ、
これ以上は2人で進むのは危険だと思った。
「これ以上は・・・」
そこまで言いかけると、
暗い通路の何処からか、呻き声が聞こえた。
僕とジャムは立ち止まり、あたりを見回してみる。
しかし、僕たちに向けられた殺気は無かった。
「ねえ、ジャム。この呻き・・・」
僕の問いを全て聞く前に、ジャムは通路の奥へと歩いていった。
暗がりの中、その小さな背中を見失わないよう、
僕も後から着いて行く。
「あ、いた」
ジャムの短い声が聞こえた。
ジャムの先へと視線を送る。
そこには・・・。
「か、カンヌキ?」
懐かしい名前を、僕は口にしていた。
僕をホトケと呼ぶ奇特な友人が、そこにいた。
あたりに血のたまりを作り、荒い息を上げながら、
それでも折れた刀を放さず、強く強く握って、
通路の壁にもたれて座っていた。
「み、みんな・・に、にげ、にげ・・ろ」
意識が混濁している様だ。
僕やジャムを、人としか認識していないような虚ろな目をしていた。
僕は、自動的にカンヌキに走りより、抱きしめた。
「カンヌキ!カンヌキ!どうして!!」

ぜぇ・・・

ぜぇ・・・

カンヌキの荒く、血の匂いがする息が胸にかかる。
「・・・げ、幻想・・?なぜ・・・ほとけ、
 迎えか?冗・・・談になら・・ぬ」
「ごめんよ!ごめん!!」
あのとき言えなかった言葉が、
流れなかった涙が溢れ出した。
言いたくても、僕は逃げ続け、今日死ぬつもりだったのだ。
永遠に言えなくなる前に、僕は彼に、彼らに言うことができた。
「いまご・・・ぜぇ・・・いまごろか・・・
 併し・・・大丈夫・・・全部、
 全部だ・・・ぜぇ・・・」
笑った。力なく頬を吊り上げ、カンヌキは笑った。
僕は、ただつぶやくことしかできなかった。
「ごめん・・・ごめん」

ぜぇ・・・

・・・・・。

カンヌキの息が、止まった。

力なく、カンヌキは僕にもたれかかる。

107 :(・ω・):05/09/15 16:47:09 ID:yd1vPWXR
「カンヌキ?」
「どいて、手当てするから」
ジャムが静かにいった。
やさしくない声だったけど、今の僕には心地よかった。
カンヌキを横に寝かせ、僕は立ち上がって涙を裾でぬぐった。
そして、ジャムが蘇生の為の長い呪文を唱え始めたその時だ。
「ぐるるぅぅぅ・・・」
聞きなれた亀の威嚇が狭い洞窟の中を通り抜けていく。
闇の先に、光る幾つもの眼があった。
僕は静かに剣を抜く。
魔法のセンスが全く無く、使える魔法はマッチ程度の火をつけたり、
カップ一杯の水を精製する程度だ。
しかし、そのかわり、魔法を習得するための時間を、
全て剣技を磨くために使うことができたのだ。
片手用の剣だったけど、
盾を持ってきていなかったので、その柄を両手で握る。
「ジャム、頼むよ。カンヌキのこと」
返事は無い。
ただ、蘇生の為の呪文が続いていた。
僕はそれに安心して、足を踏み出した。
夕焼けは、まだだ。
それまで、死ぬつもりはない。

気が付いた時、仰向けになった僕の顔を
ジャムとカンヌキが覗き込んでいた。
「大丈夫?」
ジャムがいつもの様に、無垢に笑う。
「相変わらず頑丈な奴だな。ほとけ」
「カンヌキィ・・・」
涙が出た。
「ふん、男が泣くな」
そう言って、手を差し伸べ、
僕が握り返すと勢いよく起き上がらせてくれた。
立って見て気づいたけど、
僕の鎧はボロボロに崩れ、服もあちこちが敗れていた。
「うわっボッロボロ」
「まあ、あれだけボコボコにされればね」
ジャムが笑って言った。
不思議と痛みは感じなかった。
きっと、ジャムが癒してくれたのだろう。
高地の草原に聳えるデム岩の麓で輝くクリスタルの前、
夕日のオレンジ色の光の中で、
僕は涙を潤ませて笑っていた。

終わりだっち

108 :(・ω・):05/09/15 16:50:24 ID:yd1vPWXR
このくらいの長さだったら、3つに分けるどころか
一回で乗せてしまっても良かった様にも思える今日この頃でした。
このまえレイズもらえたんですよ。
とても嬉しかったです。

109 :(・ω・):05/09/15 21:33:53 ID:+PlJPDPQ
>>104
俺はゲームの仕様にうまいこと理屈付けて小説に生かしてくれるとニヤリって
感じだけどなぁ。
手裏剣じゃなくて呪縛の術とかで麻痺らせるので良かったんじゃないかな。
まぁこれも確実じゃないけどさ。

110 :みずうみのひと :05/09/16 00:41:41 ID:1+praYmr
前スレに梅短編書いてて途中で512kオーバー食らいましたので続きをこちらにupします。
変な形での梅短編になってごめんなさい。
なお、この書き込みが終わったら倉庫格納依頼に行ってきます。

前半
http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/ff11/1105231828/559-563
後半


111 :みずうみのひと 6/6:05/09/16 00:42:06 ID:1+praYmr
実際知り合いに一人いる。料理に命をかけている冒険者兼調理人というやつが。
遊びに行くと山ほどの手料理を食わせてくれるのは良いのだが、奴の見た目を考え
るといつも不思議な気分になってしまう。
きっと少年が今感じているのは、同じような気持ちだろう。
小難しい顔をして首をひねる少年。
だが、鍋から香り始めた良い匂いに、頬が少し緩んでいるのを私は見逃さなかった。
「さて、これで塩で調整かな」
渡された塩を、さっと振る。
「わぁ」
今泣いたカラスがもう笑った。
まさにそんな感じだ。
「ついでにフナも焼こう。普段は岩塩だが、その塩を使って食べてみるのも良いかもな」
鍋の中身を見る少年があまりにも嬉しそうだったので、思わずそんなことを言っていた。
その後の少年の顔をなんと表現したら良いのか。
「!はい!」

単純かもしれないけれど、本当に幸せそうな顔をしている少年を、羨ましく思った。

「っっおいしい!!!」
心の底から幸せそうな顔で叫ぶ少年。
確かに美味しいとは思うが、ここまでされるとちょっとびっくりする。
「確かに美味だな」
「なんでそんなにテンション低いんですか?」
すねたように言う。テンション低いと言われてもな。
「性格だろう。私に言わせれば何でそんなにテンション高いんだ?だぞ」
「むぅ」
少年は少し考えた様だが、何かを思いついたらしく顔を輝かせてこう言った。
「性格ですよ!ご飯は楽しくたべなきゃ勿体ないじゃないですか」
今度はこちらがきょとんとする番だった。
少年の言ったことを考える。
美味しく頂かなきゃと、という話は聞いたことが有るが、楽しくということは
考えたことが無かった。
だが、確かにそうだ。
せっかく美味しい食事なんだから、楽しく頂いても罰は当たらないだろう。

それに……、何となくだが、こんなに食事が楽しく、美味しいのは少年が一緒に
いるからだろうという気がする。
本当に何となくだけれど。

112 :みずうみのひと 7/6:05/09/16 00:42:29 ID:1+praYmr
少年と自分。
関係はと聞かれれば、「ほぼ通りすがり」になるだろう。
私は少年の素性をおそらく初心者の冒険者だろうってことしか知らないし、少年は
私のことをいつも湖で釣りしている風変わりな人としか認識していないだろう。
けれど、こんな風に楽しい食事の時間を共有することが出来る。

昔の仲間に何が楽しいんだって、聞かれたな。
今ならすぐに答えられそうだ。

だって、ほら、悪くないだろう?
こんな楽しみがあるんだから。

<fin>

113 :みずうみのひと :05/09/16 00:43:05 ID:1+praYmr
さらに分割ミスりました。
お騒がせしてゴメンナサイ。
精進します……。
では、倉庫格納依頼に行ってきます。

114 :(・ω・):05/09/16 03:06:37 ID:y7dckBvN
前スレまだ使ってたのかよw

115 :(・ω・):05/09/16 13:18:54 ID:rdXZPD8q
白き〜様、今回も楽しく読ませていただきました〜!
毎回ですが、早く続きが読みたいです(`・ω・´)

スクラッパー様来てくれた〜ヽ(´ー`)ノ
でもなぜかやけに重いし、文字のほとんどが□になってて見れない(´・ω・`)
なんでなんだぁ・・・

みずうみのひと様、こういう何気ないヒトコマの話大好きです。また読みたいです〜。

ヴァナ紀行様、相変わらず読ませ上手ですねぇ。次回はラバオか流砂洞かな??
楽しみにしています。

書き手の皆様、まだまだ暑い日が続いてますが、お体に気を付けて下さい。

116 :(・ω・):05/09/16 14:36:09 ID:UxhXa1cO
>>115
エンコードでもしてみれば?


117 :Scrapper:05/09/16 15:38:29 ID:s5C3rcFl
>>115さま
ありがとうございます。

前々回あたりから、文字コードをUTF-8にし、xhtml準拠にしています。
当方、WinXPでIE6、Firefox、MacOSXTigerでSafari、Firefox、IE、各Unix互換環境にてFirefox、Unicode対応w3mの各環境で表示確認を取っています。

お使いのOSとWebブラウザはなんでしょうか?
なにか対策ができるかもしれません。


118 :(・ω・):05/09/16 16:15:10 ID:rdXZPD8q
>>116
エンコードは自動認識でUTF-8になってますが、手動でUTF-8にしてもダメでした・・・

>>スクラッパー作者様
直レスキタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
お心遣いありがとうございます!

現在使っているのは会社のパソ、Win98SEのIE5.5です(;´Д`)
続きが気になって仕事が進まないサボリーマンに愛の手をぉぉぉ!!!

早くXpのパソコン導入してくれないかなぁ・・・

119 :(・ω・):05/09/17 13:47:24 ID:Xje1CgjU
仕事しながら小説読むなよ

120 :(・ω・):05/09/17 22:17:01 ID:fOQ6Xaqh
小説読みながら仕事すんなよ

121 :The Phantom Pain:05/09/18 07:43:21 ID:p/TNqsP2
毎度、失礼いたします。
先ほど、wikiさんに「The Phantom Pain」最新22話をupして参りました。
前回のupより間が空いてしまいました、
待っていてくださった方がいらっしゃいましたら、ご容赦を。
そして同時に、感謝を。

>>88さん
資料を見るまでは私もそう思っていました。
よく攻略本などにある、ああいったテキストの大半は後付けのものですが、
「らしく見せる」という部分にライターの技量が見えるかなと。
その意味で、件のテキストは意外ではあっても場違いではないと思います。

>>89さん
補足ありがとうございます。
また、そのように感じていただけたというのは、
最高の賛辞です。改めてありがとうございます。

>>90=白き〜作者さま
いつもながらご支援ありがとうございます。
「白き探求者」もここ数回がヤマと思わせる怒涛の展開ですね。
こちらも楽しみにしております。

前置きが長くなりました。
では、よろしければ、こちらで。
http://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=The%A1%A1Phantom%A1%A1Pain


122 :Scrapper:05/09/19 17:28:51 ID:Tpu1HE6V
>>118さま
申し訳ないですけど、その環境ですとこちらではちょっとわかりかねます。
取り合えず気に留めておきますね。

というか、御自宅では普通に読めるんですよね?w


123 :ヴァナデール紀行:05/09/21 09:46:25 ID:pAfLlTWS
オポオポの王冠ネタです。
ネタバレにご注意くださいませ。

124 :ヴァナデール紀行:05/09/21 09:50:09 ID:pAfLlTWS
流砂洞

暑い・・・・
アルテパの熱砂の砂漠はどんな人間の体力も奪う。
わずかな日陰を求めて流砂洞入り口で休む。
薄暗い空気の中で水分を取りながら体力を回復していると、
タルタル族のルークとエルヴァーンのミストの背後に気配を感じた。
ミストが振り返るとそこには、
ノーグ地方に縁の深い衣装を身にまとった忍者がスラリとした立ち姿を見せていた。
「はじめまして、こんにちは」
忍者が笑みを浮かべ頭を下げる。
ミストは会釈した。
「こんにちは」
忍者はひざまずき、ルークとミストを見て、頭を下げた。
「すみません。一つ仕事を手伝っていただきたいのですが」
人好きする男っぽい笑みの青年にミストとルークは話を聴く体制をとった。
「なんでしょうか?」
「あの、これで流砂洞の扉を開けるのを手伝っていただきたいのです」
小さな袋の中には、ギルが入っていた。
そう破格というほどでもない、でもけして安いともいえない金額。
5万ギルが入っていた。
「ふ…ん」
ルークは青年と小袋に、どうする?とミストを見あげた。
「奥に行って、なにをするのですか?」
ミストの問いに青年は笑みを浮べた。
いい反応だと思ったようだ。
「古の岩塩が欲しいのです」
「古の岩塩」
「王冠…ーか?」
ルークとミストの言葉に青年ははにかんだようにへらっと笑った。
「やっぱり、ばれますか。
お二人なら俺がいなくても問題なく流砂洞抜けられると踏んだので
声掛けたんですがね」

125 :ヴァナデール紀行:05/09/21 09:55:15 ID:pAfLlTWS
流砂洞はガルカの失われた都市。
移動はガルカの重さが必要となる。
となればヒュムにしろエルヴァーンにしろ、一人での移動は難しいのだ。
「ようは、重石代わりか」
ルークの言葉に青年は眉を寄せて、ばれましたかというように笑った。
「それは…かまわないけど」
ミストは青年を見て首をかしげる。
「古の岩塩は…カザムのオポオポの要求。
お前さんがオポオポ王の王冠を必要だとは思えないな」
青年は、忍者の高位な装備をしていた。
オポオポの王冠を必要とするジョブは、前で剣を振るう者達ではない。
ミストのような詩人達や獣使いなどが欲する装備だった。
青年は小さく笑う。
「やけにくわしいですね。何者ですか?
っと。今はそんなことが問題じゃありませんね。
それに、実はそれは俺のじゃないんです」
「人のため、か?」
「ええ。ちょっと…―恋人に」
青年の言いにくそうに語る言葉にミストとルークは顔を見合わせた。
本人は気軽に語っているが、自らが欲するのならともかく、
他人のために得るにはあまりに手間と時間がかかりすぎるものだった。
「あれは…確か、持ち主を選ぶ装備だったはず」
「だな。自分自身で手にしないと、いけない装備だ」
「あぁ。確か頭骨とか骨とかあったな。それはまぁ、何とか仲間達と取りにゆきます。
でもこの塩は他人の俺でも何とかなるし」
青年の言葉にルークは肩をすくめた。
「まぁな。確かに。だがそのかわいい恋人に装備渡すってことは…
一緒に戦うって事か?」
ルークの鋭い眼光に青年は困ったように頭をい掻いた。
「う…いや。その子はそういうのの価値はあんまり…わからないとおもう。
俺が頼めば体が空く限りどこにでも付き合ってくれるやさしい子だけど。
そういうんじゃない。
苦労して、レベル上げて、やっと一緒に戦えるようになったから
おめでとうの気持ちって言うか…――…」
「ん?」
言葉が止まった忍者にルークは言葉をうながす。
面白がってる―っとミストはおもったが、青年の話はミストの興味もそそっていた。

126 :ヴァナデール紀行:05/09/21 09:57:56 ID:pAfLlTWS
忍者は耳まで真赤にしながらあーうーと、
しばしあらぬほうをみていたが、天に向かってぼそりと呟いた。
「これからもパートナーでいようっつぅか…」
「エンゲージリングのかわりか?
それともマリッジリングのかわりか?」
にやにやっとルークが笑う。
唸りながらしどろもどろに青年は呟く。
「俺の子には、俺が納得いくものをおくりてぇんだよ
プレゼントなんて、あんまりした事ねぇから俺わかんねぇし」
「俺だけのお姫さまになってくれってか?」
ルークの笑う言葉に、忍者は胡座をかいてそっぽを向きながら頷いた。
首筋まで、赤く染めた忍者は言葉を失ったかのように無言で照れまくっていた。
そのまっすぐな思いに目を細め、ルークは立ち上がった。
「うっし。手伝おう」
「だね。ココ、一人じゃ奥までいけないからね」
ミストも頷く。
「助かった…。ココに来てみたはいいが人はいねぇし
むちゃくちゃ…困ってたんだ」
青年はほっと息をついて笑った。

「懐かしい…な」
ミストが広く薄暗い流砂洞を歩きながらポツリと呟いた。
「え?」
「ふん」
「奥には、ガルカ達の遺産とも言うべき壁画があるんだ。
見ごたえあるよ?」
「二人は…ここに来たことが?」
ルークはクッとミストを見あげた。
「こいつも王冠もちだよ。
派手すぎるってんで今はモグハウスの倉庫にでも眠ってんじゃないか?」
「ルークが手伝ってくれたね。ココの、塩も」
ミストはにこっと笑う。
「あんたら、ただもんじゃないとおもったけど…。
やっぱり、相当のもんなんだな」
青年の言葉にミストは静かに笑む。
「ただの、釣り好きな冒険者だよ」
「普通の合成職人だよ」

127 :ヴァナデール紀行:05/09/21 10:01:52 ID:pAfLlTWS
青年は、はっと顔をあげた。
「あんたら…まさか…。
あ、いや…でも、ジョブが違う…?」
青年の呟きにルークは肩をすくめる。
「どこまで行くんだ?扉はココだろ」
「あっ。ああ!」
円形の色彩をほどこした台座に立つと、扉が開く。
この流砂洞はガルカの大いなる謎の遺産だった。
こんな扉は、3国やジュノをみても、どこにも存在しない。
現在の方が総合的な文化は衰退したと言う事だろうか。
扉を通り抜ける。
「わるいな。つきあわせて」
青年の言葉にミストとルークが笑う。
「あんたならソロでも、古の岩塩も取れるさ。何せ最強忍者様だ」
青年は小さく笑う。
そして…青年はいった。
「ココまでだな。ありがとう」
「いや。たいした仕事でもないし」
「気をつけて。がんばってね」
「あのよ。あんたら…間違ってたら悪いけど…―。
本当の名前は別にあるんじゃないか?」
青年の言葉にルークは冷たく答えた。
「お前には、関わりないことだ」
「あぁ。だが…俺の想像どうりなら、ジュノの酒場で…
―あんたら探してる奴がいるぜ」
「人違いだ」
さっくりすっぱり切って捨てるルークに青年は頭を掻いた。
「余計な事だったな。ワリィ。忘れてくれ」
青年は小さく笑って手を振った。
「また、どこかで」
「じゃな」

128 :ヴァナデール紀行:05/09/21 10:05:46 ID:pAfLlTWS
忍者とわかれる。
そしてミストはガルカの地下都市の廃墟を見て、その朽ちかけた壁をそっと撫ぜた。
「過去は風化される」
「それもまた良し。だろ?どうした。ミスト。
王冠かぶりたくなったか?」
ルークの言葉にミストは笑いながら首を横に降る。
「まさか…」
「いい加減、忘れろってんだ。ったく」
「本当にね。僕らのことなんか忘れてくれればいいのにね」
「俺らは俺らで好き勝手やってるっつの」
ルークはミストをチラッと見て、吐息をついた。
過去は、重い。
このガルカの廃墟のように、風化するには時間がかかり
そして、いまだにここにありつづける。
忘れる。と言う事は簡単だが…実際はそう簡単に忘れる事など出来ない。

傷がある。
今日を生き延びるだけで手一杯の二人に過去も未来も
あまりに、重く感じた。
「思わぬ収入が入ったね」
ふっと顔をあげてミストが笑う。
その笑みにルークもふっと笑った。
「だな。ぼろい仕事だったな」
「そろそろ、アルテパに戻ろうか」
そして、アルテパに戻るとサルタオレンジのような夕日が
黄金の砂漠を染め上げていた。
空気はすこし、熱を失い夜に向かっている。
「野営しよう」
ミストが笑う。
「だな」
相方がそこにいる。
重すぎる過去に押しつぶされずに笑える。
深い傷を癒すその時間が今は、何より大事だった。



129 :ヴァナデール紀行:05/09/21 10:07:41 ID:pAfLlTWS

追記
「あーと。うーと」
「はい?」
詩人の女性はまっすぐな瞳で身長の大きな青年を見あげる。
「あの、な。ちょっと付き合ってほしい所があって」
「はい」
女性は笑顔で頭骨取りや魚の骨取りに付き合い、そして、カザムに向かった。
「順番にいうとうりに渡して欲しいんだ」
「ええ」
女性ははにこっとわらって、いわれるがままにオポオポに荷物を渡し
そのたびにオポオポはぺこんと愛らしく頭を下げていった。
最期に王冠を渡された女性は目を見開いて困ったように受け取った。
「この王冠…」
「この王冠は主人を選ぶんだ。君のものだよ」
「でも…私にはかぶれません」
「なんていうのかな。その。色々つきあってくれた御礼って言うか…」
「それは、私の言葉です。あなたがいなければ私はここまで強くなれなかった」
「どうか…。その。
気持ちだから、気軽に受け取って欲しいんだ。
いままでの分と、そして、これからの分も含めて」
真赤になりながら、やっという青年に女性は小さく笑んだ。
「ありがとう。いただきます」
青年を見あげ、腰を落とし正式な礼をする。
そして、女性は小さな王冠を頭にのせる。
くんっと女性は青年の服を手で引いた。
引かれる青年の頬に一瞬ふわっとあたたかく柔らかいものが触れた。
それは本当に一瞬だったけれど、青年は生涯最良の思い出の一つを手にいれた。

                         END


130 :ヴァナデール紀行:05/09/21 10:17:10 ID:pAfLlTWS
流砂洞は、困りました。
ドロップアイテムの合成素材系も微妙ですし
釣り場はないので…クエストをつかわせていただきました。

>>115
流砂洞でした。お声ありがとうございます。
楽しみにしていると言う言葉は励みになります。

お楽しみいただけると幸いです。
お声くださる皆様いつもありがとうございます。
このスレの皆様に感謝を。
書き手の皆様、次作楽しみにしています。

               N

131 :(・ω・):05/09/21 10:53:17 ID:3p2W70uV
ああああ〜〜〜〜〜
過去が気になるじゃまいか〜〜〜〜〜

・・・ちょっくらジュノの酒場行って聞き込みしてくる ノシ

132 :(・ω・):05/09/21 12:31:55 ID:7E8tppsd
過去の話は聞かぬが花、言わぬが粋ってもんじゃまいか>>131
零れ落ちる色々を色々想像するのがまた楽しみで。

まあ多分に漏れず自分も気になるわけだがねw

133 :(・ω・):05/09/21 14:36:40 ID:N9wvS3Dc
ヴァナ紀行のNさん、今回もいいお話でした。

今回の忍者の青年とそれを見上げる詩人女性、

過去のNさんの作品のあの人たちでは?
とちょっと妄想してしまいましたw
違ったらごめんなさい、忘れてください。

134 :(・ω・):05/09/29 10:05:37 ID:V0WbahCm
age

135 :(・ω・):05/09/29 12:48:49 ID:hbkc8ca9
あえて言おう!
今回のヴァナディール紀行は良くなかったと!!
たまたまその場所での出会い、そしてそれにより少なからずの絆やふれあい、今後の
意志づくりなど、二人のちょっとした後押しが今後に繋がり、追記が良いのだ!!
しかし今回は二人の過去が知りたい!っての思いが残り、それが強すぎた。
が、まあ文章は上手いし、ちょこっとした仕草の書き方や言い回し方は上手いし面白
いんだよねぇ。
これはこれで楽しく読ませていただきました。
イイヨイイヨー!(゚∀゚)

136 :(・ω・):05/09/29 17:04:10 ID:ss8Y3seG
つーか塩もエクレアだよね

137 :(・ω・):05/10/04 11:13:16 ID:Ej/bopc7
作者さんたちのキャラのレベル教えてキボンヌw
私から見ると60〜75が多そうだねw

138 :(・ω・):05/10/05 00:25:57 ID:OlyRj+UJ
くうう、まだ王冠取りに行ってないから、今回は読めない。
いつか取ったら読みます。

139 :(・ω・):05/10/05 08:24:54 ID:wvZUdF/U
>>138
王冠クエを題材にしているだけで、ネタバレと言うほどではないと思うがどうか。

140 :(・ω・):05/10/05 13:46:16 ID:3BfFtEnY
というかはやくこのスレ上げんかいw作者もキボンヌw

141 :ヴァナデール紀行:05/10/05 18:59:08 ID:lJH3L7/o
クフタルの洞門

「乾けばなんてことないし、身を守るのに必要だってのはわかるが。
このサイレントオイルってのどうにかんなねぇかな」
ルークがオイルの壷を見て呟いた。
「使いごこちはイマイチだよね。
摩擦を極限まで減らして服のこすれる音すらたてないようにできるんだから、
モンスターの多い所では必須の薬品だけど」
「匂いもなぁ。スライム臭いし」
「だね」
そういいながらもルークとミストはオイルを全身に振り掛ける。
「さて、行くか」
ここはグスタフの洞門。
海底洞門でテリガン岬とつながっている。
地面は、砂。
外は熱砂のアルテパだが、この中の空気はひやりと冷たい。

ここでは、狩り、魚釣り共にさすがに危険すぎので
通り過ぎるだけの予定だった。
音をたてず、ゆっくりと走ってゆく。
狭い入り口を抜けると、闇に飲まれる広い空間に出る。
周囲に敵は少ない。
これは、狩りをしているやつらがいるか?とルークが思っていたところ
ふと呼び止められた。
「そこのお二方っ!!」
振り返ると髭ヒュムが手をふっていた。
自分たちか?と問うように自分に指差すと、髭ヒュムはこっくりと頷いた。
ルークはオイルを振り払い、声を出した。
「どうかしたか?」
「実は、あれに困っていまして…」
ヒュムの指差す先には周囲のリザード族より一回り大きなリザード族
ノートリアムモンスターといわれるアメミットがノシノシと歩いていた。

142 :ヴァナデール紀行:05/10/05 19:08:56 ID:lJH3L7/o
「ぁー」
「あれは、確かに…」
ミストとルークが眉を寄せた。
「ここで狩りをしてスキルを磨いていたのですが
…さすがにあれは私たちの手に余って。
とはいえ、ここで狩りを断念するのも。
そのために集まった仲間たちですしあと2日間はここで狩りたいのですが
あれがあそこに居座ると…」
「つらいよね。いつ事故が起こってからまれるかもわからないし」
ミストはルークを見下ろす。
ルークはミストを見あげる。
「義をみてせざるは…」
「勇無き也。か」
目の前のパーティの面々を見て、ルークは言った。
「手伝おう」
「助かります!報酬はドロップアイテムぐらいしかお支払いできないのですが。
早速アライアンスを組みますね」
「あぁ、俺が盾やるから。ミストはそっちのパーティに。こっちに一人白もらおうか」
「はいっ」
アライアンスの依頼を受け、パーティを組みなおす。
「まずは、腹ごしらえ。かな」
「だね。そうそう。いいものあげる」
そう言って、ミストは荷物を広げる。
「なんですか?」
手を蒸留水で軽く湿らせ、ブラックソールを取り出す。
「お寿司だよ」
「うわっ。高級食材っ!!」
パーティの面々が思わず声をあげた。
「ん。ラバオの競売で買ってきたんだ」
そう言って握る寿司をみんなで食べる。
「魔道士さんには、パイかな?クッキーかな?」
差し出されるお菓子に嬉しそうにみな口にほおばる。
戦いの最中でもこうやってわいわいと食べる食事は以外に楽しい。
いや、正確には緊張の続く戦いの中で
息をつけるのは夜寝る間か、食事時くらいしかないのだ。
だから余計に、食事は旨く感じる。
たべ終えたあと、一休みして立ち上がる。

143 :ヴァナデール紀行:05/10/05 19:11:14 ID:lJH3L7/o
「さてと。行くか」
ルークがゆっくり首を左右にふって軽く筋肉をほぐす。
「はいっ」
「ミスト。みんなにマドマド重ねがけかな」
「了解。魔道士さんにはバラードいくね。
ルーク。エレジー入れて釣ってくるから、不意打ちでよろしくね」
「おうさ。久し振りにお前の楽器コレクションが役立つな」
その言葉にミストは苦笑した。
「テリガン岬に行くから一応、と思って準備してきたんだけど。
まさか役に立つとは、ね」
ちゃき。
両手に剣を持って、ルークが戦闘態勢を取る。
周囲にリザード族がいないことを確認したうえで、
ミストはホルンに息を吹きかけエレジーを奏でる。
そして、すばやく戦闘位置に戻る。
ミストが一度の攻撃を受けただけですぐにルークはアメミットの背後に立ち
不意打ちで敵のヘイトをあげながら、空蝉の術を使う。
ミストがトラベルシエールに息を吹き込む。
二曲のマドリガルが剣を持つものに勇気を与える。
パーティのものたちの攻撃が当たりだす。
「バファイラを!」
ルークの声に反応した魔道士がバファイラをかける。
リザード族特有のファイアーボール対策だ。
「連携!狩人、スパイナーショットいけるか?」
「はいっ!!」
「ダンシングエッジにあわせて湾曲行く!
黒魔道士、しっかりマジックバースト決めろよ」
ルークの指示に、狩人が狙い撃ちで集中力を高める。
ミストはエンゼルフルートに楽器を持ち替え
弓師のプレリュードを奏でる。
空蝉と攻撃を控える事によって、ルークは敵の敵対心を下げる。
見事に入ったスパイナーショットに振り返るアメミット。
その瞬間、不意打ちのアビリティを使い、ダンシングエッジを決める。
特殊な連携技に黒魔道士のブリザドUが炸裂した。
盗むを間に入れながら、アメミットのヘイトをあげるルーク。

144 :ヴァナデール紀行:05/10/05 19:13:06 ID:lJH3L7/o
「もうちょっとだよ。がんばれ」
ミストが楽器をすばやく持ち替えながら、みんなを元気付ける。
長い戦闘。
短時間ならともかくノートリアム戦の長時間な戦闘になってくると持久力が必要になってくる。
赤魔のリフレや、ミストのバラード。
そして、スキをみてのヒーリング。
「ルークの石化!!ストナをっ」
ミストの声に白魔道師はストナを唱える。
そして、繰り返される連携とMBに、アメミットは最期は砂地に沈んだ。
「っふぅ。終了」
ルークが吐息をついて、短剣を腰にもどした。
「どうぞ、ドロップ品はお持ちください」
髭ヒュムが二枚のアメミットの皮を差し出す。
「ん。じゃ、ま。素直にいだたくか」
「ありがとうございました。これで安心してここで狩りが出来ます」
「お疲れ様。みんな大丈夫だった?」
ミストは言いながら荷物に楽器を整理してゆく。
「すごいですね、詩人さん。楽器いくつ持っていらしゃるんですか?」
羨望の眼差しをする白魔道士にミストは笑う。
「ん。今回はテリガン岬を抜けるつもりだったから。
強い敵と戦闘になるかもしれないからね。10個位だよ。
普段はそんなに持ち歩かないけど」
そういいながら、手にエボニーハープをもち、弦を爪弾きゆっくりとピーアンを奏でる。

145 :ヴァナデール紀行:05/10/05 19:16:29 ID:lJH3L7/o
「たまには、こういうヒリつくような戦闘もいいな。
体がなまってたから」
ルークの呟きにミストは笑う。
「聞いてくれる人が多いと、曲を奏でる張り合いがあっていいね。
普段はルークだけだから」
「ちゃんときいてるぜ」
「どうだか」
パーティの中に笑いが、生まれた。
パーティの青年たちは少しずつスキルを上げて成長してゆく。
明るい笑顔に、ルークとミストも笑みを返した。
未来ある若者と時を過ごすのも、なかなかに心地よいとおもった。


追記
ルークは荷物をゴソゴソ捜し、そして、顔をあげた。
「ついでに、トカゲの抜け殻とかあるか?」
「あ。もってます!」
黒魔道士が差し出すそれをルークが手にとり、
砂の上にぺたりと座って、土のクリスタルで合成をはじめる。
ごごごご。
土のクリスタルが火花を散らしながら高温で素材を合成してゆく。
パリーン。
軽くはじける音に、全員が小さく「あ」っと呟いた。

               END



146 :ヴァナデール紀行:05/10/05 19:32:56 ID:lJH3L7/o
クフタルも通りすぎることは多いですが、
なかなかお話の取っ掛かりが掴めず小作というかんじになってしまいました。
今回は軽いのりの、なんてことない日常です。

古の岩塩、エクレアでしたか。失礼しました。
133様 あたりです。彼女はこのとき詩人をして、彼を癒しているようです。
139様 ルークとミストは75ジョブをいくつか持っております。
    
多くのお言葉ありがとうございます。
皆様のお声をいただいて、楽しく書くことができます。
そして、書き手の皆様。上半期終了・下半期開始や中間テストで
で忙しい季節かと思いますが作品楽しみにしております。

                      N


147 :